ボクが寝ている間に色々あった
リーネちゃん泣いている気がする。
リーネちゃん泣かないで。ん?何か変な匂いする・・・なんだろうこの匂い・・・なんだ!?
「何か変な匂いがする!!」
ガバッっと起き上がる、目は霞むけど周りを見てみるとまだ暗い、火壺から鉄板は外されていて火は消えていた。あれ?変な匂いもしてない?
力が抜けて後ろに倒れる、ボクの体は地面に倒れることなく誰かが受け止めてくれる。また何か変な匂いが!
「また変な匂いが!!」
ガバッっと体を起こして後ろを見るとお父さんはそこには居なくて、かわりにカリーヌさんがいた。
「セイちゃんごめんね・・・変な匂いで・・・」
ああ、泣かないで泣かないで・・・
「お父さんの匂いと思ってたけど違う匂いで驚いて、可愛い匂いでしたよ?」
なんだろう可愛い匂いって?かわいいにおい・・・?まいっか
「もう、可愛い匂いって何よ、えへへ」
あ、機嫌直った。あれ?お父さんは?あと何か忘れてるような?
「カリーヌさん、お父さん知らないですか?」
「アベルさんはみんなで川に行ったわ、リーネちゃん火傷しちゃってね」
え!?火傷!火傷したら直ぐに冷やさないと、だから川なのか。火傷は痛いからねかわいそう
「火傷痛そうですね」
「そうね、すごく泣いてたわ、今アトーレが薬を取りに行ってるんだけど、あれしみるのよね」
あー、あの薬すっごく痛い・・・火傷がギューってなるんだよね。想像したら痛くなってきた・・・
「何があったの?」
「えっとね、私がエマにお乳あげてお義母さんに預けて戻ってきたら、セイちゃん寝てて、アベルさんがセイちゃんのお母さんの事聞かれてて、アトーレと一緒にお酒飲みながら晩御飯食べて、これは私。で、スープ作りする事になって、スープ作る人、そのまま飲んでる人、帰る人、寝ている人でごちゃごちゃになって、誰もリーネちゃん見てなくて、鉄板触っちゃたみたいで大泣きしちゃって、私ももらい泣きしてて、気が付いたらセイちゃん抱っこしてたの。アベルさんが動くの早わよね、気づかないんだもん」
お母さんの話聞きたかったな~、スープ作り手伝えなかったな~、リーネちゃんから目を離すだなんて!なんで寝てしまったんだろう!ごめんねリーネちゃん
「カリーヌさんありがとうございます。みんな戻ってくるまで片付けやっちゃいますね」
「私もやるね」
自分の所の火壺の周りを片付けていく。綺麗な皿をバスケットの下の方に置いて、汚れている皿を布で拭いて重ねていく、4枚なんだけどね。皿の上に汚れた布を置いて、綺麗な布でお酒の瓶を巻いてお皿の横に置く、陶器のコップを木のコップに入れて瓶の横に置く。スープとフォークをまとめて布で巻いたら終わり。お酒が全部飲まれててちょっと嬉しい、でもまだやり残しがあったから明日からまた頑張るぞ
「終わりました」
「こっちも終わったわ、お兄ちゃんの所もやっちゃおっか」
「はい」
もうお酒を取られる心配がないのでバスケットを置いていく。ライキ寝てる、顔真っ赤
よしちょっとおどろか・・・起こしてあげよう
「『ライキ、なんでこんな所で寝てるのよ、蹴り殺すわよ!』」
「セイちゃん何言ってるの!?」
「ライカちゃんのマネをしたんですが似てませんでした?」
自信あったんだけどなー、これで起きないかー。もっと似せた方が良いのかな?
「似てたけどそんな事言わないと思うよ」
よく言ってる気がするんだけど、次はリンさんのマネで起こそうかな?
「あーあー。『ライキ!5数える内に起きないとラトイルのぱんっ』」
後ろから肩を叩かれてビクッとなって後ろを振り向く
「セイ、何やってるんだ?」
お、お父さん!リンさんかと思っ・・・そうだよね一緒に居るよね、リンさんがリーネちゃんを抱っこしてて、ラトイルさんがランタン持ってる。あれ?ライカちゃんがいない
「ライキ寝てたから起こしてたんだ。リーネちゃん大丈夫?」
リーネちゃんないてるなー、かわいそうだな
「セイくん、今のリンの真似かい?声すっごく似ていたね」
ラトイル!! さん!もう、うまく誤魔化したのに!
「セイちゃんのライカちゃんの真似もすごく似ていたわよ」
カリーヌ!! さん!言わなくてもいいから、むしろ言わないで!
