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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
第6章:絶望の、その先へ
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第44話:一夜明けて

キングスレイドのパクリ、その2ですwwwww


真由たちを失い、ただ1人生き残った事で、絶望する太一郎。

その太一郎の身体を蝕んでいるエキドナの暗黒魔法を無力化する為に、全力で英気を養ってベストの状態に戻したサーシャなのですが…。

 清々しい朝日に包まれた、トメラ村の朝7時。 

 太一郎の身体を蝕むエキドナの暗黒魔法を無力化する為に、死ぬ気で休んで身も心も魔力も万全の状態に戻したサーシャは、かつて太一郎と真由が雑穀米と野菜の天ぷらをご馳走になった(第8話参照)老婆の家で、ケイトと共に朝食を頂く事になった。

 太一郎と真由には本当に世話になったから、そのお礼をしたいと…老婆の方から申し出てくれたのだ。


 かつてキャバクラで太一郎の接客をした(第19話参照)孫娘のナタリアと共に、手際よく朝食を作る老婆。

 ナタリアはエルダードラゴンがAランクの冒険者6人を壊滅させたと知らされ、祖母が心配になって店を休んでトメラ村の実家に帰省していたのだが、そこへ意識不明の重体となってしまった太一郎にたまたま出くわしたのだ。

 一度店で接客した相手なだけに、ナタリアはとても心配そうな表情で、昨日サーシャとケイトに救助されたズタボロの太一郎が診療所に連れて行かれるのを、大勢の村人たちと一緒に見つめていたのだが。

  

 それでも今はサーシャが必ず太一郎を救ってくれると信じ、気丈な態度で祖母の朝食作りを手伝っている。

 自分たちも手伝おうかとサーシャとケイトが申し出たのだが、老婆とナタリアは2人は客人なのだからと、その申し出を丁重に断ったのだった。

 折角の2人の好意を無にするのは逆に申し訳が無いという事で、大人しく朝食が出来上がるのを椅子に座って待っているサーシャとケイト。

 

 トントントンという手際良いナタリアの包丁捌きの音が室内に響き、老婆が川で釣った魚をグリルで焼いている。

 炭火によって焼かれた魚の香ばしい香りが、部屋を優しく包み込んでいる。

 どこにでもある、平和な日常の光景…これは太一郎と真由が命懸けで魔物や盗賊たちと戦い、守り抜いてくれた物なのだ。

 もし太一郎と真由がこの異世界に転生して来なかったら、冗談抜きでこの村は魔物や盗賊たちに滅ぼされていたかもしれないと、老婆は笑いながらサーシャとケイトに語っていたのだが。


 「お待たせてしまって御免なさいね。さあ、遠慮なく召し上がれ。」


 満面の笑顔を浮かべながら、ナタリアが出来立ての朝食が載せられた皿をテーブルの上に置いたのだった。

 雑穀米に焼き魚、お新香、寒天入りの吸い物。

 焼き魚には大根おろしと、赤と白の彩り豊かなはじかみ生姜が添えられている。

 栄養のバランスがしっかりと整えられた、まさに理想的な朝食だ。


 太一郎は以前サーシャに


 「朝食はシリアルこそ至高(笑)」


 などと笑いながら語っていたのだが、サーシャはシリアル自体は食物繊維が豊富で、栄養バランスも申し分ない事から否定はしなかった。

 実際にケイトも栄養バランスの観点から毎朝必ずシリアルを食べていると、そうサーシャに語っていたのだから。


 だがそれでもシリアルに牛乳やヨーグルトをかけるだけというのは、何だか手抜きの食事を提供しているみたいで、サーシャはあまり快く思わなかったのだ。

 それに毎日命懸けの戦いに身を置いて貰っている以上は、太一郎と真由…それに女手1つで自分をここまで育ててくれた母親のクレアにも、自分の愛情たっぷりの出来立ての温かい食事を食べて貰いたいから。

 今のナタリアと老婆は、そんなサーシャと同じ気持ちなのだろうか。


 「「頂きます。」」


 両手を合わせ、ナタリアと老婆への感謝の気持ちを込めながら、お新香を口に運ぶサーシャとケイト。

 食事をする際は、必ず野菜から…サーシャが幼少時にクレアから教えられた事だ。

 野菜には豊富な食物繊維が含まれており、最初に野菜から食べる事で血糖値やコレステロールの上昇を抑え、ナトリウムの排泄はいせつを促す事が出来るので、高血圧や動脈硬化の予防に繋がるのだそうだ。


