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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
第10章:新たなる魔王カーミラ
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第83話:終わりの始まり

菱川が提唱した局中法度は隊士たちを鉄の結束で結びつけるどころか、逆に内部崩壊を引き起こす事になってしまいます。

激しい内乱の最中、必死に菱川を守ろうと奮闘する鈴音ですが…。

 鈴音の嫌な予感は的中してしまった。

 菱川が提唱した局中法度は仁戦組にとって、終わりの始まりでもあったのだ。

 隊士たちを鉄の結束で結びつけ、野良犬集団ではなく真の狼集団とする…その想いから菱川は鈴音の警告を無視し、隊士たちを局中法度によって縛り付けた。

 幕府の為に身命をして戦う戦闘集団…その極みへと仁戦組を、そして隊士たちを導く為に。


 だがそれによって仁戦組にもたらされたのは、菱川が思い描いたような隊士たちの鉄の結束などでは無かった。

 菱川が局中法度を提唱してから3日後、およそ半数の隊士たちが菱川に反発し、隊の内部による暴動が発生。

 鈴音の警告通り仁戦組は、内部崩壊による自滅を招く結果となってしまったのである。


 「くそっ、何故だ!?何故こんな事になってしまったのだ!?」


 振り下ろされた刀を菱川が刀で受け止め、鍔迫り合いの状態になる。

 その菱川と鍔迫り合いの状態で睨み合っているのは、つい先日まで仁戦組の一員として、鈴音たちと共に戦場を駆け抜けてきた男だ。

 だが男は菱川と睨み合いながら突然白目を向き、どう…っと地面に倒れ伏してしまう。

 呆気に取られる菱川の目の前にいたのは、背後から男を当身で気絶させた鈴音の姿だった。


 「鈴音殿…!!」

 「よもや味方同士で殺し合う事態になるとはな。いや、こうなる事は必然だったと言うべきか。」


 鈴音の眼前で繰り広げられているのは、まさかの仁戦組の隊士同士による凄惨な殺し合いの光景だ。

 このような惨劇を招いた最大の元凶は、紛れもなく菱川が提唱した局中法度なのだ。


 「何故だ!?俺は仁戦組を真の狼集団へと昇華させ、隊士たちを鉄の結束へと結びつける為に…!!」

 「菱川。そなたの徳山幕府への想いは、私にも嫌という程伝わっている。だが自分の思想理念を一方的に他人に押し付けるな。」


 怒鳴りつけるのではなく諭すような言い方で、菱川が提唱した局中法度を批判する鈴音。

 当然だろう。あのような無茶苦茶なルールを一方的に隊士に押し付けた挙句、逆らえば切腹処分にするなど、こんな物は謀反して下さいお願いしますと言っているのも同然だ。

 反幕府連合との激しい戦いが続く中、それに対抗する為に戦力の拡充を図った結果、仁戦組は300人を超える大所帯となった。

 だがその300人全員が菱川のように、幕府や徳山政権に対して絶対的な忠誠心を抱いた上で、仁戦組に加入したという訳では無いのだ。

 こんな無茶苦茶なルールを一方的に押し付けられたのでは、菱川に対して反感を抱く者が現れ、あまつさえ謀反を起こされるのは当たり前の話だ。

 

 組織である以上は、ルールを作って規律を正すのは当然の事だ。そういう意味では今回の菱川の行動自体は決して間違ってはいない。

 だが問題なのは、先日鈴音が菱川に警告したように、


 『菱川が隊士たちとまともに話し合いもせず、一方的にルールを押し付けた。』

 『しかも破った者は即切腹という、あまりにも理不尽な懲罰を課した。』

 『そもそも菱川は毎日のように命懸けの戦いに赴いている隊士たちに対して、精一杯のねぎらいの態度を見せないばかりか、まともにコミュニケーションを取ろうともしなかった。』


 という点なのだ。

 先日の休日出勤を命じた隊士たちに対しての、菱川の態度にしてもそうだ。

 菱川は罵声を浴びせた隊士たちに対し、『後で埋め合わせをしてやるから我慢しろ』などと、ただそれだけで済ませてしまったのだ。

 あれから菱川がどのような埋め合わせをしたのか…いや、それ以前に本当に埋め合わせをしたのかは鈴音は知らないが、こんな事を上から目線で言われたら、そりゃあ隊士たちが反発するのは当然だろう。

