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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
最終章:光溢れる未来へ
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第103話:希望の夜想曲

サザーランド王国騎士団の後方支援部隊の下に、無事に美海を送り届けたルミアたち。

そこでエストファーネは、間接的な父の仇である美海に対して、どう接するのか…。

そしてラインハルトと太一郎の戦いの行方は…?

 ラインハルトに守られながら、ルミアたちは美海を連れて、遂にサザーランド王国騎士団の後方支援部隊に辿り着いたのだった。

 ペガサスと飛竜を兵士たちに任せ、ルミアが美海を優しくペガサスから降ろす。

 そこへ恐らく美海がベルドから虐待を受けているだろうからと、あらかじめラインハルトから依頼を受けていたエストファーネが美海に治療措置を施す為に、慌てて美海の下に駆け寄ってきたのだが。


 「エストファーネ王女!!彼女がくだんの歌姫です!!見ての通り相当衰弱しており、全身に鞭で打たれたような跡が…っ!?」


 そんな美海を、エストファーネがぎゅっと力強く抱き締めたのだった。

 いきなりのエストファーネの行動に、ルミアたちは驚きと戸惑いを隠せない。


 「え?え?え?」


 美海も突然エストファーネに抱き締められた事で、一体全体何が何だか全然意味が分からないといった表情になっていたのだが。


 「御免なさい…!!ラインハルト陛下からは貴女も被害者だからって念を押されてはいたけど…私、心のどこかで貴女の事を恨んでいました…!!」


 そんな美海にエストファーネは、美海を抱き締めながら涙ながらに謝罪したのだった。

 ベルドに強要されていたとはいえ、美海は『絶望の輪舞曲【デストラクション】』の『異能【スキル】』によって、間接的に父や沢山の兵士たちを死に追いやった人物だ。

 だからこそエストファーネは、ラインハルトに歌姫を助けてやって欲しいと懇願されながらも、心のどこかで美海の事を恨んでいたのだ。


 だからと言って、それでエストファーネを責めるのは筋違いだ。

 美海の事情はどうあれ、美海のせいでエストファーネは大切な父を失った…その事実だけはどう足掻あがこうが覆しようが無いのだから。

 父親が死んだ元凶が目の前に突然現れたのだから、それで恨むなと言う方が無理があるという物だろう。


 だが美海のこの全身の鞭の跡、栄養失調で衰弱し切った身体を見せつけられたエストファーネは、己の器量の小ささを即座に恥じ、心のどこかで美海を恨んでいた事を正直に明かして謝罪したのである。

 こんな無様な姿になってまで、ベルドに絶望の歌を歌う事を強要されていた美海を、どうして恨む事など出来ようか。

 歌姫もまた、被害者…ラインハルトの言葉が今になって、エストファーネの脳裏に響き渡ったのだった。


 「エストファーネ王女、お気持ちはお察し致しますが、今は取り敢えず彼女に回復魔法を…!!」


 そんなエストファーネにルミアがとても心配そうな表情で促したのだが、エストファーネは美海から身体を離して、とても真剣な表情で首を振ったのだった。


 「いいえ、その前に彼女に充分な栄養を補給する必要があります!!見た所かなり衰弱していますから、このまま回復魔法を掛けて傷を癒したとしても、逆に彼女の身体に負荷をかけるだけです!!」


 回復魔法というのは対象の治癒能力を活性化させる事で傷を癒す代物なのだが、極度の空腹などで衰弱してしまっていると、逆に魔力の奔流に身体が耐えられないなんて事もあるのだ。

 極めて稀なケースであり、余程の事が無い限りはそうそう起こらない事なのだが…今の美海の状態こそが、まさにその『余程の事』なのである。

 食事は一日一食、僅かな量のドッグフードしか与えられておらず、もう見ていられない程までにボロボロに痩せこけてしまっているのだから。

 今も盛大に腹を鳴らしている美海に、まずは満足な食事を与えてやらなければならない。


 「分かりました、では私の戦闘食レーションで良ければ…。」


 そんな美海にルミアが胸元のポケットから取り出したのは、戦闘時の簡易食糧として魔王軍が開発した固形物だった。

 バリバリと包装を丁寧に破り、両手で優しく美海の右手に握らせる。

 

