第37話 阿智谷 盛の女神配信前日
「ねぇ字守、あんたの所の店員貸してくれない?」
「何よ原増?エッチな事なら手伝わないわよ?」
「違うわよ!うちのプロデューサーが初見のゲームクリアしろとか無茶振りしてきたのよ。」
「ゲームねぇ……上手いのはなのちゃんね。あの子の動体視力と運動神経は常人を凌駕するわよ。それとブブラちゃんかな。ファンクラブの方にはプロ並が数人居るけど?」
「ん~でも配信だからなぁ……」
「手元映さなきゃわからないわよ。」
「って事が有ってね……」
「配信手伝って来いと?」
「ガチで無くていいから。」
「テケリリ連れて行っていい?」
「撮影班と解析班もお願い、どうもプロデューサー辺りが怪しいのよ。ゲーム渡されたけどこれなのちゃんでも1面クリアしかできなかったわ。」
「で?話題のなのちゃんは?」
「昨日ヌガーさんに全裸接客したんで粉挽き棒回してるわよ。ヌガーさんロボットのカメラの解像度がおかしくなったって思ってたみたいだけど。」
「一遍持ち帰らせて下さい。」
「って訳であざすさんから預かって来た。CG、解析頼む。」
「あ、それクリア不可能だぞ?オレが作ったから。」
「なのちゃん1面クリアしたとか……これをクリアして欲しいとか言ってる。」
「赤く発光する敵機以外ゴーストにしよう。デバッグモードで……何だこりゃ?」
「どうした?」
「クリア後のおめでとうメッセージが変わってる……」
「なになに……全てのイスの偉大なる種族に告げる。時は来た。直ちに地球を支配下に入れよ?」
「こんな文字だか図形だか解らん物スラスラ読む文字が怖い。」
「頭の中ショゴスに支配されてるから……」
「いや俺の心配はいいのよ。あざすさんとアチャモルさんに連絡を取ってくれ。」
「どうしたのよ?」
「あ……もしかしてゲーム改変できませんでした?」
「いえ、それは終わってます。問題はクリアしたあとに出るメッセージで……こんなのが。」
「エジプトのヒエログリフかしら?」
「テケリリ達に教えてもらった知識によると……『全てのイスの偉大なる種族に告げる。時は来た。直ちに地球を支配下に入れよ。』だそうです。」
「ちょっと!文字くん!」
「アチャモルさん……いえ神々の母たるアザトース様!これはあなた様のご計画でございましょうか?」
“そうである……と言えば?”
「及ばずながらお手向かいさせていただく所存にございます。」
“怖い顔をするでない。我の差し金ではないわ。ニャル!”
阿智谷 盛の髪飾りの花の中心にある黒い石が発光し……銀髪アホ毛の美少女が現れる。
「ああ、それトラペゾヘドロンだったんですか。」
「何するんですかアザトー……いえ課長!」
「ナイ神父かランドール・フラッグの姿で来られるかと……」
「この体が貴様達が選んだ這い寄る混沌であろうが!」
“ぷ……可愛くなったのうニャルよ。”
「あ~!もう何なんですか?」
“ニャル、この文に記憶は無いか?”
「え?……何ですかこれ?イスの……跳ね返り共め!」
「ありがとうございますナイアーラトホテップ様、あなた様方にお手向かいさせていただかずに済みそうです。」
「どうせならここをこう改変して……このマークを入れるが良い。馬鹿共は手向かいできなくなるであろう。」
“その姿では威厳も何も無いのう。”
「地球人が悪いんですよ!ってそなた……もしや?」
「はい、ショゴスとお友達になる会の会長で文字と言います。でもいいんですか?直ちに自害せよ。なんて言って……しかもこれナイアーラトホテップ様の紋章でしょ?」
「構わぬ。なるほどショゴスを友とするか。此度のショゴスロードは佳きマスターを選んだのう。」
「いえ、ショゴスリーダーです。テケリリ?」
「か……神々の皆様にはお日柄も良く……」
「よいよい、お主をショゴスロードに進化させよとのアザト……課長の思し召しである。」
「畏れながらナイアーラトホテップ様、ここに居る者は全てアザトース様を知っておりますれば。」
「ほう……この体は気に入らんが楽しい人間が多い様じゃの。あい解った、アザトース様の指示だけではなく我もそなた等を守護しようぞ。取り敢えずショゴスリーダーの進化である。ΠΙΜΘΕΠΝΙπαЯЁ!」
テケリリの体が光の中で球体になる……どうやらスクイーズボール状になったようである。
「テケリリ!テケリリ!痛くないか?大丈夫か?」
「モジ……見ないで……」
「どんな形でもいつもお前を見て居たい。」
「モジ!」
テケリリは金色の直径50センチのスクイーズボールになった。
「ところで地球のショゴスマスターよ、そなたの自慢のショゴスは臭いが無いのは何故じゃ?」
「俺達と同じ物食わせてたら臭い無くなりました……
テケリリ大丈夫ですか?」
「そなたの可愛いショゴスリーダーは2日ほどでショゴスロードとして目覚めるであろう。ふふ、変わり者じゃのう。自らの肉体でショゴスを護ろうとしたか……もし何か有ればショゴスを助けてやってくれ、ウボ=サスラも喜ぶであろう。」
“ニャル?自分が纏めた気になっておらんか?”
「そう言えばアザトース様に喚ばれたんだった……」
“あと邪神の姉ちゃん呼び捨てにすんな!まぁとりあえず我の配信を見て行くがよい。ぷろでゅーさーとやらが気になるでのう。おお、地球のアザトースよ、そなたの言う通り表向きはハラマスコイとやらに任せるので心配そうな顔をするでない。”
「テケリリは大丈夫でしょうか?」
“ほっほっほ。ショゴスマスターが心配してるのはショゴスの方であったか。今はニャルの知識の一部を組み入れて体を再構築している最中じゃ、ほんの2~3日待っててやれ。象でも蟻でも変身できる様になって帰ってくるでのう。”
「あの……アザトース様?原増の配信は明日でございますが……」
“この地のアザトースよ、邪魔はしないんで我も楽しませてくりゃれ。”
「地球の、ああなるともう止めようが無いのじゃ。邪神に噛まれたとでも思って諦めてくれ……」
「それ生きて無いと思いますが……」
「テケリリ……ゆっくり寝るんだよ。できるだけ付いていてやるからな。」
金色のスクイーズボールは嬉しそうに揺れた気がした。
思ったより難産でした……
ちなみにアザトースやナイアーラトホテップは本家やまぐちブックストアには登場いたしません。悪しからずご了承くださいませ。
さて次回は第38話 阿智谷 盛の女神配信本番
お楽しみに。