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【完結】復讐の転生者  作者: ルーファス
最終章:光溢れる未来へ
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第102話:それぞれの死闘

何とかコロナから復帰しましたわ。


太一郎VS神也、ラインハルトVSベルド、シリウス&レイナVS『呪い』

この壮絶な戦いの行く末とは…。

 シルフィーゼに遠くから見守られながら、太一郎は神也と死闘を繰り広げていた。

 神也の神刀アマツカゼによる強力な斬撃を、何とか辛うじて鳳凰丸で受け止め続ける太一郎。

 だが神也の圧倒的な実力、そして神刀アマツカゼの驚異的な威力の前に、太一郎は苦戦を強いられていた。

 さらにどういう理由でかは知らないが、何故か神也は太一郎が繰り出す夢幻一刀流の技の数々を、ことごとく知り尽くしているようだ。

 太一郎が繰り出す『閃光』の如き太刀筋を、爆笑しながら易々と受け続ける神也。

 

 「俺って天才だからさ!!どんな剣術も簡単に真似出来ちまうのよ!!例えばこんな風にさぁっ!!」


 そんな中で太一郎から間合いを離した神也が、突然神刀アマツカゼから無数の衝撃波を放ったのだった。

 暗黒魔法がブレンドされた漆黒の衝撃波…それを目の当たりにした太一郎が驚愕の表情を見せる。


 「何!?漆黒の維綱いずなだと!?」

 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ(笑)!!」


 何とか避け続ける太一郎だったが、それでも神也はアヘアヘしながら次から次へと維綱を乱発してくる。

 慌てて太一郎も維綱を連発して相殺するが、神也が維綱を使ってきた事に流石に驚きを隠せずにいるようだ。


 「一馬も使っていた『模倣【ラーニング】』とかいう『異能【スキル】』か!?」

 「『模倣【ラーニング】』ぅ!?ぷぷぷぷぷ~~~~wwwこんな低レベルな技、そんなもんに頼らんでも簡単に真似出来るわ(笑)!!」

 「低レベルな技か…僕は維綱を習得するのに1年掛かったんだけどな。少しばかりショックなんだが。」


 まあ1年と言っても、中学生活を送りながらの片手間での1年だが。

 

 「さらに俺の手に掛かれば、こんな風にアレンジ出来ちゃったりして!!キュイィィィィィィィィィィン!!断空維綱ぁっ!!」

 「なっ…!?」


 続けて神也が太一郎に放ったのは、まるで綿菓子みたいに神刀アマツカゼに無数の維綱をぐるぐると練り込ませて作り出した、巨大な維綱。

 それが物凄い威力となって、情け容赦なく太一郎に襲い掛かる。

 維綱では相殺出来ない程の威力。鳳凰丸での防御も不可能。回避するしかない。

 それを即座に導き出した太一郎が、慌てて横っ飛びで断空維綱を避けるものの、その衝撃の余波までは避け切れずに吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられてしまう。


 「くそっ…!!」


 地面をゴロゴロ、ゴロゴロと転がり、何とか衝撃を殺して立ち上がる太一郎。

 太一郎が先程立っていた場所には、断空維綱でえぐり取られた事で地面に亀裂が出来てしまっていた。

 何という凄まじい威力なのか。まともに食らえば太一郎とて決して無事では済まないだろう。

 それでも太一郎は一歩も引かない。鳳凰丸を鞘に納め、何の迷いも無い力強い瞳で、真っすぐに神也を見据えている。

 だがそれでも神也は太一郎と戦っている内に、ある1つの違和感を感じていたのだった。


 「て言うかよぉ…!!お前、さっきから一体何なんだ!?やる気あんのかよ!?おい!?」

 

 同じ夢幻一刀流の使い手だった鈴音と何度か剣を交えた経験があるだけに、神也は太一郎が繰り出す夢幻一刀流の技の数々に、強い違和感を覚えたのだ。

 鈴音が『閃光の魔女』と呼ばれていたのは、太一郎同様の『閃光』の如き太刀筋は勿論だが、その剣閃から放たれる凄まじい『殺気』、対峙しただけで相手を威圧してしまう程の凄まじい『剣気』を持っていたからに他ならない。


 ところが今、神也の目の前にいる太一郎は一体何なのか。

 神也の見立てでは剣の腕だけなら鈴音と互角…いや、若干劣る程度といった所か。

 だが太一郎の太刀筋からは鈴音のような『殺気』も『剣気』も、先程から微塵も感じられないのだ。

 そりゃそうだろう。そもそも太一郎は元警察官だ。本来は『守る』事が仕事なのであって、『殺す』事が仕事では無いのだ。殺気も剣気も微塵も感じられなくて当たり前だ。

 それに太一郎の夢幻一刀流は長い年月の末に、時代の流れに合わせて『殺人剣』から『活人剣』へと…人を活かし守る為の剣へと変化を遂げてきたのだから。


 「何でお前が夢幻一刀流を使えるのかは知らねえけどよ!!お前の夢幻一刀流は所詮はハリボテの紛い物だわ!!鈴音たんには遠く及ばねえよ!!」


 神也はこの異世界に転生させられる前は、常に殺すか殺されるかの過酷な戦場に身を置き続けていた上に、そもそも警察などという組織自体が存在していなかったのだ。

 殺気も剣気も持たない太一郎が本気を出していないと神也が誤解してしまっても、ある意味では仕方が無いのかもしれないが。 


 「その鈴音たんというのが一体誰の事を言っているのか、僕にはよく分からないんだけどな。」

 「お前の剣からはよぉ!!さっきから殺気が…さっきから殺気…っ!?ぶ、ぶはははははは!!ちょ、ちょっと待って!!ぶはははははははは!!さっきから殺気って!!お前俺に何しょーもない事を言わせてんだよ!?ぎゃははははははははは(笑)!!」


