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第九章 相乗効果

約束の日が来た。タミアの誕生日で、グロサムとキリルが訪問する日だ。


堅苦しくなくが合言葉だ。まだ4才の少女に合わせて、服装も選んだ。


「これでどうだろう?」


「良いよ、決まってる。グロサムが王子様だと、タミアちゃんが勘違いしなかったらいいけど。」


冗談も言いつつ、ヤーナに連れられて、グロサムとキリルはタミアの家にやって来た。


「タミアちゃん、お誕生日おめでとう!」


タミアは少しびっくりしたが、素敵なお兄ちゃんたちだったので、嬉しかった。クリント王子からの贈り物がまず渡されたが、それは上質の服や靴、タミアが身につける、実用的なものばかり。ムロダ家のようにいたずらにお金のかかったものでなく、選んだミリヤのセンスが光っていた。


「うわー、素敵ね。」


両親と祖父母と祖母、母方の伯母夫妻(テニオの両親)、村に住んでる親戚は勢揃いしてくれていたが、皆口々に褒めてくれた。


続いて、キリルが渡したのは、母ルルが調合した貴重な薬の数々。風邪を引いた時、お腹を壊した時、子どもがかかりやすい病の治療のために、ルルの丁寧な説明書がつけられ、スニヤのメッセージも添えてあった。


キリルは他にも、魔法で保存しておいた花束と果物かごを取り出し、贈った。これも母が選んで準備してくれたのだ。オマケにと、ガリルドの特産トル酒もあり、父親たちがニコニコしてくれた。


「料理に使っても、美味しいですよ。」


最後に、グロサムが母マリカに頼んで用意した贈り物は、まるで生きているような精巧で可愛らしいお人形だ。マリカが娘たちのためによくオーダーしていた職人さんが作ってくれた。


「可愛い………!」


タミアは何より人形が気に入り、ぎゅーっと抱きしめた。


和やかな時間が過ぎた。この雰囲気を壊したくなかったが、意を決してヤーナが一番大切な話しを始めた。


「皆さん、お聞きください。今日はユナ・リアであるタミアちゃんの誕生日を共に祝わせていただき、感謝です。わざわざ来たてくれた若者たちも、贈り物も本当に良かった。実は、彼らは国の宝であるユナ・リアを愛し、守るための使者でもあるのです。」


そして、スニヤから伝えられた話しをした。まずは彼らの注意を引くために、テニオのことから話したが、彼のことを心配する両親は、攻撃されたと知って息を飲んだ。意識は回復したと言えたのは幸いだった。


ムロダ家のことは理解が早かったが、2人の黒幕の話しは説明に時間がかかった。何とか理解され、これからの計画を伝える。


「タミアちゃんとご家族、あなた方を安全な場所にお移しするために、有能な魔法使いのコダ様をここにお呼びしますことを、お許しください。尚、こちらの手のものが調べを進め、ニトラ・ヨリクガ両名の居場所は把握できています。皆さんを何日もその場所で待たすことは、いたしませんので。」


いろいろ言いたいこともあったろうが、他ならぬタミアの安全のためである。ほとんどの家族は、良いと言ってくれた。


しかし、リラだけは。


ヤーナの話しが始まってしばらくすると、彼女は震えだした。顔が青ざめる。そして突然、叫びだしてしまった。


「や、やめて!もう、やめて!!私たちを放っておいて、もう、いやー!!」


今まで我慢して来たのが、限界に達した。パニックになってしまった。


「いやなの、普通がいいの、私は普通に、タミアを育てたいの!」


ヤーナは、焦った。まずい、ここで騒がれては。


グロサムとキリルの行動は、早かった。リラの右手をグロサムが、左手をキリルがグッと握り締め、2人同時に癒やしと安心のための魔法を使った。


「大丈夫!」


「僕たちにまかせて!」


その時リラは、ふわりと羽のように軽い、温かな毛布で包まれるような感覚だった。心が、すーっと落ち着いた。


「あ、ああ………。ごめんなさい、取り乱して………。そうね、タミアのためですもの、お願いします。」


顔色は元に戻り、震えも収まった。


グロサムは、静かに語りかけた。


「心配しないで。うちの姉さんもユナ・リアだったけど、普通だよ。ただ優しくて、可愛らしい人だけどね。」


それは、リラがもっとも聞きたかった言葉。タミアも、普通に育てて良いのだ。


(なんだ、これは………。この2人の魔法か?それにしても、凄い効きめだ………。)


ヤーナは驚き、グロサムとキリルも気づいた。これは、単なる魔法ではない。グロサムとキリル、タイプの違う2人の魔法使いが同時に働くと、相乗効果で、凄まじい魔法が発動されることに。

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