「父さんは『ぱん』の後が気になるな」
頭が痛いなー、首が回らないなー
「セイ、今の私の真似だったのか、面白そうだな見せてもらえるか」
イタタタタ、締めないで!頭を締めないで!
「やります、やりますから!」
リンさんは頭を離してくれる。リンは右手でリーネちゃんを抱えたまま左腕でボクの頭を締めてたみたい、リーネちゃんは顔をリンさんの肩に押しつけて「ヒックヒック」泣いてる。頭を撫でても顔を見せてくれない、かわいそうに・・・あっ、そうか、みんな少しでもリーネちゃんの気を逸らしたいんだ。よし!やるぞ!
「『リーネ、どうして泣いているの、しょうもないライキにやられたんでしょ』」
リーネちゃんがこっちを見る。あれ?セイちゃんだ。反対側かな?居ない
「『しょうもない、とか言うな、やってないし!』」
おにーちゃん?あれ?せいちゃんだ?あっち?した?おにーちゃん?ねてる?
「『ライキ、なんでそんなところで寝てるの、蹴り殺すわよ!』」
やっぱりおねーちゃんだ!せいちゃんだ。セイちゃんどこいくの?おにーちゃん?
「『ライキ!5数える内に起きないとラトイルのパンツ顔に乗っけるわよ!』」
「おかーさん」「やめてよ母さん、起きた起きたから!」
リーネちゃんはボクを「おかーさん」って言って、ライキは起き上がって顔を守りながらキョロキョロしてる。「ぶふっ」誰が最初に噴き出したのか分からないけれど大笑いが起きた。
「あはははは、セイちゃん似すぎ、ライキくんもできるんだね。リーネちゃんの顔もかわいぐで、ずっごぐおぼじろぐでー、うべべべべ」
笑いながら泣いてる!初めてみた!
「すごいねセイくん、ライカとライキのやりとりそのままだよ、似てるにでる・・・」
最初は肩を叩いて褒めてくれたのだけど、最後でカリーヌさんからのもらい泣きで泣き始めた。
「セイに見られてたのか恥ずかしいな」
リンさんは顔を赤くしてた。違うよ、ライカちゃんに教えてくれただけで・・・
「ライカは昔のリンにそっくりだな、特に『蹴り殺す』のあたり」
へー、昔のリンさんも同じようなこと言ってたのか。
リンさんはボクにリーネちゃんを預けるように腕を伸ばすので、抱っこして受け取る。
「殴り殺す」
とか言いながら、最初に蹴りをするところに本気を感じる。リンさんの攻撃全部かわすお父さんかっこいい
みんなの楽しそうな空気にリーネちゃんはちょっと元気になったみたいで今は少し笑ってる。ライキ、足を蹴らないで!
「なんだ、楽しそうだな、酒持ってくればよかったか?」
あー、村長来ちゃったかー。あー、薬持ってるよー
「ぞんじょう、ぐずじあでぃがでぉ」
「気にしない、目を離したオレも悪いですから」
村長何言ってるか分かるんだ。あー、カリーヌさんで慣れてるから!
「村長薬ありがとうね、さあ塗ってあげて」
「オレは嫌だぞ、薬持ってくるので疲れたからな、母親の仕事だろ」
「父親でもいいだろ!・・・無理だね」
火傷で痛がってる子供に痛い火傷薬を塗るのは心がすごく心が痛い、火傷の薬は火傷が早く治るし、跡も残らないので早めに塗ると後が楽になるんだけど、その分かなり痛い。一度使ったことある人なら小さい子に使う事をためらってしまう。リーネちゃんの火傷大きいから・・・イタタタタ
「オレがやろう、早い方が良いからな」
お父さんが村長から薬を受け取る、村長は解放された~みたいな顔をしている。きっと、最後にはやるつもりだったと思うけど、やりたくはないよね。
「よしセイ、リーネを抑えといてくれ」
しまった!ボクがリーネちゃんを抱っこしてるんだった。絶対泣く、絶対暴れる、絶対リーネちゃんに嫌われる!嫌だな
そうだ!ライキがいる!ライキどこだ、変わってくれ!居た、う?親指立てて「頑張れよ」。じゃないよ!もう・・・リンさんは?お母さんでしょ、変わってください!う?こっちみてニヤニヤしてる。ボクが慌てるのを見て楽しむつもりだ!ライキとライカちゃんで慣れてるから余裕あるんだ。くぅ、リーネちゃんの為だやってやる
地面に座ってリーネちゃんを足に座らせる。目が合って楽しそうに笑ってる
「リーネちゃん、今から火傷したところに薬を塗るからね、ちょっと痛いけど我慢してね」
「やけど、いたい?・・・やけど、いたい・・・」
『火傷』と『痛い』の言葉で痛いのを思い出したのか、笑顔から泣き顔に変わる、その顔だけで心が痛くなる。泣き声が出る前に、火傷をした手を外に出るようにして抱いて背中をさする
「大丈夫大丈夫、痛くなーい痛くない」
背中をさすりながら、何度も繰り返し言い続ける。リーネちゃんから力が抜けていく。安心してくれたかな?
