表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せいねーたのせなたにのう  作者: とぽけっと
7/10

フララちゃんはいい子

 家の扉の前にフララちゃんがいた、手に瓶を持ってる? あっ、牛乳だ!

「フララちゃ〜ん、ごめ〜んありがとう」

 待たせてごめんなさい、持って来てくれてありがとう

「え?セイちゃんおかえり、まだ帰ってきて無かったんだね、牛乳持ってきたよ」

 フララちゃんの所に走る、もちろんリーネちゃんと一緒に

「ありがとう、こんなにいいの?」

 瓶の中には牛乳がいっぱい入ってた。う?フララちゃんが背中を押してくる。

「セイちゃん、ちょっとここから離れよっか、リーネちゃんもきて」

 何だろう?フララちゃん、怖いなと楽しみな顔してる。

 フララちゃんの家の近くまで行ってしゃがむ、フララちゃんはわたしの前、リーネちゃんはわたしの隣、リーネちゃん楽しそう、ワクワク顔してる。

「私、セイちゃん達が来るちょっと前に、セイちゃんの家に行って、セイちゃ〜んって呼んだんだけど、出てこなくて、でも中から音がして、出てくるのかな?って思ってたら後ろからセイちゃんの声がして、びっくりしたわ」

 えー、家に何か居るんだ・・・、ソイちゃんなんだけどね

「なにかどうぶついるの?」

「なんだろうね、ネズミかな?」

「わたしは、長耳ウサギがいいな〜」

 ふわふわだし、おいしいし。・・・ソイちゃんじゃないよ、ソイちゃんは食べないよ

「りーねは、わたぼこりがいいな」

「わたぼこり良いわね、今はセイちゃんちって、わたぼり飼って無かったわね」

「ひつじに逃げられてから、飼ってないよ」

「おにいちゃん、おねえちゃんに、けられてた」

「誰もが通る道だね」

「うんうん」

 わたぼこりはちっちゃいモコモコした動物で、餌は草を食べる、寒い時から温かくなる時に村のどこかに、ひかかってるモコモコの中にちっちゃい赤ちゃんがいて、育てると大きいモコモコになる、本体が大きくなると飼い主の油断を見つけて逃げる、毛を自分で脱ぐ事ができるから、考えてない逃げ方をする。

「セイちゃんからも逃げるんだもんね、すごく懐いてたのにね」

「家の扉閉めてたのに、洗濯に行って帰ってきたら居なくなってて、すごく寂しくて泣いたの覚えてるんだ、どうやって逃げたんだろうね?」

 ひつじ、すごく懐いてくれてて、一緒に寝てたりして仲よかったのになー、仲良いと思ってたのはわたしだけだったのかな、ちょっと悲しくなってきた

「あれ?セイちゃん何で居なくなったのか知らないの?」

「フララちゃんは知ってるの?」

 なんでわたしは知らなくて、フララちゃんが知ってるんだろう?・・・まさかフララちゃん、同じように逃げられたのかな?

「セイちゃんが洗濯物を洗いに行ってる時に、村長がセイちゃんちの扉開けちゃって、わたぼこり逃げたんだって」

 アトーレ村長は大きいから、ひつじ驚いて逃げたんだね、お父さんが開けても逃げなかったし

「でも、アトーレ村長居なかったような」

「捕まえようと、走って追いかけてったんだって」

 だから、アトーレ村長居なかったんだ、ひつじが居なくなった理由がアトーレ村長だったなんて、後で一回蹴り殺そう

「リーネちゃんそれ、わたぼこり?」

 リーネちゃんが土に何か描いてた、石持って土をグシャグシャって何かを描いてた

「うん、わたぼこり、もこもこしてる」

「リーネちゃん、このツノは目?」

 フララちゃんが、ツノが目とかよく分からないこと言ってる

「リーネちゃん、このトンがってるのが足だよね」

 フララちゃんは子供のことが分かってないね、どう見ても足じゃん

「ちがう、まちがったの!」

 そっか、間違っただけみたい。足じゃなかったんだ・・・

「セイちゃん間違えてる、リーネちゃんかわいそ〜」

「えぇ〜!?」

 フララちゃんも間違えてたのに!押し付けられた!

「間違えてたね、ごめんね」

 謝って、頭撫でとこ。ごめんね

「いい、おこってない」

 いいこいいこ、怒ってないけど声がちょっと拗ねてる

「わたぼこりの顔どれ?」

「かおは・・・これ」

「これは?」

「しっぽ」

「これは足かな?」

「うん、あし」

「すごいねリーネちゃん、わたぼこりちゃんとかけて・・・」

「も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 フララちゃんとリーネちゃんの絵を見てると、家の方から大きな声が聞こえた。ソイちゃん出てきた

「早く入ってきてよ!何で楽しそうなの!」

 外で楽しそうだったのを見て出てきちゃったみたい、あのまま家に入ってたら何があったんだろう?

 ちっちゃな大きな体でこっちにすごい勢いで走ってくる、フララちゃんは、も〜!で驚いてたけど、今はどう遊んでやろうかの顔してる、リーネちゃんは今も驚いてる顔・・・怯えてる顔になってる。

 わたし目掛けて走ってくるソイちゃんを受け止めて、そのまま持ち上げてギュ〜をしてクルクル回りながら、ほっぺたを合わせてウリウリする。

「きゃ〜、何この子牛ちゃん、かわいい〜」

「え!?セイちゃんじゃない!フララぁ〜、やめろぉ〜」

 え?わたしはしないよ、重くて出来ないし、ウソ出来るけどやらないよ

 フララちゃんも流石に疲れたのかな、止まって頬っぺた合わせてをウリウリしてるだけしてる

「フララお姉ちゃんでしょ、フララお姉ちゃんって言わないと止めませ〜ん」

「いやぁー、はなせー」

「ダメでーす、離しませーん」

 ソイちゃんのほっぺたプニプニだから気持ちいいのかな?すごく楽しそう

 リーネちゃんが抱きついきたから、頭を撫でて一緒に見ることにする。呼べば止めてくれるのに、いつも頑固だな〜

「ほら早く、フララお姉ちゃんって言いなさい」

「いやあぁ、はーなーせー、はーなーしーて!本当に離してよ!牛臭い!」

 な!

「コラ!ソイちゃん!ダメでしょ、そんな事言っちゃ!」

 もう!何で言っちゃうかな!フララちゃん気にしてるのに!もう!

「ご・・めん・・・ね」

 フララちゃんは謝りながら、ゆっくりソイちゃんを下ろす。ああもう!ああもう!

「もう、さっさと離してよ。セイちゃんソイ、牛臭く無い?」

 ソイちゃんを下ろしたらフララちゃんが走り出した!家の方じゃない!

「フララちゃん!! リーネちゃんごめんね!」

 リーネちゃんの返事を待たず抱っこしてフララちゃんを追う、ここにリーネちゃんを置いていきたくない。

「ちょっと!セ・・・」

「フララちゃん待って!!」

 知らない! ソイちゃんなんて知らない!

「リーネちゃん、ギュッとしてて」

 ちょっと揺れて走りにくい、抱え直してギュッとしてくれて走りやすくなった。こっちの方に走ってたよね

 うちとフララちゃんの家は村の端の方にある、フララちゃんは村の外の方に走っていった。村の端には柵がある、頑丈でも通れる場所があるわけでもない柵、でも柵を壊したら音が鳴って何かが入ってくるのが分かるようになってるらしい、ホケンとオカネナイがなんとか。

 その柵をフララちゃんが潜って出て行った、出ちゃダメじゃ無いけど、ちょっと怒られる

「リーネちゃん柵の向こう行くけど、どうする?」

「いく」

「わかった」

 村の外は危ないって言われてるけど、1人する方が危ない気がするから連れて行く、リーネちゃんの声も心配な気持ちがいっぱいあって「行きたい」だった。

 柵を潜って柵の外に出る。柵の外は森と麦畑の間の草原が広がってる、草の高さは胸下ぐらいまでだからフララちゃんは見えてる。もうあんな所に、あっ、消えた。

 フララちゃんが消えた所に、リーネちゃんを守りながら草を掻き分けて進む。フララちゃんが消えた所に近づくとフララちゃんの泣き声が聞こえて来た。

 草むらに倒れてフララちゃんが、声を出来るだけ出さないように泣いてる、どうしていいのか分からない、何か大事なものが壊された、我慢しなきゃ、が泣き声の中にあって体の真ん中が苦しい

「フララちゃん」

「!!!  こないで!あっち行って!」

 驚いて泣き声が止まったけど、直ぐにまた泣き出す。うわ〜、本当に来ないでが伝わってくる、泣きそう

「フララちゃん」

 頭を撫でる。泣かないで、泣かないで

 手を叩かれる、顔を地面向けたまま手を叩かれる。

「あっち行って!」

 ちょっと怒ってる、全然こっち見てくれない

「フララちゃん」

 頭を撫でる、すぐに叩かれる

「あっち行け!」

 あらら、行け!になった。

「嫌だよ」

「何でよ!セイちゃん嫌い!!」

「大好きな、フララちゃんが泣いてるからあっち行かない」

「あっち行ってよ!」

「嫌だよ、フララちゃんが泣き止むまで一緒にいるよ」

「何でよ・・・、何で・・・」

 ちょっと落ち着いたみたいだから、背中をさすってあげる。なんだろう、さっきもお酒さんとこんな事してたような

 フララちゃんから声は聞こえなくなったけど、鼻をズズッしてる音がするからまだ泣いてると思う。ブブッという音は肩から聞こえる、リーネちゃんの涙と鼻水で肩のところがすごい事に・・・、声を出してないからリーネちゃんはいい子だね

「ねえずずぅ、・・・ねぇ、セイちゃん」

「なーに?」

 フララちゃんが顔を地面に向けたまま話しかけてきた。声がちょっと悲しそう

「私って牛臭い?」

「うん、ニューの匂いする」

 フララちゃんの背中がビクッってなる。でも撫でるのはやめてあげない

「私、ニューの世話したり牛乳搾るとき用の服着てるの」

「うん」

「ニューの世話終わったら、毎日体拭いてるの」

「知ってるよ」

「服も毎日洗濯してる」

「知ってる」

「お母さんに臭くないか毎日見てもらってるの」

「うん、知ってる」

「でも、牛臭いって・・・言われるの」

「全部知ってる。フララちゃんがニューの事が大好きでニューが怖がらないように毎日同じ服着てる事も、大好きなニューが臭いって言われるのが嫌だから、朝早くから牛小屋を掃除して体を洗ってあげたりしてることも、ちっちゃ子が嫌がらないように体や服をキレイにしたりしてる事も、一緒に居る大好きなお母さんが牛臭いって言われたら嫌だからフランお母様に確めてもらってる事も全部知ってる」

「え? 本当に何で知ってるの?」

「何でって見てれば分かるよ。朝牛小屋でニューと話すフララちゃんよく見るし、大人と会うときはしないけど、子供と会う時に服をちょっとクンクンしてるし、フランさんに臭い見てもらう時にすごく嬉しそうだし」

「ええ? 私そんな事してた?」

「うんしてたよ、フララちゃんちっちゃい子好きだから、みんなにやさしいし、いっぱい遊んでくれるから、わたしもリーネちゃんもフララちゃんの事大好きだよ」

「ありがとうありがとうね、セイちゃん」

「良かったねリーネちゃん、フララちゃんもう元気になったよ」

「ブブー」

 ああ、鼻水で返事できてない。かたが〜肩が〜〜

「えええ? リーネちゃん居るの!? うわっ、居るっ! いつから? ずっとだよね」

 フララちゃんがやっとこっちを見た。うわ〜、顔ぐしゃぐしゃだ〜、目とかまっかっかで腫れてる

 拭いてあげたいけど布ないから拭いてあげられない、うーん、袖でいいかな?きれなはず?たぶん?