 「御免なさいね。はっきり言って不味いですが、それでも栄養価は保証しますから。さあ、どうぞ。」


 ルミアに促されるまま、美海が手渡された戦闘食を一口含み、ボリボリと良く噛んでからゴクリと飲み込んだ途端。


 「…うっ…ううううっ…。」


 突然美海が目から大粒の涙を流して、泣き出してしまったのだった。

 戦闘中に食べる事を想定されている食べ物なだけに、あらゆる環境下や過酷な運用下でも長期保存出来るようにと、しかも手軽に食べられる固形物として開発した結果、保存用の薬草の匂いがきつくて不味い代物になってしまったのだ。

 そんな美海の姿にルミアが、思わずオロオロしてしまったのだが。 


 「あああああ、やっぱり甘ったるくて不味いですよね!?瑠璃亜様が美味しく食べられるように改良させるとは仰っていましたが…!!」

 「…そうじゃないの…!!美味しい…!!美味しいの…!!」


 目から大粒の涙を流しながら、美海はルミアの言葉を即座に否定したのだった。

 確かに味に関しては、決して褒められた物では無い。

 前述の保存用の薬草の匂いもそうだが、戦闘中でも効率よく迅速に栄養価を補給出来るようにする為に、吸収の良い果糖やブドウ糖が多めに含まれているせいで、かなり甘ったるい代物になってしまっている。

 

 だがそれでも美海は、この戦闘食を作った魔族の、食べる人に対しての『想い』という物を存分に感じ取ったのである。

 これを食べた兵士たちが、無事に戦場から元気に帰って来れますように…この戦闘食に込められた温かい感情が、どれだけ不味かろうとも美海には充分に伝わってくる。

 それに栄養価が高いのは事実のようで、一口食べただけで衰弱した美海の身体に、幾分か力が戻ってきたように感じられた。 

 あっという間に美海は、ルミアに渡された戦闘食をボリボリと全て平らげてしまったのだった。


 「報告致します!!ギャレット王国騎士団は全戦力の半数が壊滅!!ですがラインハルト陛下と『閃光の救世主』が、ベルド殿と真野神也の前に押されています!!歌姫に取り憑いていた『呪い』と交戦するシリウス殿とレイナ殿も、苦戦している模様!!」


 だがその直後、駆けつけてきたサザーランド王国騎士団の兵士が、エストファーネに敬礼をして報告する。

 戦況自体は圧倒的に三国連合が有利…だがそれでも何が起こるか分からないのが戦場という場所なのだ。

 ここで太一郎とラインハルトのエース2人が敗北し、美海までベルドに奪還されるような事態になれば、戦況を一気に引っくり返される事にもなりかねない。それに『呪い』に押されているというシリウスとレイナも気がかりだ。


 「ねえ、貴女が所持している『異能【スキル】』は絶望の歌だけなのですか!?皆を助けられるような『異能【スキル】』を、他に何か持っていらっしゃらないのですか!?」


 それでもエストファーネは美海の両手を優しく両手で掴み、すがるような瞳で美海に懇願したのだった。

 これまでのギャレット王国騎士団による侵攻作戦は、確かに美海の存在自体が他国にとっての最大の脅威となっていた。

 だがそれでも美海を保護した今なら。美海を味方にする事が出来た今なら。

 美海の歌で、苦戦を強いられている太一郎たちを援護する事も可能なのではないか。


 「…私は、あのベルドっていう人にも言ったけど…私の歌を戦争の為に利用するだなんて、そんな事は今でも到底許す事は出来ない。」


 そんなエストファーネから視線を外してうつむいて、沈痛な表情を見せる美海。

 実はエストファーネの言う通り、美海は『絶望の輪舞曲【デストラクション】』以外にも、今のこの状況を切り抜けられる『異能【スキル】』を確かに所持している。

 それは、これまで美海が歌ってきた、ベルドに歌う事を強要され続けてきた絶望の歌とは対極の『希望の歌』。

 だが美海が今この場でそれを歌うという事は、美海はギャレット王国騎士団の兵士たちや、ベルドや神也、【呪い】を傷付ける事に加担する事を意味するのだ。そんな事は美海には到底耐えられなかった。