「よし塗るぞ」
リンさんが頷く。あれ?リンさんが近くにいる、ああ手を抑えるためだ。手を抑えるのが1番大変そう、それを自分でやるだなんてお母さんカッコいい!
「うううう~~~~~~!いだいいだい~!あぶぶぶぅぅ~~~~~!」
ちょっとの火傷に塗るだけでも痛いのに、手のひら全体だから凄く痛いんだろうね・・・
「大丈夫大丈夫、痛いよね、リーネちゃん頑張って、頑張って」
「あぶぶぶぅぅ~~~~~!あぶぶぶぅぅ~~~~~!」
リーネちゃんは暴れなかったけど、背中の服をギュッと引っ張る。なんだか泣けてきた・・・
「りーねちゃん、だいじょうぶだよ、いたくないよ、がんばって」
ちょっと泣きそうな声になったけど、頑張って声掛けて安心させてあげなきゃ・・・大丈夫だよ、頑張って
「誰か布!!」
お父さんが大きい声を出す。終わったんだ、顔を上げるとカリーヌさんが走ってきた。
「これ使って!」
サッと手に持ってた布を渡す。布が要るようになるって思って用意してたんだ。カリーヌさんすごい!
「乾いてやつくれ」
涙拭いてたやつだ、もうカリーヌさん
「ごめん、こっち」
違う布を渡す、あの刺繍はカリーヌさんのバスケットに掛かってるやつだ。お父さんは手の平に当たる部分を厚めに折って、リーネちゃんの手に当てて布をぐるっと一周させる。
「もう一枚綺麗な布くれ」
「うちのバスケットの中にあるよ」
お父さんはバスケットの中から布を取り出してリーネちゃんの手に巻く。この薬は塗った後ぎゅっとなって痛くて、ぎゅっとが終わったらじわじわと痛い。だから多分、リーネちゃんが触らないように布を巻いたんだと思う。小さな火傷なら巻かない
「よし、終わった」
「リーネもう終わったって、よかったね」
リンさんは、少しでも楽になって欲しくてリーネちゃんの頭を撫でながら教えてあげる。けど痛いのは治らない、リーネちゃんの泣き声が大きくなった気がする。多分ぎゅっとが始まったんだ
「あああああぁぁぁぁ、あぶぶぶぶふぶ〜~~~~~」
口を開けて泣いたり、口を閉じて泣いてる。ボクが背中を擦ったり、頑張っての声はリーネちゃんの助けになってるのかな?ごめんね・・・楽にしてあげられなくて
「ごめんねりーねちゃん、いたいよね、もうちょっとがんばって、おぐずり、、、ぬっだがら、、、もう・・」
泣くな!リーネが不安になるだろ!なんで涙出るんだよ!
「リーネちゃん、大丈夫だよ」
声が震えないよう頑張って、リーネちゃんを両手で抱きしめる。早く治れ、早く治れ、心の中で祈る。
少しするとリーネちゃんの泣き声が小さくなった、泣き声が小さくなるにつれて体の力が抜けていく。
抱き締める力を少し抜いて頭をなでなでする。頑張ったね、えらいえらい
「リーネちゃん、大丈夫?痛くない?」
「ずー、ぶぶっ、ずー、ぶぶっ」
寝てる?ああっ、鼻水で寝息が大変な事に・・・
「リーネ寝たのか、よくあの状態から寝たわね。セイから変な・・・、眠くなるようないい匂いでも出てるのかね?あーあ、顔ぐちゃぐちゃだわ」
ライキに布持ってきて言ってリンさんはリーネちゃんの頭を撫でる。変な匂い出てるのかな?
「変な匂いならリーネは寝ないよ、いい匂いの方だろ」
ライキはリンさんに布を渡しながら言ってくれる。うーん、匂いよりライキがボクの心読めるのかどうかが気になるな
「読めるわけないだろ、顔に出てるんだよ」
読めてるじゃん!凄いなライキ、ボクも出来る様になるかな?
