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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
第9章:止まらない戦争
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第73話:女傭兵団ラビアンローズ

バルガノン王国壊滅の一報が世界中を震撼させている最中、フォルトニカ王国への侵攻作戦の準備を着々と整える、第32話で名前だけ出てきたシャーロット王国。

今回はちょっと危ない新キャラのお姉さんが登場します。

 バルガノン王国国王カーゼルが瑠璃亜に敗れ、戦死。

 バルガノン王国騎士団は今回の侵攻作戦で、投入戦力の80%を喪失。

 さらに瑠璃亜にスカウトされ、外交官のルミアが魔王軍へと電撃移籍。


 これらの一報はインターネットが存在しないこの異世界においても、瞬く間に人から人へ、街から街へ、国から国へと、あっという間に世界中に広まっていったのだった。

 この一大事件はフォルトニカ王国やパンデモニウムが独自運用している転生術を、何としても手に入れようと虎視眈々と機会を伺っている周辺各国に対しての、牽制や威圧の意味合いも含まれる事となる。

 無理も無いだろう。サザーランド王国騎士団の救援、そしてラインハルトの優れた戦術眼があったとはいえ、反魔法煙幕という搦め手を用いても魔王軍に無様な敗北を喫してしまったのだから。


 そもそも投入戦力の80%を喪失したというのは、軍事用語上では『全滅』をすっ飛ばして『壊滅』であり、大規模な増員無しでは部隊の再編制すら不可能な状態である事を意味する。

 仮に本国の防衛の為に残しておいた予備戦力が、投入戦力と同等であると仮定したとしても、その予備戦力を加えてもなおバルガノン王国騎士団は、単純計算で全戦力の40%を喪失した事になる。

 これは軍事用語上では『全滅』であり、組織的な行動が不可能な状態である事を意味するのだ。

 それに加えて国王であるカーゼルが戦死した事で、今のバルガノン王国騎士団は指揮系統すら存在していない。

 つまりは軍隊として、まともに機能していない状態になってしまっているのだ。


 転生術欲しさに安易にパンデモニウムに攻め込んだ結果、このような大惨事を招く結果となってしまった。

 周辺各国が自分たちも二の舞いになってしまわないようにと、より慎重を喫するようになってしまうのも仕方が無いと言えるだろう。

 

 だがそれでもなお、そんな物は知った事では無いと言わんばかりに、転生術目当てにフォルトニカ王国への侵攻準備を着々と進めている国が存在していた。

 フォルトニカ王国とエリクシル王国に隣接する大国…シャーロット王国だ。

 魔王カーミラ、そして一馬ら『ブラックロータス』という危険な存在を生み出した転生術は極めて危険な代物であり、この世界の恒久和平実現の為に、我々シャーロット王国が厳重に管理、運用しなければならない。

 その大義名分を口実に、以前からフォルトニカ王国への武力介入を示唆し続けていたのだが。

 そんな中でシャーロット王国国王・ヴァースが事務作業をしている執務室に、コンコンコンと扉を軽快にノックする音が鳴り響いたのだった。


 「どうした?」

 「『ラビアンローズ』のダリア殿が只今到着致しました。国王陛下への面会を求めておりますが。」

 「分かった。通して構わんぞ。」

 「はっ。それではダリア殿、どうぞこちらへとお進み下さいませ。」


 兵士が丁重に扉を開けると、そこからズケズケと部屋に入ってきたのは…いかにも威風堂々とした雰囲気をかもし出す、長身のグラマラスな美しい女性だった。

 とてもニヤニヤしながらヴァースの前にズケズケと歩み寄り、椅子に座っている目の前のヴァースの事を見据えている。

 仮にも国王であるヴァースを目の前にしても、全く怖気づかない威風堂々とした図抜けた態度。

 成程、確かに噂にたがわぬ豪傑な女だと…ヴァースは素直に感心してしまったのだった。


 女傭兵団ラビアンローズ…金さえ貰えれば人間だろうと魔物だろうと、どんな相手とも勇猛果敢に戦う。この異世界全土で名声が知れ渡っている凄腕の女傭兵集団だ。

 団長のダリアを筆頭として8人の凄腕の女性たちで構成されており、その中でもダリアの実力は別格だ。

 これまでに彼女たちは冒険者ギルドからの依頼で数多くの魔物たちを討伐しており、また国同士の戦争で雇われようものなら、加担した国に必ず勝利をもたらしてきたのだ。


 そしてどういう訳か団員の7人の女性全員がダリアの恋人であると、他でもないダリア本人、そして彼女の恋人を自負する7人の団員全員が、威風堂々と周囲に公言してしまっているのだ。