 美海はエストファーネたちに、自らの想いを切実に伝えた。

 どうして皆、仲良くする事が出来ないのかと。

 どうしてこの異世界の人々は、こうやって平気で戦争なんか起こすのかと。

 こんなに沢山の人が傷ついて、死んで、それでもなお戦いを止めないのは何故なのかと。


 優しい両親の下ですこやかに成長し、日本という紛争とは無縁の平和な国で過ごし、穏やかで心優しい少女に育ったせいなのか、美海にはそれがどうしても理解出来なかった。

 だからこそ自分の『異能【スキル】』で間接的に人を傷付ける事になるのは、例え自分を虐待したベルドや『呪い』が相手だったとしても、どうしても抵抗があるのだが。


 「だけど、それでも今は守りたい…!!私の事を必死に助けようとしてくれている人たちを…!!」


 だが、それでも。

 何の見返りも求める事無く自分の事を命懸けで助けてくれた、そして今もベルドを食い止めてくれているラインハルトが、ベルドに追い詰められているというのであれば。

 これはベルドや『呪い』への復讐の為ではない。美海は太一郎やイリヤとは違う。復讐の転生者になる事は出来ないのだから。

 ベルドや『呪い』を殺す為ではなく、ただラインハルトたちを守る為に。

 エストファーネの両手を優しく振りほどいた美海が、今もラインハルトとベルドが戦っている平原の方角を振り向いた。

 そして両目を閉じて深呼吸をして、あの日の出来事を鮮明に思い出す。


 『皆、今日は応援してくれて本当にありがとう!!それじゃあラストの曲行きます!!先日完成させたばかりの新曲です!!』


 美海が事故死した、あの日の夜のライブで超満員の観客の大声援に包まれながら歌った、『ワルキューレ』の皆と一緒に考えて作った新曲。

 あの時に歌った新曲の曲名が、この『異能【スキル】』の名前と同じだというのは…これは何という運命の皮肉なのだろうか。


 『この曲を聴いてくれた人が、希望を胸に抱いてくれるようにと…そんな想いを込めて皆で作りました!!この新曲の名前は…!!』


 美海の周囲に放たれた、凄まじい緑色の光。

 それは決して眩し過ぎる物では無く、むしろ美海の優しさを象徴したかのような、とても安らぎに満ちた光。

 そしてボロボロだった美海の服が、ライブで歌う時の可憐な衣装へと変貌していき、美海の背中から光の翼が放たれる。

 さらに美海の背後に現れたのは、それぞれの楽器を手にした4人の『ワルキューレ』のメンバーたちの幻。

 皆が驚きの表情を見せる最中、決意に満ちた表情で、美海は自身に秘められたもう1つの『異能【スキル】』を発動したのだった。


 「…『希望の夜想曲』…!!【ワルキューレ】!!」


 次の瞬間、美海が奏でたのは、これまでの絶望の歌とは対照的な、希望の歌。

 美海の背後にいる『ワルキューレ』のメンバーたちの幻影が奏でる曲をバックに、皆に希望を与える為の歌が戦場に届けられる。

 まずは美海のそばにいたルミアとイリヤ、セレーネ、ケイトが緑色の光に包まれ、その光が天空へと飛翔していく。


 ルミアとイリヤは願った。瑠璃亜やエキドナ、魔王軍を救いたいと。

 セレーネは願った。ラインハルトやサザーランド王国騎士団を救いたいと。

 ケイトは願った。太一郎やクレア、サーシャ、シリウス、レイナ…そしてフォルトニカ王国騎士団を救いたいと。 

 その彼女たちの想いが、願いが、緑色の光と化して上空へと飛翔し、やがて天高くに飛翔した4人の想いの光が空中で爆裂し、温かな流星雨となって戦場に降り注いでいく。


 『希望の夜想曲【ワルキューレ】』…これまで美海がベルドに発動を強要されていた『絶望の輪舞曲【デストラクション】』とは全く真逆の『異能【スキル】』であり、美海が望む者たちに強力なバフを与えるという代物だ。

 しかも『絶望の輪舞曲【デストラクション】』と違って伝染系の『異能【スキル】』であり、美海からのバフを受けた者が助けたいと願った者たちへ、さらにその者たちが助けたいと願った者たちへ、さらにその先へと、爆発的な勢いで次々とバフが付与されていくのだ。

 そう…『絶望の輪舞曲【デストラクション】』のように美海の視界に対象が映っている必要が無く、どれだけ距離が離れていようとも、美海が望む全ての者にバフを与える事が出来るのである。