「えいっ」

「きゃっ!」

 肩を持ってフララちゃんをひっくり返すと可愛い声が出た。リーネちゃんを地面に下ろして、フララちゃんの頭も太ももに乗っける。太ももだけど膝枕

「ちょっとセイちゃん」

「いいからいいから、フララちゃんの可愛い顔がびちゃびちゃだよ」

 袖で涙と鼻水を拭いてあげる、草とかもついてるから取ってあげる

「うん、キレイになった」

「ありがとうね、私お姉ちゃんなのにごめんね」

「大丈夫だよ、フララちゃんは泣いてても優しいお姉ちゃんだから、大好きだよ」

「りーねも、ふららちゃんだいすき、ぎゅうにゅうくれるから」

「ええええ? 牛乳・・・」

 リーネちゃん・・・、おいしい牛乳をありがとうって事だよね? 大好きならいっか!

「って、おにいちゃんがいえって」

 ・・・

「ライキ・・・」

「ライキ・・・」

 リーネちゃんに何を教えてるんだよ、も〜

「りーねは、ふららちゃんにだっこしてもらたら、ふわふわしててにゅーのにおいしてすき」

「リーネちゃんも牛臭かったんだね。ごめんね」

 泣きそうなフララちゃんの目に手のひらを乗っけて、見えなくする。

「フララちゃん、牛臭いなんて言ってないよ、ニューの匂いがして好きって言ってるんだよ」

「それって牛臭いって事じゃないの?」

「抱っこして貰っても嫌がってないでしょ、ニューの匂いして好きって言ってるよ」

「だから牛の匂い私からするんだ〜」

 あれ〜〜〜、失敗しちゃった・・・何でだろう? フララちゃんはニューが好きで、ニューの匂いが好きな子がいたら嬉しいと思ったんだけど・・・。うーん、前に何かあったのかな?

「えっと・・・えっとね」

「もういいよセイちゃん、セイちゃんも臭かったんだよね」

「えっとね、違くて」

「もう良いの、もう私は臭いままなんだわ」

『諦めた〜』、みたいな事言うだったら、口の『嫌だな』の泣きそうなのはなんなんでしょうね! 仕方ない、言うぞ!

「重大発表があります」

「なに?」

「フララちゃんからニューの匂いがする所は、髪です」

 肩までの長さの髪です。結構前から気が付いてたんだけど、フランお母様が全然気付かないから、今日こんな事に・・・

「そんな事ないわよ」

 フララちゃんは自分の髪を鼻にもってって、クンクンする。

「しないわよ?」

 ちょっとしたのかな、自信なさそう。

 髪を持ってるフララちゃんの手を持って、頭の皮膚のところをゴシゴシして、フララちゃんの鼻に持っていく

「くさっ!え?・・・くさい!」

 2回嗅ぐよね、分かる分かる。あっ、もう一回いってる、やっぱり臭かった・・・

「くちゃい・・・、くちゃい」

 あぁ、、フララちゃんから力が抜けていってる。消えて無くなりそうな感じがする

「違うよ、フララちゃん違うからね、リーネちゃん自分の頭の匂いを臭いって言ってるだけだからね」

 手をどけて見えるようにする、何回も自分の頭に手を突っ込んで匂い嗅いでいるリーネちゃんとフララちゃんの目が合う

「・・・くちゃい・・・」

「ぷっ、あはははは」

 フララちゃんが笑いだす。わかるわかる、可愛かったからね

 夢中で頭に指つっこんで、鼻に持っていって、匂いを嗅いで眉を真ん中に寄せて「くちゃい」って言ってるんだもん、おもしろ可愛いよね

「あはははは・・・はぁ〜〜〜〜〜」

 あっ、元気無いフララちゃんに戻っちゃった。フララちゃん多分「私が笑っちゃダメだよね、頭臭いもんね、は〜」とか思ってるのかな?

「私が笑っちゃダメだよね、頭臭いもんね、は〜」

 すごいねわたし!当たった!・・・じゃなく

「フララちゃん、帰って髪の毛洗おう、洗ってあげるから」

「セイちゃんが?いいよ・・・、臭いもん・・・」

 本当に前に何があったの? あの明るいフララちゃんはどこにいったの

「フララちゃんしっかりして!わたしだよ!大丈夫だから!」

 嫌う訳ないじゃん! フララちゃんのほっぺたを挟んで目を見ながら言う。大丈夫だから!

「でも、わた・・・」

「でもじゃない!リーネちゃんの髪を洗うつもりだっったから、・・・えっと、終わったらわたしのも洗って!交代で!」

「セイちゃんも臭いの」

「うん、何日も洗ってなくて、今日からお父さん居なくて洗って貰えなくなって、リンお母様に洗ってもらうなら夜になちゃうし、我慢してたから」

「じ〜〜〜、本当に臭いの? 嘘ついてない?」

 えー、何で疑われてるんだろう? 嘘はついたけど・・・

 フララちゃんは起き上がって、わたしの頭をもっと顔を近づけて匂いをクンクンする。なんだろ、すごく恥ずかしい・・・、ちょっと長くない?

「フララちゃん?」

「ちょっと待ってて、何この匂い・・・」

 え?何その匂い?クンクンしてないです教えて!

「りーねもにおいたい」

 両手を上げてピョンピョンしてる。もう、可愛いなー

「はいどうぞ」

 座ったままなので、リーネちゃんが背伸びして背中にしがみ付きながら匂いを嗅いでいる。リーネちゃんに臭いとか言われたら、泣くかも・・・

「せいちゃんおいしそう」

 !?

 え!?美味しそう?

「え?美味しそう?そう言われたら、バターパンの匂いがしてきたかも」

「匂い変わるの?」

「くだものぱんのにおい」

 どっちも美味しいよね、・・・じゃなくて、パンの匂いするんだ、朝焼いたからからね。臭くなくて良かった

「臭くないじゃない、セイちゃん騙したの?」

「はーい、じゃあ帰って、頭洗おうね」

「ねぇ?」

「リーネちゃん帰るよ、頭洗おうね」

「りーねくさくないよ」

 フララちゃんを立たせて、背中からお腹の上の方を抱えるように手を回す、こうすると叩かれないし逃げられない、そのまま村の方に押して歩く。やっぱりニューの匂いがする

「リーネちゃん、体全部洗おうね」

「やっ! りーねくさくないから、やっ!」

 頭に指を突っ込んで鼻にもてって臭ってる。気に入りすぎじゃない?

「・・・くちゃい」

 臭いんじゃん、でも笑顔なのよね。臭い匂い好きなのかな・・・


 村の端の柵のところに戻ってきた。

 リーネちゃんの『くちゃい』でどんどん力が抜けてったフララちゃんは今、私の背中に居る。まったく動かない、寝ては居ないはず、目が開いてるからね

 柵の隙間をうまく潜って村の中の入る、フララちゃん重くて大変だった。

「リーネちゃん頭打たないように、気をつけてね」

「あい!」

 なんだかとても元気なリーネちゃん、頭から何かでてるのかな?

 リーネちゃんが柵を越えたら一緒にわたしの家に帰る。また『くちゃい』してる

 あれ?家のまえに誰か立ってる、誰だろう?ソイちゃん居るし、ソフィお母様かな

「ソイちゃんとソフィお母様が来てるよ、フララちゃんどうする?」

 フララちゃんは顔を前に向けて、ソイちゃん達を見ると顔をわたしの背中に隠す。わたしもお父さんの背中でよくやるやつ

「セイちゃん良かったわ無事で、ソイリスが泣いて帰って来たから何かあったのかと思って心配したわ」

「ソフィお母様、わたくしは大丈夫ですわ。わたくしは大丈夫なのですが、ソイさんとフララさんで少し問題がありまして、また後ほど説明いますわ、今はすこし・・・」

「セイ様、どうぞ私の事はソフィとお呼びくださいませ。分かりました、セイ様とリーネ、フララの無事が分かれば、十分でございます。ソイリス行きますよ」

 わたしの喋り方に直ぐに合わせて、キレイなおじぎまでする

 、すごくキレイたからフララちゃんにも見て欲しかったな。

「ソイさん、また後でね」

 泣いて目の腫れてるソイちゃんの頭を撫でてる。本当の事言っただけなのに、って泣いたんだろうね

「セイちゃん、何で変な喋り方してるの?」

 背中からは『ぷっ』ってして、ソイちゃんの頭からは『パシッ』って音がした。わたしじゃないよ! でも良かった、フララちゃんが笑ってくれて

 ソイちゃんがソフィお母様に連れられて帰っていく、あれは家で泣いて暴れるね

 フララちゃんを、おんぶしたまま扉を開けて、中に入る。

「ただいま」

 リーネちゃんが言ってくれる。かわいい、・・・今、色々あれだからそうでもないかも

「おかえりリーネちゃん。フララちゃん立てる?」

「うん、大丈夫。リーネちゃん、ただいま言えて、えらいね」

 フララちゃんがリーネちゃんの頭を撫でてる、手を離した時にベトベトしたのか気にして、なぜか落ち込んでる、

「リーネちゃん、ちゃんと髪洗おうね」

「りーね、くさくない」

 匂い気に入り過ぎじゃない? 臭いよね?

「リーネちゃん臭いとね、こっち来るなって言われるよ」

「りーね、いわれてない」

「言われるよ、セイちゃん頭撫でて無いでしょ」

 え? こっちきた。確かにさっきから頭は撫でて無いけど

「せいちゃん、りーね、くさい?」

「うーん、匂うかなー、ベタベタもするし」

 ここの嘘は良くない、ハッキリ言っとこ

「りーね、くさくないよ」

 ちょっと泣きかけてる。うーん・・・

「リーネちゃん、その匂いそんなに好きなの?」

「うん!おかあさんといっしょの、においするの」

「リンさんの匂い?」

「うん!」

 すごくニコニコしてる。フララちゃんは口押さえて、笑うのを我慢してる。

「ごめんねリーネちゃん、寂しいよね。リンさん早く帰ってくるといいね」

 分かってたけど、リンさんの代わりには成れないよね。

 リーネちゃんは自分の頭をポンポン、サワサワしてる、急にどうしたんだろう?

「せいちゃん、あたまあらって」

「どうしたの?リーネちゃんが嫌ならそのままでも・・・」

「あらって!」

「はい」

 急になんだろう? わたしが寂しそうな顔してたとか? ちょっと寂しかったけど、そんなでも無かったんだけど

「リーネちゃんは、セイちゃんの事好きだよね」

「うん!」

 すっごい笑顔で答えてくれて、すごくうれしい

「ちょっと、お湯沸かすから待ってってね」

「はーい」

「え? お湯沸かすの? セイちゃん火を着けれるの?」

 ふふふ、驚くよね! 子供は火を使っちゃダメだからね。わたしはお父さんから家の中で使うならいいよって言われてるから使っていいんだ、遊びで使ったらお尻ペンペンされる。1回されてみたいけど、悪い事はやっちゃダメ!