「顔にでてるかね?うちの子、セイの事好きすぎて怖い」
「別に好きとかじゃない!」
ライキがリンさんに言い返す。ええっ!ボクはライキに嫌われてたんだ・・・
「ボクはライキのこと好きだよ・・・」
「違う違うぞ、セイいいか、好き嫌いじゃなくてオレたち友達だろ、友達や家族は何を考えてるか分かるもんだろ」
なるほど、友達や家族は何考えてるのか分かるものなんだ・・・。あれ?ボクはお父さんの考えてることが分からない、え!?もしかして
「オレがセイの考えてることが分かるから大丈夫だ」
お父さんが頭をポンポンしてくれる。よかった、お父さんと家族じゃないのかとかと思った。でも・・・
「こういうのは経験だ、セイはまだ小さいからゆっくり覚えればいい」
やっぱり読まれてる。すごいなお父さん、ボクも頑張ってお父さんの考えを読めるようになろう
「本当に読みそうで怖いな、違うぞセイ、『察する』だからな」
「サッスル?」
「考えてる事を思い付く、かな」
ラトイルさんが教えてくれる。読むとは違うのかな、うーん?
「しかし、ライカと一緒の身長で小さいとか違和感あるね、セイくん本当に6歳?」
「オレが6歳の時に赤ちゃんだったんだから、6歳だと思うよ」
「オレが24の時の子だから、6歳だよ」
お父さんが30歳でライキが12歳だから・・・。え?ボク変なのかな・・・
「成長は人それぞれだから気にしないでいいよ、ラトイル!セイを困らせるな」
リンさんはラトイルさんを蹴り殺す・・・蹴り倒す。
「うちのライカとライキは同じ身長じゃないだろ、そういう事だよ」
頭をワシワシされる。ソイちゃんが他の子より丸いし、そういう事なんだ
「そろそろ、寒いし帰ろうぜ」
そういや、お父さんの長袖服ボクが着てたんだった。
「お父さん、服返すよ」
「いや、大丈夫だ。今着ても冷えるしな」
お父さんは自分の胸を2回叩く。???、あ、ボクが着ている服か、あー、色々ベタベタだ
「セイくんごめんね、ボクが不甲斐ないばかりに、もう大丈夫だからリーネ預かるよ」
まだちょっと鼻水が出ているラトイルさんが手を伸ばしてくる。ちょっと疲れたから助かる〜
「やめろ父さん、リーネが泣く」
「ライキどうした急に、寝てるんだぞ、泣くわけないだろ」
「いや、ラトイルなら泣くわね」
ええ、ラトイルさんが抱っこすると泣くんだ。いつもリーネちゃんに何してるの?
「なんでそんなこと言うんだよ、ボク父親だよ、ライキ達も抱っこしてたんだよ、抱っこの達人さ」
ラトイルさんはもう一度腕を伸ばしてくる、リンさんを見るとあきれた?あきらめた?顔をしている、ライキを見ると面白いことになるぞの顔してる。渡していいのかな?抱っこの達人の抱き方気になるし、はいどうぞ
ラトイルさんはリーネちゃんを受け取ると抱っこしやすいように抱き直す。普通だ!力加減が違うのかな?
「セイ、よく頑張ったな」
お父さんは頭をポンポンして脇を持って立たせてくれる。う?顔をじっと見てどうしたんだろう?
「セイ、目ヤニがすごい事になってるな」
お父さんが親指で擦るとボロボロ取れる。え!?こんなに!
後ろを向いて長袖で擦る、いっぱい取れる!まつ毛痛い
「全部取れた?」
お父さんに見せる、お父さんは目の横を少し擦って
「これで全部だな」
そのまま両手でボクの顔を挟んで親指で目の下を下に引っ張って「変な顔だな」って笑う、ボクもなんだか楽しくなって笑ってしまう。なんだかちょっと体が軽くなった気がする。
「ね、ラトイルはリーネの父親じゃなかったのよ」
「待ってくれ、それは色々待ってくれ」
「ほらリーネ、本当の父親のところ行こうな」
リーネちゃんが痛そうな顔でグズってる・・・。ラトイルさん達人失格・・・
ライキがラトイルさんから、リーネちゃんを奪い取る(優しく)と「お父さんところ行こうな」と言ってボクの背中にリーネちゃんを乗せる、思わず背中で受けとっておんぶの格好になる。
「いたい、いたい」
「痛いね、大丈夫だよ、痛いね、大丈夫大丈夫」
「すー、すー」
体を動かしてあやすと、リーネちゃんから寝息が聞こえ始めた。
「さすがお父さん、早いな」
「さすがお父さんだ、オレいつのまにお爺ちゃんになったんだろうな」
「やっぱり、セイから何か出てるんじゃないか」
「リン、本当にセイくんがお父さんなのかい!」
え!?『お父さん』ってこういう風に決まるの!?そっか、ボクリーネちゃんのお父さんになったんだ。ボクもお父さんの抱っこで泣き止んだのかな?きっとそうなんだと思う、ボクお父さん好きだから
「リーネちゃん、ボクがお父さんだよ」
背中のリーネちゃんにささやく、リーネちゃんのかわいい寝息が聞こえる。とても静かな夜ボクはお父さんに・・・
「ええええ、リン!どういう事だい!?」
「あはははは、セイならそう言うと思ったよ」
「ラトイル、あなた狼狽え過ぎよ、セイとリーネの歳を考えなさい」
「セイ、ラトイルをからかってただけだ、泣き止んだらお父さんになるとかは無いからな」
なってないみたい・・・
「じゃあ、どうしたらお父さんになれるの?」
あー、また静かな夜になった。あれ?ライキも興味あるっと顔になってるから知らないのかな?