 そしてこの『異能【スキル】』は美海の心が希望で満たされれば満たされる程、その威力を爆発的に増大させる事が出来る。

 その性質上、美海の心を絶望で満たさなければならない『絶望の輪舞曲【デストラクション】』とは、事実上併用が不可能な代物なのだが。


 「美海め!!まさか『希望の夜想曲【ワルキューレ】』を発動したのか!?」


 ラインハルトを吹っ飛ばしたベルドの頭の中に、美海の歌が直接響き渡ったのだった。

 戦場に降り注ぐ光の流星雨…ベルドには全く何の影響も及ぼさない代物なのだが、ラインハルトには逆に強烈な加護を与えてくる。 

 威風堂々と立ち上がり、自身の周囲にファンネルを展開し、真っすぐにベルドを見据えるラインハルト。


 「成程な。これまでの絶望の歌とは対照的に、彼女自身の『希望』がトリガーとなって発動する『異能【スキル】』か。」

 「んなっ!?」


 ラインハルトの頭の中にも直接響いてくる。美海の希望の歌が。美海の想いが。

 たったそれだけでラインハルトは、自分が美海に何をされたのか、美海が今現在発動している『異能【スキル】』の本質を、一瞬で見抜いてしまったのだ。

 そのラインハルトのあまりの聡明さに、驚きを隠せないベルドだったのだが。


 「ベルド殿。私には至極疑問でしか無いのだが…何故貴方は彼女に絶望の歌ではなく、希望の歌を歌わせなかったのだ?」

 「何ぃ!?」

 「少なくとも私なら何の迷いも無く、そうさせたがね。」


 美海の『絶望の輪舞曲【デストラクション】』の『異能【スキル】』は、美海の視界に映る者に対して敵味方関係無く全員に影響を及ぼしてしまうだけでなく、その真の力を発揮する為には美海自身を深い絶望に堕とさなければならない。

 確かに凶悪ではあるが、下手をすれば自滅してしまいかねない、使いどころの難しい『異能【スキル】』でもあるのだ。


 だが今、美海が発動している『希望の夜想曲【ワルキューレ】』の『異能【スキル】』なら、わざわざそんな面倒な事を考えなくても美海を丁重に扱った上で、戦闘中に適当に歌わせれば済むだけの話だ。

 まさにたったそれだけで、お手軽に無敵の軍隊の出来上がりだろう。

 では何故、ベルドはそれをしなかったのか。それは…。 


 「俺とて最初は美海に『希望の夜想曲【ワルキューレ】』を使わせようとしたわ!!だが美海は俺にこう言ったのだ!!『私の歌を戦争に利用するなんて絶対に許せない』となぁ!!」

 「…成程な。」

 「だから俺は美海に思い知らせてやったのだぁ!!俺に逆らうという事が何を意味するのかという事をなぁっ!!」


 美海が自分に逆らったから、ベルドは美海に絶望を与えた。

 美海が戦争の為に、自分の歌を利用される事を嫌がったから。

 たったそれだけの理由で…そんな下らない事の為に…ベルドは美海に絶望を与え、生き地獄を味合わせ続けたとでも言うのか。


 「…ベルド殿。やはり貴方は、今ここで絶対に討ち取らなければならない人だ。」

 

 決意に満ちた表情で、ラインハルトは真っすぐにベルドを見据えたのだった。

 吐き気をもよおす邪悪、小悪党という侮蔑の言葉があるが、今ラインハルトの目の前にいるベルドこそが、まさにそれだ。

 暗黒流鳳凰剣、そして神剣バルムンクという強大な力を手にしてしまった事…そして国王という絶対的な地位を得てしまった事で、ベルドの暴走を誰も止められなくなってしまったとでも言うのか。

 いずれにしてもラインハルトは、今ここでベルドを絶対に見逃す訳にはいかなくなってしまった。

 ラインハルトにそうさせてしまったのは、他でもない…ベルド自身だ。 


 「歌姫の無念を晴らす為にも、貴方には今ここで死んで貰うぞ!!ベルド殿!!」

 「やれる物ならやってみるがいいわ!!『希望の夜想曲【ワルキューレ】』の加護を受けた位でいい気になるなよ!!若造がぁっ!!」


 その一方で太一郎と神也の下にも降り注いだ、太一郎の無事を願うケイトが放った流星雨。

 神也には何の影響も及ぼさないが、太一郎には強力な加護が与えられる。

 それは『潜在能力解放【トランザム】』の『異能【スキル】』のような暴虐の力ではない。むしろとても優しくて温かくて安心するような、美海の慈愛の心が込められた力。

 

 「んなっ!?歌だと!?俺の頭の中に直接響いてきやがる!!何なんだよこれ!?」


 太一郎が繰り出した朱雀天翔破を容易く破ってみせた神也だったが、突然の出来事に困惑の表情を隠せない。

 頭の中に美海の歌が直接響いてくる。耳を塞いでも鮮明に聞こえてくる。

 そしてそれは太一郎も同じであり、突然聞こえてきた美海の歌に戸惑いを隠せずにいたのだが。


 「ガールズバンド!?この異世界で!?」

 『気を散らすでないぞ!!太一郎!!』

 「なっ…!?」


 そこへ神也に吹っ飛ばされた太一郎の背後から聞こえてきた、どこか懐かしさを感じさせられる激励の声。

 

