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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
第1章:異世界へ
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第4話:英雄譚の始まり

今回は初の戦闘シーンです。

太一郎とバルゾム、その壮絶な戦いの結末は…?


戦闘シーンは描いてると本当に気持ちいいですわ。

 太一郎と真由が大急ぎで馬車でラムダ村に向かっている最中、純白の重装鎧に身を包んだ中年の男性がグレートソードを構え、他の兵士たちと共に盗賊たちを相手に向かい合っていた。

 そして盗賊たちのリーダーであるバルゾムが両手に鞭を手に、ニヤニヤしながら男性を睨みつけている。

 その様子を村人たちが、とても心配そうな表情で見つめていたのだった。


 「薄汚い盗賊風情が…!!この近衛騎士ロファールが来たからには、これ以上貴様らの好きにはさせんぞ!!」

 「ひゃひゃひゃひゃひゃ!!今度は近衛騎士かよ!!マジで懲りねえ連中だなあ!!てめえも俺様の暗黒流蛇咬鞭あんこくりゅうじゃこうべんの餌食にしてやらあ!!」

 「そうやって余裕の態度をしていられるのも…今の内だけだぁっ!!」


 決死の表情で、ロファールはグレートソードを手にバルゾムに斬りかかる。


 「ぬあああああああああああああああああっ!!」


 これまで幾多もの戦場を駆け抜けてきた、まさに百戦錬磨の一撃…並の使い手が相手なら、あまりの威力に受け止める事さえも出来ず、そのまま地面に叩き伏せられていただろう。

 だがそれさえも、バルゾムには全く通用しない。 


 「食らえ!!暗黒流蛇咬鞭奥義、大蛇薙おろちなぎ!!ぶしゅしゅしゅしゅしゅーーーーーーーーーーーっ!!」

 「ぐあああああああああああああああっ!!」


 まさに生きた蛇のようなしなやかで変則的な、しかも常人には目に捉える事さえも出来ない凄まじい速度の鞭捌きの前に、ロファールは反応すら出来ずに成す術も無く叩きのめされてしまった。

 屈強な防御力を誇るはずの重装鎧が、バルゾムの重い鞭捌きの前に、あっという間にボロボロにされていく。

 フォルトニカ王国騎士団の王族直属の精鋭部隊…その近衛騎士でさえも、バルゾムを相手にまるで歯が立たない…その現実は村人たちを絶望させるのには充分だった。

 これから自分たちは、一体どうなってしまうのかと…。


 「弱っえーーーーーー!!弱ぇくせに粋がってんじゃねぞコラぁ!!」

 「ぐっ…ば、馬鹿な…近衛騎士であるこの私が…こんな盗賊如きに…っ!!ぐああああああああああああああっ!!」

 「オラオラオラオラぁっ!!俺様に許しを乞うてみろよ!!もう二度と逆らいませんから許して下さいってなぁ!!ひゃはははははははは!!」

 「ぐああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

 何度も何度も何度も何度も、地面に倒れ伏しているロファールに2本の鞭を浴びせるバルゾム。

 だがそれでもロファールは、こんな所で諦める訳にはいかない。

 このままこの男を野放しにしておけば、これからこの国は一体どうなってしまうのか。

 フォルトニカ王国騎士団の近衛騎士として、国を守る為に、国民を守る為に、目の前の村人たちを救う為に、ロファールはここで退く訳にはいかないのだ。


 「ま、まだだ…まだ私は…っ!!」

 「おっ、まだ動けるのかよ。伊達に近衛騎士を名乗っちゃいねえな。あのレイナとかいう双剣使いの女よりは楽しませてくれそうじゃねえか。」

 「この国の人々を守る為に!!私は貴様のような下郎如きに負ける訳にはいかんのだぁっ!!」


 何とか立ち上がったロファールだったが、バルゾムの鞭による攻撃で全身を痛めつけられており、既に満身創痍といった感じだ。

 

