第22話 台戸豚追い祭起源
すいません、今回書店メンバーの出番は少ないです。
いい加減隔離施設から出たい……
ここ台戸市の伝説を語ろう。
それは江戸時代文化年間、肥料を取るため庄屋の家で飼われていた一匹の豚の伝説……
「まぁ何時も飯食ってるだけでいい身分だな豚。」
「おいおい、豚に文句言う奴が居るか。」
「糞させる為に生かされてるんだ。仕方ねぇだろう。」
その後天保年間になりその豚……駄豚様は実に20年以上生きており、いまだに雌豚を孕ませ続けていた。
だが、運命のダイスは転がる……
「庄屋様!飢饉じゃ!どうすべぇ?」
「ふむ……駄豚様は皆に愛されておる、何とか山に逃がせないかのう?このままでは只飯を食らう駄豚様に憎悪が集まるでのう……」
しかし駄豚様は動かなかった。この時農民が駄豚様を追う姿が後の台戸豚追い踊りの元になったと言われている。
何をしても動かない駄豚様……だが農民達の頭の中に語り掛けて来た声があった。
「皆の者、わしは駄豚じゃ。そなたらが大切にしてくれたおかげで神の末席に加えて貰える事となった。有難い事なんじゃが最後の試練が在るのじゃ。わしを殺しその肉で皆の腹を脹らませておくれ。この地方の民が誰一人欠ける事なく飢饉を乗り越えた暁にわしは神となりこの地方に飢饉が起きぬ様にできるはずじゃ。この駄豚の願い、どうか聞き入れて貰えぬか?食う時はしっかり火で炙って食ってくれ。」
………………
「俺何でこんな紙芝居作ってるんだろう?」
「1号さん2号さんが豚追い踊りの勢子やるからその説明のための紙芝居のオファーが神社から入ったからだ。」
「ああそういう理由だったのか。」
「ついでに言うと語りは鉄山先生だそうだ。」
「格闘家の?」
「兄弟らしいぞ?郷土史研究家だそうだ。」
「ああ!それで山書に来てたのか。」
「え?あの厳ついおっさんか?」
「結構ニコニコしてたぞ?」
『ファンクラブに紙芝居オファーしたんデスか……』
「ええ、彼らの技術力は目を見張る物が有るわ。」
『それはいいんですが……豚役って誰でショウ?』
「演らせたいのは1人居るんだけどね……」
あざすさんは先月の新刊「なめられちゃったペロキャンちゃん」4巻を虚ろな目で見ていた。
「デュフ、散々アンチに邪魔されたけどオデはこの祭で御神体で復活じゃぁ!」
そして駄豚様役に立候補したのは似非漫画家 隙手間 塗例巣であった。
彼は先日のXOXOとの遭遇以来体調不良として連載は打ち切られ、カラオケ以外では部屋に籠る様になっており、体型も変化していた。
「あの妖怪が覗いていた日から体調を崩していたが……あんなものは見間違いじゃ!今度こそビッグになるんじゃぁ!」
と独り怪気炎を上げていたが、タイミング悪く通りすがりのXOXOが窓から覗いていた……結果、隙手間 塗例巣はしめやかに失禁し失神したのであった。
以前であれば特別戦車と呼ばれるアシスタント達が世話を焼いて居たのだが、彼らを解雇した今、頼れるのは自身のみである。隙手間塗例巣、彼の受難は続く…
「おい聞いたか?駄豚様役は隙手間 塗例巣らしいぞ?」
「え?祭行く気失せた。」
「んじゃ俺たちだけで1号さんと2号さんの踊り見てくるから。」
「来月の祭で何の心配しとるか。隙手間の野郎がどれだけ太ってるかあざ嗤いに行くのもいいだろうに。」
「おお!博士、その発想は無かったわ。」
「それに神楽じゃペンネームはつかえないから隙手間の本名もわかるぞ?」
「それは要らないかな……」
「って感じでファンクラブは動いてます。」
「お疲れ様、まさか隙手間が本当に駄豚役に立候補するとはね……」
「と言うか書店の見張りに俺たちを選抜した理由は何ですか?」
「あら?かわいい女の子は嫌い?」
「どっちかと言うとなのちゃんの方が……」
あざすさんは目を伏せて思い切りドン引きしている。
その様子を見て男は笑いを堪えていた。
「本当はね、あなた達の情報収集能力が惜しかったのよ。戦闘能力に問題は有ってもスパイには関係無いって防衛軍に思い知らせたかったの。」
「成功してますか?」
「防衛軍の情報収集能力が30%落ちてるわ。コイ……シージー達が抜けたおかげでね。」
「でも俺たちの能力も錆び付いてますよ?」
「店に出た当日にA-10ちゃんの缶バッジ持ってきておいて何を……お客様、隙手間先生の作品はこの先未定となっております。」
「隣のエイリアンも酷かったですからね……コニー先生とえびちゃん先生の単行本出そうなら教えてくださいね?」
「バイドくん先生の単行本なら出てますよ?絵に描いたお餅が美味しいって本ですが……」
ここであざすさんは声のトーンを落として……
「お客様と同じケモホモ好きですよ?」
「んじゃそれ下さい。……ストロンガーさん、自分で薦めておいて引かないで。」
「先輩、えびちゃん先生どこですかぁ~?」
「神社で練習してるわよ?……ってこらファンクラブ!」
「今日はまだ隙手間来ないはずだから撮影会じゃぁ~!」
「え……隙手間がどうしました?」
「祭で駄豚役に立候補したらしいのよ。」
「駄豚が駄豚ねぇ……」
「一応先生付けて無かったっけ?」
「冗談社で描くなら援護もしますが球英社や中学館、味田書店のトレパクしまくって去った人間は知りません。」
だいぶん何かが見付かった様である。
一方、神社では……
「これが一の節、「艶部」じゃ。基本になるんで覚えて欲しいのう。二の節「臀部」や三の節「現に恥垢」は派生でたまにやるのじゃが現に恥垢は疑似男性器を褌に仕込んで擦る形になるんじゃ……」
「心配無いなの。こんなこともあろうかと……なの。」
えびちゃんの耳に息を吹き込み男根を勃起させるなのちゃん。
「見事やな!あんた方に勢子を任せて正解じゃ!あとこれは12節を24時間で踊りきるのじゃが疲れない呼吸方が有るんじゃ。それも伝授するからのう。」
「あの……ところで豚役の人は?」
「おお、あいつは立候補した癖に遅れて来おったんで狩子らと特訓中じゃ、あのクソボケが……」
「優しい鉄山先生が怒るとは……豚凄い(馬鹿)なの。」
「先生、ビール瓶で殴るとかどうだい?撮影用の飴細工なら怪我しないし音もしないぜ?」
「割れる音は欲しいんじゃ。」
「わかったの!お~いバッジさん、なんとかなるなの?」
なのちゃんの呼び掛けに反応してぞろぞろと出てくる書店ファンクラブメンバー。
「これだけの人数が気配も出さずに……こやつら忍者か何かかのう?」
あまり奇譚物になりませんでした……
周りの設定ばかり書いてた気がします。
個人的にはえびちゃん漫画シリーズ「機動戦士A-10 サンダーボルト作戦」とか書きたいのですが……すいません、次回も豚追い祭です。
次回、第23話 台戸豚追い祭異聞
お楽しみに




