第15話 夜の桜となのちゃんと
「ようムッチー、この前の小テストどうだった?」
「英語苦手やねん……」
「ムッチー、英語の話のときだけ流暢な関西弁になるのはなんで?」
「言語トランスミッターがバグるんデス。日本語ならほぼ直接通訳できるんデスが…」
「つまり現国はズルか?」
現国はヤマナメが62点、無知村が58点であった
「点数見る限り不正はしてないんだよな……
と言う訳でナインカさんに教えてもらおうかと。」
「あたし父親がイギリス人なだけで日本生まれの日本育ちですよ?」
「ぱーどぅん?」
「父親が本場のエイキラバイク見たいって来日してこっちが気に入って移住したんです。」
「……ああアキラね。」
「では英語ハ……」
「あんたら人の心無いんか?」
「あ、涙浮いてマス。」
「一昨年お爺ちゃんに呼ばれてブリテン行ったら全く言葉通じなかったわよ!仕事で来てたクールなお姉さんに通訳してもらったわ。」
「ヤマナメちゃ~ん、今日バイトどうする~?」
「その人!」
「え?……ああ!ロンドン空港で途方に暮れてた女子大生さん?
あなたがコニーちゃんの担当だったのね。」
「あとXOXOちゃんが可愛くて……」
「解るわ~あの子は癒しよね~。」
「ってことはあざすさんに教えてもらえばいいのか。」
「何?忍法は伊賀流しか知らないわよ?」
「伊賀流忍法知ってるんすか?……じゃなくて英語です。ムッチーが苦手なんですよ。」
「え?言語変換装置とか無いの?」
「なんかバグりまんねん。」
「だったらコニーちゃんに相談すればいいんじゃない?漫画描き終わってからね。」
「コニー先生の原稿はもうもらってますよ?あとはえびちゃん先生の“深淵からの襲撃”なんですけど……」
「んじゃコニーちゃんに相談してきますね。ほらムッチー行こう。」
ドタバタと出ていく二人を見送って……
「で?なにか問題でも?」
「写実的に描き過ぎです。これじゃスパイの標的にされますよ。」
「MI6に情報流さなくていいの?」
「英国情報部よりあざす先輩の方が怖いので。っていい子ですねあの宇宙人の娘も。」
「守りたくなるでしょ?」
「何か有れば力はお貸ししますから無理しないでくださいね?お爺ちゃんも何か恩返ししたいって言ってましたし。」
「いや……天下の00ナンバーに助けてもらうのは……」
「ってわけなんだけど……」
「無知村さん、銀河標準語以外話せる?」
「無理デス……」
「それだよ!例えば銀河標準語とシリウス広域語が話せればそれぞれに対応して翻訳されるんだけどね。」
「何か関西弁喋るのは?」
「それは本当に機械のバグ。ヤマナメちゃんも英語混じりの日本語使うでしょ?機械は関西弁をそう判断したんだよ。実際に何かの言語習得するか諦めて英語頑張るかしかないよ?」
「あ~……諦めて一緒に英語勉強しよう。アルファベットの歌からだな、♪ABCDEFG~。」
「「「おっしょ!おっしょ!おっしょ!おっしょ!」」」
「変わった掛け声デスね?」
「いやこれたぶんなのちゃんだ……」
表のお客様用駐車場に法被ふんどし姿のなのちゃんとふんどし姿の男衆が集まっている。
「男根神楽壱の型~行くの~!」
ふんどし姿の男衆が組体操をしている姿はあまり直視したくない物がある……ヤマナメと無知村は見なかった事にした。
「書店ちゃん!なのちゃんが……」
『あれ神社の神主さんに頼まれたんデスよ。そしたらなのちゃんが本気でハマりマシタ。』
「後付け良心回路は?」
『原稿描き直してマス。そう言えば無知村さん、英語が苦手なんデスか?』
「ハイ……」
『素晴らしい、苦手なものに挑むあなたは美しいデス。その努力はいつか貴女の力になりマス。疲れたら休んでもイイ、歩いてもイイ。進み続けた先にゴールが有るんデス。』
「Excuse me?」
『Yes mistor. you are welcome.may I help you?』
「I want motorcycle magazine.」
『OK! follow me please.』
急に現れた外国人の客を連れて書店ちゃんは行ってしまった。
「……初めから書店ちゃんに聞けば良かったな。」
「ですネ……でも知らない言語喋れるのはカッコいいデス。ところで公園がピンクに染まってたんデスが……」
「ああ、ムッチー桜は知らないのか。今夜ちょっと行ってみようぜ。」
「桜とな?」
「えびちゃん……どうしたんだボロボロになって……」
「漫画……書き直してたら新しいアイディアが湧いて……ついでにコンテ切っちまってた。」
「『宇宙冒険スペースなのブラ』?主人公はなのちゃんなんだ?」
「敵はクリスタウロオ・ボーエ……これ誰なんデスか?」
「ナインカさんが資料持ってきてくれる事になった。」
「じゃぁこれ新人賞に回しておきますね~。XOXOちゃんまたね~!」
「それじゃレジ入ります。あ、あざすさん、夜桜行かないっすか?」
「じゃぁエリちゃんはそれまで絵本でも見ましょうか?Winnie-the-PoohやPeter Rabbitなんかだと英語の勉強になるわよ?」
「そんな夢の様な本が有るんデスか?」
「Peter Rabbitは新王冠教科書の中学2年の教材にもなってるのよ。Winnie-the-Poohなんかだと元々英語教材用に作った本も有るわ。大変だと思うけど頑張ってね。」
閉店時間になり夜桜を見に行くが……なのちゃんだけは用事が有るようだ。
「吸血鬼が夜祭りって……あ!おっちゃん飴ちょうだい?」
「ブブラッドもそうしてりゃ貴族に見えないな。」
「エルフがフランクフルト食うのとどっちが珍しいんだろう?」
「やっぱり焼きそばよね~。」
『クレープもいいデスよ?あ、無知村さん、そろそろ時間デス。』
「何のデスか?」
広場には6メートルの梯子7本と7メートルの梯子が1つ。
「野郎共!男根神楽 行くの!」
計8本の梯子が立てられ6メートルの方では膝八艘、腹亀、背亀、肝潰し、狐遠見、唐笠、駒散らしを一人1つずつ披露し、1つ高い梯子のなのちゃんはそれぞれのポーズを披露したあと、ふんどしに差していた扇子を開く!そこには祝と書いてあり、全ての扇子が開くと「よう」「こそ」「無」「知」「村」「一」「家」となった。
「なのちゃん凄い事してたんだな……」
「まさか命助けてもらった上にこんなことまで……」
「パパ、ママもどうして?」
「今日ここに来てくださいって書店さんに言われたのよ。」
出番を終えたなのちゃんが座っていると……
「おう、お疲れ。」
「思ったより疲れたの、次は断るなの。」
「まぁそう言うなよ。無知村さん一家は感動してたぜ。あと夏祭りも有るんだぜ?」
「ならえびちゃんも一緒に出るの!二人でふんどし姿になるの!」
「俺は胸が有るから出来ねぇつっただろうが!」
凛々しく見えたのは錯覚だったと思うえびちゃんだった。
ナインカちゃんに要らん個性付けしてる筆者でございます
今回もなのちゃんの意外な一面をご覧いただきました
実際にはただ裸(と言うかふんどし一丁)でうろつきたかっただけかも知れませんが……
さて次回もえびちゃん漫画から
第16話 銀河冒険スペースなのブラ
寺沢武一先生に土下座する用意は整ってます




