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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
第11章:破滅への序曲
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第89話:魔王カーミラVS魔王カーミラ

ドノヴァンを殺して神刀アマツカゼを強奪した神也は、瑠璃亜との魔王カーミラ同士の戦いに臨みます。

圧倒的な力で神也と互角以上に渡り合う瑠璃亜ですが…。

 ドノヴァンの生首を手に城の外に出た神也は、改めて自分が異世界へと転生させられた事を思い知らされたのだった。

 自分が全く見た事が無い奇妙な構造の建物、周囲にいる魔族たちの姿。

 そして神也が威風堂々とドノヴァンの生首を手にしてるもんだから、周囲の魔族たちは大騒ぎになってしまっている。

 そんな魔族たちを興味が無いと言わんばかりに無視した神也が、ドノヴァンの生首を掲げながら瑠璃亜を探す為に周辺をウロチョロしていたのだが。

 

 「んだよ、キャーキャーキャーキャー騒がしい奴らだな~。お~い!!渡辺瑠璃亜とかいう女はどこだ~!?この脳筋馬鹿から俺の先代の魔王カーミラだって聞かされたんだけどよ~!!」

 「これは一体何の騒ぎなの!?」


 神也が城下町の広場まで辿り着いた所で、騒ぎを聞きつけた瑠璃亜が護衛のイリヤ、ルミア、エキドナを引き連れて駆けつけてきた。

 だがドノヴァンの生首を手にした、神刀アマツカゼを腰にぶら下げた神也の姿に、流石の瑠璃亜も愕然がくぜんとしてしまう。

 自分たちがドノヴァンを捜索している間に、一体ドノヴァンの身に何があったというのか。


 「なっ…ドノヴァン!?」

 「お?お前ら、こいつの知り合いかよ。実は今、人探しをしてるんだけどよ。渡辺瑠璃亜とかいう女がどこにいるのか知らねえか?」

 「渡辺瑠璃亜は私の事よ。」

 「んなっ…!?」


 まさかの瑠璃亜からの返答に、唖然とした表情になってしまう神也。

 これだけ広大な城下町の、しかも全く土地勘が無い場所での人探しだ。

 探すのに手間取るとは思っていたのだが、まさかこんなにも早く、しかも向こうから駆けつけてくれるとは。

 一転して神也は、狂喜乱舞の笑顔になってしまう。


 「…そうかよ!!アンタがこの脳筋馬鹿が言ってた渡辺瑠璃亜かよ!!」

 「そうだけど、そういう貴方は何者なの?」

 「俺の名前は真野神也!!アンタと同じようにこの脳筋馬鹿に転生させられた、アンタの後任の魔王カーミラだ!!」

 「んなっ…!?」


 まさかの神也からの返答に、唖然とした表情になってしまう瑠璃亜。

 神也は瑠璃亜に、狂喜乱舞の笑顔で全てを語ったのだった。


 自分が新たなる魔王カーミラとして、ドノヴァンに転生させられた事。

 瑠璃亜の抹殺を命じられたので断った所、懲罰として『呪い』を発動させられたのだが、それを力尽くで捻じ伏せた事。

 それで取り敢えず神刀アマツカゼを強奪してドノヴァンと『呪い』を殺したので、瑠璃亜の強さがどれ程の物なのか興味を持ったので、取り敢えず殺し合ってみたいと思った事を。


 この神也の一番最後の滅茶苦茶な言い分に、イリヤ、エキドナ、ルミアの3人が、とっさに瑠璃亜を守る為に神也の前に立ちはだかった。

 ドノヴァンの反乱によって新たなる魔王カーミラが誕生したというのも驚きだが、そんな事よりも今は瑠璃亜を守る事の方が先決だ。


 「…と、いう訳でよぉ。一丁俺と殺し合ってくれよぉ!!瑠璃亜た~ん!!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ(笑)!!」