「家の中でしか使っちゃダメって言われてる、火は毎日着けてるから得意だよ」

「見てていい?」

「いいよ、今日は機嫌がいいから直ぐ着くと思うよ」

「きげん?」

 フララちゃんが不思議そうな顔をしてる。フララちゃんは火を着けないから分からないのかな?

 まず、朝食を作った後に火を消した薪の残りに火打ち石で火を着ける、カチカチボッする。

「セイちゃん」

「なに?」

「早くない?」

「見えにくかった? ゆっくりする?」

 いいところ見せようと思って、早くやっちゃったのかな?

「そうじゃないけど、藁とか使って、ちょっとずつ火を大きくするんじゃないの?」

「そうみたいなんだけどお父さんが、無しでいけるんなら無しで良いんじゃないか、悪い事ではないしな、って言ってたよ、・・・だからかな、火を着けていいのは?」

「じゃあ、わたしも出来るようになったら、やらせて貰えるのかな? セイちゃん教えて」

「それはダメ。お父さんが、火の付け方を教えるのは親の楽しみだから、教えちゃダメだって言ってた」

 お父さんの言うことは守らなきゃ。お父さん怒ると怖い顔と悲しい顔するから、怒らすのは嫌だ!

「そっか、アベルさんがダメって言うならダメだね。お母さんの楽しみだしね」

「おじさんが教えてくれるかもね」

「お母さんがいいな〜。セイちゃん何か手伝おうか?」

 おっさん・・・。どうしようかな〜

「う〜ん、洗濯物干して貰ってもいい?」

「洗濯物? あ〜、ごめんね、私のせいだね」

「違うよ、わたしが洗濯干すの遅かったから、もうちょっと早くやらないと」

「そういえば、帰ってくるの遅かったよね」

 ・・・あれ? 何か忘れてるような?

「今、何か忘れてるの思い出したんだけど、何だろう?」

「私がセイちゃんちに来るまでに、何かあったの?」

 う〜ん、色々あったけど、それじゃない気がする。

「何となくなんだけど、フララちゃんな気がするんだけど」

 ・・・なんだっけ?

「私? 何か忘れてる・・・、あっ!」

「あっ!」

「「牛乳!!」」

 フララちゃん走り出した時に置いていった気がする。倒れてないといいけど・・・

「フララちゃんごめんね、せっかく持ってきてくれたのに」

「いいよいいよ、セイちゃんが追いかけて来てくれて嬉しかったし。まだ、こぼれて無いかもだしね、ちょっと取ってくるね。洗濯物も干してくるね」

 そういうと、フララちゃんは外に出ていった。・・・よし、がんばろう!

 水瓶から鍋に少し水を移して、かまどの上に置く。薪の量が少ない気がするから、物置部屋から薪をとってくる、2本ぐらいで丁度かな? お父さんが朝、真っ二つにした薪を2本持って物置部屋からでる。

「リーネちゃん、また火傷するよ」

 リーネちゃんが、かまどの前で火に手を伸ばしてる。

「あつくない、あったかいだけ」

「でもね、触ると火傷するから、絶対触っちゃダメだからね、火傷嫌でしょ?」

「やけどいたい」

「でしょ、触っちゃダメだからね」

「はーい!」

 気になるのは分かるけどね。暖かいもんね

「リーネちゃん、これをあの火の上に置くの手伝ってね」

「これ?」

「まきを火の上に置くの」

「やりたい、まきをひのうえにおくのやるー!」

 置いてもいい? 分かったもうちょっと待ってから置くね

 まだ、置いちゃダメみたい、力でねぇ〜とか言ってる。先に水を入れとこ

「セイちゃん、牛乳大丈夫だったよ」

「ありがとう」

 家に入って来たフララちゃんから、牛乳を受け取る。温かくなってる、後で鍋で煮るつもりだったからいっか

「踏み台貸して」

「踏み台は・・・、はい」

「行ってくるね〜」

「フララちゃんお願い」

 手を振って家から出ていく、扉に踏み台ぶつけて、ごめんねしてる。手を振っとこ、大丈夫だよ〜

 もういいの? じゃあ入れるね

「リーネちゃん、薪入れるからこれ持って」

「はい!」

 リーネちゃんに薪を一本渡して、かまどの火の前でしゃがんでリーネちゃんが動かないように左手を回す

「リーネちゃん、火の上に薪置こうか」

「えい!」

 リーネちゃんが投げた薪が、かまどに当たって床に落ちる。危ない、直接当たってたら火が飛び散ってたよ!

「そんなに強く投げたら危ないよ」

 薪を拾ってリーネちゃんに渡して、投げる前に手を持って止める。

「火は危ないから一緒にやろうね」

「うん」

 薪を持ってるリーネちゃんの右手を持った右手を火に近づける

「リーネちゃん熱くなったら言ってね」

 ゆっくりゆっくり、火に手を近づける

「あちゅい」

 びっくりしたのか、熱いってちゃんと言えてない。かわいいね、あちゅいだって

「じゃあここから、火の上に置くように、えい!」

「えい!」

 薪は火の手前に落ちる、その薪を拾う

「リーネちゃん見ててね。火の近くまで持ってって、ふわっと投げるの」

 薪は火の真ん中に落ちる、火の粉が飛んで、少し熱い風がくる。前にいるリーネちゃんもちょっと熱かった見たい、熱いって顔になってる

「リーネちゃん、もう一本入れてね」

 もう一本をリーネちゃんに渡す。わたしがさっきやったように、火の近くまで薪を持ってく

「えい!」

 リーネちゃんの投げた薪は、ちゃんと火の中に落ちて火の粉を飛ばす

「やったー」

「やったね、リーネちゃん」

 リーネちゃんがこっちを見て凄くうれしそうに笑ってる。左手でリーネちゃんを動けなくしたまま、右手で頭を撫でる、リーネちゃんもっと嬉しそうになった

「リーネちゃん手伝ってくれてありがとうね。火は熱いでしょ、でもいいものだから怖がらないでね」

「うん」

 まあ、怖がってなかったんだけどね。

「じゃあリーネちゃんは、椅子に座っててね」

「はーい」

 火から離れてから左手のリーネちゃんを離す。

「りーねも、てつだいたいなー」

 元気いっぱいだね〜。さっき寝たもんね

「じゃあ、そこの布を畳んでくれる?」

「これ?」

 さっき日向ぼっこに使った布が、グシャグシャになってる、土と草は向こうでパンパンしたから着いてないと思う

「そうそれ。机の上で畳んでね」

「はーい」

 リーネちゃんが椅子の上に登って、布を畳もうとしてる、心配だから登るのを見てよ。

 リーネちゃんが無事に椅子立ったから、自分の事をしよう。水瓶の水を鍋に移し替える、多めに入れる、入れたら木の蓋をする。早く、お湯が沸くみたい、カリーヌさんが「木の精霊様が水の精霊様を火の精霊様から守りたいから、早く温かくなるのよ」って言ってた、嘘って分かったから信じてないけどね。だから、どうして早く温かくなるか知らない

 火さん、水の量が多かったかも頑張って貰える? ありがとう! あとね、今から水を汲みに行くから、わたし居なくなるんだけど、リーネちゃん近づいてきたら熱くないように出来る? さすが、火さん! ありがとう。 え? ひっさま? わかった、ひっさまお願いね

『ひっさま』って呼んでだって、かっこいいね

「リーネちゃん、水汲んでくるから待っててね、火には近づいちゃダメだよ」

「はーい」

 水いっぱい汲んでこよう、いっぱいは要らないかな。

 桶を持って家を出る。そのまえに

「行ってくるね」

「せいちゃん、ばいばい」

 手振ってくれる。かわいい!

 家を出て井戸の方に行く。川の向こうとこっちで一つずつある。川の方にあるので左に行く、左には畑があって洗濯物を干してくれてるフララちゃんがいる。

「フララちゃん、水汲んでくるね」

「はーい、行ってらっしゃい」

 もう、シーツを干し終わってる。みんな早いなー


 フララちゃんに行ってきすしたら、走って井戸に行く、いくらひっさまにお願いしても、火を着けたままのんびりしてたら危ないよね。

 井戸は川より近いから直ぐ着く。今日の井戸当番は・・・、アニキ兄さんだ。

 アニキ兄さんはライカちゃん達の一個上で13歳の農家見習い・・・、のフリをした、傭士、えっとなんだっけ? 狩傭士だったかなぁ・・・? になりたいんだって、村の外を旅して魔物を倒す仕事みたいなんだけど、会った事ないんだ。この村には来ないのかな〜、来てくれたらお父さん仕事休みで一緒にいられるのになぁ

 アニキ兄さんは、実は『アニキ兄さん』じゃないって、アトーレ村長が言ってたんだけど「死ね、酔っ払い!』ってリンさんとお父さんに眠らされてた。後で、お父さんに聞いたんだけど教えてくれなくて、「人の楽しみを取るのは良くないからな、だからセイも他の人に聞くなよ」って言われた。アニキ兄さんは実は何なんだろう・・・

「アニキ兄さん、おはよう」

「おう、おはよう。セイ、何で走ってるんだ?」

 朝の挨拶をしてアニキ兄さんに桶を渡す、井戸当番のお仕事で、水を汲みに来た子供が落ちないように手伝いと見張りをする、朝は子供達が水汲みのお手伝いをして危ないから井戸当番を作ったんだって

「水を汲みに来たんだよ」

「うん、理由になってないな、まあいいけど」

 アニキ兄さんは水汲み用の縄の付いた桶を井戸に入れて水を汲んでくれる。前より早くなってる気がする

「アニキ兄さん、水汲み早くなった?」

「おっ、さすがセイ! セイなら分かってくれると思ってたぜ」

 すっごく嬉しそう、あー、ちょっと遅くなった

「オレさ、次の春に村を出るから、今鍛えてるんだよ」

 そういえば、ミシルお母様が言ってたような・・・

「ポルン、次の春で12歳だもんね」

 一回目の水を桶に移し終わって、もう一回井戸に桶を投げてる。

 ポルンはアニキ兄さんの弟、ミシルお母様はアニキ兄さんのお母さんで、洗濯場でリーネちゃんを見ててくれたお母様です。

「父さんと母さんには内緒にして、ポルンには村を出るちょっと前に言うつもりだ」

「わたしに言ってもいいの?」

「おう、セイなら人に言わねーし、手伝ってもくれそうだしな」

 確かにわたしは、言うなって言われたら言わないし、手伝ってって言われれば手伝うよね。怒られなさそうな時はね、危ないのは止める

「何で、ミシルお母さん達には言わないの?」

 アニキ兄さんの手が止まる。井戸の途中で止めると重いだけだと思うけど・・・

「父さん母さんは、オレに畑仕事させたいからな、出て行きたいなんて言ったらケンカになる。ケンカして村を出てくのは子供のやる事だから、オレはしない」

 アニキ兄さんは真剣な顔で言ってる。嘘はないから本当なんだね。黙って出ていくのは大人なんだー

 アニキ兄さんが春に村から出て行くんだ・・・。

 その話は、お母様達はみんな知ってる、洗濯場でみんなで面白がって話してるのを何回か聞いたことある。

『家の畑で「この村での夏の暑さ覚えとこう」って毎日呟いてるのよ』

『「母さん、火打ち石のここ壊れてるから新しいの買った方がいいんじゃない?」ってリンの家の火打ち石持って来たの、隠れて練習してたのよあの子。何処から怒って良いのか分からなかったわ』