 「てめえのその強気の態度を、この俺様が絶望に染めてやらぁ!!ひゃはははははははは!!」

 「ぬうううううっ!!」


 再びバルゾムが満身創痍のロファールに対し、2本の鞭を放ったのだが。


 「『防壁【プロテクション】』!!」


 真由の声が響いた瞬間、 突然ロファールの目の前に光の壁が出現したのだった。

 その強固な耐久力によって、バルゾムの鞭が弾かれてしまう。

 予想外の出来事に、驚きの表情を見せるバルゾムだったのだが。


 「な、何ぃ!?うおおおおおおっ!?」


 さらに太一郎と真由を乗せた馬車が、物凄い勢いでバルゾムに突撃。

 慌てて馬車を避けて間合いを離したバルゾムだったのだが、馬車から降りた太一郎と真由がロファールを庇うように、バルゾムの前に立ちはだかっていたのだった。

 何の迷いも無い力強い瞳で、太一郎はバルゾムを見据えている。


 「そこまでだ!!これ以上君たちの好きにはさせないぞ!!」

 「何だてめぇは!?俺様を暗黒流蛇咬鞭のバルゾム様と知っての事か!?」


 突然現れた太一郎と真由の姿に、呆気に取られてしまう村人たち。


 「せ、青年よ…!!正義感が強いのは良い事だが…その男だけは止めておけ…!!その男の鞭は…まさに変幻自在の…音速の…っ!!あれは並の人間に捉えられるような代物では…っ…!!」

 「喋らないで安静にしていて下さい。真由、この人の傷の手当を頼む。」

 「うん。」


 真由が満身創痍のロファールに、そっ…と両手をかざし、『異能【スキル】』を発動。


 「『治療【ヒーリング】!!』」


 真由の『異能【スキル】』によって、瞬く間にロファールの傷が癒えていく。


 「こ…これは…治癒魔法か…!?君たちは一体何者なのだ!?」


 その様子をバルゾムが、何とも不機嫌そうな表情で睨みつけていたのだった。

 突然現れたと思ったら、ロファールに止めを刺そうとした自分の邪魔をした挙句、そのロファールの傷までも治癒魔法か何かで癒してしまうとは。

 しかも自分の姿を見ても全く動じた様子も無い。フォルトニカ王国の住人ではない、他国からやってきた旅人か冒険者か何かなのか。


 (ここは天下無双の俺様という存在を、こいつらに思い知らせてやる必要があるな…。)


 そんな事を考えたバルゾムが、不機嫌そうな表情で部下たちに命じる。


 「お前らマジでむかつくからよ。今から念入りに殺しとくわ。おい、お前ら。」

 「「「「「へい!!」」」」」

 「こいつらを徹底的にいてこましたれ。生まれてきて御免なさいって命乞いさせてやれや。男は殺せ。女は犯せ。いいな?」

 「「「「「…へいっ!!」」」」」


 バルゾムの命令を受けた10人もの盗賊たちがヒャッハーとか奇声を発しながら、一斉に太一郎と真由に襲い掛かった。

 そして2人に背を向けたバルゾムが高笑いしながら、村人たちの前で派手に鞭を鳴らして脅しをかけたのだが。 


 「おいお前ら!!これからこのラムダ村を俺らの拠点にするからよ!!誠心誠意俺らに奉仕しろよ!!いいな!?」

 

 ドカッ!!バキッ!!グシャッ!!


 「これから毎日三食、俺らに美味い飯を用意しろ!!若い女共は毎晩俺らの夜伽の相手をしろ!!3P!!レズ!!親子丼!!毎晩俺らを徹底的に楽しませろよな!!妊娠した奴はすぐに中絶しろよ!!いいな!?」


 ズバーーーーーン!!ズババババーーーーーーーン!!


 「もし1人でも逆らえば連帯責任だ!!お前ら全員徹底的に痛めつけてやんよ!!そこの2人のように生まれてきた事を後悔させてやるからなあ!!」


 ちーん。


 「あいつらの無様な姿をよく見ていやがれ!!俺らに逆らうからこういう事になるんだからなあ!!ひゃははははははははは!!」


 盗賊たちの奇声が一斉に止み、辺り一面が静寂に包まれる。

 何だお前ら、もう終わらせちまったのかよ、俺様がボコる分も残しておけよ…そんな事を部下たちに言おうとしたバルゾムだったのだが。


 「…せ…『閃光』…!!」

 「あぁ!?」


 呆気に取られた村人の1人の意味不明な言葉に、バルゾムが怪訝な表情で背後を振り返る。

 そこでバルゾムが見せつけられたのは…涼しい顔で息1つ乱さず、一瞬で盗賊たち全員を返り討ちにした太一郎の、威風堂々とした姿だった。


 「「「「「…う…生まれてきて…ご、御免なさい…(泣)!!」」」」」

 「な…何だと…!?」


 予想外の出来事に、バルゾムは驚きを隠せない。

 あの僅かな時間で10人もの盗賊たちを、こうもあっけなく返り討ちにしたというのか。

 相変わらず隼丸を鞘に収めたまま、太一郎は威風堂々とバルゾムを見据えている。

  

