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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
第7章:帰還
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第57話:新たなる力

第7章完結です。

営倉入りが解除され釈放されたシリウスですが、そこへ太一郎の元に武器屋の店主が現れます。

そして隼丸を失った太一郎に手渡された、新たなる力。

ガンダムシリーズや勇者シリーズでおなじみの、新型機への乗り換えという奴です。

 そして無事に釈放されたシリウスと共に、太一郎たちが営倉室から出て来た直後。

 とても穏やかな笑顔で、武器屋の店主が太一郎に声を掛けてきたのだった。


 「よう、元気そうで何よりだ。お前さんに用があった所だったんだ。使用人の姉ちゃんから、お前さんが営倉室にいるって聞かされたからよ。」

 「マスター、こんな所まで一体どうしたんです?」


 王室御用達の鍛冶師だという話は太一郎も聞いていたのだが、それでも武器屋の店主自らが城まで足を運んでくるとは。

 サーシャの話では普段は使いの者を店まで寄越して、注文していた品を受け取りに行かせているらしいのだが。

 その鍛え抜かれた筋肉質の両腕で大事そうに抱えていたのは、大きな純白の布で大事そうに梱包されていた、2本の長物。

 そんな太一郎の疑問に答える為に、武器屋の店主がドヤ顔で太一郎に語ったのだった。


 「以前話しただろ?女王陛下に頼まれて、お前さん専用の新しい武器を作ってる最中だってな。」

 「…まさか!!」

 「おう、そのまさかよ。出来立てのホヤホヤ、ついさっき完成した所よ。」


 武器屋の店主が長物のうちの一本の布を丁寧に取り外し、大事そうに梱包されていた物を太一郎に差し出す。

 果たしてそこにあったのは、聖地レイテルでの死闘で隼丸を失った太一郎の為に作られた、新しい武器…一目見ただけで手間暇掛けて作られた事が分かる、一本の刀だった。


 「これがお前さんの新しい武器…その名も鳳凰丸ほうおうまるだ。」

 「鳳凰丸…!!」

 「女王陛下から託された、魔法金属のオリハルコンをふんだんに使った刀だ。ヴァジュラだか馬鹿だか何だか知らねえが、伝説の武器にも決して引けを取らねえぜ。」


 鳳凰丸を武器屋の店主から大事そうに両手で受け取った太一郎は、手にした瞬間に感じ取ったのだった。

 この鳳凰丸は、以前使っていた隼丸とは全くの別物だと。

 鞘に収められた状態からでも充分に分かる。その刀身に込められた、隼丸とは比べ物にならない圧倒的な『力』を。

 武器屋の店主が「伝説の武器にも引けを取らない」と語っていたように、この鳳凰丸なら隼丸では太刀打ち出来なかった魔剣ヴァジュラや聖剣ティルフィングが相手でも、充分に互角に渡り合えるはずだ。


 「それに加えて、お前さんのこれまでの戦闘データも参考にして調整しといたからよ。お前さんの為だけに作った、まさにお前さん専用の刀だ。」


 試しに太一郎が鳳凰丸を鞘から抜いてみると、鞘から出てきたのは神々しく輝く黄金の刀身。

 そのオリハルコン製の刀身には武器屋の店主の手によって、凄まじいまでの魔力が込められている。

 そして不死鳥をモチーフにした形状のつば。太一郎の手に吸いつくようにフィットするつか

 軽過ぎず重過ぎず、太一郎の手にしっかりと馴染んでいる。


 たら、ればの話になってしまうが、もし聖地レイテル調査任務が始まる前に、太一郎がこの鳳凰丸を手に入れていたら。

 太一郎はイリヤとアリスの2人を同時に相手にしたとしても見事に勝利し、真由も一馬たちも死なせずに済んでいただろう。

 この鳳凰丸がそれ程の刀であるという事を、太一郎は即座に理解したのだった。


 だが、今更そんな事を言った所で仕方が無い。

 失った過去はもう取り戻せない。今更未来を変える事など出来る訳が無い。

 真由や一馬たちが死んだという事実は、最早覆す事は出来ないのだから。

 もう少し早く作ってくれれば真由たちは死なずに済んだなどと、そんな場違いな批判で武器屋の店主を責める事など、誰にも出来やしないだろう。


 そもそも鳳凰丸の材料となったオリハルコン自体、入手するのに非常に苦労させられる代物なのだから。

 オリハルコンを採集出来る鉱山は現時点でフォルトニカ王国の領土内にしか発見されておらず、それも月に一度の新月の夜の、しかも限られた時間にしか採集出来ない上に、1日に入手出来る量も限られているらしい。