『「セイの奴が、木の棒を20回振れるようになって、強くなったら森に連れってって貰える、って言ってたから、オレも棒振ったら35回も振れたから、スッゲー強いはずなんだ」って自慢気に言ったのを、ポルンが「クワを何回も振り下ろしてるお父さん凄く強いんだね」って言ったの、それを聞いて父さん凄く強いのかって顔してて、そうね、今のセイちゃんみたいな顔したのよ』

『うちの旦那「次の春にアイツ出て行くから、ラトイルに街まで連れってくれって頼んで来た」って夏の前から準備してて、ポルンはアベルに旅に何が要るのか聞いて、アニキにさりげなく教えてあげてるのよ』

 って話してて、お母様達は笑ってた。あの子隠してるつもりだから内緒にしててねってミシルお母様に頼まれた事があって、凄く楽しそうで優しい気持ちがあったから、きっと悪い事じゃ無いと思う

「アニキ兄さん、頑張ってね!」

「おう!頑張ってあの人みたいになってやるぜ!」

『あの人』はアニキ兄さんの憧れの人で、アニキ兄さんの小さい頃に村に来た狩傭士の人なんだって、凄くカッコ良かったっていつも言ってる。確かにこの前話してもらった、剣を振ったら凄い風がおきて、村半分を燃やして、森の主をやっつけた話は、カッコよかったな〜

 あの人の事はアニキ兄さんからしか聞いた事ないから、お母様達に聞いてみようかな? わたしのお父さんと、どっちがカッコいいか知りたい!

「あの人に会えるといいね」

「あの人は、この村を守って死んだんだ、会えないさ」

「えー! この村守って死んだの!?」

 初めて聞いた! あの人死んだんだ・・・、じゃあ、アニキ兄さんが会いに行きたいって言ってた人は誰なのかな?

「そうだ、森の主を・・・」

「アニキ兄ちゃん、水入れて」

「ちゃんは止めろって言ってるだろ」

 あっ、リリカちゃんだ。リリカちゃんはわたしと同じ歳の女の子、お尻ぐらいまである髪を首のところで二つに分けて縛ってる。セイくんより女の子に見られたいって、髪を伸ばしてる。髪の長さ関係あるのかな?

「おはよう、リリカちゃん」

「セイくん、おはよう」

 わたしは膝を曲げてリリカちゃんと抱き合う、ぎゅ〜ってする。いつからやってるか覚えてないけど、リリカちゃんとの朝の挨拶はいつもこれをする

「今日のセイくんは、変な匂いするね」

「リリカちゃんは、髪の毛を洗ったばっかりの匂いするね」

 変な匂いって何だろう? 気になる。リーネちゃんの涙と鼻水とかの匂いかな?

「おいセイ! 水汲めたぞ、急いでたんじゃないのか?」

「そうだ! 早く帰らなきゃ!」

 リリカちゃんと離れて、手を広げているアニキ兄さんの前に置いてある桶を持つ

「おいセイ」

「なに?」

「ん」

「ん?」

 アニキ兄さんは何が言いたそうなんだけど、何だろう、早く言って欲しいな

「おはよう」

「さっき言ったよ?」

 言ったよね? 何だろう、ちょっと怒ってる?

「・・・ん!」

「ありがとう!」

 ありがとう言えって事だ! でも、持って帰る時に言おうと思ってたんだよ、本当だよ

「ちげーよ! さっき・・・」

「セイくん、早く家に帰らないといけないんじゃないの?」

 リリカちゃんに言われて、帰る事にする。火危ないし、わけわかんないし

「アニキ兄さん水ありがとう、また今度何だったか教えてね! リリカちゃん、お昼一緒に遊ぼうね!」

 手を振って、またねーをする

「ちょっ・・・」

「水を家に置いたら、セイくんの家に行くから」

 リリカちゃんが珍しい事言ってる、いつもは朝はお母さんのお手伝いするって言って、いつもお母さんと一緒なのに

「何かあるの?」

「何かあるかを見に行くの」

 真剣な笑顔してる・・・。何だろう、真剣な笑顔って?

 この顔をしてる時は逆らっちゃダメ、逆らわないんだけどね。・・・パンならあるかな?

「パン?」

「食べ物じゃないよ、いいから見に行くからね」

「うーん? 待ってるね」

 ・・・そっか! ソイちゃんが何かしてるかも知らないから見に来てくれるんだ。ソイちゃん何したんだろうな〜

 桶を持って家に帰る。井戸の方から何か聞こえたけど、「早く水汲んで」とか聞こえたから、アニキ兄さんが

「ちゃんは女に使う言葉だろ、オレは男だ。ちゃんは止めろ」とか言ったんだろうな〜。アニキ兄さん面白いよね。


 井戸から家に戻ると、フララちゃんが洗濯物の最後をしてた。洗濯物を干した棒にもう一本棒を使って挟んで縛る、それで洗濯物が風で飛ばされないからとても大事なしごと・・・さぎょう? 作業だ。

「フララちゃんただいま〜」

「おかえり〜、もう終わるね」

「ありがとう、準備しとくね」

 踏み台1コしかないから手伝えない。ざんねん

 家に入るとリーネちゃんがいない、もしかしてと思ってかまどを見るけどいない。えっ、どこに・・・どうし・・・フララちゃん・・・! そうだ、フララちゃんに聞きにいこう!

 桶を近くに置いて、フララちゃんに聞きに行こうと家を出ようと振り返えってたら、物置部屋から薪を持ってリーネちゃんが出てきた。うわ〜よかった〜、何かあったのかと思ったよ。

 ・・・薪? 急いでかまどの中を見る。うん、まだ入れる前だった

「リーネちゃんただいま、薪ちょうだい」

「えぇ〜、りーねいれたいなー」

 あっ・・・かわいい。薪を抱っこして、楽しそうで嬉しそうなお願い顔、かわいい! ・・・じゃなくて

 リーネちゃんの前に行って屈んで目をあわせて、肩を両方の横から軽く持つ

「リーネちゃん、お手伝いしてくれてありがとうね。」

「うん!」

「でもね、わたし外に行く前に火に近づいちゃ駄目って言ったよね」

「うん・・・、でもおてつだい」

「お手伝いしてくれるのは嬉しい、けど、火に近づいちゃ駄目でしょ。何で駄目って言ったか分かる?」

「あついから?」

「熱いのもあるね、もっとわかる?」

「やけどするから?」

「そうだね、痛いよね。まだあるけどわかる?」

「もうわかんない」

「さっきリーネちゃんが入れてれくれた木はどうなったかな?」

 リーネちゃんを薪ごと抱っこしてかまどの前に行って、中を見せる。

「さっきのきに、ひがついてる?」

「そうだね、火がついてるね。それじゃあ家って何で出来てるか分かる?」

「お金」

「そうだよね、木だよね」

「おかね?」

「リーネちゃん、木だからね! 木で出来てるからね!」

 フララちゃんめ! どこで覚えてきたんだか!

「リーネちゃん、家は木で出来てるよね。もし家に火が着いたらどうなると思う?」

「どうなるの?」

「家全部燃えちゃって、お母さん達が居なくなりまーす」

「や!」

「ね、嫌でしょ。もしリーネちゃんが入れようとした木で、家が全部燃えて母さんに会えなくなったら嫌でしょ」

「うん、いや」

「小さい子が火に近づいたら?」

「だめ、おかさんいなくなる」

「火に近づかない人は、わたしに木をください」

「はーい」

 フララちゃんがリーネちゃんから薪を受け取る。お金のところからフララちゃんに言う事全部言われちゃった。

「あのね、あのひ、あつくないんだよ」

 火が熱くない? あー・・・

「リーネちゃんどういうこと?」

 フララちゃんがリーネちゃんに聞く。リーネちゃん火に近づいてたのね・・・

「ひをみたくて、ちかくにいったの、さわらなかったらいいとおもって・・・」

「触らなかったらいいと思ったんだ、でもね約束は守ろうね」

 約束守らないと悪い子になるから、ちゃんと注意する。リーネちゃんはいい子でいてほしいから

「ごめんなさい」

 ちゃんと反省してるね、頭撫でる。いいこいいこ

「それで、何で熱くないって思ったの?」

 フララちゃんが続きを聞く

「ひがあったかくなくて、さわってもあつくなくて、きをいれたら、せいちゃんよろこぶかなっておもったの」

 え!?

「だから、薪を持ってたのね」

 フララちゃんが納得してる。・・・そうじゃないよね!!

「リーネちゃん! 火を触ったの!? 熱くなかったの!? あっ、熱くなかったんだよね。・・・じゃなくて! 火傷してない? 大丈夫?」

「あっ、ほんとだ、火傷大丈夫?」

 直ぐにしゃがんでリーネちゃんの手を見る、フララちゃんもしゃがんで見る。良かった火傷してない、服の先がちょっと焼けてるだけ

「良かった〜、火傷してない。リーネちゃんここ見て、服ちょっと焼けちゃってるでしょ、もうこんな事しちゃダメよ!」

 ひっさま、ありがとう、リーネちゃん火傷から守ってくれて。そうなんだ、びっくりしたんだね。もうちょっとで沸くの? 分かった、準備するからゆっくりお願い。さすがです、お願いします。

「あれ? 何かおかしくない?」

「どうかしたの? 火傷してた!?」

 ちゃんと見たと思ったんだけど、プクプクしてるリーネちゃんの手の上見て、ひっくり返して手のひらを見てもちょっと黒くなってるだけで、赤くはなってない。

「リーネちゃん、痛いところない?」

「ない」

 嘘も我慢もないから、大丈夫だと思う。何がおかしいんだろう?

「うーん。本当に今、おかしいって思ったんだけど、何でだったかなー?」

 思い出せないなーって、首を横に倒してる。フランお母様も同じ事してる、たまに思い出す事あるから、思い出せたらいいね。

 もうちょっとでお湯が湧くなら、先に色々やらないと

「リーネちゃん、おしっこ行く?」

「うーん、ちょっとだけしたいかも」

「じゃあ、便所に行こうか」

 リーネちゃんを抱っこする、抱っこしたらリーネちゃんが背中をギュッとしてくる。ちょっと怖かったのかな? 背中にポンポンする、大丈夫だよー

「私も行く」

「分かった、一緒に行こっか」

 フララちゃんも行くから、家に誰も居なくなるのか・・・

 ひっさま! ありがとう

 お願いする前に分かってくれるひっさま。火が弱くなってる

「セイちゃん、火が弱くなったけど消えちゃわない?」

「大丈夫みたい。フララちゃんからおしっこする?」

「私は最後でいいよ、セイちゃんもするんでしょ」

 家の外に出て便所の方に歩く、フララちゃんも家を出て直ぐに横に並ぶ

「ちょっとしたいだけだから、・・・リーネちゃんの後にでしてもいい?」

「うんいいよ」

 便所の前に着いた。近いからね! 家の横だしね!

