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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
最終章:光溢れる未来へ
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第108話:復讐の転生者(美海)

真・魔王カーミラを撃破した太一郎。

その時、美海は…。

 太一郎の渾身の朱雀天翔破によって首を刎ねられ、頭部を失った真・魔王カーミラの身体が、どうっ…と力無く地面に倒れ込む。

 ふうっ…と一息ついて、鳳凰丸を鞘に納める太一郎だったのだが。


 「太一郎さあああああああああああああああああああああん!!」

 「どあああああああああああああああああああああああああ!?」


 そこへサーシャが目から大粒の涙を浮かべながら、物凄い勢いで太一郎に突撃して抱き着いてきたのだった。

 苦笑いしながら、そんなサーシャの髪を優しく撫でてやる太一郎。

 サーシャの身体が震えている。太一郎が真・魔王カーミラに殺されやしないかと、不安で不安で仕方が無かったのだろう。

 実際の所、美海がいてくれなければ、太一郎もラインハルトも真・魔王カーミラに無様に敗北していただろうから。それ程までに壮絶な戦いだったのだ。

 それでもどうにかラインハルトと共に無事に真・魔王カーミラを打ち倒し、こうして命を繋ぐ事が出来た。


 『よく頑張ったな。見事な戦いぶりだったぞ、太一郎。』

 「貴女は、さっきの!?」


 そんな公衆の面前でイチャつく2人の下に、先程まで遠くから太一郎たちの戦いぶりを見守っていた鈴音が、とても穏やかな笑顔で歩み寄ってきたのだった。

 緑色の光に包まれた鈴音が、太一郎とサーシャを優しい眼差しで見つめている。


 ドノヴァンがやらかしてくれた転生術のとばっちりを受け、鈴音は大正元年に老衰によって天寿を全うした後に、神也と共に異世界に転生させられてしまった。

 だが瑠璃亜に追われる最中に大慌てで転生術を発動してしまったせいで、転生術に不備が発生してしまい、神也と違って鈴音の肉体が再構築されず、こうして魂だけが異世界を彷徨う結果になってしまったのである。

 魂だけの存在と成り果てたが故に、神也や真・魔王カーミラと戦う太一郎に加勢する事が出来ず、ただ見守る事しか出来なかった鈴音。

 それが何よりも歯痒ったのだが、それでも鈴音は太一郎が必ず勝つと確信していたのだ。


 『これからもこの異世界において、その娘と共にすこやかに生きるのだぞ?我が愛しの子孫よ。』

 「え?子孫って…貴女はまさか僕の…。」


 太一郎が鈴音に言いかけた、まさにその時だ。


 【美海あああああああああ!!み~~~~~う~~~~~な~~~~~!!】


 漆黒の塵と化して消滅してしまった真・魔王カーミラの体内からどうにか抜け出してきた、先程まで真・魔王カーミラだった『呪い』に食われたばかりの、美海に取り憑きながらもルミアの活躍で追い出された『呪い』が、地面に這いつくばりながら必死に美海の下に辿り着こうとしてきたのだった。

 とても厳しい表情で『呪い』の前に立ちはだかり、神刀アマツカゼを手に美海を守る瑠璃亜だったが、そんな瑠璃亜を美海が右手で制し、『呪い』の前に歩み寄る。


 【み、美海!!そなたも充分に思い知らされたであろう!?そなたはその存在自体が、この異世界のパワーバランスを崩しかねない…いいや、それどころかこの異世界その物を滅ぼしかねない程の強大な存在なのだと!!】


 真・魔王カーミラに取り込まれた事で随分と弱っているようだが、それでも『呪い』は美海を執拗に求めている。

 美海だ。美海さえいれば、まだまだこの状況を逆転出来る余地はあるのだと。

 自分の事を悲しみの表情で見つめる美海に対し、『呪い』が悪魔のささやきを行い始めた。


 【美海よ!!そなたを今まで散々苦しめてきた、この異世界の愚かな人間共に復讐したくはないか!?やり返したいとは思わないか!?】

 「…復讐…。」 

 【そうだ!!そなたがその気になれば、そなたの歌でこの異世界の愚かな人間共全員を屈服させ、そなたに服従させる事も決して不可能では無い!!この異世界の女帝として君臨する事さえも決して夢では無いのだ!!】