 「…美味しい。」

 「ふふふっ、それ私が作ったお新香なんですよ。気に入って頂けて嬉しいです。」


 とても美味しそうにお新香を食べるサーシャを、満面の笑顔で見つめるナタリア。

 老婆が焼いた焼き魚もしっかりと臭み取りが済ませてあり、焼き加減と塩加減が絶妙で、雑穀米を口に運ぶサーシャとケイトの箸が進む。

 魚というのは、ただ焼けばいいという代物ではないのだ。

 

 本来なら太一郎と一緒に、談笑しながら食べたかったのだが。

 いや、その為にサーシャはしっかりと朝食を食べて、英気を養わなければならないのだ。

 太一郎の身体を蝕んでいるエキドナの暗黒魔法を、サーシャの精霊魔法で確実に無力化する為に。

 その決意を胸に、サーシャはナタリアと老婆のたっぷりの愛情が込められた朝食を、懸命に口の中に運んだのだった。


 「「ご馳走様でした。」」


 やがて食事を終え、お茶も飲み干したサーシャがケイトと共に両手を合わせ、感謝の気持ちを口にした。


 「有難う御座いました。ナタリアさん、お婆様。とても美味しかったです。」

 「おやおや、綺麗に食べてくれたねえ。作った甲斐があったってもんだよ。」


 とても嬉しそうな表情で食器を片付けながら、サーシャの感謝の言葉に耳を傾ける老婆。

 料理人にとって自分が作った料理を美味しそうに全て平らげてくれるというのは、この上なく嬉しい事なのだ。

 そしてそれは自分が心を込めて作った料理を、いつも太一郎に美味しそうに食べて貰っているサーシャとて同じ事だ。

 

 「さあ、診療所に行きますよケイト。早く太一郎さんをお救いしなければ。」

 「はっ!!」


 決意の表情で、サーシャは椅子から力強く立ち上がる。

 昨日は死ぬ気で休んで充分な睡眠を取り、心も身体も魔力も万全の状態に戻した。そして今日も朝食も死ぬ気でしっかり食べて、充分に英気を養った。


 昨日の夜11時頃にはどこから嗅ぎ付けたのか、転生者の全滅、唯一の生存者である太一郎が意識不明の重体になった件に関しての取材の為に、幾つかの国の記者たちが夜遅くだというのに、村人たちへの迷惑を一切顧かえりみずに一斉にトメラ村に訪れてきた。

 そして睡眠を取ろうとしたサーシャの元に押しかけて取材攻勢を仕掛けてきたのだが、サーシャはそれらを


 「全ては記者会見で話します。」


 と全て断り、全力で寝る事を最優先にしたのだ。

 王女としての責務を放棄するのかとか、これは公務だとか、国民に1分1秒でも早く真実を伝えるのが貴女の役目だとか、寝てる場合かとか、そんな雑音を全てシャットアウトした上で。


 これも全ては太一郎を、エキドナの暗黒魔法から確実に解放する為だ。

 そして準備は充分に整った。後は診療所で寝ている太一郎にサーシャが渾身の精霊魔法をかけ、エキドナの暗黒魔法を全力でぶち転がすだけだ。

 手応えも自信もある。サーシャの力量ならばエキドナの暗黒魔法を、手間は掛かるが確実に無力化する事が出来る。


 だが診療所の玄関前には相変わらず、多数の記者たちがサーシャに取材をしようと一斉に押しかけてきていた。

 そしてサーシャの姿を確認した途端、一斉に記者たちがサーシャの元に殺到する。

 そのサーシャを守ろうと、ケイトと兵士たちが記者たちの前に立ちはだかったのだった。


 「姫様、ここは我らにお任せを。姫様の通り道は我々が責任を持って確保致します。」

 「助かります。ケイト。」

 「皆さん、道を開けて下さい!!これより姫様による太一郎殿の治療が執り行われます!!皆さんがここにいた所で、姫様の治療行為の邪魔になるだけです!!どうかどいて下さい!!」


 ケイトと数名の兵士たちが必死に記者たちを押しのけるのだが、記者たちもまた一歩も引かない。

 彼らとて自分たちや家族の生活が懸かっているのだ。「売れる記事」を作る為に、少しでも情報を集めようと必死なのだ。

 ここでケイトに引けと言われた所で、そう簡単に引き下がれる訳が無い。

 

 「どんな治療を行うのですか!?『閃光の救世主』殿は暗黒魔法に蝕まれているとの事ですが、だったら何故昨日の内に治療措置を行わなかったのですか!?呑気に寝てる場合では無かったのではないですか!?」

 「『ブラックロータス』の方々が謀反を起こしたとの情報もありますが、その件についての責任はどうお考えなのでしょうか!?」

 「これだけ多数の死者を出してしまったのですよ!?調査任務自体が果たして妥当な物だったのでしょうかねえ!?」

 「一部ではエルダードラゴンの命を奪った姫様に対して、責任追及の声も上がっておりますが、それに関してはどうお考えなのでしょうか!?」

 

