第13話 深淵からの襲撃
彼の名はダンコンマン、その肉体には無数の弾痕が刻まれていると言う世界的なトップエージェントである。
久し振りのオフで彼は馴染みの書店を訪れていた。
「いらっしゃいませ。あ!お客様、お久し振りです。」
この店の美少女店員が声をかける、眼鏡がキュートなナイスボディの少女だ。
「おはようえびちゃん、世界最新兵器一覧は入ってるかな?」
「はい、こちらにどうぞ。」
「お客様~、ミスターレディーユニバースも入荷してますなの~!」
「お前は変な本押し付けるんじゃない!」
「あ!それも1冊貰えるかな。」
「え?そっちの趣味が?」
「違う違う、ここに写ってるハゲなんだけど武器商人のミスター・キトーと呼ばれる奴なんだよ。ぶっちゃけ敵に回る方が多いんだけど何してるんだろうと……」
「ミスター・カイトーならこの大会のスポンサーなの。」
「あいつがニューハーフの大会スポンサーねぇ……」
ビシッ!辺りが暗くなりガラスにヒビが入った様な音が響く
「最近日が落ちるのが早くなったの。」
「まだ昼にもなってねーよ!」
“当店ハ時空震ニ巻キ込マレマシタ。事態ガ落チ着クマデ店内カラオ出ニナリマセンヨウオ願イイタシマス。”
「今回はカイトーことミスター・キトーは関係ないかな。」
その時、外を烏帽子を被った白塗りの公家……の頭が付いた烏賊が歩いていた……
「えびちゃん隠れるの!烏賊の好物は海老なの!」
「誰が海老だこの野郎!」
『何の騒ぎデスか?』
「もう少し寝かせてよ~」
店長と夜間専属従業員が起きてきた。
「あざすさんとヤマナメちゃんは来て無いのか。」
「アザス?アザスってあの笑顔の怖い防衛軍のおばさn……」
「誰がおばさんだダンコンマン!」
今日のあざすさんは黒い革ツナギ……いや、黒革のボディースーツを着ている。
「バイク届いたんで取りに行ってたら何か暗くなったんで慌てて入って来たら珍しい顔があったわ……」
「あざすさん、このお客さんちょくちょく来てくれてるんだよ。」
「今日もミスターレディーユニバースお買い上げなの。」
「ダンコンマン……あんた……」
「違う違う!ミスター・キトーが写ってたからだよ。」
「ああ、コンテストのスポンサーの一人よ?言わなかったっけ?」
「あいつホモだったのか……」
「キトーの男根は中東で吹き飛んでるわよ?彼は武器を憎み美しい人は男女問わず愛するだけよ?プラトニックに。」
「で、あざすさんはボンデージがお気にいひゃいいひゃい!」
「このトムキャットは……で、どうする?」
『どうするとはどのような意味デスか?』
「あの程度なら相手の強さが人間程度だとすれば蹴散らせるんだが…」
「もう少し様子を見ましょう。こちらにはまだ秘密兵器も有るしね。」
「とりあえずお茶淹れて来たなの。」
独り完全に平常運転のなのちゃんだった。
“警告!怪物ガ侵入シヨウトシテイマス!”
怪物は90センチ程の中身入りの青い袋に顔と両手が付いている……扉を抉じ開けようとしている様だ。
「勝手に入るんじゃないなの!」
なのちゃんが袋を蹴り飛ばす。袋は3メートル程飛んで動かなくなった。
「やまぐち書店の青色担当はなのなの、ゴミ袋には渡さないの。」
「どこから出入りしたお前は?」
「普通に非常口からなの。」
「なるほど……化け物が集まってるあそこか?」
「いつの間にあんな事になったなの?」
「お前が出入りしたからだろうが!」
「えびちゃん止めなさい、猫とこの子の行動は予測不可能よ。」
『あの辺に電撃撃ってみマスか?軽麻痺にもなりまセンが……』
“放電開始5……4……”
「ダーリン電撃だっちゃなの!」
「著作権協会に怒られろお前は。」
「えびちゃん、書店ちゃんに怒ってもらった方が効果的よ。」
「待て!効いてるぞ!」
「お客様、急にシリアスをぶち込まないで欲しいなの。」
「お前がまずギャグに染めようとするんじゃねぇ!」
「えびちゃんの意見は承りましたなの。今夜ベッドでしっかり意見交換するなの。」
「もうやだこいつ……」
「冗談はともかく、これ元に戻れるなの?」
『現在位置は……サルガッソー一丁目復活の泉上がるになってマス。』
「配達が大変になったの、配達用スクーターが欲しいなの。」
「次元超越できるスクーターって……」
「カローラで行きなさい!」
「待て混沌の女王アザス!スクーターやカローラが次元超越できるって?」
「そのうちあなたのスタリオンにも付けてあげようか?あと混沌の女王って言うな!遊戯王カードかあたしは!」
「んじゃアザトース。」
「それじゃクトゥルーの邪神でしょうが!」
「確か相当強い方だったと思うなの。」
「すべての無限の中核で冒瀆の言辞を吐きちらして沸きかえる、最下の混沌の最後の無定形の暗影にほかならぬ―すなわち時を超越した想像もおよばぬ無明の房室で、下劣な太鼓のくぐもった狂おしき連打と、呪われたフルートのかぼそき単調な音色の只中、餓えて齧りつづけるは、あえてその名を口にした者とておらぬ、果しなき魔王アザトース。魔皇、万物の王、白痴の魔王とも呼ばれ、神々の始祖とされる。旧支配者の首領であり旧神に反旗を翻したんだよな。」
「あざすさんも若い時はやんちゃだったなの。」
「あたしじゃねーわ!ってかまだ若いわ!」
『あざすさん、なのちゃんの挑発に乗ってマスよ。と言うかえびちゃん詳しいデスね?』
「漫画の題材にしようと思って調べたんだよ。」
「在庫にネクロノミコンと無名祭祀書とエイボンの書なら有ったと思うの。ルルイエ異本と屍食教典儀、あとセラエノ断章は注文中なの。」
「見たら発狂するような本を注文するんじゃない!」
「カルト教団の皆様が欲しがってるの。」
「売るなよ……」
「今回はルルイエ異本320ページの描写にそっくりなの。」
「こいつ熟読してる……」
「しかしその通りならあの化け物共は……」
「ベースは人間だからそんなに強くないなの。」
「じゃぁそろそろ攻撃に転じるか!」
「ダンコンマン。ちょっと待って!なのちゃん、ダンコンマンの手を握りなさい。」
「こうでいいなの?」
「え?あ……うおおおおぉぉ!」
日常回にしたかったのに何故だ……はい、嘘です。
この話はえびちゃんの描いた漫画という体でございます。普段はダンコンマンは出て来ません。
次回は……あの人を出す為に今回の話を挟みました。ナインカ・ロスハート登場です。
次回、第14話 SOSやまぐち書店 お楽しみに
果たして今回はただの悪夢なのか……