第92話:絶望の輪舞曲
美海の『異能【スキル】』の試運転と称し、ファムフリート王国への侵攻作戦を開始したベルド。
万全の状態で迎撃態勢を敷くファムフリート王国騎士団ですが、そこへ美海の恐ろしい『異能【スキル】』が発動し…。
美海は小さい頃から、歌う事が大好きだった。
小学校の頃までは遊びの一環として歌っていただけだったのだが、中学校で合唱部に入り、専門知識を持つ顧問の下で本格的に歌の勉強を始めるようになった途端、秘められていた類稀な才能を一気に開花させる事になる。
良き師に巡り合い、才能を開花させた美海の歌唱力は圧倒的であり、1年生でありながら大会のレギュラーに選抜されるという快挙を成し遂げた。
とはいえ当たり前の話なのだが、合唱というのはチームで歌う代物であり、美海1人『だけ』がどれだけ突出していようが、それだけで勝てる程大会というのは甘くない。
チームの中で少しでもヘマをした奴が1人でもいれば、その時点で審査員から大幅減点を食らうという、チーム全体の地力が厳しく要求される競技なのだ。
結局、美海が所属していた中学校は、美海が在籍していた3年間で一度も地区予選すら突破出来ず、全国大会どころか県大会にすら出場する事が出来なかった。
それでも一個人としての美海の歌唱力が圧倒的だったのは事実であり、インターネットで美海の噂を聞きつけた全国の合唱部の強豪校のスカウトが美海の下に殺到し、競い合うように推薦入学の誘いを行う事となる。
だが美海はいずれの誘いも全て断り、地元の県立の女子高への進学を決めた。
その女子高は合唱部は存在するものの、これまでに一度も地区予選すら突破した事が無い弱小校に過ぎなかった。
それ故に中学の教師たちも全国の強豪校のスカウトたちも、
『こんな弱小校では、君が持つ素晴らしい才能を腐らせてしまう!!』
『どうせ歌うのなら最高の顧問の下で、最高の環境の中で歌うべきだ!!』
『貴女はまだ素材よ!!原石よ!!環境次第で良くも悪くもなってしまうわ!!』
『学費の事なら心配要らない!!奨学金が出るし、実績次第では返済免除も充分有り得る!!』
などと猛反対したのだが、美海はあくまでも歌う事が好きな『だけ』であり、全国大会への出場を厳しく求められ、部内のレギュラー争いも過酷な強豪校では、美海が望む『楽しく歌う事』が出来ないと主張したのである。
かくして周囲の猛反対をはねのけてまで地元の女子高に進学した美海だったのだが、そこで合唱部に入るつもりだったのが、まさかの転機を迎える事となる。
入学式の後の教室で、教師からの指示で他のクラスメイトたちに簡単な自己紹介を行う事になったのだが。
『朝倉美海です。趣味は歌う事です。挨拶代わりに一曲披露しますね。き~み~が~あ~よ~お~わ~♪』
『ちょおおおおおおおおおっと待ったああああああああああああああ!!』
君が代の冒頭を少し歌っただけで、美海の隣の席のクラスメイトの少女が、物凄い笑顔で美海の右手を両手で掴み、目をキラキラと輝かせながら美海に迫ってきたのである。
『ねえねえ貴女、うちのガールズバンドに入らない!?ボーカルやってた子が中学卒業と同時に東京に引っ越しちゃって、困ってた所なんだ!!』
『え!?あ、あの…バ、バンド!?えええええええ!?』
『今の君が代を聴いただけで分かったよ!!貴女はとんでもない歌の才能を秘めてるって!!』
『わ、私、この学校の合唱部に入ろうかなって思ってたんだけど…。』
『そんな堅苦しい歌なんかよりもさ、私たちと一緒に自由に楽しく歌おうよ!!その方が絶対面白いからさ!!』
『ちょ…!?』
こうしてクラスメイトからの猛アタックを受けた美海は、成り行きで美海が通う女子高のメンバーで構成されたガールズバンド…『ワルキューレ』のボーカルとして活動していく事となる。
そこで美海が体験したのは、これまでの中学での合唱部とは全く異なる、美海が今まで体験した事が無かった、とても斬新で刺激的な世界だった。