 ドノヴァンの生首を用済みとばかりにウザそうに投げ捨てた神也が、威風堂々と神刀アマツカゼの先端を瑠璃亜に突きつける。


 「アンタ、一体何をふざけた事を言ってるのよ!?て言うか瑠璃亜たんって何!?キモいんだけど!!」


 そうはさせまいとイリヤが魔剣ヴァジュラを天に掲げた瞬間、刀身から無数の小さな刃が分離し、全方位から神也に襲い掛かったのだが。


 「行きなさい!!ヴァジュラ!!」

 「あたたたたたたたたたたたたたたたあっ(笑)!!」


 それを神也は狂喜乱舞の笑顔で、いとも簡単に神刀アマツカゼで全て弾き返してみせたのだった。

 まさかの事態に、イリヤは戸惑いを隠せない。


 「う…嘘でしょ…!?アタシのヴァジュラを、初見でこうも簡単に…!!」

 「ならば、これならどうだぁっ!?」


 神也がイリヤに気を取られていた間に、いつの間にか神也の側面に回り込んでいたルミアが、側転、バク転、バク宙しながら、神也の首筋に強烈な蹴り技を放ったのだが。


 「暗黒流水鳥脚奥義!!水流燕舞すいりゅうえんぶ!!ぴいいいいいいいいいいい!!ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 「ぴいぴいぴいぴい五月蠅うるせぇわ!!ヒヨコかお前は(笑)!?」

 「なっ!?がはぁっ!!」


 岩をも軽々と粉砕するルミアの強烈な蹴り技を、左手で軽々と受け止めた神也が、狂喜乱舞の笑顔でルミアを地面に叩きつけた。

 受け身も取れずに全身をまともに地面に叩きつけられたルミアは、激痛で表情を歪めてしまう。


 「ぐっ…この私が、まるで歯が立たないとは…っ!!」

 「ルミアぁっ!!」


 さらにエキドナが聖剣ティルフィングから神也に無数の暗黒魔法を放ったのだが、それを神也はアヘアヘしながら神刀アマツカゼで全て弾き返してしまう。

 その隙に全身に襲い掛かる激痛に耐えながら、何とかバク転しつつ神也から間合いを離したルミアだったのだが、圧倒的な神也の実力、そして神刀アマツカゼの威力に驚きと戸惑いを隠せずにいた。

 3魔将全員が束になって挑んでも、まるで太刀打ち出来ずにこのザマだ。

 周囲の民間人魔族たちはイリヤたちの無様な醜態を、とても不安そうな表情で見つめているのだが。


 「皆、下がりなさい。彼は私がやるわ。」

 「瑠璃亜様!!」


 その魔族たちの不安を払拭する為に、『治療【ヒーリング】』の『異能【スキル】』でルミアの傷を癒した瑠璃亜が、エキドナを制して神也の前に立ちはだかったのだった。

 瑠璃亜は今の神也の戦いぶりを見ただけで、瞬時に悟ったのだ。

 神也は間違いなくこの異世界全土に破滅を引き起こす存在だと。今ここで確実に殺しておかなければ大変な事になると。

 何しろヘラヘラ笑いながらドノヴァンの生首を持ち歩き、まるで戦利品だと言わんばかりに周囲の魔族たちに高々と見せびらかし、さらにイリヤたちと戦った時の狂喜乱舞の笑顔だ。


 間違いなく神也は何の想いも信念も持たず、ただ愉悦欲しさに戦いに臨み、人殺しに…というよりもむしろ『戦う事自体』に快楽を感じるタイプの男だ。

 そんな男が『異能【スキル】』と神刀アマツカゼという、あまりにも強大な力を手に入れてしまったのだ。

 このまま彼を野放しにしてしまえば、一体この異世界でどれだけの惨劇が繰り広げられてしまうというのか。


 懐の短刀で右手のてのひらを自傷し、溢れ出た自身の血を『血液武器化【ブラッドウェポン】』の『異能【スキル】』でソードレイピアの形状に変化させた瑠璃亜が、イグナイト舞踏剣術の構えを見せる。