 

 「そなたの考えを当ててやろうか?そなたは仁戦組に加入するのであれば、徳山幕府の為に身命を賭すのは当然だと思っておるのだろう?」

 「そ、それは…!!」

 「仁戦組の誰もがそなたが望むような、真の狼集団になる事を望んでいる訳では無いのだよ。」


 自分に斬りかかってきた隊士を次々と峰打ちで気絶させながら、鈴音は菱川にはっきりと告げたのだった。


 「菱川。人の想いを知れ。真実は1つでは無いのだ。」


 鈴音の周囲に無数の『閃光』が走る。

 放たれた無数の衝撃波が、物陰から菱川を弓で狙撃しようとした隊士を次々と吹っ飛ばし、気絶させたのだった。


 「そなたがその事に気付かないのであれば、今のそなたに人の上に立つ資格など無い。暴君と何も変わらぬよ。」

 「何だと…!?」

 「今、そなたの目の前で繰り広げられている光景こそが、その全てだ。」

 

 仁戦組の隊士同士による殺し合いという凄惨な光景が繰り広げられる最中、鈴音の活躍で何とか被害を最小限に食い止める事が出来ていた。

 ただの用心棒という立場とはいえ、仮にも戦場で背中を預け合ってきた仲間たちだ。鈴音は極力彼らを殺さないように峰打ちで済ませ続けている。

 逆に言うと、この凄惨な状況で峰打ちを続けられるという事自体が、鈴音の圧倒的な戦闘能力を表わしていると言えるのだが。


 だが鈴音1人がどれだけ頑張った所で、『戦闘』には勝てても『戦争』には勝てない。

 1人、また1人と、同士討ちによって多くの命が奪われていく。その光景に鈴音は酷く胸が痛んだのだった。


 「よし!!今こそ憎き仁戦組を捻り潰す好機ぞ!!者ども、一斉にかかれぇっ!!」

 「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」


 さらに畳み掛けるかのように反幕府連合の浪士たちが、この機を逃すまいと大軍を率いて一斉に襲撃を仕掛けてきたのだった。

 この絶妙なタイミング…謀反を起こした仁戦組の隊士たちの中に、反幕府連合と内通していた者たちがいたのは間違いないようだ。

 別動隊として反乱を鎮圧に向かっている権藤たちは無事だろうか。厳しい表情で戦況を見据える鈴音だったのだが。

 

 「いいいいいいいいいやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!」

 「「「「「ぎぃああああああああああああああああああああああああ!!」」」」」


 その壮絶な死闘の中で一際ひときわ目立つ、最早戦いにすらなっていない、あまりにも一方的な虐殺劇を見せつけられた鈴音が、普段は冷静沈着で聡明な彼女にしては珍しく、全身から闘気を爆発させて怒気を放ったのだった。

 その鈴音のまさかの変貌振りに、流石の菱川も一瞬ビクッとなってしまう。


 「…あの男は…!!」


 間違い無い。見間違えるはずが無い。

 鈴音にとって因縁深い相手。半年前に師匠に用事があって道場を訪れた際、可愛い弟弟子たちを全員もれなく半殺しにした、あの忌まわしい男が…鈴音の目の前にいたのだ。

 鈴音が半年前に、無様に敗北を喫した相手…『神剣の申し子』真野神也だ。


 「下がれぇっ!!その男は、そなたら平隊士が勝てるような相手では無い!!」

 「鈴音殿!?」


 怒りに満ちた形相で、鈴音は目の前で隊士たちを虐殺している神也に斬りかかる。


 「真野…神也あああああああああああああああああああああああああっ!!」

 「うほおおおおおおおおおお!!鈴音た~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!」

 

 対照的に神也はとっても嬉しそうな表情で、鈴音の斬撃を刀で受け止めたのだった。

 互いに鍔迫り合いの状態で、睨み合う2人。


 「会いたかった!!会いたかったぜぇ!!鈴音たん!!」

 「よもや、そなたが反幕府連合に加入していたとはな!!反幕府連合の志に共鳴し、幕府転覆を狙っているとでも言うのか!?」

 「そんなの俺の知ったこっちゃねえ!!俺はただ鈴音たんとガチの殺し合いをしたいだけだよぉ!!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ(笑)!!」