お父さん、リンさん、ラトイルさんがすごい速さで顔を動かしてる。うなずき合った、誰が教えてくれるんだろう
「アトーレ」
お父さんが村長に呼びかける。村長が教えてくれるのかな?
「そっちはどうだ?」
???
何かあったのかな?
「泣き疲れて寝てる」
村長の座ってる方にお父さん達が歩いて行くのでついて行く。村長の太ももにカリーヌさんが頭を載せて寝転んでる、寝てるってカリーヌさんの事か
「この兄妹は、痛み系は泣かないんじゃなかったっけ?」
お父さんが聞く、ライキもうなづいてる。
「あー、多分セイのせいじゃないかな?」
「セイのせいね」
村長とリンさんが同時に答えた。ええ、ボクのせい?なんで?
「多分なリーネが泣いてるので、きてたけど、子供が泣くのは慣れてるから耐えられるんだが、セイが頑張っての慰めてるのを見て泣いたんじゃないかな?」
「しかもセイは泣くのを我慢してたしな」
「「なるほど」」
村長とリンさんが説明してくれる、やっぱり夫婦だからよく分かるんだね。泣くの我慢してたのバレてる!恥ずかしい!
「頑張ってる子供はずるいわ、泣くよ普通」
「分かるけど、我慢しろ、しなさい、自分の子供の事なんだから」
「やっぱりボクの子なのかい?」
「自信持てアホ」
またラトイルさんが蹴り殺されてる。嬉しそうに転がってる・・・痛くないとか?
「オレたち帰ろうと思うんだが、どうする?」
お父さんが村長に聞く。カリーヌさん寝てるから寝かしといてあげたいもんね
「いや、家に帰らないとエマが起きた時大変だからな」
「なんだ2人目は、まだ見えないか」
2人目?なんだろう?昔何かあったのかな?
「アベル、オレも時期ぐらいはみるぞ、それに丸見えだしな」
丸見え??2人目の??
「ラトイルさん、すみませんがカリーヌをオレの背中に乗せて貰えます?」
「わかったやるけど、別に丁寧な喋り方しなくてもいいよ、下手くそだし」
何か変だなと思ったら下手だったからなんだ、ラトイルさんの真似かな?
「だから練習してるですよ、身分高い人が来た時に問題ならないように、付き合ってくださいよお義兄さん」
ミブンってなんだろう?高いといいのかな?ボクにもあるのかな?
「頑張れよ村長。おっ、カリーヌが涙の流しすぎでちょっと軽くなってるよ」
涙流しすぎると軽くなるのか!明日ソイちゃんに教えてあげよう
「父さんがまたしょうもない事を言ってる」
え!嘘なの!少しは軽くなると思ったのに・・・ソイちゃんが
「村長、カリーヌにご飯食べさせてあげなさいよ」
「食べさせてる、エマを産んでから食べる量増えてるしな」
リンさんに村長が言い返している。ラトイルさん以外には普通に話すんだ
村長の背中にのせられたカリーヌさんが、村長の背中でおでこをゴシゴシしてる。あれはみんなやるんだね
「さあ、帰るか」
村長の一言でみんなが荷物を持って村に向かって歩きだす。お父さんはボクが持って来たバスケットとボクの服を、ボクはリーネちゃんを背負って、リンさんは自分家のバスケットを、ラトイルさんは村長さん家と自分の家の火壺を、ライキはカリーヌさんのバスケットを持つ、鉄板はひっくり返して匂いを出にくくして明日回収する。持てないからね
「セイ、オレな明日からラトイルと一緒に街に買い出しに行く事になった。留守番たのむな」
「ボクも行きたい!」
お父さんがボクの頭を撫でてゴメンって顔をする。分かってるけど・・・
「すまんな、今回は特に連れて行けないんだ」
「ごめんねセイくん、今回ちょっと高い物を買うことになってね、どうしても護衛が居ないと心配なんだよ」
「女連中の結束が凄かった、ほとんど村の総意みたいになってたな」
村長が楽しそうな顔をする。ボクが寝てる時に話あってたのかな?