 別に女性同士での恋愛など、この異世界においては特に珍しい事では無いのだが…それでも7人もの女性を全員まとめて恋人にするなんてのは前代未聞だ。


 そんな状況では7人の団員の誰もがダリアを巡ってギスギスしてしまい、向こうの世界でのお昼のメロドラマも真っ青のダリアの壮絶な奪い合いを繰り広げ、戦場で最重要となるチームワークを発揮出来ないんじゃないかと、読者の皆さんの誰もが思うだろうが。

 ところがどっこい意外な事に、7人の団員全員が固い絆で結ばれており、ダリア自身も彼女たちの事を大切に想っているなどと公言してしまっている始末だ。


 まさに色々な意味で、この異世界全土で大注目を集めている女傭兵団だと言えるだろう。

 彼女たちは今回のフォルトニカ王国との戦争に勝利する為に、ヴァースが密かに用意した『3つの切り札』の内の1つだ。


 「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ。」

 「アンタが今回アタシらを雇いたいって言ってくれてるヴァース陛下だね?アタシはラビアンローズ隊長のダリアだ。よろしく頼むよ。」

 「国王のヴァースだ。貴様たちの働きに期待しておるぞ。」


 椅子に座りながらヴァースがダリアとがっちりと握手を交わし、国王らしく威風堂々とした態度でダリアをじっ…と見据えている。


 「ところで貴様1人か?他の連中はどうした?」

 「一足先に自由行動にさせてるよ。ここまで結構な長旅だったからね。」

 「そうか。ならば今日は旅の疲れを存分に癒すがいい。貴様らには近い内に存分に働いて貰わなければならないのだからな。」


 ヴァースが城内に用意させた部屋で休んでいるのか、それとも旅の疲れなどもろともせずに城下町を観光でもしているのか。

 いずれにしても近日中にフォルトニカ王国に攻め込むのだ。今回の作戦の主力である『ラビアンローズ』の女性たちには、存分に英気を養って貰わなければならない。


 「戦争で加担した方に必ず勝利をもたらす…この武勇伝があるからこそ、私は高い金を払ってまで貴様たちを雇ったのだ。今回のフォルトニカ王国との戦争に勝利する為にな。」

 「ま、アタシらはプロの傭兵だ。金を貰うからには、どんな相手とも戦ってやるよ。」

 「そうか。ならば貴様ら『ラビアンローズ』には今回の戦争において、『閃光の救世主』を討伐して貰う。」

 「…ひゅう。」


 とても嬉しそうな笑顔で、ダリアは思わず口笛を吹いてしまったのだった。

 何しろ今回ダリアたちは、フォルトニカ王国との戦争に駆り出されるのだ。

 そのフォルトニカ王国騎士団の近衛騎士である『閃光の救世主』とは、与えられた任務の内容にもよるが、もしかしたら戦場で戦う事も有り得るかもしれないという事は、ダリアも薄々思ってはいたのだが。

