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第五章 涙の後に

「ねー、お母さん、どうしたの?」


小さな娘ランの問いかけに、ルルはハっとした。ずいぶん長い時間、涙が止まらなかった。


タナルの元に嫁いだ後も、ルルはもちろんコダの弟子だった。結婚式にも出産の時にも、コダは駆けつけてくれた。距離はあるが通信が出来るし、コダ程の魔法使いになると、単身の長距離移動は苦ではない。


だから、今日の突然の訪問も、それほど驚かなかった。


しかし、師匠の話しの内容には、非常に狼狽した。キリルを、クーデター阻止の重要な任務につかせるとは。


夫に事情を話すことは、危険な目に合わすことにつながるかも知れない。表向きの用件だけ、伝えるのが賢明と言われた。


(キリルにもしものことがあったら………。)


夫と娘を置いては、死んで詫びることも出来ない。ルルは考えるだけで、涙がこぼれた。


(セナ様も、苦しいだろう。)


しかし自分の立場は、もっと複雑だ。キリルを愛している、しかし、血はつながってないのだ。


すぐには、話す決心がつかなかった。それで、黙ったまま数日が過ぎる。明るいルルが沈んでいるのは、何か悩んでいると、家族にはすぐバレてしまう。


「母さん、話してくれよ。何を、そんなに悩んでいるか。」


タナルに聞かれても誤魔化したが、当のキリルに言われると顔が引きつる。観念して、グロサムが父から聞いた、表向きの用件を伝えてみる。


「………はっ!?母さん、そんなことで、悩んでたの?行くよ、いつでも!スニヤ様の使いなんて、光栄だよ。」


「でも………、でも、何か危険なことがあるかも………、まだ14才で、旅なんて早すぎない?」


「早すぎない。大丈夫だよ、ちゃんとやれるから。母さんはユナ・リアに贈る、最高の薬を準備してよ。」


タナルも、喜んで賛成してくれた。ランは、何かわかんないけど、キャーキャー言って興奮した。


重要なことを隠している、苦しさは続くが、ルルは腹をくくった。スニヤ様は先のことを予感される。あの方が選ばれると言うことは、意味が深いのだ。私は私の、最善を尽くそう。


その後、大人たちは話し合いを繰り返し、作戦を練り続けた。


段取りはこうだ。


ルラルド村は、王都からガリルド方面へ向かう道をまず行く。途中、シドという町でキリルと合流、キリルは先に、コダが迎えに行くこととする。


シドからルラルド村まで5日程の道のりだ。


ルラルド村に入ると、真っ先にヤーナを訪問する。この時、ヤーナに手渡すお土産に、スニヤがメッセージを封じておくのだ。ヤーナには事情と、これからの計画を伝える。同時にグロサムとキリルも、把握することになる。


彼らは、びっくりするだろう。でも、理解しやすいように、スニヤはメッセージの内容に工夫した。


「2人が、そうか分かった!頑張ろう!となるようにね。」


皆が理解できたら、いよいよユナ・リアの元に向かう。家にはユナ・リアと両親、他の家族も集まっておいてもらう。贈り物を渡すのは、グロサムとキリルの役目で、少しでも一同の心が開かれるようにする。その後、ヤーナがユナ・リア脱出計画を伝えるのだ。


グロサム・キリルに誘導されて、ビンポイントで魔法使いがまず空間移動する。ユナ・リアたち家族を安全な場所までお連れするのだ。


その後、剣士たちを送り込む、空間移動がなされる。


これらは魔力を著しく消耗するだろうが、コダは、死んでもやると言う。死なせるわけにはいかないので、スニヤも後方支援を惜しまない。

 

剣士たちはセナとタクを中心に、ヤーナと共に元凶たるニトラとヨリクガを探し、討つ。ヨリクガが魔法使いなので、剣士たちはコダに代わって、魔法での戦いもしなくてはならないだろう。


抵抗する村人は、洗脳されてる可能性が高い。しかし村人は、極力巻き込みたくない。スピード勝負で、決着をつけなければならないのだ。


このために、テニオは命懸けで旅をした。その労に報いたい。


ルルは泣いたし、セナも泣いた。しかし、涙の後に、彼らは立ち上がった。


何が何でも、やり遂げるのだ。

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