 記者たちからの質問攻めにも全く怯む事無く、サーシャは決意に満ちた表情で、ケイトたちに援護されながら診療所へと向かう。

 どんな罵声を浴びせられても構わない。新聞記事にどんな悪口を書かれても構わない。

 そんな事よりも、とにかく今は一刻も早く、太一郎の元に駆けつけてあげなければ。

 その為にサーシャは死ぬ気で寝て、死ぬ気で食べて、心も体も魔力も万全の状態に死ぬ気で戻したのだから。


 ケイトと兵士たちが記者たちと押し合いになり、互いの怒声が周囲に響き渡る。

 その混乱に乗じて、どさくさに紛れてニヤニヤしながら、背後からケイトの豊満な胸を両手でわし掴みにして揉んだ記者を、ケイト自身が怒りの形相で地面に叩きつけて拘束したのだが。

 その記者は事故であって決してわざとじゃない、これは不当拘束だ、逆提訴するぞと強気にケイトに脅しをかけてくる。

 そんな記者の胸倉を、あぁん!?と怒りの形相で掴み、診療所の壁に叩きつけるサーシャの後ろ姿を、村人たちやナタリア、老婆が心配そうな表情で見つめていたのだが。


 「ひ、姫様!!大変です!!」


 診療所の中で待機させていた兵士が血相を変えて、ケイトの胸を揉んだ記者に壁ドン!!して睨みつけているサーシャの元に駆けつけてきたのだった。

 至近距離からサーシャにガンを飛ばされて、すいません魔が差しましたと泣きながらサーシャに謝罪する記者。


 「謝る相手が違うでしょう!?…っと、どうされました?」


 慌てて兵士の方を振り向いたサーシャだったのだが。

 だが次の兵士の言葉に、サーシャたちは驚愕の表情を見せる事になる。


 「ちょ、朝食を終えた太一郎殿の身体を拭こうと、お湯とタオルを持参したのですが…彼の姿がどこにも見当たらないのです!!彼が使っていた戦闘服と隼丸も一緒に!!」

 「なっ…!?」


 この兵士の言葉に、兵士たちも村人たちも記者たちもナタリアも老婆も、その場にいた者たちの誰もが騒然となってしまう。

 一体何故、そのような無茶を…!?泣きながらケイトにジャンピング土下座をした記者をほったらかしにして、サーシャは毅然とした態度でケイトたちに指示を出したのだった。


 「あの身体では、そんなに遠くへは行けないはずです!!手分けして探しましょう!!」

 「私も協力します!!人探しなら土地勘のある私が適任でしょう!?」


 決意に満ちた表情で、ナタリアがサーシャに向かって挙手をする。

 ナタリアとて大切な祖母を何度も太一郎に救われているのだ。そんな彼が突然いなくなってしまったとなれば、ここでじっとなどしていられる訳が無い。 


 「…分かりました。ナタリアさん、お願い出来ますか?」

 「はい!!」


 力強く頷いたナタリアに、穏やかな笑顔を見せるサーシャ。

 確かにナタリアの言う通りだ。この辺りの地理に詳しい彼女が捜索を手伝ってくれるのであれば、これ程心強い事は無い。

 事情は知らないがこんな無茶をしでかしてくれた太一郎には、後で色々と文句を言ってやりたい所なのだが、今はとにかく姿を消した太一郎を見つけて連れ戻す事が先決だ。


 「では、私はあっちを探します。ケイトは向こう、ナタリアさんはあっちの方角を。兵士の皆さんは太一郎さんが戻ってきた場合に備え、全員この場で待機。もし太一郎さんを見つけた場合は、上空に信号弾を撃って知らせて下さい。」

 「「「「「はっ!!」」」」」


 サーシャはナタリアに信号弾を撃つ為のタリスマンの予備を貸し出し、使い方を説明したのだった。


 「捜索の結果に関わらず、8時半までには全員必ずここに戻ってくる事。いいですね?それでは捜索開始!!」


 サーシャの号令で、一斉に散らばるサーシャ、ケイト、ナタリア。

 その3人の後ろ姿を、大事件だ、スクープだ、いい記事のネタになるぞ、などと騒ぎ立てながら見つめる記者たち。


 「…太一郎さん…!!」


 そんな記者たちを無視して、サーシャは心配そうな表情で、聖地レイテルに向けて走り出したのだった…。

次回、キングスレイドのパクリ、その3wwwww

聖地レイテルへの入り口で太一郎を発見したサーシャは、命を粗末にしないでと泣きながら太一郎を怒鳴り散らします。


そんなサーシャに対して太一郎が取った行動とは…そして今まで太一郎を苦しめてきた『呪い』が、遂に…

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