第34回 冥土喫茶ニルヴァーナ
夏休みも終わりましたね……
9月である。
楽しい夏休みの旅行も焼けた肌の皮と一緒に消えて行く9月である。
「隣のクラスに転校生が来たらしいデスよ。サムライっぽい女生徒だそうデス。」
「へぇ……うちの学校転校生受け入れ過ぎだよな?」
「ん~、でもそれだけリベラルな校風って言えないかな?」
「そう言えなくもな……斉藤?どうしたんだよ?」
「やっほー、新しくできたメイド喫茶なんだけど焼きそばが美味しいって評判なのよ。行ってみない?」
「そういうのって独身男性が行くイメージだし……だいたいバイト有るからあまり遠くには……だいたいそんなとこの料理って高いんじゃないか?」
「マザストップとやまぐち書店の間に建ったマンションの1階だよ?焼きそばは500円だったはず。ほら食いログペーパー台戸版。」
「ああ、あそこそんな店入ったんだ。って斉藤そんなの食って大丈夫か?炭水化物より蛋白質とか……」
「いいのいいの、これおやつだもんね~。」
「ん~、でも星5ってのは食べてみたいな。ムッチーどうだ?」
「早く行きまショウ!タイマーイズモネーデス!」
「タイムイズマネーな……」
目的地はどう見てもメイド喫茶と言うより剣術道場の佇まいであった……
「斉藤、何か間違ってねぇ?」
「いや、ここで間違いないはずなんだけど。」
「店の名前は?」
「メイド喫茶ニルヴァーナ。」
「なら間違いないデス。」
無知村が指差した看板には「冥土喫茶 煮華」と書いてある。
「なんかやべー匂いがプンプンしねぇか?」
「ここで怯んでは武闘家の名折れだぞ?」
「あたしは一般人だ!」
「こんにチハ~。」
「ああっ!ムッチーが入っちまった。」
「ほらウチらも行くんだよ。」
中は普通のメイド喫茶っぽいが……どこかで見た様なメイドが近付いてきた。
「お帰りなさいだお嬢様、お!間蔵島の!」
「あ!ここに居たのね!うちのYBWA(やまぐち書店レスリングアソシエーション)に勧誘したかったのよ!」
「では入団試験だな?私が勝つと友達になってもらうぞ?」
「そうね、ウチが勝ったら一緒にカラオケ行ってもらうわ。」
「なぁムッチー、2人とも「友達になろう」って言ってないか?」
「バンチョー漫画のシチューマンションデス!」
制服を脱ぎ筋肉をパンプアップさせる斉藤、竹刀を構える夜叉丸……
竹刀がラリアットを弾き、筋肉が竹刀を受け流す。
「楽しいな!君は強いなレスリングチャンプ。」
「全くだわ!貴女も強いわねサムライ。」
人が立ち入り辛い環境を二人が構築する中、あっさりと土足で入って言ったのは……
「何してんだコラー!」
「テケリリちゃんどうし……円!また暴れるつもりか?」
「ん?どうしたの?」
ショゴスリーダーのテケリリ(メイド服着用中)と十六夜軍曹、ファンクラブの班長だった。
「マドカちゃんとサイトーさんはそこに座りなさい!」
「お客さんにいちいち喧嘩売るなお前は!」
「ごめんねヤマナメさんと無知村さん。緑と廃油、お冷や持ってきて~。」
2頭のショゴスが器用に水を持ってくる。
「あの……ここメイド喫茶ですよね?」
「ええ、地獄をテーマにした冥土喫茶ですよ?」
「え?……夜叉丸さんはどういう設定デスか?」
「女剣豪のゾンビです。テケリリちゃんが未練を残した幽霊、ショゴス達が餓鬼って設定です。」
ヤマナメはもう一度食いログペーパーを開いた。
メイド喫茶ニルヴァーナ(涅槃)
地獄を楽しもうというコンセプトの新し過ぎる店。
美しいメイドさんも居るのだが彼女はゾンビ、そう、ここのウエイトレスは皆亡者という設定である。
台戸夏祭りの1つ目お化けちゃんやスライムくん達が元気に接客してくれる。目玉は軽食、特に焼きそばが絶品だがスパゲティーやピラフも開発中とのこと。まだまだ残暑が厳しい時期、心から涼みに行ってみては?
⭐⭐⭐⭐⭐
「ムッチー……これ……」
「ああ、お化け屋敷のイメージだったんデスね。」
「わたしはドラキュラ、夜叉丸パパさんがフランケンシュタインの怪物設定です。もうちょっとすると……」
「あれ?Xさんと無知村さん来てくれたんだ?もうすぐ開けるからね。」
「博士さん?文字さんもなんで?」
「料理担当とメイク担当ですよ。文字が調理で僕がメイクします。」
「ってか早く覚えてくれ班長。俺はニートに戻ってテケリリ撫でて暮らしたい。」
「思い切り前向きに後ろ向きな事言うな!」
「祭と島ので怠惰に生きるギャラ出たんだろう。」
「ショゴス10頭引き取ってキャラバン買ったら残って無い……」
「思った通りの金の使い方だな。」
「テケリ……テケテケリ。」
「あ、緑ありがと、あれ?廃油、今本部は誰が居るの?」
「テケリ……テケリリリ。」
「本当にショゴスと話してるよ……。」
「宇宙恐怖と向き合えるなら教えるよ?」
「それは宇宙神話の事デスか?」
「うんハスタールとかシュブ=ニグラスとか廃油が教えてくれるんだ。ただナイアーラトテップだけは憎んでるっぽくて……え?自分たちを虐待してた古の馬鹿が信仰してたから気に食わない?」
「テッケリ。」
「ナイアーラトテップ自体は人間好きで度を超す事は有るものの知識を与えてくれるんだとか……え?武器がバール?」
「テッケリテケテケリ。」
「その頃に何か有ったのかい?」
「テケリ。」
「文字さん……テレパシーで話してるって嘘だろう?」
「今は班長に判るように発音にテレパシー乗せてるからね。」
「ではウボ=サスラについてはどうデスか?」
「テケ……リ……リリ……リリ……テケテケ……リ。」
「彼らの神、彼らと同じ体を持ち、彼ら全ての母と言ってるよ。」
「ヤマナメさん、本当に話してマス!」
「んでもムッチー、ショゴスにしては匂いがおかしいとか言ってなかったか?」
「それこそ虐待だったんだ!普通の食べ物与えれば臭いは無くなるんだよ!」
「ショゴス学の博士号取れマスよ?」
「平穏に暮らせりゃいいよ。」
「ショゴス達が心を許す理由がわかりマシタ。利用しようと考えないんデスね。」
「彼らが強いのは判るけど。可愛がるのは別の話だからね~。って、Xさんそろそろ遅れない?焼きそばなら出前してあげるよ?」
「それじゃ10人前大丈夫?書店のみんなで食べたいんだ。」
「毎度!お代はストロンガーさんにツケとこう。」
「文字……お前だけ怒られてくれ。」
斉藤さんは別の学校です。単にメイド喫茶に行きたくて2人を誘いに来ました。
コイカツあきさんは正統派メイド喫茶でしたが……こっちはテケリリもショゴスも居るし冥土喫茶にしようってのが間違いの元だったような……
夜叉丸と斎藤さん(サー・イトウ)冥土喫茶の戦いの一コマがこちら
https://34244.mitemin.net/i664800/
さて次回は書店サイド日常回
第35回 メダルカードパニック お楽しみに




