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プロローグ
その青年は、急いでいた。
急いで、しかし敵に気取られることなく進まなくてはならない。自分の旅の失敗が意味することを考えるだけで、背筋が凍る。
日が完全に暮れる前に、小さな町の宿屋に入った。食事は持参しているので、結構と断った。早く休み、明日朝早く出発したいのだ。
疲れのせいで、横になるとすぐうとうとして来た。眠りに入り、夢を見た。
夢の中で、泣きじゃくる少女を見た。
(大丈夫だ。俺が、俺たちが何とかしてやるから………。)
そう考えながら、可笑しさが込み上げた。自分が、自分なんかが、国の命運を左右する問題を抱え、戦っているとは。
とにかく、今は睡眠だ。明日、またできるだけ進めるように………。