いつもはラトイルさんだけで行くんだけど、高いものを買う時や売る時はお父さんが護衛をする。分かってるんだけど、お父さんと色んな所を行きたいんだ
「大丈夫言ってみただけ、で何買うの?」
お父さんの頭グリグリの力が強くなった。うう、お父さんのこういうの大好き
「ああ、村に少し余裕が有ってな、今回の魔物の素材が高く売れそうだから生活の役に立たないぐふっ」
村長のお腹にリンさんの手が突き刺さる、背負ってるカリーヌさんの顔が少し苦しそうになった。ダメージが背中のカリーヌさんまでいったの!?村長の膝が地面に~~~つか~~~ない!耐えた!
「子供達には来るまで内緒って話だったろ」
えー、内緒なのー
「しかも、生活の役に立たないとか言うと村の半分から無視されるよ」
無視!?しかも村の半分!?なんだろうなーなにくるんだろなー、楽しみだなー
「で、村長何が来るんだ?」
「セイが大人しく楽しみにしてるんだからライキも見習いな」
ライキが、リンさんに頭を叩かれてる。
「子供に内緒って事は、子供を楽しませたいって事だと思う。だからライキが聞いて他の子供に広めると、お父さん達の驚かせて楽しませたいって思いがダメになると思う。だからライキ我慢しようね」
ボクがライキに我慢しよねって言うと、みんなが立ち止まってボクの方をじっと見てる。え?違ったの?みんなに言っても良かったのかな?
「分かったなアトーレ、そういうところだからな」
リンさんが村長に言う。村長はこれかーみたいな顔をしている。
「ライキ頑張れ」
「何をだよ!分かってるよ!」
ラトイルさんがライキに優しく声掛け、なぜかライキがすごく慌ててる。
「お父さんいつ帰ってくるの?」
大事な事だからちゃんと聞かないと
「ラトイルどうなんだ?」
「明明後日の夜だな」
しあさって・・・あした、あさって、しあさって・・・3日もお父さん居ないんだ・・・
「ラトイルさん、冬用の買い出しは1日出来るもんでしょうか?」
「出来るものでしょうか、な。あー、もう1日伸びてもいい?」
寂しい・・・4日か~~~・・・寂しい!
「1日伸びたか、・・・セイも6歳になったしナイフ買ってやろうか?」
「えっ!いいの?危ないんじゃ・・・」
「もう包丁使ってるだろ、それに危ないって言ってるって事は分かってるって事だから良いだろう」
ナイフ・・・ナイフ!!!わーい!これで色々出来るぞ~~~!
「え!セイ、ナイフ買ってもらうのかよ!いいな~~~!母さん!」
「ダーメ、ライキにはまだ早いし、使わないでしょ、買うならライカにだ」
「なんでボクに聞いてくれないの?」
ラトイルさん少し寂しそう。ラトイルさんに言ってもリンさんがダメって言ったらダメになるからじゃないかな?
「ライカになんかお母さんのお古で良いだろ!オレに買ってよ!」
「ならライキもお古で良いだろ、それにライキには買ってくる必要ないからな」
「母さんはライカばっかり!・・・で、・・・もういい」
ライキが下を向いて悔しそうに・・・ちょっと涙が出てる。ボクがナイフ要らないって言ったら・・・言っても戻らないよね・・・
お父さんがボクの頭をポンポンする。なんだろ?
「ライキ、リンが言いたいのはそうじゃないよ、お前も明日から街に行くから買ってくる必要ないって事なんだよ」
「え?・・・え?オレも行って良いの?」
え?
「あ、そう言えばライキ寝てたね、すまん『こいつ何言ってんだ?』と思ってたわ」
「さっきリンとラトイルさんから正式にライカが猟師、ライキを商人にするって言われてな、みんなが問題ないって事で今日から見習いだ」
え?え?
「え?マジでオレ商人やっても良いの?明日から街に・・・もしかしてライカ居ないのって?」
「明日から森に入るから準備するって先に帰ったよ」
え~~~!
「え~~~!ライキずるい!お父さんボクも!」
「セイは、猟師と商人どっちがいいんだ?」
え?あーーーー、猟師かな!お父さんと居られるし
「オレも準備する!」
ライキは走り出した。あ、つまずいてる
「ライキ、おやすみー」
「おう!」
ライキが家に入って行く。もうすぐ近くなのに走って行く・・・どんだけ楽しみなんだ!うらやましい!