 とても辛そうに地面に這いつくばりながら、自分の目の前で神刀アマツカゼを手にする瑠璃亜を無視し、ただひたすらに美海だけを見据える『呪い』。

 事実、美海が所有する『異能【スキル】』には、上手く使えばそれだけの事をやってのける程の威力が充分に秘められている。

 今まで美海に取り憑いていたからこそ、『呪い』は美海に秘められた真の恐ろしさという物を、他の誰よりも理解しているのだ。


 ラインハルトがベルドに対し「私ならもっと上手くやるぞ?」と語っていたように、仮にラインハルトが美海を起用していたのであれば、ラインハルトがその気になればこの異世界全土を支配する事さえも、鼻クソをほじりながら容易に出来たはずなのだ。

 それこそ太一郎もサーシャもクレアも瑠璃亜も、全員まとめて皆殺しにした上でだ。

 ベルドが無様にラインハルトに敗れたのは、ラインハルトが天才過ぎたというのも勿論あるが、何よりも『美海の使い方が下手糞だった』という一点に他ならないのである。


 だが『呪い』ならばラインハルト以上に、もっと美海を活かす事が出来る。

 ここで美海を言葉巧みに説得し、自分の側に付かせる事が出来れば、この絶体絶命の状況を充分に打破する事が出来るのだ。

 瑠璃亜もクレアも、太一郎もラインハルトも、サーシャもダリアも…今この場にいる一騎当千の強者たちを全員皆殺しにする事さえも、『呪い』と美海の力をもってすれば…。

 

 【美海よ!!わらわをその身に取り込め!!そして復讐の転生者となり、そなたを今まで苦しめてきた者たちに、そなたが今まで味わった苦しみを存分に思い知らせてやれ!!わらわとそなたが力を合わせれば充分に可能なのだぞ!?】


 美海の復讐心をあおり、この異世界の女帝になれと囁き、その為に自分を取り込めと美海に要求する『呪い』。

 美海はこの異世界に転生させられてから、ここまでベルドに散々酷い目に遭わされてきたのだ。

 それが許せないと、やり返してやりたいと…今まで自分が味合わされてきた生き地獄の対価として、この異世界を女帝として支配する事だって、今の自分にはそれだけの権利があるはずだと。

 そう美海が考えてしまったとしても、この場にいる誰もが美海の事を責められはしないだろう。

 美海は聖人でも何でもない。この異世界に転生させられる前は、ただ歌う事が大好きなだけの、どこにでもいる普通の女子高生だったのだから。

 