 それがまさか、直接名指しで戦えなどと命じられるとは。


 『閃光の救世主』の武勇伝は、ダリアも遠く離れた異国の地においても何度も耳にしていた。

 魔王軍3魔将アリスを討伐し、3魔将イリヤを討伐寸前まで追い詰めた凄腕の居合術の達人で、彼が放つ剣閃からは『閃光』がほとばしるのだと。

 今回の任務においては、一体どれ程の戦いになるのかと…今からダリアの心が胸躍る。


 だが現在の『閃光の救世主』は伝説の武器にも引けを取らない、オリハルコン製の金色こんじきの刀を所持しているとされている。

 いかにダリアと言えども、生半端な武器で太刀打ち出来るような相手では無いだろう。

 そんなダリアに対してヴァースが用意した、今回の戦争に勝利する為の『3つの切り札』の2つ目。それは…。


 「ダリアよ。貴様たちが我が国に滞在するまでの間、貴様にはこの魔槍ゲイボルグを貸し与える。これでもって『閃光の救世主』を見事討ち取ってみせよ。」


 ヴァースに会釈された使用人の女性がダリアに礼儀正しく一礼し、手にしていた漆黒の槍を丁重に差し出したのだった。

 魔槍ゲイボルグ…各国が血眼になって探し求めている、伝説の武器の1つだ。

 それをダリアは無造作に受け取り、ブン、とその場で素振りしてみる。

 そのたった一度の素振りだけで、ダリアは瞬時に悟ったのだった。

 この魔槍ゲイボルグが、とんでもなく凄まじい代物だという事を。


 「…へぇ、こいつは凄い獲物じゃないか。ゾクゾクするねぇ。」

 「手に入れるのに相当苦労させられたがな。貴様ならば存分に使いこなせるだろう。」


 魔槍ゲイボルグに込められた凄まじいまでの『力』が、ダリアの全身をゾクゾクと震わせていた。

 並の使い手では、このあまりにも強大過ぎる力に振り回されてしまい、その本来の力を発揮出来ないだろうが…ダリアは振り回されるどころか完全に手懐けてしまっているようだ。

 これだけでもダリアが、相当な実力の持ち主だという事が伺えるのだが。


 「ところでさぁ、アタシにこんな物騒な物を渡しちまって本当にいいのかい?アタシがこの槍を持ってとんずらするかもしれないとか、アンタは考えないのかい?」


 ダリアはシャーロット王国騎士団の正式な所属ではなく、ただの傭兵だ。

 雇われればどこの所属にもなるし、依頼主からの指示に従い誰とでも戦う。

 それこそ仮にフォルトニカ王国騎士団との戦闘中に、クレアがヴァースよりも高額な条件を提示しようものなら、ダリアがクレアに鞍替えする事だって充分に有り得る事なのだ。

 そんなダリアに対して、各国が血眼になって探し求める程の希少品である、伝説の武器の1つである魔槍ゲイボルグを、こんなに簡単にホイホイ渡してしまっていいのだろうか。


 そもそも傭兵というのは冒険者と同じでフリーランスであり、国からの正規雇用を受けた公務員である騎士とは違う。

 より高い条件を提示した依頼主に乗り換えるなんてのは、実はこの異世界での傭兵たちにとっては日常茶飯事であり、特に珍しくは無い事なのだ。

 だがそんなダリアの当然とも言える疑問の言葉に、ヴァースは余裕の態度でフン、と鼻で笑ったのだった。


 「貴様ら『ラビアンローズ』は、その辺の有象無象の下級冒険者共とは格が違う。正真正銘のプロ中のプロだ。私と契約を結んだ以上は契約内容を絶対に守り、与えられた職務をプロとして必ず全うする…そうであろう?」

 「まあね。アンタの思想思念なんざ知ったこっちゃ無いが、アンタがアタシに対して妙な真似をしない限りは、アンタの味方でいておいてやるよ。仮にクレア女王がアンタよりも高額な条件を提示したとしてもだ。」


 そう…ダリアにもプロの傭兵としての誇り、信念がある。

 依頼主と契約を交わした以上は、その契約は必ず守り職務を全うする。

 この魔槍ゲイボルグもヴァースから借りているだけの代物である以上は、戦いが終わったら絶対に持ち逃げせずにヴァースに返却する。

 そのプロとしての誇りや信念があるからこそ、ダリアはこうしてトップクラスの傭兵として、あちらこちらから引っ張りだこになる程の名声を得る事が出来ているのだ。


 「ところでダリアよ。冒険者ギルドで貴様への依頼を出した際に、受付の女から聞かされたのだが…貴様は確かレズビアンだそうだな?」

 「そうだけど、それがどうかしたのかい?」

 「そんな貴様への私からの、期待の証と言っては何だが。」


 ヴァースの言葉と同時に、先程魔槍ゲイボルクをダリアに渡した使用人の女性が、ダリアの左腕に両腕でしがみつき、自らの豊満な胸を押し付けたのだった。


 「今、貴様にゲイボルグを渡した、その使用人の娘だが…貴様が私に雇用されている間は、貴様の好きなようにしてくれても構わん。」

 「…へぇ、そいつは本当かい?こんな可愛い子ちゃんをマジでアタシが抱いてもいいって言うのかい?」

 「ああ、構わんよ。何なら今すぐに貴様の部屋に連れて行ってもな。」


 使用人の女性がダリアの左腕を両腕で抱き締めながら、とても穏やかな笑顔でダリアの顔をじっ…と見つめていたのだが。

 