 「安心しろ。峰討みねうちだ。殺してはいないよ。」

 「この野郎、ふざけやがって!!てめえに俺様の強さを思い知らせてやるよ!!」


 完全に頭に血を昇らせたバルゾムが逆上しながら、2本の鞭を太一郎に浴びせてきた。


 「食らえ!!暗黒流蛇咬鞭奥義、大蛇薙ぎぃっ!!しゅーーーーーーっ!!しゅしゅしゅしゅしゅしゅ!!しゅーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 太一郎に恐怖を味合わせる為なのか、次々と繰り出す変幻自在の鞭をわざと当てずに、寸止めを続けるバルゾム。

 それでも太一郎は全く動揺せず、鞘に収めた隼丸に、直立不動の姿勢で右手を添えたままだ。


 「見ろ!!このスピード!!俺様の音速の鞭捌きが、てめえに見切れるか!?」


 確かにバルゾムの言うように、達人クラスの鞭使いが鞭を振るえば、その速度は音速にまで到達するとまで言われている。

 それでいて、この変幻自在の変則的な、まるで生きた蛇のような鞭の動きだ。これまでフォルトニカ王国の騎士団が手を焼いたのも仕方が無いのかもしれない。

 だが。


 「あああ…このままじゃ…あの坊やも…あの近衛騎士の方と同じように…!!」

 「大丈夫だよ、おばあちゃん。」


 それでも真由は自信に満ちた表情で、不安そうな表情を見せる老婆にはっきりと宣言したのだった。


 「あの程度の実力の敵が相手なら、お兄ちゃんの敵じゃないよ。」


 そう、音速如きでは太一郎を捉えられない。

 太一郎の居合術は、音速を超えた…まさに『神速』なのだから。


 「しゅーーーーーーっ!!しゅしゅしゅしゅしゅ!!しゅーーーーーーーっ!!」

 「いや、その、何だ…君のその訳が分からない掛け声は、どうにかならないのかな?」


 そんな事を口にする余裕すら、太一郎にはあった。

 バルゾムの鞭捌きに対して恐怖に震えるでも、命乞いをするでもなく、呆れたような表情で溜め息をつく。

 その太一郎の余裕の態度に完全にキレてしまったバルゾムが、遂に太一郎に鞭を仕掛けてきたのだが。


 「しゅーーーーーーーっ!!死ね…っ!?」


 太一郎が隼丸を『抜いた』、次の瞬間。

 太一郎の周囲に、無数の『閃光』が走った。

 そして太一郎が隼丸を鞘に収めると…バルゾムが使っていた鞭の破片がバラバラになって宙を舞っていた。

 まさかの予想外の出来事に、バルゾムもロファールも兵士たちも村人たちも、誰もが驚きを隠せない。

 ただ1人、こうなる事が最初から分かっていた真由を除いて。


 「な、何いいいいいいいいいいいいいいいい!?何故俺様の鞭がバラバラにいいいいいいいいいいいいいっ!?」

 「僕が隼丸で斬ったんだよ。」

 「…『斬った』…!?俺様の音速の鞭を…!?その刀で…!?」


 音速で迫る鞭を刀で斬るって。とても人間業だとは思えない。

 一体何をどうやったら、そんな神技みたいな真似が出来るのか。

 と言うか一体いつの間に隼丸を抜いたのか。一体いつの間に斬撃を繰り出したのか。一体いつの間に隼丸を鞘に収めたのか。

 バルゾムは太一郎の斬撃を、全く目で捉える事が出来なかったのだ。

 代わりにバルゾムの目に映ったのは、一筋の『閃光』。

 

