第1話 獣人なのちゃん襲来
ここは日本のどこかに在る本屋、やまぐちブックストア
店の中から緑髪にセーラー服の女の子が出て来た。
「おや?あれは何でしょウ?」
青いゴミ袋……いや青い髪と服装の女の子(?)が倒れていた。
「もしもし?こんなとこで寝てると風邪引きますヨ?」
「み……みず……」
「少し待ってクダサイ。」
セーラー服の娘は店の中から小さなスコップを持って出て来た。
「あ……小さな男根がうにょうにょしてるの……んぎゃぁ~?」
「お望みのミミズデス。」
「ベタなネタやるんじゃないなの!」
「ついでにこっちが水デス。」
青い娘(?)はコップをひったくる様に水を飲んだ。
「で?何でこんな街中で行き倒れてたんデスカ?」
「琵琶湖でバス釣りしてて船が転覆したらここに居たなの。」
「琵琶湖デスカ?滋賀県は遥か彼方デスヨ?」
「滋賀?琵琶湖の在るのは近江県なの。」
セーラー服の少女は青い少女(?)をもう一度見る……寝癖だと思ってスルーしていた物が動く、獣耳だ!
「あなたはワタシと同じ転移者だと思いマス。ワタシは山口書店、アンドロイドデス。」
「アンドロイドって……そんなに科学は進んでないなの。」
「お仕置きバスター砲!」
書店ちゃんの左手にサイコガンかロックバスターの様な大砲が現れる
「このような武器転送システムも無いんでショウ?」
「え?左腕が男根になったなの!」
「性器じゃありませン!」
こいつ撃ってやろうかと思う書店ちゃんだった。
「なのは蒼天狼族の間借奈乃なの。男の娘なの。」
「は?男性だったんですカ?」
「せめてニューハーフと言って欲しいなの。」
見た目はあまり胸の大きくない美少女にしか見えないのだが……
「ま……まぁとりあえず中に入ってクダサイ。」
本屋の中は一見普通のブックストアであった。漫画や小説の新刊が目立つ様にディスプレイされ、ポップやポスターで飾られている。奥の専門書コーナーは……外国語……いや、地球の言葉以外の言語で書かれた書籍まである。辛うじて読める物でも新説ワープ理論とか小型対消滅炉を作ろうとか暗黒魔法禁断の書とか……
「明らかに堅気の本屋じゃないなの……」
「そういうのも有りマスヨ?」
極道事始め、マフィア経営法、チョイ悪生活のすすめ……
「それよりなのサン、住む所は決まって無いんデスヨネ?」
「住ませてもらえるなの?」
「書店の経営を手伝って貰えるナラ社員寮が有りマス。ここの上部デス。」
「頑張るなの!」
「好きな本のジャンルは有りマスカ?」
「ボーイズラブとかレディースコミックなんかが好きなの。」
売り場奥のバックヤードには壁一面を使った超大型コンピューターが居座っていた。
書店ちゃんが手元のキーボードで必要な情報を打ち込んで行く……
ガギューン!コンピューターの明滅が止まると書店ちゃんが引き出しを開ける。
緑色のエプロンと社員証、なのちゃんと書かれた名札が入っていた。社員証は写真入りで社員番号は53番、成人誌販売部門になっている。
なのちゃんは手にとって悟った……この社員証は呪われている。
「デバフは無いので安心してクダサイ。絶対に無くさない社員証デス。呪いのアイテム製造技術を使っただけですのデ。」
ここでなのちゃんはさっきのお仕置きなんとか砲がトリックでは無いことを理解した。
仕事は済んだとばかりに巨大コンピューターは床に収納されていった。
「寮はこっちになりマス。」
「エレベーターって贅沢じゃないなの?」
「次元移動エレベーターですノデ階段は使えまセン。」
「泥棒が酷い事になる未来が見えるの。」
「その社員証が無いとエレベーターに乗れまセン、部屋はこっちデス。」
3DKのマンションの部屋と同じだった。風呂トイレ付きだ。
「この部屋を使ってくだサイ、扉は社員証か中からでないと開きまセン。」
「社員証を中に忘れたらどうなるの?」
「社員証をテーブルに置いて来てくだサイ。」
二人で表に出ると扉を閉める書店ちゃん。
「社員証来いと念じてくだサイ。」
「……?社員証が来たなの?」
「その為だけの呪い付与デス。スられた場合も財布ごと帰って来るはずデス。」
「ギャンブルでスられた場合はどうなるなの?」
「そっちは諦めてくだサイ。では次に開店作業ですガ……」
一応なのちゃんはフリーターの経験も有るらしくそつなく動いている。
「あ!書店ちゃん、部屋代とかお給料とか休みとかはどうなってるなの?」
「週休2日8時間拘束で部屋代光熱費社会保険諸々引いて手取り15万円デス。」
思ったより良かった。
「転移者保護の一環なのデス。異世界、異次元の人類と宇宙人に適用されマス。」
「ここは何なの?」
「普通の書店デスヨ?」
「いやどう見ても普通じゃないなの。」
「普通デスヨ?」
「……ハイなの。」
書店ちゃんの謎の迫力に圧されるなのちゃんであった。
「そういえば他の店員さん達に紹介して欲しいなの。」
「居ませんヨ?」
「え?だってあそこに他の店員さんが居るなの。」
「ああ!2シさん来てくだサイ。」
総白髪の店員が近付いて来る。
「触ってみてくだサイ。」
体に触れようとしたなのちゃんの手が空を斬る。
「ホログラムデス、さっきのコンピューターで制御していて物に触れる必要がある時はその部分にバリアを張りマス。今は1ゲ、2シ、3スミ、4ソヤの4機が動いてマスがこれの制御が辛いんデスヨ……」
どう考えても普通の本屋ではない……しかし自分や世界に恐怖をもたらす物でもない。その証拠に一生懸命普通に見えるようにしているではないか。
「じゃぁあと3人必要なの?」
「3人である必要はありまセン。少なけレバホログラムで対応しマスシ、多けレバ賑やかになりマス。ただこの世界の人ハアルバイトかパートになりまスガ。」
「楽しい男根が来るといいなの。」
「いや、性器だけ来られテモ……」
なのちゃんの言葉はすぐ的中する事になるのだが……
「そう言えば書店ちゃんってごはん食べられるなの?」
「エネルギー効率は低いですガエネルギー補給は食事デスヨ。」
「美味しいとか不味いとかも判るなの?」
「はい、判りマスヨ。」
「眠ったりは必要なの?」
「1日6時間睡眠推奨デス、緊急時は24時間動けますガ。」
「実は人間じゃないなの?」
「アンドロイドですヨ?」
この話に関しては一応スレで意見を聞いて執筆しております。
それ故にかなりとしあき達のイメージにちかいとは自負しておりますが、どうしても細かい所は独断で決めないと話が進まなくなり、それ故にイメージから離れてしまうことだけは避ける様にしておりますが、個人的に付けたいエピソード等も有りまして、今更ながら執筆の難しさと直面しております。
次回より土曜午前0時更新とさせていただきます。
次回 えびが来た お楽しみに