サイリウムを振り回す多くの観客からの大声援を全身に浴びながら、バンドメンバーによるギター、ベース、キーボード、ドラムから放たれる軽快な音楽を背に、マイクに向かって全身全霊を込めて歌う。
同じ『歌』でありながら、これまで美海が経験してきた合唱部での歌とは全くの別物…美海にとっては何もかもが新鮮だった。
バンドというのは当然ながら学校の部活動として認められておらず、それ故に学校側からのバックアップを一切受ける事が出来ない。
予め教師に手配して貰った会場で、予め用意された歌を歌うだけで済み、何か問題が発生したら学校側が責任を持って助けてくれる合唱部とは訳が違うのだ。
自分たちで会場の手配や客寄せを行い、自分たちで曲を作り、何か問題が発生したら自分たちで対処しなければならない。
そして部活動では無く同好会という扱いなので、当然ながら部費による援助も一切出ない。衣装や楽器などの必要経費も全て自己負担で用意しなければならないという、完全な自己責任の世界なのだ。
正直言って毎日バタバタして大変だったが、それでも美海は充実していた。『ワルキューレ』のボーカルとして歌う日々は、とても楽しかった。
何よりもライブ会場で他のガールズバンドの女の子たちとも交流を深め合う日々は、美海にとって大きな刺激となったのである。
そして。
『プ、プロ!?私がですか!?』
ライブを終えたある日の夜、大手芸能事務所のスカウトを名乗る若い女性に突然声を掛けられ名刺を渡された美海は、高校卒業後に専属歌手として契約する事を持ち掛けられ、困惑の表情を見せたのである。
美海の歌は、その道の業界のプロの心さえも動かしたのだ。
美海たち『ワルキューレ』を近くのファミレスに招待したスカウトの女性は、とても穏やかな笑顔で美海たちに語りかけたのだが。
『上層部からの指示を受けて、今日こうして興味本位で貴女の歌を聴いてみたのだけれど…正直言って驚いたわ。まだまだ粗削りな点は多くあるけれど、それでも私たちの元で本格的に技術を磨けば、貴女は世界に通用する歌手になれるだけの資質がある。』
『だ、だけど…本当に私なんかが…。』
『勿論、プロというのはそんなに甘い世界じゃないわ。食うか食われるかの過酷な競争社会よ。だけど貴女にその覚悟があるのなら、前向きに検討してくれると嬉しいな。』
まさかのプロ転向の誘い…真剣にプロを目指して猛練習を積みながらも、何度オーディションを受けても無様に落選し続け、夢を断たれるアマチュアの歌手たちが、果たして全国にどれだけ多く存在するのだろうか。
全国各地に点在する歌手の養成学校には、毎年2000人以上もの生徒が入学するものの、その中で実際に芸能事務所と契約を結びプロとしてデビュー出来る生徒は、毎年10人もいればいい方だと言われているのだ。
そんな中で美海は、逆にプロのスカウトの方から猛アタックを掛けられたのである。
うちの事務所と専属契約を結ばないかと。プロの歌手として歌ってみないかと。
『返事は今すぐじゃなくても構わないわ。高校卒業後にうちに入ってくれるという確約さえ貰えれば、今は高校生活を存分に満喫してくれればいい。』
『あ、あの…。』
『別の事務所には学業と歌手活動を両立している子もいるにはいるけれど、貴女にそんな無理をさせて潰してしまう訳にはいかないから。』
『ちょっと待って下さい。有馬さん、誘って下さったのは私だけなんですか?ワルキューレの皆は…。』
『御免なさいね。上層部からスカウトするよう指示があったのは貴女だけなの。貴女が望むなら、私の方から掛け合ってはみるけれど…。』
美海がスカウトの女性に要望したのは、プロとして契約するなら『ワルキューレ』の皆も一緒に…あくまでも『ワルキューレ』の皆と一緒に歌いたいという物だった。
その美海の想いはスカウトの女性を通じて大手芸能事務所の上層部に伝えられ、取り敢えずオーディションを開く事になったのだが、結局全員不合格を言い渡されてしまう。