 太一郎は以前そんなような話を、サーシャから聞かされた事があった。

 一体どういう原理でそんな事になってしまっているのかは、サーシャもよく知らないらしいのだが。

 だがそれ故にオリハルコンは希少金属として、フォルトニカ王国の財源を大きく潤してくれる、他国との強力な外交カードの1つとして扱われているのだ。


 そんな希少金属であるオリハルコンが、この鳳凰丸の材料として使われているのだ。

 もっと早く作れなどと武器屋の店主を責めるのは、あまりにも酷と言う物だろう。

 それよりも太一郎の脳裏に真っ先に浮かんだのは、武器屋の店主への多大なる『感謝』。

 そしてこの鳳凰丸があれば、より沢山の人々の命を守る事が出来るという事だ。

 決意に満ちた表情で、太一郎は鳳凰丸を腰のベルトに固定したのだった。


 「有難うございます。マスター。これでまた僕は存分に戦える。」

 「気に入って貰えて何よりだ。それと折角だから、ついでにこいつも直して強化しといたんだけどよ。」

 「なっ…!?」


 さらに武器屋の店主がもう一本の長物を梱包していた布を、大事そうに取り払ったのだが。

 その大事そうに梱包されていた、もう一本の武器を見せつけられた太一郎が、驚きの表情になったのだった。


 「隼丸!? 何で!?」


 そう…以前太一郎が使っていた、聖地レイテルでの死闘で大破したはずの隼丸が、そこにあったのだ。

 エキドナの聖剣ティルフィングによる一撃で刀身が真っ二つに折れてしまい、最早修復は不可能だとばかり思っていたのに。

 そんな太一郎の驚きの態度を最初から予想していたのか、武器屋の店主は太一郎に対してドヤ顔を見せつけたのだった。


 「おうおうおう、俺を誰だと思ってるんだ。こう見えても王室御用達の鍛冶師だぜ?あれ位の損傷なら鼻くそほじりながら直せるわ。」


 武器屋の店主が隼丸を鞘から抜くと、完全に修復されたその刀身からは、まるで新品同様の美しい輝きが放たれていた。

 実際に手にしなくても、刀身を見ただけで太一郎には分かる。

 この隼丸もまた、以前とは比べ物にならない…まさに別物と化しているのだと。


 「直すついでに、鳳凰丸を作る時に余ったオリハルコンを使って強化しといたからよ。威力も耐久力も以前よりも格段に上がってるぜ。」

 「何から何まで本当に有難うございます。マスター。」

 「とはいえ、お前さんには鳳凰丸を渡したからな。今度は別の誰かが使う事になるのか、それともお前さんの予備の武器にでもするのか…。」


 隼丸の刀身を鞘に収めた武器屋の店主が、隼丸を太一郎に差し出したのだが。


 「私が使います。」


 そこへケイトが穏やかな笑顔で右手を挙げ、真っ先に隼丸の使い手として名乗り出たのだった。


 「刀の使い方なら私にも心得がありますし。流石に太一郎殿みたいに居合の心得はありませんが…勿論、太一郎殿が良ければですが。」

 「いいえ、駄目です。」


 だがそこへサーシャがケイトの前に立ち塞がり、武器屋の店主から有無を言わさず隼丸を受け取る。

 まさかの予想外のサーシャの行動に呆気に取られる太一郎たちに対して、サーシャは高々と宣言したのだった。

 

 「隼丸は、私が使います。」

 「え!?」


 ドヤ顔で隼丸を手にするサーシャに、ケイトがとても心配そうな表情になる。

 

 「姫様、本当に大丈夫なのですか?姫様もご理解していらっしゃると思いますが、レイピアと刀とでは扱い方が全然違いますよ?」


 そう、刀術の心得があるケイトだからこそ、分かるのだ。

 刀というのは普段サーシャが使っているソードレイピアとは、扱い方が全く異なるのだという事を。


 ソードレイピアというのは軽量さと細身の形状故に威力が低く、単体での物理攻撃にはあまり向いていないのだが、その代わりに命中精度が非常に高く、サーシャのような達人が使えば回避が非常に困難な武器と化す。

 それ故に当ててしまえば相手の物理防御力を無視してしまえる魔法剣と組み合わせる事で、凄まじいまでの威力を発揮する武器なのだ。

 と言うかむしろ「魔法剣と組み合わせる事が前提となっている」武器だとさえ言えるだろう。


 それに対して刀というのは、標的を「斬る」事「のみ」に特化した武器だ。

 当然ながら使いこなすには太一郎のような特殊な技術が必要になり、魔法剣を活かす事が前提のソードレイピアとは、扱い方が全然違ってくる。

 ケイトもそれを分かっているからこそ、隼丸を使うと言い出したサーシャに対して、とても心配そうな表情になってしまったのだが。


 「ふふん、だったら試してみますか?ケイト。」


 そんなケイトの心配を払拭ふっしょくする為に、サーシャは笑顔でクレアに語りかけたのだった。


 「お母様。『模擬戦くん』はもう現場に投入出来る状態なのですよね?」

 「ええ、最終調整を先日済ませたばかりだけれど…サーシャ、貴女まさか…!!」

 「ええ、この生まれ変わった隼丸の威力を、早速試させて貰うとしましょう。」


 かくしてサーシャの提案により、太一郎たちは城の訓練施設へと足を運んだのだった。

 多くの兵士たちが訓練を中止して興味深そうに注目する中、広大なグラウンドの中心に立つのは…隼丸を腰のベルトに固定したサーシャと、ロングソードの模造武器を手にした一体の人型のゴーレムだった。