 「イリーナと申します。『ラビアンローズ』の皆様が我が国に滞在なさる間、私がダリア様の身の回りの世話をさせて頂く事になりました。どうかよろしくお願い致しますね。」

 「ああ、よろしくな…っと。」

 「んんっ…!?」


 部屋に連れ帰るまで待ち切れないと言わんばかりに、とっても嬉しそうな笑顔でダリアはイリーナを優しく抱き寄せ、イリーナをいたわるように優しく唇を重ねたのだった。

 いきなりの出来事にイリーナも一瞬びっくりしてしまったようだが、すぐに静かに目を閉じてダリアの首に腕を回し、とても気持ち良さそうにダリアとの女同士のキスを堪能する。


 (まあプロ意識の高いこの女が私を裏切るとは到底思えんが、念には念を入れてだ。凶暴な猛獣には鎖を繋いでおかなければ、何をしでかすか分かった物ではないからな。)


 そんな事を考えながら2人の濃厚なキスを、国王らしく威風堂々と、表情1つ変えずにじっ…と見据えているヴァース。

 いいや、ダリアがヴァースに『見せつけている』といった方が正しいか。


 (イリーナ。上手くやれよ?)


 …だが。


 「…ふぅ…アンタ、凄く最高だよ。マジで『ラビアンローズ』の一員になる気は無いかい?」

 「お、お褒めに預かり光栄に御座います、ダリア様。」

 「ダリアでいいよ。ところでアンタ、さっき口移しでアタシの体内に魔力を流し込んだようだけどさ。」

 「「んなっ!?」」


 とってもニヤニヤしているダリアの余裕の笑顔に、ヴァースとイリーナが思わず驚愕してしまったのだった。

 それでもイリーナを全く責める事無く、ダリアがとても愛しそうに、イリーナの身体が壊れてしまわないように優しく抱き寄せ、妖艶な笑みを浮かべながら耳元で囁く。


 「フォルトニカ王国の、確かシリウスだったっけ?転生者たちに『呪い』を掛けた奴。そいつと同じ事をアタシにしたんだろうけど…こんな程度の『呪い』じゃあアタシを縛れないよ?」

 「ひ、ひいっ!!ど、どうかお許しを!!ヴァース様からの命令で逆らえなかったのです!!ダリア様!!」

 「だからダリアで良いって。それも含めてアタシはアンタの事が最高だって言ったんだ。いやマジでアンタの事が凄く気に入ったよ。どうだい?アンタさえ良ければアタシの8人目の恋人としてラビアンローズに迎え入れてあげるよ?皆もきっとアンタの事を気に入ると思うよ?」


 あっはっはっはっはと豪快に笑いながらイリーナを優しく抱き寄せ、ヴァースに対して余裕の態度を見せつけるダリア。

 サーシャが太一郎に掛けられた『呪い』を解いた時と同じだ。口移しで魔力を直接流し込んだ方が効率的にダリアに『呪い』を掛けられると、ヴァースはそう思ったのだろう。

 だがそれでも尚、ダリアを縛るには至らなかったのだ。


 最も『雷神の魔術師』の異名を持つラインハルトには及ばないとはいえ、仮にも世界レベルの高名な宮廷魔術師であるシリウスだ。

 腕が立つとはいえ一介の魔術師でしかなく、シリウスに遥かに及ばないイリーナがシリウスと同じ事をした所で、シリウス程の威力を発揮させるのは到底無理なのだろうが。

 ダリアにしてみればイリーナに掛けられた『呪い』など、所詮はちょっと蚊に刺された程度の代物でしか無いのだ。

 そのダリアの余裕の態度を、ヴァースが驚愕の表情で見せつけられてしまったのだった。

 

 「ば、馬鹿な…!!」

 「アンタの考えている事は分かるよ。凶暴な猛獣には鎖を繋いでおかなければ、何をしでかすか分かったもんじゃない…大方そんな所だろうねぇ。だけど鎖如きじゃアタシは縛れないよ?」