 【そしてそなたという存在の恐ろしさを、この異世界の愚かな人間共に存分に分からせてやるのだぁっ!!】


 だが、それでも。


 「…私は貴女が言うように、誰かを憎んだり恨んだりする事も、ましてこの世界を支配する事だなんて、そんな事は到底出来ない。」

 【な、何だと!?】


 美海は『呪い』からの悪魔の囁きを、あっさりと拒絶してしまったのである。

 驚愕の表情で自分を睨み付ける『呪い』を、美海が悲しみの表情で見つめている。

 先程エストファーネたちに語ったように、美海は今この場にいる者たち全員に、自分の想いの丈を語ったのだった。


 どうしてこの異世界の人々は、戦争ばかり起こすのかと。

 どうしてこの異世界の人々は、仲良くし合う事が出来ないのかと。

 ろくに話し合いもせずに、沢山の人々が傷付け合って、殺し合って…そんな光景を目の前で見せつけられるのは、もう沢山なのだと。


 【ふ、腑抜けかそなたは!?一体どこまでお人好しなのだ!?そなたはこの異世界において生き地獄を味合わされ続けたのだぞ!?そやつらに仕返しをしてやろうとは…!!】

 「貴女は本当に愚かな人ね。この子の話を最後まで聞いてもなお、この子が一体何に苦しんでいるのかを理解出来ていないのかしら?」 

 【んなっ!?】


 美海に罵声を浴びせる『呪い』だったのだが、そんな彼女を一瞥いちべつした瑠璃亜が、とても穏やかな笑顔で美海の前に歩み寄り、ポンと両肩に両手を添えた。

 そして不思議そうに自分の顔をじっ…と見つめる美海に、優しく穏やかに…しかし力強い意思を込めて語り掛ける。


 「私たちパンデモニウムはね、専守防衛を絶対の掟として掲げているわ。他国に対して絶対に侵略行為をしない代わりに、他国からの侵略行為に対しては絶対に容赦はしない。私たちが元いた世界の日本と同じようにね。」


 いつ『呪い』が襲ってきてもいいように警戒しながらも、瑠璃亜もまた美海の瞳をじっ…と見つめながら、自らの想いの丈を美海に語ったのだった。


 「だけど他国の人間たちは、それでも私たちを執拗に侵略してくる。だから私たちは戦わなければならないの。パンデモニウムに住まう多くの魔族たちを守る為にね。」

 「…魔王さん…。」

 「貴女の言うように何もかも話し合いで片付けられたら、それが理想なんだけどね。だけど現実はそうじゃない。話し合いの余地も無く問答無用で襲い掛かってくる。だから私たちは皆を守る為に、不本意だけど戦うしか無いのよ。」


 じっ…と瑠璃亜の瞳を見つめながら、瑠璃亜の言葉に真剣に耳を傾ける美海。

 どうしてこの異世界の人々は戦争ばかり起こすのか。仲良く出来ないのか。

 その美海の悩みや苦しみを、瑠璃亜は馬鹿にする事無く正面からしっかりと受け止めた上で、瑠璃亜なりの回答をしっかりと示してくれたのだ。

 自分たちには守らなければならない物がある。その為に不本意だが正当防衛として戦わざるを得ないのだと。


 そしてそんな瑠璃亜の事を、美海はとても信じられる人だと心から思った。

 先程から瑠璃亜は美海の事を必死に守ろうとしてくれていたし、何よりも瑠璃亜は『呪い』と違って、美海の事をとても真剣に見てくれているから。

 

 【み、美海!!魔王カーミラにほだされるな!!その女が先程までそなたに優しくしていたのは、単にそなたの『異能【スキル】』を利用しようと考えているだけに過ぎぬぞ!?だがわらわなら…!!】

 「貴女だって私の事を散々苦しめてきたでしょう?そんな貴女が今更そんな事を言ったって、もう私の心には届かないよ。」

 【ぐっ…!?そ、それは…!!】


 今更『呪い』に対して復讐しようなどとは思わないが、他ならぬ『呪い』もまたベルドの命令で美海に散々生き地獄を味合わせたという事を、美海は忘れてはいなかった。

 そんな奴が今になって美海に対して甘い言葉を垂れ流そうが、そりゃあ美海に届くはずが無いのは当たり前の話だ。

 そんな当たり前の事さえも理解出来ない程、今の『呪い』は追い込まれ、テンパってしまっているのである。


 「それに、仮に魔王さんが本当に私の事を利用しようと考えていたとしても…この人は本気で私の事を心配してくれたから。本気で私の事を支えてくれたから。」

 【美海ぁっ!!】

 「そんな人が私を使って、何か悪い事を企もうとしているなんて…そんなの私にはとても思えないよ。」


 少なくとも瑠璃亜ならベルドと違い、自分の歌を他国への侵略目的で利用しようなどとは考えないだろうと…美海はそれを確信しているのだ。

 そんな美海を驚愕の表情で睨みつける『呪い』に対し、美海が決意に満ちた表情で『異能【スキル】』を発動したのだった。

 まるで泣き止まない子供を子守歌で寝かしつけるかのような、静かで優しい送別の歌を。

 