 折角だからと同行した武器屋の店主が、とても興味深そうに人型のゴーレムを見つめていたのだが。 


 「あの、女王陛下…何なんすかこれ?」

 「彼の名前は『模擬戦くん』。兵士たちに安全に模擬戦をして貰う為に、私が作ったゴーレムよ。」

 

 呆気に取られる太一郎に、クレアがとても穏やかな笑顔で説明を始めたのだった。

 ロングソードを手にした模擬戦くんが、ケイト同様のカナリオン流剣闘術の構えを取る。

 クレアが言うには模擬戦くんには、フォルトニカ王国騎士団の近衛騎士たちの戦闘データが入力されており、戦闘スタイルをそっくりそのまま真似る事が出来るとの事らしい。

 ただしあくまでも現時点では「戦闘スタイルを真似る事が出来るだけ」であり、近衛騎士たちの高い戦闘能力自体をコピーする事までは出来なかったらしいのだが。

 それでも兵士たちよりは充分に高い戦闘能力を有しており、兵士たちの訓練用としては充分実用レベルとして使えるとの事だ。 


 「それでは、始めましょうか。」


 隼丸を鞘から抜いて構えたサーシャが、威風堂々と模擬戦くんを見据える。

 太一郎との模擬戦で見せつけた、イグナイト流舞踏剣術の独特の変則モーションだ。

 そんなサーシャに訓練を中止して観戦を始めた兵士たちが、とても楽しそうに歓声を浴びせたのだった。

 腕組みをしながら、穏やかにサーシャの勇姿を見つめる太一郎。

 かつて自分が使っていた隼丸を手にするサーシャ。一体どんな気持ちでいるのだろうか。


 多くの者たちの大注目を浴びる中…先に動いたのは模擬戦くんの方だった。

 ケイトのカナリオン流剣闘術をそっくりそのまま真似た…と言ってもクレアの説明通り、オリジナルのケイトには遥かに及ばないのだが…その豪快ながらも美しさすら感じる剣閃がサーシャに迫る。

 だがそれをサーシャは穏やかな笑顔で、次々と隼丸で受け止めたのだった。


 「流石だな。一時はどうなる事かと思ったけど、完璧に隼丸を使いこなしているな。」


 腕組みをしながら穏やかな笑顔で、サーシャの戦いぶりを見つめる太一郎。

 ケイトが心配していたように、レイピアと刀とでは扱い方が全然違う。

 だがそれでもサーシャは隼丸を、まるで自分の手足のように完璧に使いこなしていた。

 一体サーシャがどこで刀術を習得したのかは知らないが…明日香にでも習ったのか、それとも独学なのか。

 まあ後でサーシャに聞いてみるとしよう。

 

 「では、今度はこちらから行きますよ。」


 模擬戦くんを弾き飛ばしたサーシャが、精霊魔法で熾天使してんしセラフィムを召喚し、エルダードラゴンとの戦いで披露した大技を発動。


 「セラフィム・インストール!!」


 セラフィムと融合したサーシャの全身が白銀の輝きを放ち、背中から美しい光の翼が展開される。

 そんなサーシャに体勢を立て直した模擬戦くんが渾身のシャインブレイクを放つものの、白銀の光に包まれた隼丸から、模擬戦くんに向けてカウンターで強烈な一撃が放たれたのだった。


 「彗星剣!!」


 まさに彗星の如き光の弾丸が、シャインブレイクを放った模擬戦くんを情け容赦無く吹っ飛ばし、壁に叩きつける。

 そしてサーシャの強烈な一撃で駆動系が損傷してしまったのか、模擬戦くんはそのまま動かなくなってしまった。

 そんなサーシャに、笑顔で大歓声を浴びせる兵士たち。


 「…ぶいっ!!」


 セラフィム・インストールを解除したサーシャが、太一郎に向けて右手でVサインを作り、笑顔で勝ち誇ったのだった。


 「な、なんか複雑ですね…。」


 自分の戦闘スタイルを真似た模擬戦くんをサーシャにフルボッコにされ、思わず苦笑いを浮かべてしまうケイト。


 今から半年前にシリウスの転生術によって、この異世界に転生させられた明日香は、この隼丸を使って沢山の命を救ってきた。

 その隼丸は半年後に太一郎に受け継がれ、夢幻一刀流の正当継承者という適材適所過ぎる太一郎の手に渡った事により、あらゆる物を斬り捨てる最強の武器へと変貌した。

 そして壮絶な死闘の末に、隼丸は聖地レイテルでの戦いで大破してしまったものの、こうして無事に修復、強化され、今度はサーシャの手に渡る事になる。


 その強化された隼丸を使い、見事に模擬戦くんを圧倒してみせたサーシャ。

 強力な武器は使い手を自ら選ぶと言われているが、まさに次代の正当継承者として、サーシャが隼丸に正式に認められた瞬間であった。

次回から新章開始。

シルフィーゼの説得の為に精霊の森へと辿り着いた、太一郎、サーシャ、ケイト、シリウス、レイナの5人ですが、そんな彼らに転生術奪取を目論むイゾルデ王国の特殊工作部隊が襲い掛かり…。

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