「おやすみぐらい言いなさいよ、あの子はもう・・・」
「あの2人絶対寝れないな、特にライキな」
なんで寝れないんだろう?さっき寝てたからかな
「あははは、ライキ明日は大変だろうね」
ネブソクになるからかな?昼寝したら大丈夫になるね
「「セイ、明日からうちに泊まりに来るか」」
分かれ道で村長さんとリンさんが一緒に言う。え?どうしたら・・・
「リン、うちの父さん母さんがセイに泊まりに来て欲しいって言っててな、客室もあるし負担とかないぞ」
「アトーレ、うちも男2人居なくなって広くなるんだ負担なんてないよ」
「男2人分手が開くんだからのんびりしたらいい」
「のんびりしたいからセイが要るんだよ、あの2人より動いてくれるからね」
「セイ、リンの家に行ったら働かされるぞ、うちに来い」
「セイ、アトーレの家に行ったら怠け癖が付くぞ、うちに来い」
「「アベル」」
2人がお父さんを見る。ボクが決められないのがバレてる
「あー、うーん・・・アトーレに預けるとオレの酒が無くなる。リン、セイ頼めるか」
村長さん・・・お酒狙いだったのか・・・
「そんな目で見るな、言ったことそのままだよ、裏なんてないぞ」
「酒は冗談だ。リーネだよ、明日からライカ達いないからリーネ見とくやつ要るだろ」
ああ、リーネちゃん1人だもんね。わーい!リーネちゃんといっぱい遊ぼ!
「そりゃそうか、リン困ったことがあったらすぐ言えよ」
「その時は遠慮なく頼むわ」
明日からリンさんちにお泊まりだ。ちなみにラトイルさんは家に火壺とバスケットを置きに行ったのでここに居ないのだ!
「セイ、リーネをありがとうね」
リンさんがリーネちゃんを抱っこする。背中が寒い・・・
「セイ、リーネにあれやってあげてくれないか」
リンさんに頼まれる。あれ?あれー?
「セイ、頭撫でるやつだ」
ああ、あれ!なぜだかよく頼まれるやつ
リーネちゃんの頭を優しく撫でる。
「リーネちゃん、いい夢見てね、おやすみ」
よしよし。これでよし・・・多分!
これをすると、悪夢を見ないとか、赤ちゃんがヨナキしないとかみんな言ってるみたい。悪夢を見てるのか分かんないし、ヨナキしてるか分かんないし、よく分からないけど頼よられるのは嬉しい
「村長お待たせ、行きますか」
ラトイルさんが戻ってきた。村長さんの家の火壺を持つ
「それじゃあまた明日、おやすみ」
「おやすみー」
「セイくんおやすみよ」
「おやすみなさい」
「また明日な」
村長とラトイルさんが反対方向歩いて行く。カリーヌさん全然起きない
「セイ、おやすみ」
「リンさん、おやすみなさい」
あれ?お父さん?
お父さんがリンさんについて行く、今日から泊まり?
「リン、リーネおやすみ」
「おう、ありがとうな」
扉開けてあげてる。かっこ優しい、今のやってみたいな
リンさんが中に入ると扉を閉めて、家の方に歩き出す
「ただいま」
「母さん、ナイフうまく研げない」
「暗い中でするんじゃないよ、あと静かにしろリーネが起きる」
「ごめん、あれりー・・・・」
聞こえなくなった。リーネちゃんの火傷に気づいたのかな?
「リーネちゃん朝まで寝られるといいね」
「そうだな、ライキとライカの為にもな」
「今日寝れないってなんで?」
「そういえばセイは、寝付きいいからな、楽しみな事や嫌な事がある日の前の日は寝つき難くなるんだ」
そういやオレもあんまり無いな、とかつぶやいてる。お父さんが居なくてお泊まりに行った時に眠りにくくなるけど前の日じゃないし
「ナイフ楽しみ過ぎて寝れなかったりしてな」
「ナイフは楽しみだけど、お父さん居ないのは嫌だな」
「直ぐに帰ってくるさ、ライキが仕事すればな。冬用の買い出しが早く終われば3日だからライキ次第だな」
お父さんがボクの頭を撫でながら言う。明日ライキに頼まないとね
「着いたな、直ぐ寝るから便所先に行っとくぞ、ズボン濡らされたら困るしな」
「うん」
家の横にある便所に寄って行く。便所の入り口には手のひらぐらいの大きさの葉っぱの生えた木が植えられている。お尻から出る方をした時にその葉っぱで拭く。
便所の中には穴が掘られていてその中に用をたす、穴の底には木の根っこがある。根っこは外の葉っぱの大きな木の木の根っこでその木は魔物だ。栄養を集め成長すると枝に種を付けて下を通る動物に動物に種を当ててキセイして、体内栄養をキュウシュウして大きくなり、その動物の死んだらその場所で木になり成長する。その木の魔物のトクセイがなんとか成長よりも修復がなんとかで便利に使う事ができるみたい
「ってもうおねしょしないよ!」
「お酒飲んだ日は、よくしてると思うが」
「あれお父さんのじゃなかったの?」
「セイのズボンいつも濡れてただろ、パンツも」
「え?え?だってお父さんがシーツ洗ってったから、お父さんがおねしょしたのかと思ってた」
「セイが泣きそうな顔をしてるから洗ってたのだが、あれは哀れみの目だったのか」
「お父さんごめんなさい、ありがとう?」
アワレミが何かわらないけど、お父さんが言うんだからきっとボクがおねしょをしてるんだろう
「取り敢えず待ってるからトイレ行ってきなさい」
「おどかすのはダメだからね!」
この前、扉の陰に隠れて、後ろからおどかされて泣かされた。そのあとずっと抱っこしてくれたから良かったのかな?