 【ま、まさか美海…!!あの『異能【スキル】』を使うつもりなのか!?】

 「せめて貴女だけは私自身の手で、安らかな眠りを。」

 【や、止めろ!!止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!】

 「『鎮魂の浄化曲』…【レクイエム】。」


 祈るように両手を組んだ美海が歌い始めた途端、『呪い』の身体が瞬く間に漆黒の塵と化して崩れていく。


 【あ…あああ…あああああ…!!】


 痛みや苦しみは感じない。『呪い』は美海の歌に導かれ、まるで眠るように天へと導かれていく。

 『鎮魂の浄化曲【レクイエム】』…この世に囚われた亡霊たちを浄化し安息の眠りへといざなうという、まさにアンデッド殺しとも言うべき『異能【スキル】』だ。

 仮に近隣の街や村がゾンビの群れに襲われたとしても、美海を歌わせつつゾンビの群れに突撃でもさせれば、あっという間にゾンビの群れが一網打尽にされてしまう事だろう。

 ただしアンデッドなら無条件で効果があるという訳では無く、効果を発揮させるには幾つか条件があり、


 『美海に浄化される事を心から望んでいる』

 『美海の浄化が通じる程の、一定以下の力の持ち主でしかない雑魚である』

 『一定以上の力の持ち主であったとしても、美海の浄化に耐えられない程までに衰弱している』


 これらのいずれかの条件を1つでも満たした場合にのみ、美海の『鎮魂の浄化曲【レクイエム】』は効力を発揮するのである。

 真・魔王カーミラが呼び出したアリスたちの影に対して、美海がこの『異能【スキル】』を使わなかったのは、彼らが厳密にはアンデッドではなく『偽物』に過ぎず、効果を発揮する対象では無い事を美海が分かっていたからだ。