 その構え1つを見ただけで、神也は確信したのだった。

 瑠璃亜は自分の目の前で無様な醜態を晒している雑魚共よりも、遥かに格上の存在だと。

 強い者程、相手の強さには敏感な物なのだ。


 「ひゃはははははははははは!!アンタは俺の事を楽しませてくれるんだろうなぁ!?」

 「転生したばかりの所を本当に申し訳無いけれど、貴方には今ここで死んで貰うわ!!」


 次の瞬間、一瞬で神也との間合いを詰めた瑠璃亜が、無数の斬撃を神也に浴びせる。

 

 「う、うほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお(笑)!?」


 『模倣【ラーニング】』の『異能【スキル】』でコピーした、クレアの『目視出来ない剣閃』。

 だがそれを神也は、平然と神刀アマツカゼで全て受け止めてしまったのだった。

 ハァハァしながら顔を赤らめ、息を荒げて興奮する神也。

 やはり瑠璃亜は別格だ。少しでも気を抜けば神也は瑠璃亜に殺される。

 だが、だからこそだ。だからこそ瑠璃亜との殺し合いは最高に楽しくて絶頂するのだ。


 「あ…あああ…!!イイ!!凄くイイ!!瑠璃亜たんマジ天使(笑)!!」

 「くっ…!!貴方という人はぁっ!!」


 『目視出来ない剣閃』を何度も神也に浴びせるものの、それを神也はアヘアヘしながら立て続けに防ぎ切ってしまう。

 そこへ反撃で繰り出された神也のカウンターの斬撃を、辛うじてバックステップして避けた瑠璃亜が、さらに間合いを詰めてきた神也に逆にカウンターを浴びせたのだった。


 「『雷迅の刃【ライトニングエッジ】』!!」

 「う、うおおおおおおおおおっとっとっとっとっとっとっとぉ(笑)!?」


 放たれた無数の雷撃の刃を、慌ててバックステップして避ける神也。


 「『氷結の槍【フリジットジャベリン】』!!」

 「ちょちょちょちょちょ!!ちょちょちょちょちょちょ!!ちょちょちょちょちょちょちょちょちょ(笑)!!」


 さらに放たれた無数の氷の槍を、慌てて神刀アマツカゼで弾き返す神也。


 「『爆炎【エクスプロージョン】』!!」

 「どああああああああああああああああああああ(笑)!?」


 そこへさらに情け容赦無く放たれた爆炎を神刀アマツカゼで斬り捨てた神也だが、なおも瑠璃亜は追撃の手を緩めない。


 「『十頭の大蛇【ウロボロス】』!!」

 「にぎゃああああああああああああああああああ(笑)!?」


 神也に襲い掛かった10本の漆黒の鞭を、神也は何とか…何とか辛うじて、神刀アマツカゼで全て弾き返したのだった。

 危なかった。本当に間一髪だった。

 あと少し反応が遅れていたら、神也は瑠璃亜の鞭によって無様に全身を拘束され、瑠璃亜に敗北を期していた事だろう。

 その緊張感、このままでは確実に瑠璃亜に殺されるという危機感が、逆に神也をゾクゾクと興奮させてしまう。


 瑠璃亜はただ闇雲に『異能【スキル】』を放つのではなく、『見切り【インサイト】』の『異能【スキル】』によって神也の動きを先読みした上で、要所要所で的確に神也の一瞬の隙を目掛けた上で放っているのだ。

 神也が『異能【スキル】』という今までに経験した事が無い、未知の力に慣れていないというのも勿論あろうだろうが、それでも神也は自分を追い詰める瑠璃亜の威風堂々とした姿に、驚きと興奮と快楽を隠せないでいた。