美海に関しては素晴らしい資質を持っているが、他の4人はどこにでもいる平凡な人材に過ぎないと。
確かに上手いのは認めるが、ただ単に上手いだけ…演奏を聴いてもまるで心に響かない、プロとしてやっていくには到底足りないと。
心底落ち込んだ美海だったが、それでも他の4人は美海を決して妬む事無く、美海を心の底から祝福しつつ、今の内にサインを書いて欲しいとか冗談を交えながらも、こう美海に切り出したのである。
高校を卒業するまでの間、私たちで思い出を沢山作ろう、存分に歌おう…と。
こうして仲間たちに励まされた美海は、心底悩みながらもプロ転向を決意。
高校卒業後に上京し、本格的にプロの歌手として活動する事を決断したのである。
この時、誰もが頭の中で想像しただろう。プロの歌手としてデビューした美海が、日本中の…いいや、世界中の人々を震撼させる未来を。
だが運命の神とやらが本当に実在するのであれば、そいつは一体どこまで残酷で無慈悲なのだろうか。
そんな美海の光溢れる未来は…あまりにも理不尽に打ち砕かれてしまうのである…。
『それじゃあ私、こっちだから。』
『うん、また明日ね、美海…っ!?』
美海が2年生に進級した、ある日の夜8時。
いつものようにライブを終えて、交差点で『ワルキューレ』のメンバーたちと別れて自宅に帰ろうとしていた美海だったのだが。
青信号に従って横断歩道を渡った美海に向かって、信号無視をして物凄い速度で突っ込んできた大型トラック。
その大型トラックは全く減速しようとせず、美海は大型トラックに刎ねられて全身を強打し即死。大型トラックもそのまま電柱に激突してしまう。
『…い…嫌…嫌あああああああああああ!!美海あああああああああああ!!』
一瞬にして引き起こされた惨劇によって悲鳴と怒声が飛び交う最中、大型トラックの運転手は近隣をたまたまパトロールしていた警察官によって即座に取り押さえられた。
何らかの疾患を患っていたのか、電柱に激突した後もアクセルを盛大に踏み続けながら、白目を向いて口から盛大に泡を吹き意識を失っている状態で。
この運転手もまた美海と共に病院に緊急搬送されたのだが、そのまま意識を取り戻す事無く心筋梗塞で死亡。容疑者死亡のまま書類送検される事となる。
そして警察による司法解剖の結果、運転手の死因は極度の疲労状態に陥った事による過労死ではないかと分析された。
これを受けて警察による勤務先の強制捜査が行われ、この運転手の月の平均残業時間が、過労死ラインだとされている80時間を遥かに上回る200時間にまで達していた事が発覚。
しかも時間外手当を全く支払っておらず、証拠隠滅の為に従業員への口裏合わせの強要やタイムカードの偽装を企んでいた事まで明らかになり、この会社の社長も安全配慮義務違反と労働基準法違反、事実隠蔽の容疑で警察に逮捕される事となるのである。
こうして向こうの世界で17歳という若さで理不尽に殺された美海は、ベルドの命令で発動された転生術によって、ギャレット王国に召喚される事となる。
ベルドに決して逆らう事が出来ないように、太一郎たちがシリウスに掛けられた物よりも、より強力な『呪い』を情け容赦なく付与された上で。
「よ~し、この辺でいいだろう!!全軍止まれ!!まずは当初の作戦通り、美海の『異能【スキル】』で奴らを無力化するぞ!!」
ファムフリート王国の城下町まで目前に迫りながら、何故かベルドの命令でピタッと急停止したギャレット王国騎士団。
万全の迎撃態勢を敷いていたファムフリート王国騎士団、そして城の展望台からその様子を見ていたクライスとエストファーネは、予想外のギャレット王国騎士団の行動に呆気に取られてしまう。
戦場においては一度突撃命令を下された部隊が突然急停止しろと言われた所で、そう簡単に止められる物では無い。
それなのに、まるで図ったかのように全軍が綺麗に揃って急停止するとは…まさかこの急停止自体もベルドの作戦の内に組み込まれているというのか。