 『そなたは仲間たちを信じ、目の前の神也を討ち取る事のみに専念するのだ!!』

 「貴女は!?」

 『今この場で神也を討ち取り、この異世界に光をもたらす事が出来る者は、ただ1人…そなただけなのだ!!太一郎!!』


 慌てて背後を振り向いた太一郎の視線の先にいたのは、全く面識の無い人物…だがそれでもどこか懐かしさを感じさせられる、緑色の光に包まれた美しい女性が、そこにいた。

 その突然現れた、この異世界に存在するはずのない、とても懐かしい女性の姿に、先程までとてもつまらなさそうに太一郎と戦っていた神也が、突然狂喜乱舞の笑顔を見せたのだった。


 「…鈴音たん…!?」


 そう…太一郎をとても優しい眼差しで激励する鈴音の姿が、そこにいたのである。


 「うほおおおおおおおおおおおおおおおおお!!鈴音たあああああああああああああああああああああああああん(笑)!!」


 神也は、一瞬で理解したのだった。

 何故太一郎が、夢幻一刀流を扱えるのかを。

 先程から太一郎から、どこか懐かしい気配を感じたのは何故なのかと言う事を。


 「てめぇまさか、鈴音たんの子孫かよぉっ!!」


 狂喜乱舞の笑顔で、神也が神刀アマツカゼで太一郎に無数の斬撃を浴びせる。

 それを鳳凰丸で立て続けに防ぐ太一郎。2人の周囲に無数の『閃光』が放たれる。


 「面白ぇ!!燃えて来たぜ!!まさか鈴音たんの子孫が世代を超えて、俺に牙を向きやがるとはな!!断然楽しくなってきたじゃねえかよ(笑)!!」

 「君の頭の中には、それしか無いのかぁっ!?」

 「それだけだよぉ!?あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃもえmヴぉjb0mb:llれmglんbpふぃんv;のpNmふじこ(笑)!!」


 互いに刀をぶつけ合い、鍔迫り合いの状態になる太一郎と神也。

 そんな太一郎の後ろ姿を、とても優しい眼差しで見守る鈴音。


 『歌姫の希望の歌などに頼らずとも、そなたが神也如きに負けるとは、私にはとても思えぬのだがな。』

 「当たり前だ!!こんな変態野郎に僕が負けてたまるかぁっ!!」


 あれだけ追い詰められていたラインハルトと太一郎が、一転して攻勢に出る。

 そんな2人に負けじと、シリウスとレイナも美海の希望の歌に背中を押され、『呪い』に対して反撃に転じたのだった。

 

 【ば、馬鹿な…!!美海の心に希望が宿ったとでも言うのか!?あれだけ絶望の底に堕ちていた美海が!!】

 「事情はよく分からんが、私もレイナもこの機を逃すつもりは無いぞ!!」

 【ほざくな若造共がぁっ!!そなたら如き、このわらわが返り討ちにしてくれるわぁっ!!】


 そして美海の希望の歌は、瑠璃亜の暗黒魔法を浄化する為に瑠璃亜とむつみ合うクレアの頭の中にも、鮮明に響き渡ってきた。

 クレアの身体に力があふれてくる。瑠璃亜の暗黒魔法を浄化する為に消費した膨大な魔力が、物凄い勢いで回復していく。


 「こ…これは…!?」 

 「…んっ…。」

 「…瑠璃亜!?」

 「…クレア…。」


 うっすらと目を開け、クレアに穏やかな笑顔を見せる瑠璃亜。

 美海の希望の歌は、瑠璃亜にも確かに届けられた。

 瑠璃亜の無事を願うルミアとイリヤの祈りが流星雨となって、瑠璃亜に優しく降り注いでいる。

 あれだけクレアが浄化するのに手こずっていたのを嘲笑あざわらうかのように、瑠璃亜の身体を蝕んでいた暗黒魔法が、あっという間に浄化されてしまったのだった。

 そして、今の状況を即座に理解した瑠璃亜が。


 「…ぬふっ(笑)。」

 「ちょ、ちょっと瑠璃亜、何を…アッー(泣)!!」


 この後、クレアと滅茶苦茶レズセックスした。

次回、ラインハルトVSベルド、太一郎VS神也。両者の死闘が遂に決着です。

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