 「瑠璃亜たん…強ぇ…!!」


 恍惚とした表情で、自分を見下す瑠璃亜を見つめる神也。

 瑠璃亜は一馬たちと違って『異能【スキル】』という強大な力に溺れ、自分たちより弱い者をいたぶる事に愉悦ゆえつを感じ、己を研鑽けんさんする事を怠るような愚か者などでは断じて無い。

 自分が身に着けた全ての『異能【スキル】』に秘められた力の本質を理解し、その能力を最大限に発揮出来るように修練と実戦を積み重ね、全ての『異能【スキル】』を完璧に使いこなしている。


 今回、瑠璃亜が『模倣【ラーニング】』の『異能【スキル】』でコピーした、クレアのイグナイト流舞踏剣術や『目視出来ない剣閃』にしてもそうだ。

 同じ『模倣【ラーニング】』の『異能【スキル】』で太一郎やサーシャの技をコピーした『だけ』で、愉悦に浸っていた愚か者の一馬とは断じて違う。

 瑠璃亜は日々の修練と実戦の積み重ねによって心身を鍛える事を決して怠らなかった事で、一馬と違いコピーしたクレアの技を完璧に自分の物にする事が出来ている。


 だからこそ瑠璃亜は、こうして強敵である神也と、互角以上に渡り合う事が出来ているのだ。


 「なんか、なんかねえのかよ!?瑠璃亜たんを圧倒出来る『異能【スキル】』が!!」


 このままでは間違い無く、神也は確実に瑠璃亜に殺される。

 瑠璃亜に追い詰められた神也は、目の前の空間に自身の『異能【スキル】』の一覧を表示し、何とか一発逆転の秘策が無いかと必死に探していたのだが。


 「…ぷぷぷぷぷ~!!何だ、あるじゃねえの!!中々面白ぇ『異能【スキル】』がよぉ(笑)!!」


 突然狂喜乱舞の笑顔で、神也は瑠璃亜に向き直ったのだった。

 一体どんな秘策を思いついたのかは知らないが、瑠璃亜は神也が何をしようとも、今ここで確実に神也を殺すつもりだ。

 神也は間違い無く、この異世界全土に破滅をもたらす存在だ。

 ここで確実に殺しておかないと、大変な事になってしまう…その焦りや危機感のような感情が、今の瑠璃亜を突き動かしていた。


 「一気にケリを付けるわよ!!ウリエル・インストール!!」


 瑠璃亜の…と言うか『模倣【ラーニング】』の『異能【スキル】』によってコピーしたクレアの精霊魔法によって、温かな光に包まれた光の上位精霊ウリエルが顕現する。

 それが瑠璃亜と一体化し、瑠璃亜の背中から光の翼が放たれたのだった。

 そのまま究極奥義で神也を一気に葬ろうとした瑠璃亜だったのだが。


 「光竜滅魔…っ!?」


 そこへ突然瑠璃亜に襲い掛かった、強烈な脱力感。

 瑠璃亜の背中から放たれていた光の翼が突然消え失せ、右手のソードレイピアもボロボロと崩れ去ってしまう。

 まさかの出来事に唖然としてしまうイリヤ、ルミア、エキドナ、そして周囲の民間人の魔族たち。

 一体瑠璃亜の身に何が起こったというのか…だが瑠璃亜は持ち前の聡明さによって、それを瞬時に理解したのだった。


 「…これは…まさか!?」

 「ひゃあああああああああああああああああああっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!そうだよぉ!!『封印【スキルロック】』だよ~ん(笑)!!」


 狂喜乱舞の笑顔で、全てを悟った瑠璃亜を見下す神也。

 『封印【スキルロック】』…フォルトニカ王国の転生者が太一郎以外全滅した要因となった、かつてアリスが使っていた転生者殺しとも言うべき『異能【スキル】』だ。

 この『異能【スキル】』の前では使用者から半径30m圏内の転生者は、一切の『異能【スキル】』を封じられてしまう。

 当然、発動者自身の神也も、その影響をまともに受けてしまうのだが…太一郎と同様に『異能【スキル】』に頼らずとも『素』で強い神也にとっては、全く何の問題にもなっていなかった。