 抱っこしてるリーネちゃんをしゃがんであっちを前向きに下ろす、リーネちゃんが右足を上げたからズボンを下ろして右足を抜いて、左足を抜いてズボンを脱がしてあげる。何も言わなくても足上げてくれるリーネちゃんは賢いね

「ズボンって脱がすんだね」

「え? ズボンって脱がさないの?」

 そういえば、わたしの時はズボン下ろすだけだったような? 今は少し下ろすだけだし、小さい女の子のは分からない

「リーネちゃんはいつもどうしてるの?」

 フララちゃんがリーネちゃんに聞く。ズボン脱いでてちょっと寒そうなんだけど、でもいつもどうしてるのか知っといた方がいいし

「いつもは、おねえちゃんがだっこしてする」

 抱っこして? ズボンは?

「ズボンは脱ぐ?」

「ずぼんは、すこししたにする」

 少しだけ下げて持ち上げてするんだ。そうした方がいいのかな?

「リーネちゃん、真似した方がいい?」

 リーネちゃんは首を振る

「うんん、すわってしたい」

「そっか、じゃあ行こうか」

 どうしてわたしは、最初に聞かなかったんだろう? 他のお母様達を見てたからかな?

「じゃあ、行ってくるね」

「「はーい」」

 リーネちゃんも一緒に行くのに返事してくれる。

 リーネちゃん肩中を押しながら便所に入る、入ったら脇の下に手を入れて横から持つ、座っておしっこして、今回はうんこしてない、置いてある小さい布を取る。ちょっと砂ついてる払っとこ

「はい、リーネちゃんこれで拭いてね」

「ふいてほしいな〜」

「いいよ」

 かわいい、優しく拭いてあげたくなるよね。

 今回はうんこしてないから、お尻を拭かない、後ろから女の子のちんちんの所だけを拭く。わたしのやり方合ってるのかな? 後で聞いてみよっと

「はい、終わりました。でよっか」

「はーい」

「「おちないように、おちないように」」

 リーネちゃんを立たせて、穴に落ちない様に後向きに出ようとすると、背中を受け止められる

「セイちゃん、そこまでやってあげるんだ」

 フララちゃん見てたんだ。何かおかしかったのかな?

「そこまでって?」

「おしっこするところ拭いてあげるんだなって」

「お母様達は拭いてあげてたよ?」

 うん、拭いてたね。お父さんもきっと拭いてくれてた、きっとね!

「そうなんだー、やっぱり年下の兄弟の面倒を分からないなわね」

「わたしも、小さい子の面倒見るの今日が初めてだから、よく分からないからないんだ。困ったら大人に頼れって言われてるから、リーネちゃん困ったら、お母様達の所に行こうね」

「うん!」

 元気な笑顔で返事をしてくれる。お尻丸出しで

「リーネちゃん、ズボンはこっか」

「あ、私するから、セイちゃんはおしっこしてて」

「ありがとう、リーネちゃんをお願い」

 リーネちゃんをフララちゃんにお願いして、おしっこをする。するんだけど

「フララちゃん何してるの?」

「え? セイちゃんがどうやっておしっこするのか気になって。リーネちゃんも気になるよねー」

「きになるー」

 えー・・・。うーん、お父さんにチンチン見せちゃダメって言われてるからダメだよね

「ダメだよ、お父さんにチンチンを女の人に見せちゃダメだって言われたから。見たらダメだよ」

「アベルさんかー」

「あべるさんかー」

 リーネちゃんが真似してる。ズボン履かせてあげて

「アベルさんが言うんじゃ仕方ないね」

「ねー」

 フララちゃん達が便所から出ていったからおしっこする。お父さんの言う事はみんな聞くだよね、わたしもだけどね。お父さん凄い!

 おしっこ終わったから便所から出る、リーネちゃんのおしっこ拭いた布も持ってく

 外に出るとリーネちゃんがズボン履き終わってた

「フララちゃんありがとう、便所どうぞ」

「じゃあ行ってくるね、先に家入ってていいよ」

「分かった、便所に落ちないでね」

 助けれないからね。さて、家に早く戻らなきゃ・・・その前に手を洗わないと

「リーネちゃん行こっか」

「うーうん、ふららおねちゃんまってる」

「そう?」

 ガーン! リーネちゃんにフラれた・・・。あー、おしっこ付いた布持ってるからかな?

「分かった、フララちゃん待ってる間にあそこのお花を何本か摘んで貰える?」

「えっ! いいの? おはなとってもいいの!?」

 うわっ、すっごく目がキラキラしてる。別に育ててるわけじゃないし、いつでも勝手に取ってって貰ってもいいんだけど、畑の野菜は困る

「フララちゃんと一緒に摘んできてね」

「はーい!!」

 今日1番の元気な返事、すっごい笑顔。花に・・・まけた・・・

「わたし・・・」

 家に行くね・・・いない・・・。

「手洗って、準備しよっと」

 寂しくないよ・・・、ねえ?

 畑横の樽の水をすくって樽の横で手を洗う、手を突っ込んで洗うとお母様達に怒られる、ソイちゃんはいつも怒られてる。

 手を洗ったら、リーネちゃんのお尻拭いた布を洗おう、うんこ着いてるやつも一緒に。樽横に置いておいた布を片手で持って、もう片方の手で水を掛けてギュッギュッってする、それを何回かして最後にギューして水を出す、布を広げて樽に掛けて蓋をして終わり。お父さんいつもこうしてくれてたんだよね・・・、会いたくなってきたなー

 もう一回手をキレイに洗って、家の入り口の方へ歩く。そういえば、フララちゃん布洗ってる間に出てこなかったね、溜まってたのかなー? って言うと、お母様達に怒られるから言わない、聞かない!

 家に入ると鍋の中がブクブクしてた。沸いてる良かった。

 うん、遅かったよね、うん、うん、ごめんなさい、そうなの? はーい分かった。ねえ、もうちょっと大丈夫? ありがとう、ひっさま大好き!

 よし! ひっさまが、まだ燃えてくれるうちに牛乳を沸かそう。

 鍋を持っても熱くない様に、布を4回畳んで鍋を横にずらす

 。重いしちょっと熱い、でもリンさんの為に頑張ろう!

 鍋をずらした所に、小さい鍋を置いて牛乳を入れる。

 置いたよ、お願いします、うーん、どうなんだろう? ひっさま分かる? そっかー、お酒さん寝てるから聞けないし、ゆっくりでお願い、えへへ、ありがとう

 牛乳をぐつぐつさせるのは、ひっさまに任せてお湯の準備をしよう。

 さっき汲んできた水をタライに入れるんだけど、タライどこに置こうかな? 床と机の上、どっちがいいかな? うーん・・・

 机の上にタライを置いて水を入れる、水を移すコップは大きいけど何回も入れないといけない。これもフララちゃんのため、頑張ろう

 タライに水を入れ終わった。途中で桶を持って移した方が早い事に気づいて直ぐに終わった、今は熱いお湯をコップで移しててる。流石に熱いから鍋を持つのは無理! ちょっとづつ、ちょっとづつ

 え? もう? ありがとう! もう消えるの? そっか、ありがとうまたね。

 牛乳が沸いたから、ひっさま消えちゃった。また、夜にお話しできるよね

 お湯を入れて、タライの水がちょっと熱いぐらいになった、準備はこれで・・・布も用意しよう。うーん、フララちゃん達帰って来ないねー、溜まってた・・・なんでもない

 布は、いっぱい使うだろうから、いっぱい用意しておこう。寝る部屋の布を置いてるところで布を集めてると、フララちゃん達が帰ってきた。

「あれ?セイちゃん?」

「ただいまー」

 リーネちゃんは『ただいま』好きだよね、かわいいよね。

 今持ってる布を持って、フララちゃん達の所に行く

「おかえりー、っていっぱい摘んだね」

 うわー、本当にいっぱい摘んできたね、リーネちゃんの腕いっぱいにお花が・・・

「せいちゃんほら、いいにおい」

 腕いっぱいに花を持って、良い匂いって嬉しそうに幸せそうに笑ってるリーネちゃん、可愛すぎる!

「かわいい!!」

 フララちゃんがわたしの代わりに叫んでくれる。リーネちゃんを幸せそうに見てる、フララちゃんもかわいい

 リーネちゃんの持ってる花に鼻を近づける、すごく良い匂い! 花に鼻を近づけ・・・いける!

「リーネちゃん、花に鼻を近づけて匂ったら、良い匂いだね」

「ねっ、いいにおいでしょ」

 リーネちゃんが嬉しそうにぴょんぴょんしてる。リーネちゃんそうじゃなくて、花に鼻がね

「セイちゃん、それで笑うのはアニキぐらいだよ」

「え!?」

 フララちゃんが呆れた顔してる、嘘も言ってない・・・。うーん、夜にリンさんに言ってみよう、きっと笑ってくれる

「じゃあ、髪洗おっか。フララちゃん服脱いで」

「はーい、濡れるもんね」

 フララちゃんが長袖を脱ぎ始める、中にもう一枚着てる。今日は寒いかったからね、今はあったかい

「あ、フララちゃんちょっと待って」

「なに?」

 中に着ていた服を脱ごうとしてるフララちゃんを止めて、家の入り口に行く

「家の入り口開いてるから閉めないと」

 女の人の裸は男の人にみせちゃダメなんだって、入り口閉めとかないと誰か通るかもだからね

「ありがとう、いつもお母さんしてくれてたから忘れてたよ」

「フララちゃん、何で男の人に裸を見せちゃいけないか知ってる? お母様達教えてくれなくて」

 上の服を全部脱いだフララちゃんが首を横に倒してる。思い出せ〜、思い出せ〜

「何でかは教えて貰ってないけど、好きな人にだけしか見せちゃいけないんだって」

「そっかー、そうなんだ」

 フララちゃんも教えて貰えてないんだね。やっぱり大人にならないと色々分からないのかな?

「セイちゃんが、ちんちん見せちゃダメって言われてるのと、何か関係あるのかな?」

「そういえば、女の人に見せちゃダメって言われてた。男の人は良いらしいから、何かあるのかな?」

「どうなるんだろね。ちょっと試しにちんちん見せてよ」

「ダメだよね」

 うん、ダメだよね。何で、失敗したかーって顔してるの! 騙されてないよ、まったくもう。でもいつものフララちゃんになって良かった

「ふららおねえちゃん、おねえちゃんより、おおきいね」

 ん?何が大きいんだろう? 背の高さは同じぐらいだし

「でしょ、ライカより大きいんだ」

 手を腰に当てて胸を出して「えっへん」してる。胸? あー、確かにライカちゃんより大きい、お父さんのよりも大きい・・・

「フララちゃん、触っても良い?」

「胸? いいよ」

「りーねもさわりたい」

「いいよ」

 じゃあ、右はわたしで、左はリーネちゃんかな。えー、リーネちゃん二つはずるいよ、うーん、ちょっと待っとこ

「ふかふかだ〜」

 ふかふか?

「やわらかーい」

 柔らかい?

「はーい、リーネちゃん終わり。セイちゃんどうぞ」

「えー」

 リーネちゃんは残念そうに手を離す。素直に言うことをきいてくれる、本当にいい子だね

「触るから、力入れてね」

「え? ちから?」

 フララちゃんの胸を上の側から触る。あれ? 全然硬くない・・・

 真ん中の方を押してみる。本当に柔らかい、なーんだ大っきいだけだ。

 大きさは負けたけど、硬さはお父さんの勝ちだね。うふふ、お父さんやっぱり強い!

