第10話 マタンゴ娘がやって来た
宇宙人の言語解読への取っ掛かりを得た地球人類の解読へのスピードは早かった……って、そんな筈はない。
言わばこの公式にはファーストコンタクトの話し合いの通訳が5年落ちのノートパソコン(2万円)であった事の方が滑稽だったであろう。
「こんにちわとはこちらの言葉で挨拶です。宝栄丸はそちらの宇宙船で合っていますか?」
「はい。こちらの船名で合っています、返信していただきありがとうございます。」
「……宇宙人とのファーストコンタクトなのに緊張感無いわね……」
あざすさんはぼーっとそんな事を考えていた。
「あなた方の目的はなんですか?」
「家族3名を亡命させていただきたいのです。」
「3名だけなら受け入れる事は可能ですがあなた方の身分は防衛軍預りにさせていただきます。」
「それはそちらにお任せしますが我々の子供はまだ16歳で……」
「なら同い年の地球人の学校に入っていただきます。ただ我々はコスモクラフトを所持しておりません。地点説明をしますので第3惑星、地球まで来ていただけますか?あなた方の居る場所が第4惑星の軌道上です。」
「2連星の青い大きな方でよろしいですか?」
「あっさりと終わりましたね。」
「うむ、君のおかげだ字守予備役中尉」
「いやいや……は?中尉?」
「更に彼の宇宙人の子供の面倒を見てもらう事になるし、じきにその功績に対し大尉の肩書きも用意出来るだろう。すまんが宜しく頼む。」
あざすさんは棄てられた仔犬の様な眼になっていたと言う。
「……と言う訳なのよ。」
「その子は男根なの?おっぱいなの?」
「普通に男か女かって聞けないのか?」
「それは言って無かったわね。」
「会いに行こー!」
「ちょっとコニーちゃん、XOXOちゃんに乗ったとしてもそんなに……」
「カローラなら可能デスよ?」
「あ!宇宙ならあたしも行きたい。」
警備員の制服を着たブブラッドが会話に入って来た。
日光に弱いらしいので夜間業務担当になっている。
「あざすさん、ハイエースは運転できマスか?」
「できるけど?」
「ではハイエースを出しマショウ。カローラと基本的に同じデス。」
いつの間にか裏に置いてあったハイエースに全員乗り込む。今回も運転は書店ちゃんが担当した。
「陸上はAT車と同じデス。空中はステルスを使ってくだサイ、このスイッチで光学並びに電波ステルスが入りマス。上昇は2Gに固定しマスね。」
「ああっ!書店ちゃん、宇宙服着てない!」
「ヤマナメちゃん、力場式宇宙服なのでそのまま行けマス。やまぐち書店のエプロンや制服はその機能がありマスしヤマナメちゃんのジャンバーにもその機能は付いてマスよ。」
「瞬脱服は着られないなの?」
「装飾品が有ればそちら二……」
「挿飾品なら天然真珠が在るなの!金属アレルギーのブブちゃんにも安心なの。」
「言葉使いが不穏だが未使用だろうな?」
「勘のいいえびちゃんは嫌いだよ、なの。」
「あたし何渡される所だったの?」
「広域レーダー照射。宝栄丸発見。対抗機動を取りマス。」
「こちら地球のコスモクラフト、宝栄丸応答願います。」
“宝栄丸でス。地球には宇宙船はないと聞きましたガ……”
「防衛軍 字守令子と申します。友人の宇宙船を借りてエスコートに参りました。こちら非公式ですので話さないで頂けると助かります。とりあえず衛星(月)に降りていただけませんか?その大型母船では地球人が驚きますので。」
さすがに半径2キロメートルの円盤ではアメリカのエリア51に持っていくしかない。
月に降り立ったやまぐち書店のメンバー……黒いボディースーツのあざすさん、Gジャン短パンのなのちゃん、赤いパーカーのえびちゃん、ピンクのパーカーのコニー、スカジャンにチェックのスカートのヤマナメ、紫の警備員服のブブラッド……
「ブブラちゃん、日光は大丈夫デスか?」
「一応日光遮断具のUV離を持ってきたから。」
「こーもり傘なの。お父さんは網走とかなの?」
「残念、ドランコよ。」
蘭越町だった。
「羽になったりする蝙蝠は連れて来なかったのか?」
「くし郞は宇宙じゃ飛べないからね。それよりあざすさん峰不二子みたいな格好ね……」
「お肉がちょっと余ってるの。油断しきった峰不二子なの。」
とりあえずなのちゃんのほっぺたをつねって黙らせるあざすさん。
「あんたはえびちゃんの男根で遊んでなさい。」
「こっちに振るなぁ~!」
「んじゃえびちゃんの目の前で男根振るなの。」
「あの……参加していいですカ?」
「よくぞ来られたなの。お近づきの印に男根神楽を……」
お仕置きバスター炸裂!仕事猫状態で焦げるなのちゃん。
「あの……男根神楽と言うのハ何デスか?」
「このバカの言葉は気にしないで下さい。私が防衛軍の字守令子です。」
「えっと……火星人さんですか?」
ブブラが間違うのも無理はない、そこには単眼の60年代の火星人の様なタコ型宇宙人が居た。
「これはマイコニッダー星人の防衛形態よ。たぶん本当はあたしたちに近いわ。それに敵対意志もない。有ったらマタンゴ形態で攻撃してくるもの。」
「コニー、マタンゴ形態ってキノコだぜ?」
「そうよ?マイコニッダーはキノコが霊長化した珍しい星なの。」
「コニーちゃんがまるで宇宙人みたいなの。」
「コニーは元々宇宙人だろうがこのボケ!」
「キノコって言われてもねぇ…髪の毛がマジョーラみたいに光で紫や緑に変わる以外はかわいいお嬢さんに見えるけど?」
「あざすさんの眼でそう見えるならそうなんだろう。俺の鑑定眼でもそう見えるし。」
「股間にキノコは無さそうなの……」
「でもマイコニッダー星はどうしたの?」
「天変地異で居住不能デス。父は各惑星への移住計画を進めてたのデスが自分の家族を員数に入れ忘れてマシて……今は臥せってマス。」
「ふおおおおおっ!松茸のマッタケなのおおお!」
「お前が焼き松茸にされちまえ。」
「えびちゃん、茸が元気になる魔法って有るかしら?」
「ん~、とりあえず治癒で様子見るかなぁ……」
円盤の中で寝ていた彼女の父親は触手の先が何本か黒く変色して腐っていた……
ブブラ回の蛇足がいまだにページ数を圧縮するとは思わなかった筆者でございます
実はマイコニッダーの父ちゃんがかかっている病気は地球でもあります
主に栽培室の湿度超過や菌かき機の汚染で起こりますので茸栽培されている方で気になりましたらその辺りを調べていただきます様お願いいたします
さて次回はいよいよマイコニッダー星人に名前が付きます。できるだけ登場人物紹介は見ないで下さい。
次回、第11話 こんにちはエイリアン お楽しみに