一体ギャレット王国騎士団は、そしてベルドは、何を企んでいるというのか。
「お前ら!!先程も話したが、功を焦って前に出過ぎるなよ!?美海の歌に巻き込まれたくなければな!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
「美海!!お前の出番だ!!お前の歌で奴らを徹底的に蹂躙してやるのだ!!」
そんなクライスたちの疑問を解消してやろうと、ベルドが地面に這いつくばっている美海の髪を妖艶な笑顔でわし掴みにし、強引に立ち上がらせてファムフリート王国騎士団のいる方角に美海の顔を向けたのだが。
「…い、嫌…!!」
「あ!?」
「私の歌を人殺しの為に使うなんて、そんな…っ!?がああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
目から大粒の涙を流しながら歌う事を拒絶する美海に襲い掛かったのは、ベルドの命令で美海の身体に仕掛けられた『呪い』。
突如顕現した漆黒の女性の姿をした『呪い』が、妖艶な笑顔で美海を背後から抱き締め、美海の心にも身体にも甚大なダメージを負わせる。
【ファファファファファ…。】
「があああああああああああああああああああああああああ!!」
ベルドが宮廷魔術師に掛けさせた『呪い』は、シリウスが太一郎たちに掛けた『温い』代物とは全く違う。
シリウスが太一郎たちを壊してしまわないように『呪い』の威力を抑え、あくまでも精神への攻撃のみに留め、肉体的には何のダメージも与えなかった物と違い、ベルドが掛けさせた『呪い』は美海の精神だけでなく肉体にも、情け容赦なく強烈なダメージを与えるのだ。
ただ歌が上手いだけの17歳の少女でしかない美海では、到底耐えられる代物ではない程の…下手をすれば廃人にしてしまいかねない程の凄まじい威力で。
この『呪い』はシリウスが太一郎たちに掛けた物とは違い、美海以外の者にも危害を加える事は可能だが、その代償として物理攻撃も魔法攻撃も通用してしまうタイプだ。
それ故に太一郎や神也ならば逆に『呪い』を力尽くで捻じ伏せ、ベルドに反撃する事も充分に可能だっただろうが…そんな芸当は戦闘能力皆無の美海では到底不可能な話だ。
「ふははははははは!!『呪い』に蝕まれたお前が、主である俺に逆らえると本気で思っているのか!?」
「があああああああああああああ!!があああああああああああああああああああ!!があああああああああああああああああああああああ!!」
「歌え!!歌うのだ美海!!歌わなければお前は、この苦しみからは決して逃れられぬぞ!!」
妖艶な笑顔で、ベルドが美海の耳元で『歌え』と命じる。
『呪い』に苦しむ美海に対し、歌えばこの苦しみから解放されるのだと。
「わ、分かりました!!あああああああああああ!!う、歌い…ますっ!!ああああああああああああああああ!!だ、だから、も、もう、止めて、お、お願い…ああああああああああああああああああああああああ!!」
美海の絶望の叫びと共に、背後から美海を抱き締めていた『呪い』が消え失せ、美海の体内に取り込まれる。
その瞬間、美海を襲っていた苦しみがピタッと収まったのだった。
「…はぁっ…はぁっ…はぁっ…!!」
「そうだ!!それでいい!!お前は俺の命令通りに動く人形でいれば、それでいいのだ!!」
「…う、ううう…ううううう…うああああ…!!」
妖艶な笑顔のベルドに背後から髪を掴まれながら、目から大粒の涙を流す美海。
その様子をファムフリート王国騎士団の兵士たちも、クライスもエストファーネも、唖然とした表情で見つめていた。
どうやら彼女がギャレット王国が召喚した転生者のようだが、これではまるで彼女はベルドの奴隷も同然ではないか。
あんなボロボロのみずぼらしい衣服を着せられ、首元に鎖を繋がれ、髪をわし掴みにし、あまつさえ『呪い』であそこまで彼女を苦しめるなど…人道的に到底許されるはずがない。
一体ベルドは、彼女の事を何だと思っているのかと。