「うん? セイちゃん、何でそんなに勝ったみたいな顔なの?」

 フララちゃんが不思議そうにこっちを見てる。そっか、フララちゃん子供だもんね、まだ知らないんだ

「前にお父さんが、『どうだセイ、父さんの胸は大きくて硬いだろ、力が強い証なんだ』って言っててね、リンお母様も同じぐらいの大きさで、ちょっと硬かったから、胸が硬いと強いんだよ」

 リンお母様強いからね、多分! ライキがリンお母様怖いって言ってたからきっと強いはず

「そうだね、わたしは弱いから柔らかいんだよ〜」

 フララちゃんが優しい笑顔で頭を撫でてくる。大人がよくするやつだ、えへへ


 コンコン


 小さい子が扉を叩く音が聞こえる。あ、リリカちゃん来た

「リリカちゃんが来たんだけど、入れてもいい?」

「あー、リリカちゃんなんだ。いいよ」

「セイくーん」

 やっぱり、リリカちゃんだった

「今、開けるから、ちょっと待ってね。フララちゃん、一応胸隠しててね」

「そうだね」

 フララちゃんは自分の脱いだ服で胸を隠す。うん、ちゃんと隠れてるよね、はみ出しては・・・ない。

 入り口に行って棒を抜く、急に開かないようにちゃんと扉の持つところを持って、少し開いて外を見る。うん、リリカちゃんだけだ

「何でそんなに、コソコソしてるの?」

「男の人いたら開けられないからね、はいどうぞ、入って入って」

 扉を開けてリリカちゃんに入ってもらう。何で止まってるの入ってよ、閉めたいんだから

 入り口で止まったリリカちゃんを引っ張って、扉を閉めて棒をさす。これで安心、もうドキドキしたよ

「おはようリリカちゃん、どうしたの?」

「りりかおねえちゃんだ、おはよう」

 どうしたんだろう? リリカちゃんがずっとフララちゃんを見てる

「あ、うん、おはよう」

 あ、動き出した、でもまだボーッとしてる。何だか、ちょっと怖いからそっとしておこう・・・

「フララちゃん、取り敢えずこの布を体に巻いて」

「あ、うん、わかった」

 胸を隠してた服を椅子に置いたフララちゃんに、大きい布を渡す。大き過ぎたかな、床に擦りそう

「終わったらそれで、髪の毛拭くから・・・」

「ちょっとセイくん! フララお姉ちゃん! 何してるの!」

 うわっ! すごく大きな声、びっくりした・・・。何って・・・

「布渡しただけだよ」

「布を巻こうとしてる」

 フララちゃんは胸のしたぐらいで巻こうとしてる。あそこなら布に水掛からないし、ズボンも濡れない、フララちゃん頭良い、今度真似しよっと

「違うの! 違うよ! フララお姉ちゃん、なんでセイくんにお胸見せてるの!」

 え? お胸? お胸って言うと、何かかわいいね、今度から使おうっと

「えっと、何でって、髪洗ってるとき服濡れちゃうから?」

 フララちゃんが答える。そんなの子供でも分かることなのに、リリカちゃんもまだまだ子供だな〜

「セイくん、その顔やめて。知ってるわよ、そんな事ぐらい」

 じゃあ、何で怒ってるんだろうね? とりあえず、怯えてるリーネちゃんの背中をさすってあげる。

「あー、もう! フララお姉ちゃん、お母さんに、男の人にお胸を見せちゃダメって言われてないの?」

「言われてるよ。だから、リリカちゃん来た時隠してたでしょ」

 背中さすってると、リーネちゃんが安心したのか、笑顔を見せてくれた。えへへ、かわいい

「じゃあなんで、セイくんに見せてるの!」

「セイちゃんに洗って貰うから」

 笑顔になったリーネちゃんに、フララちゃんの脱いだ服を渡す、中に着てた方。長袖のほうは床に着いちゃうかもだからわたしが畳む。

「フララお姉ちゃん、どうして・・・もう・・・」

「リリカちゃんどうしたの? 何かあった?」

 まず服を広げます、袖が中向いてぐちゃってなってるから直します、リーネちゃんの方も直してあげる。じゃあ、半分に折ります、そしてもう半分、そしてもう半分。はいありがとう、リーネちゃんから服を受け取る

「どうかしてるのは、フララお姉ちゃんだよ! セイくんは男の子だよ、なんでお胸見せてるの!」

「あー! そうだ! セイちゃん男の子だった!」

 畳んだフララちゃんの服を、リーネちゃんとクンクンしてると、見られてる気がして顔を上げる。見られてた

「セイくん、何してるの?」

「セイちゃん・・・、臭い?」

 何だろう、今日のリリカちゃん、何か怖いよ。

「ニューの匂いしてないよ」

「ちょっとくち・・・」

 リーネちゃんを抱っこしてクルクル回る。危ない危ない、汗臭いのは普通の事だから言っちゃダメ!

「セイくん・・・まあいいわ。セイくん、セイくんは女の子?」

「ううん、男だよ。リリカちゃんもさっき言ってたじゃない」

 さっき自分で言ってたのに、もう忘れちゃんの? まだまだ子供だな〜

「セイくんその顔やめて。聞いてたのね、じゃあ、フララお姉ちゃんの胸見ちゃダメじゃない」

「え? どうして?」

「こっちがどうしてよ、何で分からないのよ。女の人は男の人に裸を見せちゃいけいないの! セイくん男の子だから見ちゃダメでしょ!」

「あーーー! 本当だ!!」

 そうだー、わたし男だった・・・、どうしようどうしよう、悪い事しちゃった。どうしよう、うーん

「えー・・・、本当に気づいてなかったんだ」

「フララちゃんごめんね、見ちゃってごめんね。フランお母様との約束破らせちゃった、ごめんねフララちゃん」

 フララちゃんとフランお母様に悪いことしちゃった・・・。涙でてきた、わたしわたし

「ふぐん」

 頭を掴まれて柔らかい所に引っ張られる。フララちゃんの匂いがする

「泣かないでセイちゃん、見せたのは私だし、お母さんと約束とかしてないし、私はセイちゃんの好きだから何とも思ってないよ」

「ゔぇ?」

 口塞がれてるから変な返事になっちゃった。

 フララちゃんが力を緩くなった、顔を上げると目の前のフララちゃんは笑顔だった。優しい笑顔、落ちつく笑顔

「好きな男の人には見せていいの、だから大好きなセイちゃんに見られても平気だよ」

「そうなの?」

「セイちゃんは、私のこと嫌い?」

「ううん、好きだよ」

「じゃあ、もうこの話はおしまい。セイちゃん、髪洗ってくれるんでしょ」

「うん!」

 わたしのことを大好きって言ってくれる、フララちゃんの為に頑張って髪を洗ってあげよう!

「フララお姉ちゃん! セイくんを1番大好きなのは、私だからね!」

 リリカちゃんが急に大きな声を出したせいで、ほっぺたを摩って励ましてくれてた、腕の中のリーネちゃんがビクッとしてる。背中を摩ってあげる、今日はビックリしてばっかりだね〜、よしよし

「リリカちゃんそれは違うよ、セイちゃんの事を1番好きなのは、アベルさんだよ」

 そうだよね〜、お父さんだよね〜。うへへ

「違うの! そういうのじゃくて・・・」

「フララちゃん、このタライの上に頭出して」

 違わない違わない、お父さんはわたしの事を大好きなの。お湯が冷めちゃうじゃん、早くしないと

 リーネちゃんを椅子に座らすように下ろして、タライに手を入れる、まだちょっと温かいけど、ぬるくもなってる。お願いもうちょっと熱くなって、もうちょっとだけで良いから

 タライの水をグルグルすると少し熱くなった。よかった、ありがとう

「セイちゃん、ここぐらいでいい?」

 机に手を置いて、頭はタライの上にあるんだけど、ちょっと高い場所にある。

「もうちょっと、下にしてくれる」

「ここ?」

「もうちょっと下。うん、そこ」

 髪がタライのお湯に着くぐらいまで、顔を下げてもらう。上すぎるとお湯が飛んじゃうからね

「お湯かけかまーす。熱かったら言ってね」

 コップを使ってお湯をフララちゃんの頭にかける。大好きだって言ってくれる、フララちゃんのために頑張ろう!

「んっ」

 お湯をかけたら、フララちゃんがビクってなった。

「熱かった?」

「ううん、温かく気持ちいいよ」

 うん、嘘はないから良かった、どんどんかけていこ

 お湯をかけて、お湯をかけて、髪をもしゃもしゃして、お湯をかけて、お湯をかけて、もしゃもしゃ

「リーネちゃん、お花貰っていい?」

「おはな? ・・・あ!」

 リーネちゃんに言うと、思い出して椅子から床に降りて花を拾ってる。

「もう、散らかしてダメじゃない」

 リリカちゃんも床に落ちてるお花を拾ってくれてる。・・・まあ、リリカちゃんのせいなんだけどね

「りりかおねえちゃんが、おおごえだしたから、びっくりしたの」

「ええ、そうだったの、ごめんねリーネちゃん」

「うん、おねえちゃんもいっしょにひろって」

 拾ってるのにね、リーネちゃん面白いね

「はいせいちゃん、おはな」

 リーネちゃんが拾ったお花を7本くれる、頭撫でたいけど手が濡れてるから撫でられない

「ありがとう、大事に使うね」

「うん?」

「フララちゃん、ちょっと待っててね」

 濡れた手で貰ったお花を持って、お花の部分をちぎる。これ、なんてお花何だろう? 村長ばあちゃんに聞いてみよ

「あー! せいちゃんが、りーねのおはな、こわした!」

 え!? 壊した!?

「違うよ、ちぎってお湯に使うの、良い匂いするんだよ。たぶん」

「え? たぶんなの?」

 驚いてるフララちゃんの横から、ちぎったお花をお湯の中に入れる。いい匂いになれ〜、いい匂いになれ〜

「せいちゃんが・・・おはな・・・」

 リーネちゃんが泣きそうになってる、抱っこして謝らなきゃ、でも手が・・・リリカちゃんお願い!

 リリカちゃんを見ると目が合って頷いてくれる。さすが「頼れるお姉ちゃん」

「セイくんってヒドいよね〜、お花壊しちゃうんだもんね〜」

 えー! そっち! もっと泣きそうな顔になったよ!

「セイくんがお花壊して、何をしたいか見てみよっか」

 リリカちゃんは、リーネちゃんを抱っこして、わたしが何をしたいかを見せようとしてくれる。

「・・・みえない」

「ぷふっ」

 笑ったのはわたしじゃないよ! フララちゃんだよ!

