第99話 タコちゃん
その夜、文字は夢の中を彷徨っていた。
ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐん いあ いあ
ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐん いあ いあ……
不気味な呪文が聞こえる闇の中をただ歩いて行く……
{止まれ弱き者よ。}
無視して歩いて行く……
{止まれつっとるやろが!}
「うるせぇよタコ!
器用に他人の夢に入って来やがって!」
{夢と解るんか?
おまはんの現実は何処ぞの蝶が見とる夢かも知れんのやで?}
「クトゥルーが胡蝶の夢語るな!
アザトース様が見てる夢と言うなら信じたかも知れんがな。」
{なんでワイやと判ったんや?}
「まず俺を守ってくれてるショゴス達が居ないしお前の兄弟に会ったからな、え~っと……九谷焼さん?」
{クタニドじゃ……え?あのがしんたれ来とるんか?}
「餓死んたれと言うにはルルイエで死んでるあんたの方が似合うと思うが?」
{ちゃうねん、あの根性なし旧神の方に行ってしもうたでな。}
「あんた偉大なる大神官だろうが?」
{ワイら神性じゃ言うてもアザトース様やウボ=サスラ様にお目通りは叶わんからな。
ナイアーラ未満じゃ。}
「俺結構ウボ=サスラ様にひょこひょこ会いに行っとるよ?」
{セラエノから助けて来てくれたみたいやの。
おおきにな。
んでおまはん地球で覇を唱えるつもりか?}
「何でそんな面倒くさい事せにゃならんのよ?
俺はショゴス達と楽しく暮らせればそれでいい。」
{聞いとったんとちゃうのぉ……
ナイアーラ並に悪知恵の働く世の中に混沌と殺戮をもたらす地球人やって聞いとったが。}
「誰だんな事言った奴は?」
{ダゴンがインスマスの噂として聞いてきたがな。}
「面識は無いけど?」
{おもろい帆船で海上攻撃したあとその帆船から降りて来たっちゅうやないか。}
「攻撃受けたんで石棺1号で衛星軌道まで上がって拿捕してきたの!
ヴォルヴァドスさんに呆れられたぞ?」
{あんさんホンマに人間か?
精神的にタフ過ぎやぞ。}
「イスの偉大なる種族に言わせると精神的異能力者らしいです。」
{あ~、納得したわ。
しかしイスにも認められとるって……
ついでに大神官代わってくれん?}
「それはあんたの役目でしょうが。」
{ほんならせめてワイの分身連れてってくれん?
なんか有ったらあんさん守れるから。}
それは掌に乗るようなデフォルメ化された緑の蛸であった。
「このタコちゃんは何食わせればいい?」
{年に数回水やって欲しい。
後はまぁ食い残しでもやってくれたら充分やで。}
「と托されたのがこのタコです。」
「モジ、何でも貰って来るんじゃありません!」
「ご主人、名前何にするの?」
「クトゥルーは日本の古い文献で九頭竜と字を当ててるんだが九頭にすると聞き違えたテケリリが反応するから……
リトルでいいかな?」
「クタニドはどうしたの?」
「今朝起きたら居なかった。
忙しいんじゃないかな?
んじゃ間蔵島に帰ろうか。」
などと呑気に言っていると……
「もしもし!
大変です友よ!
ルルイエのクトゥルーの神殿が……」
「先生、落ち着いて。
今からそちらに帰ります。」
で、間蔵島に着くと死せる都の一部が間蔵島に隣接していたのである。
ご丁寧に神殿は丸々海上に露出している。
「なんだこれは?」
「昨夜奇妙な地殻変動が有り調べに来たらこの様な……」
「あ!九谷さん。
やっぱりこれルルイエなんですか?」
「その一部です。
……九谷ってのは?」
「クタニドさんそう名乗った方が動きやすいでしょう。」
「いや、ありがたいんですがこの辺に住まなきゃならないんで……」
「ちょっと電話しますね?
かわいいかわいいあざすさんイケメンがお待ちです。
至急漁協前までお越しください。」
「なんだその迷子案内は!」
「早いな……まさか一分切るとは。」
「地殻変動で島浮いたから緊急調査で来てたの!」
「渡らない方が良い……あれはルルイエ、クトゥルーの神殿です。」
「それが入れないんですよ……
あなたは?」
「ヴォルヴァドスさんが派遣してくれたクタニドさんです。
漁協でクトゥルー見張ってもらっていいよね?」
「防衛軍少佐の字守令子です。
では防衛軍からIDを発行しますね。」
「九谷土羅右衛門さんで。」
「あんたまた勝手に適当な名前を……」
「おお!どらえもん!
地球の子供のアイドルですね!」
「こんな見た目ですが良いんですか?」
あざすさんは地面にドラえもんの絵を描いた。
「その名前でお願いします!」
「後、漁協にはショゴス達がうようよ居ますよ?」
「マスターの文字さんも居るんで大丈夫ですよ。」
「あざす少佐……入りたい?」
「そりゃ調査しないと。」
「寝てる枕元に大勢でわいわいやったら誰でも怒るぞ?
ましてや神性、寝惚けて精神攻撃の一発くらい打つかも知れない。
で、俺とテケリリと廃油におんじと廃材先生、後クタニドさんと少佐位なら許可もらえると思うが?」
{え~、クタニド来るん?}
「きちんとヴォルヴァドスさんに報告してもらわないといかんでしょ?
あんたまだ傷が癒えて無いんだから。
動けるなら昨夜の時点で直接来てたでしょ?」
{お見通しやったんか……}
「ほれリトル、案内たのむ。」
短い足を1本敬礼の様に目の横に当てると……
緑色の蛸の赤ちゃんは文字の肩に登って例の文言を唱えだした。
ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐん いあ いあ くとぅるふ
「あれぼくらが言ってもドア開けてくれるんだろうか?」
「どうだろう?
死んでるクトゥルーはルルイエの神殿で夢見ながら待ってる、クトゥルー万歳!
って意味だからな。
日本語にするとクトゥルーちゃん遊ぼうになる。」
「バリバリの意訳するんじゃないわよ!」
すると神殿の扉が地面に収納された……
今回のビジュアルイメージは
海野なまこ様, 朱鷺田祐介様(監修)のクトゥルフ様がめっちゃ雑に教えてくれるクトゥルフ神話用語辞典から、
また行動パターンは
くぼたふみお様のOLとアザトースを参考にしています。
勝手にすいません。
さて次回は クトゥルーのお部屋探訪
第100話 突撃!隣の邪神殿 お楽しみに。
あ……なのちゃん欠乏症が……
それとインスマスどうしよう?