 「くっ…!!そなたという男はぁっ!!」


 神也の言葉から察するに、神也は単に『鈴音と殺し合いたい』という理由『だけ』で反幕府連合に加入したのだろう。

 つまりは鈴音がもし反幕府連合に加入したのであれば、神也は鈴音と殺し合う為に仁戦組に加入していたという訳だ。

 自分が仁戦組に加入した事で、最悪の厄災やくさいを仁戦組に呼び込む結果になってしまった…その事実に鈴音は苦虫を噛み締めたような表情になってしまう。


 だが今は、その事を悔やんでいる場合ではない。

 起きてしまった事は仕方が無い。どれだけ悔もうが目の前で起きている惨状を変える事など出来ないのだから。

 それよりも今は、自分の目の前にいる神也を何とかする事に全力を注がなければ。

 鈴音に弾き飛ばされ体勢を崩した神也に目掛けて、鈴音の渾身の居合術が放たれる。


 「夢幻一刀流奥義、維綱いずな!!」

 「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ(笑)!!」


 先程、菱川を弓で狙撃しようとした隊士たちを軽々と吹っ飛ばした、夢幻一刀流の遠距離攻撃技だ。

 凄まじい威力の衝撃波が次々と神也に襲いかかるものの、それを神也はアヘアヘしながら全て刀で弾き飛ばして見せたのだった。

 これまで数多くの反幕府連合の浪士たちを打倒してきた、鈴音の無敵の抜刀術が…夢幻一刀流が通用しないとは。

 何という凄まじい神也の実力なのか。その場にいた仁戦組の隊士たちの誰もが、目の前の有り得ない光栄に驚愕の表情を見せていたのだった。


 「くっ…やはりそなたを、ここで野放しにしておくわけにはいかぬ!!」


 半年前に道場で弟弟子たちを半殺しにされた時も感じた事なのだが、神也は存在自体が極めて危険な男だ。

 何の想いも信念も忠義も持たず、ただ戦い『だけ』を純粋に楽しむ戦闘狂。

 そして精神的にも性格的にも完全に破綻している男が、何物をも圧倒してしまう程の強大な力を持ってしまったが故に、手が付けられない程の暴君と化してしまった。

 これは最早仁戦組だけの問題ではない。今ここで神也を討ち取らなければ、一体どれ程の惨劇が生み出されてしまうというのか。


 「そなたは今ここで私が討つ!!この私の全身全霊を賭けて!!」


 縮地法で一気に神也との間合いを詰めた鈴音が、渾身の居合術による連撃を繰り出したのだが。


 「夢幻一刀流奥義、花吹雪!!」

 「どほほほほほほほほほほほ(笑)!!」


 放たれる無数の『閃光』。

 だがそれさえも神也はアヘアヘしながら、恍惚の笑顔で余裕で受け止めてしまう。

 