 

 だがしかし…一馬たちと違い日々の修練を怠らなかったとはいえ、それでも『異能【スキル】』を主戦力としている瑠璃亜にとっては…。

 逆に追い詰められてしまった瑠璃亜に、情け容赦なく神也が襲い掛かってきたのだった。

 

 「今度はこっちから行くぜ瑠璃亜たあああああああああああああああひゃひゃひゃひゃひゃひゃのいうぇのいQWmf;うぇごん@おのうぇふじこ(笑)!!」

 「くっ…!!」


 繰り出される神也の斬撃を、腰にぶら下げていたロングソードで辛うじて受け続ける瑠璃亜だったのだが。


 「おっ、何だよ瑠璃亜たん、『異能【スキル】』が使えなくなっても中々やるじゃねえの(笑)!!」

 「私は負ける訳にはいかない!!貴方を今ここで確実に殺さなければ…!!」

 「けどなぁ!!相手が悪かったなぁ!!おらよぉっ(笑)!!」


 それでも奮闘虚しく、神也の神刀アマツカゼが瑠璃亜の美しい胸元に、情け容赦なく斬撃を浴びせたのだった。

 ほとばしる鮮血。そして瑠璃亜の身体がどうっ…と背中から地面に崩れ去る。

 その瞬間、周囲の民間人の魔族たちが絶望の悲鳴を上げたのだった。


 「が…っ!!」

 「瑠璃亜様ぁっ!!」


 慌てて駆けつけるエキドナ、そしてイリヤとルミア。

 咄嗟の反応で身体を後方に逸らし、何とか辛うじて致命傷は避けたようだが、それでも胸元からの出血が酷く、早く対処しなければ大変な事になってしまう。

 だが神也が発動している『封印【スキルロック】』の『異能【スキル】』のせいで、瑠璃亜は『治療【ヒーリング】』の『異能【スキル】』を使う事が出来ない。

 激痛で表情を歪める瑠璃亜を、妖艶な笑顔で見下す神也だったのだが。


 「ひゃああああああああああああああああっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!俺様最強おおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 「『転移【テレポート】』!!」


 咄嗟の判断でエキドナが瑠璃亜、イリヤ、ルミアを『転移【テレポート】』の『異能【スキル】』で、フォルトニカ王国へと飛ばしたのだった。


 「エキドナぁっ!!」


 泣きそうな表情で必死にエキドナに手を伸ばすルミアだったのだが、それも虚しくルミアの身体が転移させられてしまう。

 唯一人取り残されたエキドナが、決死の表情で聖剣ティルフィングを構え、真っすぐに神也を見据えている。


 「おいおいおいおいおいおいおいお前、俺が『封印【スキルロック】』を発動したってのに、何で『異能【スキル】』を発動出来るんだよ!?」


 エキドナの聖剣ティルフィングは、あらゆる状態異常を無力化する力を宿している。

 だから神也の『封印【スキルロック】』の『異能【スキル】』を無力化出来たのだという事を、当たり前の話だが転生させられたばかりの神也は知らなかったのだが。

 

 「瑠璃亜様は、我々パンデモニウムの『希望』…!!貴様のような下郎如きにやらせてたまるものか!!」

 「お前の瑠璃亜たんへの忠義は認めてやるがよ!!お前如きに一体何が出来るってんだよぉ(笑)!?」


 まあそんな事はどうでもいい。仕方が無いので神也はエキドナと遊ぶ事にした。

 繰り出される神也の神刀アマツカゼを、何とか辛うじて聖剣ティルフィングで受け続けるエキドナだったのだが…それでも実力差は明白だ。

 必死に粘るものの全く歯が立たずに、エキドナは神也に吹っ飛ばされて壁に叩きつけられてしまう。


 「がはあっ!!」

 「かー弱ぇ!!もっと強ぇ奴はいねえのかよ!?瑠璃亜たん以外はクソつまらねえ雑魚ばっかじゃねえかよ!!お前も他の2人も、あっちの世界の鈴音たんの足元にも及ばねえよ!!」


