第十二章 結果は涙
「セナ様、セナ様………。しっかりなさってください………。」
タクは、涙が出て止まらなかった。
セナが撃たれた。犯人は、ムロダ家使用人の男で、ニトラたちの世話をしていた者だ。
頭を狙ったのは外れた。しかし背中から、心臓に届くのではと危ぶむ位置に当たった。セナの背中が、流した血で真っ赤に染まった。
半狂乱のタクが、男を斬り捨てる寸前でワミナに止められた。アシトルとシロトが乱暴に気絶させて、拘束した。
ロウは、セナが防護服を着ていなかったことにショックを隠せない。パニックになりかけた。
(血が止まらない。下手に動かせば、銃弾が心臓に届くのでは!?俺は、治療系の魔法は苦手なんだ、どうしたらいい?)
コダは呼べない。でも、誰か!
ロウは、ボケットにしまっておいた七輝石を取り出した。
「ハタロさん、来てください!」
ハタロは、予想以上の速さで現れた。気にして、待っててくれたのだ。すぐに術をかけて、セナを仮死状態にした。出血が抑えられ、運ぶことが出来る。
「私が頭から、ロウは足からしっかり支えるんだ。空間移動をして、スニヤ様の元にお連れする。ここは、残ったもので大丈夫だな?」
サノも、連れて行けない。セナ1人、安全に運ぶのが精一杯。
「大丈夫です。ハタロさん、ロウさん、セナ様をお願いします。」
ロウは、タクに向かって言った。この後は、あなたがリーダーだ。ヨリクガを捕縛してください。コダ様や子どもたちを守ってください、と。
次の瞬間、彼らは消えた。
「行くぞ。」
サノと、サノを補助するアシトルを残して、4人で急いだ。タクの涙は、もう止まっていた。
一方、ヤーナの館では。コダは休ませたが、他は誰も寝てなかった。成功を祈って待っていた。
村人である使用人は、とっくに帰宅させ、住み込みのヤーナの部下たちは、それぞれの部屋にいた。ヤーナの部屋は立入禁止にしていた。
しかし、夜半。
ドアがノックされた。部下の1人が、虚ろな目で立っていた。
「何だ、急用か?」
「いえ、あの………。」
キリルは、部下が剣を隠して持ってるのに気づいた。
「ヤーナさん、避けて。危ない!」
ふらふらしながら、斬りかかってきた。すばやく移動したアイナが応戦する。部下は3人、剣を持って来ていた。全員部屋になだれ込んで、アイナに向かって来る。
「愚か者、主人に何をする!」
元々剣士でない部下たちだ、3人いてもアイナの敵ではない。しかし、斬るのは躊躇われた。
「兄さん、この人たちは、誰かに操られてるんだ。そいつを探す、絶対に傷つけないで。」
こう言うと、グロサムとキリルが動き出した。キリルが光魔法を用いて、邪悪なものをあぶり出すことにする。
「手を貸して、グロサム。」
「分かった。」
2人同時に、光を輝かす魔法を使った。館中に、光が充満する。
「ぐあっ!」
邪悪なものは、光に耐えられない。反応を感じた。1階の、使用していない小部屋だ。アイナと戦っていた部下たちは、操り糸が切れた人形のように、その場に倒れた。
「見つけたぞ、お前はヨリクガだな?」
意表をつかれ、術を解いてしまったが、ヨリクガの魔力はこんなものではない。キリルとグロサム、子どもしかいないと知り、ふてぶてしくなった。
「小童め、ユナ・リアを何処に隠した?おとなしく教えれば、いのちは助けてやろう。」
リードニスの宝を、自分の欲望のため利用しようとする、ヨリクガに虫唾が走った。優しいグロサムとキリルだが、それ故の怒りが湧いてきた。
そこに、アイナが駆けつけた。彼こそ、セナ・シンシアティ家の跡取りであり、正義の勇者だった。
「黙れ、賊め。我らが希望を卑しめること、赦し難い。成敗してやる!」
ヨリクガの攻撃魔法は陰湿で、強力だったので、初めは防戦一方。アイナ、キリル、グロサム共に傷を負った。しかし、防護服のおかげで、致命傷にならなかった。
アイナが斬りかかり、避けられた所にキリル、グロサムが攻撃する、連携が出来てきた。
そして遂に。
グロサムとキリルが同時に放った攻撃が、ものすごい威力になって、ヨリクガにまともに当たった。悲鳴が、館中に響き渡った。
「そのまま、押さえつけて。アイナくん、この拘束具を使いなさい。」
ヤーナに付き添われて、休んでたコダが出てきた。白目を剥いて倒れていたヨリクガをグロサムとキリルが押さえ、アイナが拘束した。
「やりましたね。3人とも、すごいですよ。」
コダに褒められ、照れて顔を見合わした3人。結構傷だらけだが、痛さは感じない。それ程、嬉しかった。
タクたちが戻れたのは、その後だった。
嬉しいはずの勝利報告は、残念ながらセナの負傷のことで、涙、涙に変わってしまった………。