 「暗黒流だか何だか知らないけど、こんな半端な力を手にしたばかりに、君は邪道へと堕ちてしまったのか。」

 「て、てめえ、ふざけやがって!!このガキがどうなってもいいのかコラぁ!?」

 「嫌あああああああああああああああ!!カトリーーーーーーーーーー!!」


 完全に追い詰められてしまったバルゾムは、たまたま近くにいた幼い少女を羽交い絞めにし、人質に取ったのだった。

 突然の出来事に、少女の母親らしき女性が絶望の声を上げる。

 バルゾムは悟ったのだ。太一郎の実力は自分を遥かに上回っていると。まともに戦って勝てる相手では無いという事を。

 だからこそ人質を取って太一郎を脅すつもりなのだが…しかしこういうケースは太一郎も向こうの世界で警察官として働いていた頃から、もう何度も何度も経験してきた事なのだ。それ故に太一郎は全く動じてはいなかった。


 そして太一郎の前では『人質を取る』などという行為は、最も愚かで無意味極まりない代物なのだ。

 鞘に納めた隼丸の柄に右手を添え、真っすぐにバルゾムを見据える。

 狙いはただ一点…バルゾムの脳天。

 これまで向こうの世界において、数多くの凶悪犯罪者たちから力無き人々を何度も救ってきた奥義を、今まさに太一郎はバルゾムに繰り出したのだった。


 「夢幻一刀流奥義…!!」

 「て、てめえ、脅しじゃねえぞ!!そこから一歩でも動けばこのガキの首をへし折…っ!?」

 「維綱いずな!!」


 抜刀。

 次の瞬間、太一郎が鞘から『抜いた』隼丸から、凄まじい威力の衝撃波が正確にバルゾムの脳天に襲い掛かった。

 夢幻一刀流奥義・維綱…居合刀に自身の『気』を込め、それを超高速の居合によって衝撃波と化して相手に放つ遠距離攻撃技だ。

 これは転生者として太一郎に与えられた『異能【スキル】』ではない。太一郎が修行の末に体得した、夢幻一刀流の『技』なのだ。


 「…が…!?」


 全く予想もしなかった一撃にバルゾムは全く反応出来ず、衝撃波の直撃を脳天に食らってしまう。

 そして強烈な脳震盪を起こしてしまったバルゾムは、どうっ…と力無く地面に倒れてしまったのだった。

 

 「…せ…『閃光』…(泣)!!」


 今、バルゾムも村人たちと同様、確かに目撃した。

 太一郎が隼丸を『抜いた』瞬間、一筋の『閃光』が走ったのを。

 一瞬の静寂の後…村人たちの歓喜の声が太一郎と真由を包み込んだのだった。


 「…か、確保!!確保ぉーーーーーーーーーっ!!」


 慌てて兵士たちが気絶してしまったバルゾムたちを縄で拘束したのだが、その様子をロファールが驚きの表情で見つめていたのだった。

 あのバルゾムを…女王直属の精鋭部隊である近衛騎士の自分でさえも太刀打ち出来なかった、あのバルゾムを…こうも呆気なく、息1つ乱さず倒してしまうとは。


 「強い…強過ぎる…!!それに何なんだ彼のあの剣術は!?あんな物凄い速度で刀を抜きながら攻撃するなど、あんな物を私は見た事が無いぞ!!彼は一体何者なのだ!?」

 「シリウス殿が召喚した転生者様との事です!!」

 「転生者だと!?では彼が女王陛下が仰っていた、あの…!!」


 馬車を運転していた兵士の言葉に、驚きの表情を見せるロファール。

 そして村人たちに祝福される太一郎と真由を見つめながら、ロファールは思わず呟いたのだった。


 「…救世主だ…!!彼こそまさしく、このフォルトニカ王国の救世主…!!『閃光の救世主』だ!!」


 太一郎によってバルゾムから救助された少女をぎゅっと抱き締めながら、母親の女性が太一郎と真由に何度も何度も深く頭を下げる。

 この一件以降、太一郎は『閃光の救世主』としてフォルトニカ王国の多くの人々の命を救う大活躍を見せつけ、フォルトニカ王国全土にその名を轟かせる事になる。

 そして魔王カーミラを打ち倒して王女と結婚し、フォルトニカ王国を救った『閃光の英雄王』として歴史にその名を残す事になるのは、また先の話である。


 後に学校の教科書にも記載される事になる太一郎の英雄譚は…今まさにここから始まったのだ…。


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