 だがしかし…ベルドの部下の宮廷魔術師によって生み出された『呪い』は、厳密にはアンデッドとは言い切れないものの、その本質はアンデッドに極めて近い存在だ。

 そして『呪い』は真・魔王カーミラに取り込まれた事によって、極度に衰弱している。

 つまりは、美海の『鎮魂の浄化曲【レクイエム】』が通用する対象だと言う事だ。


 【わ、わらわの身体が消えていく…!!折角解放されたばかりだというのに…!!こんな…こんな…っ!!】


 『呪い』の身体が漆黒の塵と化して、美海の歌で浄化されて消えようとしている。

 だが同時に鈴音の身体もまた美海の歌の影響を受け、緑色の粒子と化して消滅しようとしていた。

 それを見せつけられた美海が、慌てて歌うのを止めてしまったのだが。


 『構わぬ歌姫よ。そのまま続けてくれ。』


 それでも鈴音は穏やかな笑顔で、美海に歌う事を促した。

 美海の歌によって、自分がこの異世界から消滅してしまうという事を理解した上で。


 「だ、だけど、そうしたら貴女もまた…!!」

 『ドノヴァンのせいで愛する夫と離れ離れになってしまったからな。今ここで成仏した所で、私の魂が元いた世界に戻れるのかどうかは、私にも分からぬが…。』


 達観したような穏やかな笑顔で、鈴音はこの異世界の美しい青空を見つめながら、美海に静かに語ったのだった。


 『この異世界において死人たる私は、最早不要の存在だ。もう、そなたらの時代なのだよ。』

 「…侍さん…。」

 『どうかそなたの鎮魂歌で私を送り出してくれ。そこで無様に這いつくばっている哀れな女も、おまけでな。』


 鈴音に促された美海は迷いながらも、やがて鈴音に対して力強く頷き、再び『鎮魂の浄化曲【レクイエム】』を発動する。

 『呪い』の身体が漆黒の塵と化して崩れていき、鈴音もまた緑色の粒子と化して天へと導かれようとしている。

 そうなる前に、せめて愛する子孫である太一郎の姿をその目に焼き付けておこうと、鈴音がとても穏やかな笑顔で太一郎に向き直った。

 サーシャの肩を優しく抱き寄せながら、太一郎はじっ…鈴音を見据える。


 「そういえば貴女は先程、僕の事を子孫だと言ってましたけど、貴女は…。」

 『渡辺鈴音だ。系譜の上では、そなたの直系の先祖という事になるな。』

 「鈴音さん。貴女が僕を励まし見守ってくれていたからこそ、僕はこうして戦いに勝利し、無事に生きてサーシャの下に戻る事が出来ました。」

 『私は何もしておらぬよ。そなたが神也と魔王を打ち破ったのは、他ならぬそなた自身の力量による物だ。しかし正直言って安心したぞ。夢幻一刀流は心太と真美を通じ、無事に後世へと受け継がれていたのだな。』


 自分の死後、夢幻一刀流が廃れてはいないかと正直心配していた鈴音だったのだが、その心配は杞憂だったようだ。

 何しろ自分の子孫である太一郎が、朱雀天翔破まで繰り出したのを目の当たりにさせられたのだから。

 この異世界においても夢幻一刀流は太一郎を通じて、しっかりと後世へと受け継がれていく事だろう。

 向こうの世界では事故死した太一郎が唯一の正当伝承者だったのだが、それでも沙也加の娘が必ず夢幻一刀流を継いでくれるはずだ。


 それに神也も真・魔王カーミラも、太一郎によって倒された。

 だから今の鈴音に思い残す事は、もう何も無い。

 自らの消滅を心から受け入れた鈴音の身体が、美海の歌に導かれて急激に緑色の粒子と化していき、とうとう残されたのは頭部だけになってしまった。 


 『おっと、そろそろ別れの時間か。出来ればその娘との間に出来た、そなたの愛しい子供の顔だけは、この目で見ておきたかった所なのだがな。』

 「ちょ…!?」

 『ふふふっ、ではさらばだ。その娘と共に末永く幸せにな?太一郎。』


 それだけ告げた鈴音が太一郎に穏やかな笑顔を見せながら、最後に残った頭部も緑色の粒子と化して消滅してしまったのだった。


 【み…美海…考え直せ…!!そなたの素晴らしい力は…こんな下らない事の為に…活用されるべきではないのだ…!!】


 そして鈴音と同じように、『呪い』もまた美海の歌に導かれ、残されたのは頭部だけになってしまう。

 なおも美海に説得を試みる『呪い』ではあったが、それでも美海の心は動かない。

 

 まるで子守歌でも聴かされた子供のように、『呪い』は安らかに天へと召されていく。

 両手を組んで『呪い』をしっかりと見据えながら、優しい鎮魂歌を『呪い』へと届ける。


 【そ、そなたが…わらわを取り込めば…この異世界の…女帝になる事も可能…そ、それこそ女神として…君臨する事さえも…。】


 なおも歌うのを止めない美海の姿は、そんな物には興味が無いと『呪い』に告げているかのようだった。

 そして。


 【な…何故だ…後悔しても…遅いぞ…み…う…な…。】


 それだけ言い残し、最後に残った頭部も漆黒の塵と化して消滅してしまい、『呪い』は安らかに天へと召されていく。

 この異世界全土の命運を賭けた壮絶な戦いは、美海の手によって今ようやく終わりを迎えたのだ。


 「…さようなら。貴女の事は一生忘れないよ。」


 そのまま静かに目を閉じた美海は、両手を組んだまま『呪い』の冥福を静かに祈る。

 そんな美海の肩を、瑠璃亜がとても穏やかな笑顔で優しく抱き寄せる。

 自分に優しくしてくれる瑠璃亜に対して温もりを求めるかのように、美海が瑠璃亜の身体に静かにその身を預けたのだった。

完結まで残り2話。

次回は大団円です。

美海に『呪い』が浄化され、無事に全ての戦いが終わったのですが、美海の処遇をどうするのかという問題が残っており…。

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