「さあ奴らに存分に見せつけてやれ美海!!お前の絶対無敵の『異能【スキル】』!!全てを破壊するお前の絶唱!!『絶望の輪舞曲【デストラクション】』をなぁっ!!」
そんなファムフリート王国騎士団に一泡吹かせてやろうと、ベルドが美海の口元に拡声器のタリスマンを近付け、美海の耳元で大声で『歌え』と命じたのだった。
歌わなければ、美海の全身に先程の苦しみが再び襲い掛かる。
その恐怖に駆られ、目から大粒の涙を流しながら美海が奏でたのは…絶望の歌。
美海の歌が口元の拡声器を通じ、ファムフリート王国騎士団へと襲い掛かった…次の瞬間。
「…う…あ…!?」
「あああ…あああああ…!!」
「な、何だよこれ…!?ち、力が…入らない…!!」
正門前で万全の迎撃態勢を敷いていたファムフリート王国騎士団の兵士たちが、力が抜けたかのように突然その場に崩れ落ちてしまう。
身体に力が全然入らない。立ち上がり武器を構えるので精一杯だ。
まるで美海の歌に、全身の力が吸い取られているかのようだ。
「ふはははははは!!まさに我が国の伝承に古くより伝わる、海の歌姫セイレーンの再来よのう!!ひゃはははははははははは!!」
その光景をベルドが妖艶の笑みを浮かべ、高笑いしながら見つめていたのだった。
美海の『絶望の輪舞曲【デストラクション】』の『異能【スキル】』は、それ自体には殺傷能力は全く無い。
だがこの『異能【スキル】』を食らった者は強烈なデバフを受けて急激に身体能力が低下し、戦闘能力が3分間もの間、本来の5分の1近くにまで減退させられてしまうのだ。
そして実際の戦場においての3分間というのは、極めて大きな時間となってしまう。
「よーし!!そこまでだ!!もう歌を止めていいぞ美海!!ひゃははははははは!!」
「う、ううう…ううううう…!!」
ベルドの命令を受け、歌うのを止めた美海。
美海が歌を止めた後も、3分間は『絶望の輪舞曲』の『異能【スキル】』の影響が消える事が無い。
全く、とんでもない拾い物をする事が出来た物だと…ベルドは改めて思い知らされたのだった。
ベルドも美海を召喚した当初は、『歌なんぞが戦場で役に立つのか?』などと疑問に思っていたのだが。
試しに刑務所に服役中の凶悪犯罪者に美海の『絶望の輪舞曲【デストラクション】』の『異能【スキル】』を食らわせてみた結果、その疑問が確信へと変わったのだ。
美海さえいれば、俺がこの世界の支配者になれるのだと。
フォルトニカ王国も、サザーランド王国も、パンデモニウムも、美海さえいれば容易く支配する事が出来るのだと。
そして美海の『絶望の輪舞曲【デストラクション】』の『異能【スキル】』は、美海自身が絶望すればする程、その威力は絶望の度合いに比例して大きくなっていくのだ。
もっと、もっとだ。これからもっともっと、美海に絶望を味合わせ続けてやろう。
そうすれば美海の『絶望の輪舞曲【デストラクション】』の『異能【スキル】』は、もう誰にも止める事が出来なくなるだろう。
その為にも殺さない程度に心も身体も徹底的に痛めつけ、今後も美海に生き地獄を味合わせ続けてやるのだ。
『呪い』による懲罰を受けさせれば、美海に謀反される心配も無いのだから。
「これでファムフリート王国騎士団の連中は根こそぎ無力化された!!全軍突撃!!エストファーネは生け捕りにし、それ以外の俺たちに逆らう者は皆殺しにするのだぁっ!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」
美海をまるでボロ雑巾のように地面に叩きつけたベルドが、狂喜乱舞の笑顔で部下たちに突撃命令を下したのだった。
美海の『異能【スキル】』で完全に無力化されたファムフリート王国騎士団は、1人、また1人とベルドに、そしてギャレット王国騎士団に虐殺されていきます。
自らの『異能【スキル】』によって引き起こされた惨劇に絶望する美海、そしてベルドの魔の手がクライスにも…。