 「どははははははははははは(笑)!!」

 「くそっ!!」


 そこへカウンターで放たれた神也の斬撃をバックステップで辛うじて避けた鈴音が、覚悟を決めた表情で渾身の秘奥義の構えを見せたのだった。

 やはり神也は強い。生半端な技では決して通用しないだろう。

 身体への負担の大きさ故に、医師からは決して乱発はしないように警告を受けてはいるのだが、今はそんな悠長な事を言っていられる場合ではない。


 「我が最大の奥義、そなたに見せてやろう!!」

 「見せて見せて!!鈴音たんの全てを俺が受け止めてあげるぅ(笑)!!」


 鈴音の全身から放たれた、凄まじいまでの闘気。

 鈴音の周囲にいた他の隊士たちは、その闘気に気圧されて思わずビクッとなってしまったのだった。

 達人クラスの剣士となると、放たれた闘気だけで対戦相手を威圧する事が出来てしまう…『心の一方』と呼ばれている代物だ。

 だが対照的に神也は、その凄まじい闘気を全身に浴びせられながらも、とても気持ちよさそうな表情でアヘアヘしてしまっている。


 「夢幻一刀流究極奥義!!朱雀天翔破ぁっ!!」


 凄まじいまでの抜刀術による『暴風雨』が、情け容赦なく神也の全方位から襲い掛かる。

 並の使い手なら鈴音のこの凄まじい連撃に全く反応出来ず、全身を切り刻まれてしまう事だろう。

 …だが。


 「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!き、気持ちいい~~~~~~~~~~~(笑)!!」


 それを神也は恍惚の笑顔で、全て刀で受け切ってしまったのだった。

 まさかの事態に、仁戦組の隊士たちは驚愕の表情を隠せない。

 対照的に神也はアヘアヘしながら、とても恍惚とした笑顔を鈴音に見せている。


 「やっぱ鈴音たんは最高だぁ!!鈴音たん以外はただのオナニー!!他の雑魚共とは大違いだわ!!もっとだ!!もっと俺を気持ちよくしてくれよぉ(笑)!!」


 とんでもない男に目を付けられてしまった物である。


 「ほりゃ!!ほりゃ!!ほりゃ!!ほりゃ!!ほりゃあああああああああ!!」

 「ぐああああああああああああああああああああっ!!」


 神也の連撃を辛うじて刀で受け止め続けるものの、あまりの威力に受け切れずに吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられてしまった鈴音。

 その様子を仁戦組の隊士たちが、絶望の表情で見せつけられてしまったのだった。

 あの鈴音が。これまで圧倒的な強さを見せつけてきた最強無敵の鈴音が。

 こんなにもあっさりと、無様に敗北を喫してしまう物なのかと。 


 「そ、そんな…鈴音殿が…負けた…!?」

 「もう駄目だぁ…!!おしまいだぁ…!!」


 戦場というのは、たった1人のエースが無様に敗北を喫しただけで、そのエースが所属する陣営の士気に多大な影響を及ぼしてしまう物なのだ。

 そして今の仁戦組にとって鈴音は、最早それ程の存在になってしまっているという訳だ。

 鈴音の敗北がきっかけとなり、反幕府連合が一気に押せ押せムードになり、これまでの戦いで圧倒的な強さを誇っていた仁戦組が押され始めてしまう。


 「オラオラまだまだ行けるだろ鈴音たん!?こんなんじゃ俺はまだまだ満足出来…っ!?」


 そして目の前で無様な醜態を晒している鈴音を見下しながら、神也がアヘアヘしながら恍惚の笑顔で鈴音に呼びかけたのだが。

 次の瞬間、神也の右肩からほとばしる鮮血。

 朱雀天翔破を全て受け切ったつもりだったのだが、いつの間にか一太刀だけ右肩に食らわされていたのだ。


 「う、うおおおお!?い、いつの間に!?」

 「神也殿!!右肩からの出血が酷いです!!早く止血処置をしなければ大事おおごとになります!!」

 「うるせえ!!鈴音たんとの折角の楽しい時間だってのによお!!余計な横槍を入れてんじゃねえよ!!」

 「幕府軍の本軍が騒ぎを聞きつけ、仁戦組の救援に向かっているとの情報もあります!!どうかここはお引きを!!」


 そこへ慌てて駆けつけてきた浪士の言葉に、神也はとてもウザそうな表情で舌打ちしてしまったのだった。


 「…ちっ、折角いい所だってのによお!!わーったよ!!俺だってこんな所で死ぬのは御免だわ!!おらおら、さっさと引くぞ!!退路はちゃんと確保してあるんだろうな!?」

 「はっ!!こちらです!!」


 鈴音を倒した神也ではあるが、それでも右肩を負傷した状態で幕府軍の本軍をまとめて相手に出来ると思っている程、自惚れてはいないようだ。

 無様に敗北を喫しながらも神也を負傷させ、菱川を守り抜き、用心棒としての必要最低限の仕事はしっかりと果たした鈴音だったのだが。


 「それじゃあ鈴音たん、また俺の方から会いに行くからよ!!今度こそ精一杯俺と殺し合おうな!?まったね~ん(笑)!!」

 「ま、待て、神也…っ!!」


 何とか立ち上がった鈴音を尻目に、神也は物凄い速度で走り去って行ったのだった。

 反幕府連合の浪士たちも幕府軍の本軍が迫っているという情報を得た事で、これ以上の交戦は不利と悟って慌てて撤退していく。


 どうにか反幕府連合を撤退に追い込んだ鈴音たちではあるが、それでも仁戦組が受けた傷はあまりにも大きかった。

 当然だろう。300人もの隊士たちの半数にあたる150人近くが、菱川が提唱した局中法度に反発し、仁戦組から脱退。

 そして脱退した者たちの中から、さらに100人近くが反幕府連合にスカウトされてあっさりと寝返り、鈴音たちに牙を向き、かつての仲間同士で殺し合わなければならなくなってしまったのだから。