「オレもしたいから、しないしない」
手を横に振って約束してくれる。本当かな~、ちょっと覚悟しておこう
便所の扉を開けたままにしておしっこをする、閉めると夜は真っ暗になるからね、穴に落ちるあぶないあぶない
「終わったよ」
「おう、先家に入っとくか?」
「ううん、待っとくね」
わかった、って言いながらお父さんはトイレに入る。どうしよう驚かそうかな?うん、やめておこう絶対バレる。
「よしセイ、家に入るぞ」
出てきたお父さんはランタンを持って先に歩く、バスケットを持って後ろからついて行く。お父さんが玄関を開けて中を確認してから入る。魔物が侵入してた事があったからだ。うちじゃないよ
「ただいま」
お父さんがつぶやくように言う。これは合図、入っても良いみたい
「ただいま」
ボクも家の中に入る、灯りはお父さんの持ってるランタンだけなので暗い
「セイ、寝る準備をしてさっさと寝るぞ」
「はーい」
台所にバスケットを置く、お父さんが水瓶から桶に水を汲んでコップと布を用意する、ボクは寝る部屋から着替えを取ってくる。
「セイ服脱げ」
お父さんから借りた長袖服を脱ぐ。ちょっと寒い
「少し冷たいぞ」
「うひゃっ」
背中に冷たい物を押しつけられる。濡れた布の感触だ、ヨダレのところ拭いてくれてる。
「次、前な」
その場で飛んで半分回る胸を拭いてくれる。うへへ、くすぐったい
「今日はこのぐらいで明日は朝ちゃんと体拭こうな」
「はーい、ありがとうお父さん」
「ほら早く着替えろ急げ急げ」
そう言うとお父さんは自分装備を外して着替え始める。ボクは長袖服1枚着てズボンも履き替える。これを着ると『家の中』って気になる
「セイ、口洗うぞ」
「はいお父さん布」
小さめの歯を拭う為の布をお父さんに渡し水瓶からコップに水を汲んでうがいをする。クチュクチュクチュごっくん、そのあと人差し指に布を巻いて擦る、拭き取るように擦ってまたうがい、クチュクチュクチュごっくん。うんスッキリ
お父さんはボクより少し長く歯を洗うちょっとだけ待つ
「よし寝るか、セイランタン持ってくれ」
お父さんは装備を持ってボクはランタンを持つ。入り口に棒を刺して開かないようになってるか確認して布団のある部屋に行く。ベットの横の机に装備と消したランタンを置いて布団に入る、直ぐにお父さんの腕に抱きつく
「セイ、布団ふかふかだ、いつもありがとうな」
「えへへへ」
空いてる手で頭を撫でてくれる
「ねえお父さん、お母さんのなんの話をしてたの?」
「お?何の話だ?」
「ボクが寝てる時お母さんの話をしていたって聞いたから」
「ああ、あれはお母さんの話はしてない、聞かれたけどよく分からない人だからな答えられないんだ」
ボクのお母さんはよく分からない人だったんだ。一回会ってみたいけど、どこにいるか分からないって言われてるし、諦めてるんだけどやっぱる気になる
「ただ、間違いなく言えるのは、お母さんとセイはよく似てるって事だな」
「え?そうなのじゃあ黄色い髪なの?」
「黄色じゃない金髪だ」
「キンパツなんだ」
そうか、金色の髪の人が多い村に行ったらお母さんにあえるかも、大きくなったら探しに行けないかな?
会えたら「どうしてボクのお母さんになったのか」を聞いてみたい。そしたらボクもリーネちゃんのお母さんになれるかも
「おやすみセイ」
えー、もう寝るの?
「おやすみお父さん」
けど眠いから寝よう、お父さんはボクが抱きついている腕を抜いて頭を撫でてくれる。
明日からこの手がなくなるのか、嫌だな~
嫌な事がある前の日は眠れなくなるって言ってたから寝れるか、、、スヤスヤ