第18話 白いマットのジャングルに
シャッターとカーテンが閉ざされた店内。
本棚やワゴンが床に自動で収納されて行く……
「ねぇ、これお客に見せたら受けるんじゃない?」
「ブブラ、こんなの見せたらこの町に居られなくなるぜ?ただでさえ俺達は異能集団なんだ。」
「不安と猜疑、欺瞞と弁明。閉塞空間に絡み合う異能の因子。
利己的に、利他的に。そう、それは生存を懸けてせめぎ合う、巧妙に仕掛けられた絶対の危機なの。異ノーマルなの。なのも巨大な不発弾なの。」
「書店ちゃん、なのちゃんが狂った!」
『コニーちゃん、異能って言葉に引き擦られただけデスよ。ってなのちゃんえびちゃん。明日の用意は大丈夫デスか?』
「最近栓抜き売ってなくて神社の露店で買って来たの。」
「何にするんだそんなもん?」
「ブッチャーやタイガージェットシンの時代から悪役レスラーには栓抜きなの!おでんにカラシが付くような物なの。」
『怪我させないでくだサイね?』
「最悪えびちゃんの治癒呪文が有るの。」
「使わせんなよ?」
『リングコスチュームはどうデスか?』
「試着以降なのには触らせてねーよ。こいつに預けると瞬間脱衣機構組み込むから。」
「自分で脱ぐという手もあるなの。」
『そんなに男根見せたいんデスか?』
「怯えるブブラちゃんがかわいいの。」
「書店ちゃん……あいつに発狂呪文かけていいか?」
『発狂してるかしてないかわかるナラ。』
「髪の毛含む皮膚が7色に変化しながら輝くが?」
『……あざすさんからストップかかりそうなんでやめまショウ。あとは……』
ここからはお客を入れての演出になるのだが、ミラーボールとパトランプが回転し……天井からリングが降りてくる。
「2022年。すでに人類は地球防衛組織やまぐち書店を結成していたなの。
やまぐち書店は日本のとある建物内に秘密裏につくられ、 沈着冷静なアンドロイド山口書店のもと、日夜謎の円盤UFOに敢然と挑戦していたなの。」
『無知村さん敵に回す気デスか?』
「ムーンベースは月面基地なの。 ここにはミサイル遊撃機ハイエースが非常事態に備えているの。」
『えびちゃん、あれが発狂してないと言い切れマスか?』
「ごめん、ちょっと自信ない。」
五月祭りの出し物でプロレスをやることになったやまぐち書店、その準備をしていたのである。
「こんばんはー、うわ、凄いね。」
今回の仕掛人、斉藤さんである。
「マットも上等だしロープもきちんと貼ってある、うん、これなら大丈夫。」
「栓抜きに加工は要らないなの?」
「凶器は持ってるアピールだけでいいわよ。本当に使ったら怪我するからあくまでも擦るまでよ。あと打撃は一度ロープに振ってからね。キューティーペアは今特訓やってるわ。」
「怪我してないか?治療するよ?」
「えびちゃんの超能力は見える場所では禁止ですからね?あとこれポスター。」
女の意地の戦い!キューティーペアVS極楽同盟と書いてある。なのちゃんえびちゃんが張形を構えてニヤつき、無知村ヤマナメコンビが敢然と立ち向かっているイラストである。
「あの常連のファンクラブの人にあざすさんがお願いしたのよ、グッズ独占販売権とリングサイド席が報酬らしいわ。ってあざすさんは?」
『防衛軍に許可取りに行ってマスよ。無知村さんの能力がバレ無いようにと。』
「じゃぁみんな、明日は頑張ろうね~!」
当日……観客を入れてリングを出し、無知村ヤマナメ斉藤の女子高生トリオがリング上で歌っていた。
「俺も「涅槃ゲリオン」歌いたい。♪ざ~ん~……」
「止めるなの、客席が阿鼻叫喚の地獄に変わるなの。」
「この野郎……ってサイレンは何なのだえ?」
「この感じなら2ブロックほど先なの。公園の向こう辺りなの。」
「さぁキューティーペアプラスワンのデモンストレーションも終わり、キューティーペアの二人をリングに残して斉藤さんがリングから下ります。そして入場してきたのは……極楽同盟、マクガイヤー兄弟を彷彿とさせる原付バイクでの入場だぁ~!」
『あの二人のお給料下げまショウ。』
「おっと解説の書店ちゃん、静かに怒っています!
本日実況はわたくし、パートのお姉さんあざす令子、解説は店長の山口書店ちゃんでお送り致します。XOXOちゃんとブブラちゃんがバイクを片付けております。レフェリーのコニーちゃんが入場、ボディーチェックを行っております。
おっとコニーちゃん、なのちゃんの下半身チェックを拒絶した!」
『まぁ普段からちょくちょく露出してマスからねぇ。』
「おっとなのちゃんマイクを取り上げて……手品を始めたぁ?」
『マイクパフォーマンスを勘違いしてると思われマス。』
「そしてマイクをえびちゃんに……えびちゃん歌いだしたぁ。これはかなりの音波兵器……なのちゃんがマイクを取り上げてレフェリーに返します。」
「ただいまより時間無制限タッグマッチを行いま~す!赤コーナー、230パウンド~キューティーペ~ア~! 青コーナー、260パウンド1/2~ごくぅらぁ~くう~どう~めぇ~い!」
『行事は式守猪助デ……』
「それ相撲だからね?さあそれではゴングを……」
バァン!荒々しく扉が開き4人組の男が飛び込んで来る。
しまった……ダンコンマンとナインカちゃん位は護衛に残しておくんだった……
男達はリングに上がり、宣言する。
「すまねぇが籠城させてもらう。お前らに拒否権はねぇ!」
リング上にボーっと緑光の人体が現れる
『武器の持ち込みは許しマセン。武装解除!』
四人組の拳銃やナイフ、なのちゃんの栓抜き等が放送席のテーブルに現れる。
『戦士達……聞きなサイ。あなた方のリミッターを外しマス。さぁ存分に戦いなサイ!』
えびちゃんがリングを結界で被う寸前に女子高生が飛び込んで来る。
「リングの女神様、エネルギーいただきます。」
学生服を脱衣機構で脱ぎ捨てると筋骨隆々のマッチョレスラーが現れる。
『そこでは狭すぎるでショウ?リング分割!』
リングが4つに割れそれぞれにチンピラ一人ずつと極楽同盟、キューティーペア、コニー、飛び入りレスラーが別れる。
「謎の美少女レスラー、サー・イトウも降臨いたしました!山書美人6人衆対どこかのチンピラ4人組ファイッ!」
カァ~ン!
あざすさんが叩いた戦いのゴングが響く中、無知村さんは映画「マタンゴ」の怪物そっくりに変身していた。
驚いた事に観客はこれを仕込みだと思い全員が席を離れる事が無かったと言う……
また続いてしまいました……
まぁ書ききれないだろうという負の確信も有ったのですが……綺麗にここでページ尽きるか……
あと、なのちゃんがごちゃごちゃ言ってますがそこまで考えての発言ではございません。いつも通りノリで言ってるだけです。
次回、第19話 今日も嵐が吹き荒れる
お楽しみに……