 先程殺したドノヴァンと『呪い』にしてもそうだが、イリヤもルミアもエキドナも、瑠璃亜に比べれば雑魚も同然ではないか。

 なんか周囲の民間人の魔族たちが三魔将がどうのこうの、あの3人でさえも勝てないのかとか、目の前で無様な醜態を晒しているエキドナが相当な実力者である事を示唆しながら騒いでいるのだが。


 え?三魔将とかいう大層な事を言われてるこの女が、この程度?こんな雑魚が?

 それが神也が真っ先に抱いた感想…そして失望だった。

 つまりは他の魔族の兵士たちに至っては、この3人よりも遥かに劣る雑魚ばかりという事ではないか。

 折角強敵との殺し合いを楽しみにしていたというのに…瑠璃亜がいなくなってしまった事で神也は完全に楽しみが無くなってしまった。


 「まあいいや。取り敢えずお前は死んどけぇ(笑)!!」

 「くっ…『転移【テレポート】』!!」


 もう飽きたので取り敢えずエキドナを殺そうとした神也だったのだが、間一髪の所でエキドナは『転移【テレポート】』の『異能【スキル】』でどこかに瞬間移動したのだった。

 神也の神刀アマツカゼが、先程までエキドナがいた何も無い空間を、豪快に空振り三振してしまう。


 「…ちっ、どこかに転移しやがったか。まあいいや。別にあんな雑魚なんざ、もうこれっぽっちも興味無えし。」


 溜め息をつきながら、神刀アマツカゼを鞘に納めた神也。

 その様子を周囲の民間人の魔族たちが、絶望の表情で見つめていたのだった。

 瑠璃亜が負けた。あの絶対無敵の瑠璃亜が負けた。

 あのチェスターやカーゼルさえも圧倒してみせた瑠璃亜でさえも、こんなにも無様な敗北を喫してしまうのかと。

 しかもドノヴァンが殺され、頼みの三魔将さえも全員いなくなってしまった。

 自分たちはこれから、一体どうなってしまうのかと…。 


 そんな周囲の民間人の魔族たちの騒ぎなど、知った事ではないと言わんばかりに無視し、これから一体どうした物かと思案にふけっていた神也だったのだが。


 「あ、そうだ!!俺、いい事思いついちゃった(笑)!!」


 ふと、神也の脳裏に浮かんだ、まさに悪魔の発想。

 ドノヴァンが先程、自分に語っていたではないか。

 自分が魔王軍の転生術によって、この異世界に転生させられたのだという事を。

 そしてその転生術を狙って、周囲の人間たちがこのパンデモニウムに何度も襲撃を仕掛けているのだという事を。


 そう…自分を楽しませる強敵がいなくなってしまったのであれば…他国の人間たちに『用意させれば』済むだけの話ではないか。


 「転生術の技術を世界中にバラまいてやればいいんだ!!そうすればきっと面白ぇ事が起きるだろうなぁ!!あひゃひゃひゃひゃ!!ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!ひゃああああああああああああああああああっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ(笑)!!」


 これからこの異世界全土で巻き起こるであろう騒動を想像しながら、狂喜乱舞の笑顔で神也は豪快に高笑いしたのだった…。

神也に敗れ重傷を負った瑠璃亜は、フォルトニカ王国の医療スタッフによる懸命な治療を受けますが、それでも神也の強力な暗黒魔法によって回復魔法が阻害されてしまっており、それを知らされた太一郎は愕然としてしまいます。


一体この異世界は、どうなってしまうのか…。

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