 自分の思想理念を一方的に他人に押し付けるな。

 仁戦組に属する者の誰もが、幕府に対して絶対的な忠誠心を持っている訳では無い。

 人の想いを知れ。真実は1つではない。


 鈴音が菱川に警告した事が、まさに明確に表わされてしまっている事態だと言えるだろう。

 もし菱川が思い描いたように仁戦組に加入した全員が、幕府に対して絶対的な忠誠心を持っていたのであれば、このような事態には決してならなかったはずなのだから。

 もう少し菱川が隊士たちに対して、労いの態度を見せていれば…あるいは違う結末になっていたのかもしれない。


 「くそがぁっ!!」


 とても悔しそうな表情で、右拳を壁に叩きつける菱川。

 局中法度によって隊士たちを鉄の結束で結びつけようとした菱川ではあるが、鉄の結束で結びつけるどころか、逆に鈴音が菱川に警告した通り、その局中法度が引き金となって仁戦組の内部崩壊を招いてしまった。

 それどころか今回の騒動の中でも仁戦組に残ってくれた150人もの隊士の内、70人近くもの命が奪われる結果になってしまったのだ。

 そしてその70人の内の実に30人が、神也1人の手によって殺された者たちだ。


 「うおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああ!!」


 自らの横暴さが招いてしまった結末に、菱川は思わず絶叫してしまったのだった。


 「鈴音殿!!トシ(菱川)!!無事か!?将軍様が送って下さった幕府軍の本体が、もうすぐこちらに合流する頃合いだ!!」

 「私なら大丈夫…とは言えない状況だな、これは…。」


 ボロボロの状態の鈴音の姿に、流石の権藤も唖然とした表情になってしまう。


 「なっ…!?貴女ほどの使い手が、そこまで追い込まれるとは…!!一体貴女は何と戦ったというのだ!?」

 「以前(第79話)、そなたに言いそびれてしまっていただろう?私を殺せる男に心当たりが1人いるとな。」

 「…まさか…!!」

 「そうだ。私のせいで、とんでもない悪魔が反幕府連合に加入してしまったようだ。」

 「鈴音殿のせいって…一体どういう事なんだ!?」

 「詳しい話は後にしよう。敵が退いた今は、1人でも多くの命を救う事の方が先決だ。」


 あの鈴音をして『悪魔』と言わせるとは…一体鈴音は先程まで何と戦っていたというのか。

 戸惑いを隠せない権藤ではあるが、それでも鈴音の言う通りだ。

 反幕府連合は状況を不利と悟り、撤退した。

 ならば今は1人でも多くの負傷者を治療し、隊士たちの命を救わなければならないのだ。


 「…分かった。鈴音殿への事情聴取は、後日改めてさせて貰うよ。」

 「恩に着る。菱川、話は聞いていたな?此度の己の行為を悔やむのは後にしろ。今は1人でも多くの隊士たちの命を救う事に尽力を尽くせ。いいな?」

 「あ、ああ…。」


 鈴音の菱川に対しての言葉は、彼女が自分自身にも言い聞かせている代物だった。

 神也は、鈴音と戦いたかったから反幕府連合に加入したと語っていた。

 つまり鈴音が仁戦組に加入した事が起因となって、とんでもない化け物が反幕府連合に加入してしまったのだ。

 当たり前の話だが、鈴音に責任など全く無い。それどころか鈴音のお陰で、これまでにどれだけ多くの隊士の命が救われた事か。

 だが鈴音は己の存在がとんでもない災厄を招いてしまった事に、心を痛めてしまっていたのだった。


 そして今回の一件がきっかけとなって、仁戦組は…そして幕府は崩壊の道へと突き進んでいく事になるのである…。

戦力の大半を失った仁戦組とは裏腹に、神也の加入で勢いが止まらない反幕府連合は一転して攻勢に転じ、次々と勢力を伸ばしていきます。

この事態に仁戦組は幕府の招集を受けるのですが、そこで征夷代将軍が語った事とは…。

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