第26話 台戸豚追い祭当日の攻防
「物販屋台を避難先として使うか……」
「その辺が博士の考えなんだよな。」
「はっはっは、電磁障壁は弱いが感電するんでレギオンは来れないだろう。」
「んで結局レギオンって何?」
「漆黒で虹色に光るスライムらしい。」
「廃油かよ……」
「馴れるなら飼いたいな。」
「知能在るらしいから危険じゃないか?」
「お前もっと危険な生物と付き合っとる癖に……」
「あざす中尉か?」
「チクるぞ?でもあの辺言わばトップエージェントばかりだろう?変な生物よりよっぽど危険だと思うがな?」
「あら高評価ありがとう。」
「「「文字が言ってました!」」」
「お前らなぁ……」
「でもあいつらって電撃には強いらしいわよ?」
「強くても効くので有れば止める事は可能かと。」
「電撃より熱にした方が効きマスぞ?200度で触ろうともしない筈デスよ。」
「あの……レジのお姉さん?こちらは?」
「博士、その人は信用できる!何故なら1号さんと懇意な常連さんだからだ!」
「「「おぉ~!」」」
「おお!バイカーズガイドの人デスな!」
「やまぐち書店ファンクラブの文字と申します。」
「ヌガー・クトゥンでス。今回ショゴスの件で出張って参りマシタ。」
「早速ですがそれは飼う事は可能ですか?」
「それなりの知能も有り実際に飼い慣らしてる種族も居マスガ……相手を食料と見ているタメ簡単な話ではないデショウ。ショゴスロードが居れば別デスが……」
「見分けは付きますか?」
「より攻撃本能が弱ク、完璧に人間に擬態シマス。ショゴスに囲まれて平気な人間が居れバほぼ間違いないデショウ。それと友好を結べばショゴスは攻撃して来まセン。」
「ありがとうございますヌガーさん。これはつまらない物ですがお納め下さい。あなたはファンクラブの友人です。」
文字が渡した物は……書店ちゃんの缶バッジだった。ただし名前の刻印が削られている。
「これを付けてファンクラブを訪ねて下されば地上の問題は大抵闇に葬ってご覧に入れます。」
“只今より 有志によります「台戸豚追い踊り」を開催いたします。参加者は境内にお集まりください。”
「では我々は踊ってまいります。ストロンガーさん、あと宜しくお願いします。」
「諸君!今日までの特訓ご苦労さんじゃった!この踊りで締めじゃ!頑張るんじゃぞ!」
「「「「「おお~!」」」」」
駄豚が寝転んでいるところに勢子二人が近付き、駄豚が立ち上がった所から豚追い踊りは始まる。
「せぇいっ!」
「おう!」
「せぇいっ!」
「おう!」
勢子の掛け声に併せて動く狩子と農民、駄豚は腕を組み腰を左右に振っている。第一の節、艶部である。
”よくもオデの役を取ってくれたな。駄豚から食われるがいい!“
”待ってたぜ隙手間ぁ!ショゴスと一緒に干からびろ!煉獄障壁!“
隙手間のテレパシーに対し頭の中で思うだけの文字、だが組んだ手の中で握り混んでいる小型スイッチを押し込むと踊り手とギャラリーの間に熱波のドームが浮かび上がる。
「やっぱり文字クン狙って来たか……」
「あざすさんはこうなるト解っていたのデスか?」
「可能性は高かった。だから地上班半数をファンクラブ護衛に付けたのよ。護衛班、その不定形生物を駆逐してください!焼夷銃弾なら倒せるわ!」
小型焼夷弾がショゴスに飲み込まれ炎を出して消える……蛋白質の焼ける臭いが当たりを包み込む。
「人に当たりそうならテーザーを使って!踊ってる人を護衛するのがあなた達の仕事よ!」
「ブブラ行きます!バンシーボイス!」
「XOXO!吸っちゃえ!」
『A-10サンバーストファランクス発射!』
『連射バスターの威力を甘く見ないでくだサイね!』
「何だこの攻撃は…レギオンが負ける?ええい、ショゴスリーダー!中心で踊ってる奴を食え!」
嫌な顔をしながら隙手間に従う単眼お化けの見た目のショゴスリーダー……だが飛んできた小型焼夷弾を駄豚が叩き落とす!
「あちちちち!君は向こうに隠れてなさい。俺達ゃ戦いたくは無いんだからね?」
「文字クン!何してんの!」
「俺はショゴスと仲良くしたい!このわがままだけ聞いてもらえませんか?」
「テケリ……テケ……テケリリリリリリ!」
駄豚を心配そうに眺めていたショゴスリーダーが高らかに鳴き……全てのショゴスが動きを止めた。
「テケテケリ?リリリリテケ、テケリリリリ。」
「ごめん、言葉が解らない。」
「あたしはてき、なんでたすけた?」
「こんな可愛いのが焼かれるなら俺の手が焼けた方がマシだ……え?言葉が……?」
「おお……文字くんがやったようデスな!」
「あざすより通達!ショゴスは敵ではない!以後攻撃を禁じる!」
「てをだせ、なおす。」
「え……お前の身体の中に手を入れて……出したら治ってる?どんな魔法だこれ?」
「もうわたしたちかえれない。ダブタわたしたちかう。」
「マジか?やったぁ!不定形生物って憧れなんだよな。あ……でもお前の仲間いっぱい殺してしまったぞ……」
「ひとつもしんでない。エサくうとよみがえる。」
「よしみんな俺達の所に来い!」
これが令和の駄豚様の奇跡と呼ばれる宇宙戦争未遂事件である。
踊りは更に華やかになった。ショゴス達が集まって一緒に踊り出したのである。
「でも何で信用してくれたんだ?俺が騙そうとしてるかも知れないだろ?」
「あたし達は奴隷種族、死ねと言われれば死ぬ。でも主は選べる。ダブタが主がいい。怪我しても助けてくれた。」
「主じゃねーよ、友達だ。ただ人は食わないでくれよ?もっと美味い物食おうぜ。」
鉄山先生は感動していた。攻めてきた相手を武力を使わず心で屈服させたのである。伝承の駄豚様は自らの肉体をもって飢饉を救った。ならば自らの肉体をもって攻めてきた相手を屈服させたこの男達は見事に駄豚様の代役を果たしたのではないか。
そして隙手間塗例巣はショゴスに食われていた……
「あれ生きてんの?」
「あいつはショゴスロード、でも自分のことしか考えなかった。だから仲間に食われた。」
ヌガー・クトゥンが隙手間を回収、ショゴスリーダーの部下が2匹護衛に付き防衛軍に収監されて行った。
今回単眼お化けのショゴスリーダー テケリリちゃんが出て来ましたが、こちら前日夜にスレに投下されたばかりの新キャラでして、まだ名前も無いうちにショゴスロードとして使わせてくれと無茶言ったキャラでございます。ショゴスロードにはまだ経験不足で単眼お化け(隙手間が嫌わせるのに単眼お化けに化けさせた)と言う隠し設定でございます。
https://34244.mitemin.net/i658543/
この時は普通のお化けだったんですよね……なんでショゴスになったのか?(どう考えても筆者の所為です。)
さて次回は後始末回
第27話、祭は終わって…… お楽しみに