 だって、机の上に顔がでるぐらいのリリカちゃんが抱っこしても、タライの中みえないよね。ちょっとおもしろかった

「り、リーネちゃん、机に乗っていいよ」

 あっ、笑ってる声がちょっとでちゃった。リリカちゃんニラまないでごめんね

 リリカちゃんは、ふーって息を吐くと、リーネちゃんを机に押し上げる、リーネちゃんは机に登って座ってタライの中を見る。靴脱いで欲しかったな・・・

「きれい、いいにおいね」

 リーネちゃんがタライの中を見て笑顔になった。イったー、リリカちゃんに足蹴られた、笑ったシカエシだ。

 リリカちゃんは、わたしの横のイスに靴を脱いで立ってタライの中をみる。何かフラフラしてて怖い

「本当にきれいね、花がバラバラになって、花びらが舞っててとても綺麗」

「花びらが舞っててとても綺麗って、こう言う時に使うの?」

「そうよ! きっとそうよ! 綺麗ね」

 けっこう前に一緒に読んだ、聖書の中で出てきたお花の女神お話でリリカちゃんの好きは女神様だ。何回読んだんだろうね、いっしょに・・・

「で、セイくんはさっきから何してるの?」

 何って、タライのお湯をグルグルして、フララちゃんに手でお湯を掛けてるんだけど、見て分からないなんて・・・

「セイくん、その顔やめて」

「お湯を掛けて、頭をふやかしてるんだ」

「汚れが落ちやすくするため?」

「よごれ・・・」

 もう! その言葉言わないように気をつけてたのに!

「そうだよ! だから今からすっごくキレイになるからね!」

「そっ、そうね、セイくんならすっごく綺麗にできそうね」

 リリカちゃんが、ごめんって目で見てくるから、いいよって目で見る

「くちゃいの、なくなるの?」

 ちょっ! リーネちゃん!

「うう・・・、臭いかったよね。ごめんね・・・・」

 ほらもう、泣いちゃった・・・

 何で髪を洗ってあげてるか分かったのか、リリカちゃんが何とかしろの目で見てくる。言われなくてもやります

「じゃあ、お湯がいい匂いになったから、頭を洗っていきます」

 頭にお湯かけて、よしよしする。もう泣かないでよ・・・、涙が出てくるから・・・

 ちょっとだけ出た涙を腕で拭いて、フララちゃんの頭を揉む。フララちゃんを泣かせた臭い出てこい!

 お湯をかけて、頭を指で揉んで、お湯をかけて、手のひらで髪の毛洗って、お湯をかけて、指で頭を揉んで

 手を全部使って、フララちゃんに元気になってもらいたくて、頑張って洗っていく

 頭を洗ってて、ふと気付く、タライのお湯が真っ黒になってる事に・・・。花びらも見えないぐらい、茶色じゃなくて黒い・・・

「うわ・・・」

 今の声は誰が出したのか分からないぐらいあわててる。わたしかな? リリカちゃんかな? そんなことよりこれをフララちゃんに見せちゃいけない!

「フララちゃん、今からいっぱいお湯かけるから目を開けちゃダメだよ」

 どうしよう、どうしよう・・・、とりあえず黒いのを何とかしないと、タライのお湯をかき混ぜて、黒い水を集める、でも集まってくれない。お願い手伝って!

 え? もっとゆっくりテイネイに? テイネイって? 分かった、優しくだね。

 言われたようにゆっくりテイネイに黒い水を集める、優しく優しくテイネイに・・・

 テイネイに集めたら水の中で小さな黒い丸にになった、それを水の中から手ですくって出す。うわ、プルプルしてる・・・、そして臭いが、くっさい!

「セイくんそれ・・・」

 リリカちゃんが何か言おうとしてるのを最後まで聞かないで、フララちゃんから離れる。これは、フララちゃんに見つかったらダメなやつだ・・・

「セイくん」

 リリカちゃんとリーネちゃんがこっちを見てる。リーネちゃんは置いといて、リリカちゃんはどうするの?って目で見てくる、扉あけてって目で見る。リリカちゃんは頷いて扉に行って、棒をはずして外を見てから開けてくれる。

「ちょっと、セイちゃんどうしたの?」

 家の扉が急に開けらたから、フララちゃんが心配で聞いてくる。

「わたしちょっと、便所に行ってくるね」

「え?」

「お湯かけたらいいの?」

「うん、リリカちゃんお願い」

 家を出ると、扉がすぐに閉められる。リリカちゃんはこういう時、本当に頼りになる

 すぐに便所に行って、穴の中に黒いのを捨てる。今のが、フララちゃんの頭にあったんだ・・・

 うわ〜ってなるけど、自分の頭にあるかもしれないからちょっと怖い。

 手には着いてないけど手を洗ってから家に戻る。周りを見てから扉を叩いて「リリカちゃん開けて」って言うと扉がすぐに開けてくれた、中に入ってすぐに扉を閉めて棒をさす。ちょっと楽しくなってきた、なんでだろう?

「リーネちゃんがお湯かけてくれてるんだね。楽しい?」

「うん! たのしい!」

 リーネちゃんとフララちゃんが楽しそうに笑ってる。フララちゃんはきっと、全然かかってないって笑ってるんだろうな〜

「じゃあ、続きやるね」

「うん、お願い。もう腕が・・・」

「そうだよね、ごめんね、頑張ってね」

 フララちゃん大変だな〜。そうだ、つづきしないと

 ん? 手伝ってくれるの? ありがとう 残りは髪の毛の汚れをお湯で流すだけだから じゃあ、それで

 さっき、お話しできるようになったお水さん、・・・お湯さんが手伝ってくれるみたい。もう少し仲良くなったらなんて呼んだらいいか聞いてみよう。

 お湯をすくって、フララちゃんの頭の上でひっくり返して、手のひらにあるお湯を押し付ける、あとはお湯さんがやってくれるみたい。手疲れてたから、助かる

「え、なに? セイちゃん何してる? あはははぁ〜〜〜〜、気もちいいぃ〜〜〜」

 あははは、フララちゃん変な声出してる。気持ちいいんだ・・・、お父さんにやってあげたい!!

 うわ〜、結構汚れ残ってたんだ、どんどん黒くなってく

 うん、分かった。黒いお湯ひろがる? 分かった、端っこだね

 手にある黒いお湯をタライのお湯に戻して、フララちゃんにバレないように端っこの下の方にまとめとく、キレイなお湯をすくって、フララちゃんの頭に押し付ける。またフララちゃん気持ち良さそうにしてる、キレイにすると気持ちいいもんね

 頭のお湯をまたタライの下に固めて、また掬って髪をなでる。お湯に入った髪がすごく揺れてて、ちょっと、面白い? キレ・・・、気持ち悪い?

「ねえセイくん、ちょっと気持ち悪いね」

「うん、でもフララちゃんは気持ち良さそうだから、いいのかな〜?」

 お湯の中で、黒茶色の細いものがウネウネ動いてるのは、何か背中が上に引っ張られる感じがくる

「え、何やってるの? 目開けてもいいの?」

「いいよ、ほら見てこれ」

 フララちゃんが、下向いままで見えるように髪の毛の端っこの方を、手のお湯に入れて見せてあげる。

「うわぁ〜、何これウネウネしてる、なにこれ?」

「フララお姉ちゃんの髪の毛だよ」

 リリカちゃんが答える。リリカちゃん、気持ち悪いとか言いながら、じっと見てるのはなんでだろう?

「そうだ、早くやらないとフララちゃんの手が大変だよね、目を閉じてね」

 目を閉じたフララちゃんの髪の毛を、水でウネウネさせて、頭を洗う。

頭と髪の毛全部終わったかな、疲れた・・・

「フララちゃん終わったよ」

「セイちゃんありがとう、もう体を起こしてもいいの?」

「ちょっと待って、水が垂れないようにするから」

「セイくん、あたしにも手伝わせて。フララお姉ちゃん、あたしが頭拭いてあげるね。セイくんは水捨ててきて」

「うん分かった、お願いね。お湯捨ててくるね」

 まだ温かいのに水だって、お湯なのにね。リリカちゃんは・・・

「セイくん、その顔やめて」

「あはは、セイちゃんとリリカちゃんは仲良しだね」

 黒いお湯を持って家から出ようとしてる時に、言われたから、ちゃんと答えてから出ないと

「当たり前よ」「そう見えるんだ」

「「「え?」」」

 リーネちゃん以外みんな驚いてる。リリカちゃんもそう思ってる事に、ちょっと泣けてきた。

「セイくんひどい・・・あたしはセイくんと仲良しだって思ってたのに・・・」

「リリカちゃんひどい・・・わたしはリリカちゃんと大の仲良しだと思ってたのに・・・」

「「ん?」」

 なに? 二人に見られてる、リーネちゃんはキョロキョロしてる。みんなかわいい顔してる!

「えっと、リリカちゃんは仲良しだと思ってて、セイちゃんは大の仲良しだと思ってたんだ」

「うん」

「じゃあ、リリカちゃんが悪いわね」

 ほらー、やっぱりリリカちゃんが悪いんだー

「せいくんその顔やめて。ごめんね、あたしもセイくんとは大の仲良しだと思ってるよ、ごめんね」

「うん、一緒にフラライカに勝とうね!」

「もうセイくん、勝ち負けってどうやって決めるのよ」

「「えへへへ」」

 仲直りできてよかった。ケンカしてないけど

「ねえ、フラライカってなに?」

「お湯捨ててくるね」

「ねえ、セイちゃんが手に持ってる何?」

「フララお姉ちゃん動かないで、髪拭いてるんだから」

「外、誰もいないから棒大丈夫。すぐ行ってくるね」

「ねえ、なんで何回も便所に行ってるの?」

 スッと家を出て、扉を閉めて、便所に走って、黒いのを捨てて、走って家に戻って、人居ない、家に入る、棒さす、疲れた

「早かった?」

「はやかった」

 ありがとう、リーネちゃんの頭を撫でる。ベタベタしてるの忘れてた、リンさんの匂い?

 フララちゃん達は髪の毛を今、拭き終わったみたい。まだ、服着てない

「なにセイちゃん?じっと見て」

「フララちゃん、触ってもいい?」

「え、また? いいけど」

「ちょっと、フララお姉ちゃん!」

 フララちゃんの方に行って、触ってみる

「ねえフララちゃん、痛くない? 真っ赤だよ」

 机に置いてた手が真っ赤になってる。痛そうにはしてないけど、突っついてみる

「大丈夫、痛くないよ。私もさっき見て驚いたけど、こっちの方が痛いかな」

 ヒジより上の腕を揉んでる。わたしも揉んであげよっと、なおれな・・・お・・・れ

「えええ」

「どうしたのセイくん、驚いた声出して、気持ちいいとか言わないでよ」

「フララちゃんの腕」

「私の腕が?」

「かたい!!」

 えー・・・、いいな〜

「「うん?」」

「胸は大きいし、腕はかたいし、いいなー」

 でも、まぁあ〜、お父さんの方がすごいけど、ね! ふふん!

「セイくん、なんでお父さん自慢の顔してるの?」

「セイちゃんは、直ぐに顔にでるよね。硬いと強いって村長に言われたんでしょ」

「うん、そうだよ。お父さんのすごくかたくて、あ、アコガレる?」

「アベルお父さんの腕、硬いもんね、あ、アコガレるよね」

「りーねも、ああこがれる」

 机に置いてた花をちぎって、タライに入れてるリーネちゃんがマネする。ああこがれる、だっけ?