 「ダリアぁ、貴様ぁっ!!」

 「そして嫌がる部下に対しての禁呪の発動の強要に、第三者との性交渉の強要…もし今回の件がアタシの口から世間に広まろう物なら、アンタは国民たちからどう思われるんだろうねえ?」


 ニヤニヤしながら自分を脅すダリアの余裕の姿を見せつけられたヴァースが、慌ててイリーナに命じた。


 「イ、イリーナ!!ダリアに掛けた呪術を今すぐに解除しろ!!」

 「しょ、承知致しました!!」


 ヴァースからの命令を受けたイリーナが大慌てで、ダリアに再び術式を掛ける。

 次の瞬間ダリアの身体が光に包まれ、先程イリーナが掛けた術式が浄化されてしまったのだった。

 ふうっ…と一息ついて、相変わらずヴァースに対して余裕の笑みを浮かべるダリア。


 「おのれ、化け物が…!!」

 「ま、アンタはアタシの大切な依頼主だ。今回だけは大目に見といてやるよ。だけど次は無いからね?」

 「わ、分かった。もう貴様に余計な真似は一切しない。天に誓って約束しよう。」

 「じゃあアタシはフォルトニカ王国への侵攻作戦開始まで、城下町の観光でもさせて貰うとしようかねえ。イリーナに案内して貰ってもいいかい?」

 「ああ、言ったはずだ。貴様の好きにしてくれて構わんとな。」

 「あいよ。それじゃあ行こうか、イリーナ。」


 イリーナの右手を左手で大事そうに優しく握りながら、ダリアはイリーナを連れて部屋を出て行ってしまったのだった。

 そんなダリアの後ろ姿を、歯軋りしながら見据えているヴァースだったのだが。


 「…まあいい、あれ位の化け物でなければ、『閃光の救世主』とは到底渡り合えないだろうからな。」

 「陛下。失礼致します。」


 ふうっ…とヴァースが一息ついて椅子にもたれかかった所へ、ダリアと入れ替わりで1人の男性が部屋に入ってきた。

 彼こそが、今回のフォルトニカ王国との戦争に勝利する為の『3つの切り札』の最後の3つ目…それは…。


 「陛下、こちらは全ての準備が整いました。」

 「ご苦労だったな。後は侵攻部隊の編成を残すのみか。」

 「ですが陛下、確か『ラビアンローズ』と言いましたか…あのような薄汚い女共の力を借りるおつもりなのですか?」

 「薄汚かろうが何だろうが、私は利用価値のある物は何でも利用する。貴君のようにな。」

 「お褒めに預かり光栄に御座います。」

 「此度の戦においては、貴君にも存分に働いて貰うからな?リゲル卿。」


 クレアによってクビを宣告された挙句に、場違いな演説をしてしまったせいで国民たちにさえも見放されてしまい、路頭に迷っていた所をヴァースに拾われたリゲルの姿が、ここにあったのだ。


 「この私が本来は敵であるはずの貴君を我が国に迎え入れ、わざわざ面倒を見てやっているのだ。その恩義は存分に返して貰わないとな。」

 「勿論ですよヴァース陛下。私をコケにしてくれたクレア女王への復讐の機会を与えて下さった事、心から感謝していますよ。」

 「部隊の編成が完了次第、近日中にフォルトニカ王国への進軍を開始する。それまでは充分に英気を養っておけ。貴君の働きに期待しているぞ?」

 「はっ!!」


 ヴァースに敬礼し、部屋を出ていくリゲル。

 その瞳には自分をコケにしてくれたクレアに対する、怒りと憎しみの感情が宿っていた。


 「最早剣も魔法も時代遅れだ。これからは兵器の時代なのだよ。それを貴様のその身をもって存分に思い知らせてやるよ、クレアぁ…!!」


 鬼のような形相で廊下を歩くリゲルの怒気を敏感に感じ取った、通りすがりの使用人の女性が、思わずビクッと身体を振るわせてしまったのだった…。

いよいよ次回はフォルトニカ王国とシャーロット王国の戦争です。

女王であるクレアが自ら戦場の最前線に出て兵士たちを鼓舞するのですが、そんなクレアにリゲルの魔の手が…。

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