第97話 邪神様はご機嫌ナナメ
「ところで先生、おんじをオンジアームって呼んでましたが?」
「ご主人、おんじは伝説の戦闘員でも有るんだよ。
変化しながら敵の残した兵器を奪い自在に使う。
ターミネーターかランボーかって感じだったんだよ。
で、誰が呼んだか武器に乗る者。」
「バカモノ……いや今は廃油か、わしはそんなに優れた者じゃないぞ。」
「私みたいに特徴を言えば良いんでは無いかな?」
「若様、それでは時間がかかります。」
「まぁまぁ二人ともその辺で。
廃油、転送装置の用意よろしく。」
「石棺1号からがいい?漁協からがいい?」
「今回石棺1号からにしようか。
あざす少佐にショゴス専用艦見せたいし。」
「転送速度が20%高いしね。」
「そうなのか?」
「遅いのだとセラエノまで3日かかるから。」
「廃油……解らないと思ってムチャクチャ言ってないか?」
「ね?廃油の嘘に気付いたでしょ?」
「友よ、今のは何故解ったのですかな?」
「なんとなく廃油が揶揄ってる感じがしたんですよ。
転送スピードなんて言葉はこの1年近く聞かなかったし。」
「廃油は策に溺れたんじゃのう。」
「こっちの専門知識なら行けると思ったのに~!」
「はっはっは、精進しなさい。
ところで先生、これから『廃材』と呼ばせていただきます。
俺の事は『文字』と呼んで下さい。」
「わかりました。
文字、よろしくお願いします。」
「おんじも人間態で御山修二とか名乗ってくれたら御二で行けるからね?
それじゃ南極行こうか。」
「まずはウボ=サスラ様に挨拶だね。」
等と思っていた時が俺にも有りました……
“妖輔くんなんでイスなんかと一緒に居るのよ?
古の者に知恵付けてあたしからショゴス切り出したのよ?”
「お義母さん落ち着いて下さい。
彼はショゴスの解放をしようとしてイスから追放されたのです。」
“妖輔くん、目を閉じなさい。
ヨグソトース!
ふんふん、なるほど、妖輔くんを……で……そうなのね、わかりました。
妖輔くん、目を開けていいわよ。
イスのハイ・ザーイ、イスでもあなたのみ信じる事にします。
おんじと妖輔くんが信用しているのであればわたくしも信頼を持ってあなたに接しましょう。”
「ありがとうございます。
私は宇宙船を作るしか能は有りませんがきっとショゴスが操縦しやすい宇宙船を友と作ります。」
“そう言えば妖輔くん、偉いさんと喧嘩しちゃダメよ?
ショゴスの能力高く買ってくれるのは嬉しいけど。”
「普通に地球人より宇宙船操るの上手いし……」
「と……文字、それは地球人特有ではないよ?イスの連中もエゴが強いの居るし。」
「そんなもん屁の突っ張りにもならないと言ってるんですけどどうも地球人って頭固くて。」
“ねぇ上官、あの子あちこちから睨まれてない?”
「あんなですけど仲間には結構気配りするんですよ。
ただ上層部は煙たいでしょうね。」
「そりゃそうでしょう。
俺もこんな部下欲しく無いし。」
“「おい!」”
「放っといたら何するか解らん部下なんか要りませんやね。
これが仲間なら結構楽しいんですけどね。」
“自覚は有ると。”
「自覚有るならちょっとは言うこと聞きなさい!」
「上官、無理です。
彼は精神的異能力者です。」
“ほう……イスがそこまで言うか。”
「私等彼に比べれば子供みたいな物ですよ。
彼は言ってみれば精神的超天才、言葉を使えば相手の思考を誘導し同化すれば彼の精神に染まってしまう。
彼の精神に触れた事で私もショゴスを今まで以上に愛する様になりました。」
「おんじ、なのちゃんに変化してもらう?」
「そういう事ではないんですが……」
「初心者はえびちゃんの凶器には耐えられないと廃油の報告が……」
「文字くん、ステイ!」
「わん!」
「私もエゴの塊のイスでした。
ショゴスを奴隷とし他の生命を顧みない自尊心の怪物……でも彼を誘拐し精神に触れた時、私の中に生命を慈しむ感情が生まれたのです。」
「先生……いや廃材、いくら水を湛えた田圃でも種が無ければ芽は出ない。
あなたの優しさは元々あなたが持っていた物ですよ。」
「でもイスって精神同化した生命体の精神破壊して潜り込むんじゃなかったっけ?」
「そうだよグ……テケリリ、ただ彼の精神は傷一つ付かなかった。
他の精神がガラス玉なら彼の精神はダイヤモンドの様に強靭なんだよ。
だからこそ精神体を分けて夢で呼びかけるしか無かったし彼がそれに気付くのも遅かったのだよ。」
「つまりご主人は鈍感なアホ……」
「つまり廃油はアホに付いてきた間抜け……」
“ややこしい喧嘩するな!”
「それですウボ=サスラ様。
どこまでも冷静沈着なあなたが彼と行動を共にすることで感情の波を経験するに至った。
それこそ精神的異能力者の力です。」
「そう言えばヴォルヴァドスが汗かいてたよね。
ウボ=サスラ様救出作戦の時に。」
「そんなもん有ったっけ?」
「ほら、アホウが次元震動弾破裂させた時に。」
「え?ヴォルヴァドスって結構愉快な性格してただろ?
この前も『また君か……』とか言って呆れてたし。」
“あのヴォルヴァドスが呆れた?”
「それについてはぼくとテケリリが証言するよ?」
「なかなか気のいい靄ですよあの人。」
「ご主人に会う前はもっと恐いイメージだったんだけどね。」
「旧神にも邪神にも本来の心の在り方を取り戻させる異能力。
もしかしたらアザトース様の知性すら復活させるかも……」
「廃材さん、それもう戻ってるよ?
ねぇお母さん?」
“そうね、アーちゃんの心は復活してるわよ。
どこからか慈悲の心も拾って来……まさか?”
「廃油がカードに祈ったらアザトース様降臨したのよ。」
「ああアザトース様が原増に降臨した時ね。」
「その時言葉を交わしたのならたぶん……
元々完全に白痴には出来ずに地球人類程度の知能は残っていたと言う説も有りますが……」
「なぁ廃油、なんか俺の評価上がってる様に見えるんだが?」
「あのねご主人……今まで何聞いてたのさ?」
「強いて言えば誰か悪口言うかなと?」
「ねぇ先生、本当に異能力者って文字くんだった?」
「私もちょっと自信が無くなって来ました……」
思った程ウボ=サスラは怒ってくれませんでした。
と言うか書いてたら文字がだんだん異能力者に……
独活市で苦いコーヒーでも飲ませて見ようかなとか……きっと怒られるのでやりませんが。
さて次回は 死せるクトゥルーは大阪弁?
第98話 ルルイエ浮上? お楽しみに