 タライのお湯に手を入れたら、けっこう温くなってる。

 お湯さん、もっと温かくできる? さっきやったやり方って? 手を入れて回せばいいの? わかった

「ああこがれる、じゃなくて、憧れるだよ」

 手はタライに入れてたから、そのまま手を回す。温かくなれー、あったかくなれー

「そうなんだ、ありがとう。あこがれる、あこがれる・・・」

「ありがとうフララお姉ちゃん。あこがれる、あこがれる・・・」

「いいにおいね」

 ちょっと温かくなってきた。温かくなれー、いい匂いになれー

「ねえ、フララお姉ちゃん、もっと硬くできないの? あ、その前に服着て」

「あ、ごめんね、服は・・・」

「リーネちゃん、フララちゃんに服を『はいどーぞ』してあげて」

 手が濡れてるから、リーネちゃんにお願いする。

「はいどーぞ」

「わー、ありがとうね」

 フララちゃんに服を2つ渡してくれる。ちょっと濡れてた、ごめんね。

 お湯が温かくなったから、お湯から手を出して、手を拭いて、リーネちゃんの服を脱がしてあげる。

「手上げてね」

「つめた! ちょっと濡れてた」

「ふららちゃん、ごめんね」

「いいよ、少しだから直ぐ乾くだろうし」

 リーネちゃん元気だから長い服一枚だけだった、ズボンを下げると足を上げてくれるから、ズボンとパンツを脱がしてあげる。もう、息ぴったりだね

「フララお姉ちゃん、こうして、こう!」

 リリカちゃんが腕をまっすぐにしたり、曲げたりする。あれで硬くなるみたいなんだけど、わたし硬くならないんだよね〜

「こう? ふっ!」

「どう、熱くない?」

「すごい! フララお姉ちゃんすっごく硬いよ」

「あたたかーい」

 良かった、熱かったら冷めるまで待たなくちゃいけないからね。大丈夫そうだし、タライに入ってるリーネちゃんの、下の方から少しづつお湯をかけてあげる、テイネイに

「きもちいい?」

「セイくん、フララちゃんの腕かた・・・い・・・」

「あたたかいから、きもちいい」

 顔がすごく嬉しそう。

「セイくん、何してるの?」

「リーネちゃんの、体洗ってあげてるんだよ。私も手伝おうか?」

「いいの? ありがとう」

 やった! わたしは髪の毛をやろっと

「セイくん、すぐ女の子とベタベタしすぎなのよ・・・」

「リリカちゃん、どうしたの?」

「何でもない! フララお姉ちゃんのせいだからね!」

「何が!?」

 リリカちゃんがプリプリしてる。ベタベタはリーネちゃんの頭なのにね、わたしはベタベタしてないよね?

「リリカちゃん、わたしベタベタしてる?」

「してるわよ! 聞こえてたのね!」

「わたしはベタベタしてて、リリカちゃんはプリプリしてる。一緒だね」

「なにがよ〜、もういいわよ・・・」

 拗ねちゃった、後で仲直りしよっと

「リリカちゃんごめんね、何で怒ってるか分からないから、後でお話ししようね」

 リーネちゃんの頭にお湯をかけながら、リリカちゃんに謝る。今は、リーネちゃんの頭を洗いたいからごめんね

「せいちゃん・・・」

 リーネちゃんが心配そうな声をだしてる。いいこいいこ

「大丈夫だよ〜、ケンカじゃないからね。目つぶっててね」

 つぶってるけどね、頭にかけたお湯が顔に流れる。

「くちゃい!」

 リーネちゃんが目を開けてこっちを見てくる。驚いて怒ってる目だ

「えっと、わたしは何もしてないよ」

 リーネちゃんがフララちゃんの方を見る

「私は、体洗ってただけだよ」

 フララちゃんが布を見せる、布をじっと見た後、リリカちゃんの方を見る

「私じゃないわ。たぶんリーネちゃんの頭の匂いよ」

 声が怒ってるけど、ちゃんと答えてあげるリリカちゃんはほんと、・・・何だろう? 頭がいい?

「せいちゃん・・・」

 驚いてる目になってる。なんかかわいい

「今からキレイにしようね、目つぶってね」

 前向いて目つぶったの見て頭を一回なでてからお湯をかける。ちゃんと洗ってあげないと

 お湯さんを手に乗せて、リーネちゃんの頭に押し付ける。お湯さんお願い

「まぁ〜〜〜、うぁ〜〜〜」

 リーネちゃんが変な声だしてる、気持ち良さそうな顔してる

「うわ〜、うねうねしてる。リーネちゃん気持ちいいでしょ」

「きもちいいぃぃぃぃ」

 変な声してる。気持ち良さそうだな〜、後で自分でやろうかな〜

 ちょっと、お湯の色がキレイじゃなくなってきたから、タライに戻して端っこに丸めておく

 また、タライのお湯を手に乗っけてリーネちゃんの頭を洗っていく

「ねえ、セイちゃん、私の時もそうやってたの?」

「うん、フララちゃんも気持ち良さそうだったよ」

「そうなんだ・・・、じゃあ、あのくろいの・・・」

 フララちゃんが何か思い出そうとしてる? くろいの?

「イッタ! なに?」

 痛い方の足を見ると、近くにリリカちゃんがいた

「ねえ、リリカちゃん。今、わたしの足に何かあったか見てた?」

「私が蹴ったの!」

「何で!?」

 えー、足に何かした人すぐに見つかったよ・・・。魔物じゃなくてよかった

「セイくんばっかりずるい!」

 えー、何がだろう? やりたいのかな?

「頭洗うのやる?」

「や!」

 や? ああ、リーネちゃんだ

「せいちゃんがいい」

 えへへ、うれしいぃった、いったいな〜、も〜!

 2回蹴られた! もう!

「リリカちゃん、痛いからやめてね」

「もー! セイくんばっかり、お姉ちゃんでずるい! 何でお姉ちゃんやってるの!」

 ううん? お姉ちゃんじゃないと思うんどけど・・・。なんとなく、今ちゃんとしないといけない気がする。

 お湯をタライに戻して、布で手を拭いてから、リリカちゃんの頭を撫でる。

「リリカちゃんごめんね、わたし、お姉ちゃんじゃ無いと思うんだけど」

 イッたい、手叩かれた・・・

「そういうところがお姉ちゃんなの! セイくんがお姉ちゃんだから、私お姉ちゃんになれないじゃん!」

 なんでか、すごく怒ってる。うーん・・・

「リリカちゃん、お姉ちゃんになりたいって頑張ってるの知ってるよ、お母さんのお手伝いして家の事覚えたり、一緒に小さい子と遊んであげて「リリカお姉ちゃん」って言われてるじゃない。もう、お姉ちゃんだと思うんだけど」

 リリカちゃんはもう、お姉ちゃんなんだよ、だから落ち着いて

「そんなの、セイくんもいっしょじゃない! セイくんもお姉ちゃんって言われてるじゃない!」

 言われてるけど・・・。わたし、お兄ちゃんって呼ばれないな〜

「体は一人だけ大きくなるし! なんでもできるし! みんなに優しいし! 髪キレイだし!」

 それは、お姉ちゃんかな? でも、お姉ちゃんって気がする

「今日なんかもさ、フフラお姉ちゃんの頭洗ったりして、フララお姉ちゃんよりお姉ちゃんだし」

 頭洗うとお姉ちゃんなんだ・・・

「セイくんがお姉ちゃんだから、私お姉ちゃんになれないの! ううう・・・」

 リリカちゃんが泣きながら、わたしの胸のところに顔を押し付けてしがみ付いてくる。

 左手でギュッと抱きしめて、右手で頭の上から背中をゆっくり撫でる

「リリカちゃんは、わたしがお姉ちゃんなのが嫌なの?」

「うん」

「お兄ちゃんだったらいいの?」

「いや」

 お兄ちゃんも嫌なんだ・・・

「リリカちゃんは誰のお姉ちゃんになりたいの?」

「セイくん」

「わたしなんだ」

 うーん、リリカちゃんをお姉ちゃんって思った事ないよ? 

「リリカちゃんは、なんでセイちゃんのお姉ちゃんになりたいの?」

 うん、それだよね。友達じゃダメなのかな?

「セイくん、お父さんの次にお姉ちゃんが好きって言ってたから」

 言ったっけ? 嘘言ってなさそうだし言ったのかな?

「お姉ちゃんって? セイちゃんにお姉ちゃんいな・・・い?」

 あれ、フララちゃん何か思い出そうしてる?

「セイくん、お姉ちゃん居なくなって泣いたから、私がお姉ちゃんなってあげないとって頑張ってたのに!」

 ぐふっ、お腹殴らないで、痛いよ〜、止めてね〜、よしよし

「わたし、お姉ちゃん居たんだね〜」

「え? 居たんじゃないの?」

「あれ? そういえば、セイちゃんが小さい頃、セイちゃんのお姉ちゃんがどうとか何かあったような?」

 フララちゃんも言うんなら居たんだ、また会いたいな・・・。また会いたい?

「何で忘れてるのよ、私たちが2歳のとき、セイくんがお姉ちゃんに遊んでもらってるって言いてたじゃない」

「2歳のとき・・・」

 1歳増えるのは夏で、今は6歳だから4回前の夏から・・・

「リリカちゃん達は2歳の頃の事覚えてるの?」

「わたしはちょっとだけ覚えてる」

 お姉ちゃんが居た時の事忘れてるし、ちょっとだけ。居たのかな?

「私は、セイくんに初めて会った時から覚えてる」

 う? リリカちゃん・・・、泣き止んでない? クンクンしてない?

「そうなの? じゃあ、セイちゃんと何処で会ったの?」

「私の家だと思うんだけど、誰かに抱っこされてた」

 お父さんだね、村に着くと母乳出る人を聞いて、すぐに行ったって聞いた事ある

「あんまり、覚えてないんだね」

「セイくんの事だけははっきり思い出せるんだけど、他があんまり思い出せないんだ」

「あー、わかるわかる、可愛かったもん。私も初めて見た時の事覚えてるよ」

「そうなの? エマちゃん可愛いし、赤ちゃんのとき、みんな可愛いんじゃない?」

 エマちゃん、まるまるでまーるまるでまるまるってしてて、すごく可愛い、ほっぺたをプニプニすると、すっごく笑う、可愛いんだ〜

「うーん、でも初めて会った時、女の子居なかったけどね・・・、たぶん」

「うん、居なかったよ、でも2歳の時に『お姉ちゃんと遊ぶ』って言って、1人で遊んでたの」

 遊ぶとき、いつも誰かと一緒に居た気がするんだけど・・・、あ、でも・・・

「みんなで遊んでたときも、お姉ちゃんに手を振ったりして楽しそうだったの、でも、いつか分からないけど朝、村の中を泣きながらお姉ちゃん探してるセイくんいて、村の人全員で探しても見つからなくて、泣いてるセイちゃんを見て、私がお姉ちゃんになってあげようと思ったの!」

「ああ、あった気がする・・・、アベルさんがみんなを止めてたような・・・」

 お父さんが? リリカちゃん「なのになのに」って言いながらお腹叩くのやめて、思い出せないから。

「そういえば、セイちゃんが誰かを『お姉ちゃん』って呼んでるの見たことないね」

「セイくん、全然おねえちゃんって呼んでくれない」

 リリカちゃんのことをお姉ちゃんって思ったことないからね。お姉ちゃん・・・

 リリカちゃん達が言ってるんだから、お姉ちゃんは居るんだと思う、思い出したいな、お姉ちゃんの話を聞いてから、温かい気持ちと悲しい気持ちが出てきてるから、きっといる。

 2歳の頃、お姉ちゃん、居なくなった・・・・


 みんなが『お姉ちゃん』の事を思い出そう静かになった時、部屋の中で音がして。わたしは思い出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