 自身が無意識の内に繰り出したしょーもないダジャレに盛大に爆笑しながら、太一郎を左手で制する神也だったのだが。


 「……。」

 「ひ~!!ひ~!!ひ~(笑)!!」

 「……。」

 「は、腹が痛ぇ!!ちょ、ちょっとタンマ!!マ、マジで待ってて(笑)!!」

 「……。」

 「てめえのそういう所なんだよ!!待てと言われて馬鹿正直に待ってんじゃねえよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ(激怒)!!」


 突然理不尽に怒り出した神也が、怒りの形相で太一郎に斬りかかったのだった。


 そしてラインハルトとベルドもまた、美海が退避したサザーランド王国騎士団の後方支援部隊のすぐ近くの平原において、凄まじい死闘を繰り広げていた。

 ベルドの神剣バルムンクの連撃を、聖杖セイファートで立て続けに受け続けるラインハルトだったが、あまりのベルドの猛攻の前に苦戦を強いられていた。


 ここでラインハルトがベルドに敗北を喫するような事になれば、ベルドの強襲を受けたサザーランド王国騎士団の後方支援部隊は瞬く間に全滅し、美海もベルドに奪還されてしまうだろう。

 そうなれば戦況を一気にひっくり返されてしまうだけでなく、美海が再びベルドによって生き地獄を味合わされる事になりかねないのだ。

 故にラインハルトは敗北はおろか、撤退さえも絶対に許されない。

 今ここでベルドを打ち倒し、この異世界に光を…そして美海に希望をもたらせる事が出来る者は、ただ1人…ラインハルトだけなのだから。


 「飛べ!!ファンネル!!」


 ベルドと鍔迫り合いの状態になりながらも、ラインハルトは6つのファンネルを聖杖セイファートから分離させたのだった。

 そして放たれた6つの小さなファンネルが、一斉にベルドの周囲を回転しながら全方位オールレンジ攻撃を仕掛ける。

 それぞれのファンネルから炎、水、風、地、光、闇属性の攻撃魔法が、一斉にベルドに襲い掛かったのだった。

 それも全く寸分の狂いも無く、至近距離にいるラインハルト自身を決して巻き込まないという、人間離れした正確無比の精度でだ。


 「ええい、小賢しいわぁっ!!」


 一旦ラインハルトから間合いを離したベルドは、まるで背中にも目が付いているのかと言わんばかりに、このオールレンジ攻撃を神剣バルムンクで容易く防いでみせる。

 だが流石のベルドも聖杖セイファートを易々と操るラインハルトの前に、苦戦を強いられているようだ。


 6つのファンネルから別々の魔法を、個別に、同時に、正確無比の精密さで繰り出す。

 そんな事をすれば並の魔術師ならば瞬時に魔力が枯渇してしまうだろうし、それ以前の問題としてあまりに膨大な情報量を処理し切れずに、脳が焼き切れてしまってもおかしくないはずだ。

 それをラインハルトは全く辛そうな表情を見せる事無く、平然とした態度で実行し続けているのだ。伊達に『雷神の魔術師』などと呼ばれているだけの事はある。

 この聖杖セイファートの真の力を最大限に発揮させられる魔術師は、この異世界全土を見渡してもラインハルトを含めて数名しか存在しないだろう。


 だがそれでも、ベルドを倒すにはまだ遠い。

 全方位から攻撃を繰り出してくるなら、こちらも全方位に攻撃すれば済む話なのだ。

 狂喜乱舞の笑顔で、ベルドは神剣バルムンクを横薙ぎに振り払ったのだった。

 次の瞬間、ベルドを中心に生み出された巨大な竜巻が、ファンネルから放たれた魔法攻撃を全て弾き飛ばしてしまう。


 「鳳凰風刃破か!!戻れ!!ファンネル!!」

 「まとめて吹き飛ばしてくれるわぁっ!!うりゃああああああああああああっ!!」


 ベルドが放った竜巻に巻き込まれる寸前、間一髪の所でラインハルトの指示で聖杖セイファートへと装填された6つのファンネル。

 それを勝機と判断したベルドが妖艶な笑顔で竜巻を解除し、神剣バルムンクでラインハルトに斬りかかる。


 「暗黒流鳳凰剣奥義!!」

 「稲妻よ!!雷迅の槍となりて敵を穿うがて!!」

 「鳳凰天翔!!」

 「ブレンサンダー!!」

 

 ラインハルトがカウンターで放った渾身の稲妻を、神剣バルムンクで切り裂きながら無理矢理突き進むベルド。

 並の使い手であれば防ぐ事すら出来ずに、即座に黒焦げになってしまう程の威力だというのに。

 何という圧倒的なベルドの実力、そして神剣バルムンクの威力なのか。

 聖杖セイファートの恩恵で威力が底上げされたブレンサンダーでさえも、ベルドには全く通用しなかった。

 妖艶な笑顔で繰り出されるベルドの一撃が、ラインハルトに迫る。


 「この程度かぁ!?ラインハルトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 「ちいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」


 ベルドの神剣バルムンクの凄まじい一撃を、辛うじて聖杖セイファートで受け止めるラインハルトだったが、あまりの威力に吹っ飛ばされてしまう。


 「くっ…!!」

 「わ~~~~~~~~~~~~~~ははははははははははは!!死ねい!!」

 「ファンネルよ!!我が身を守る障壁と化せ!!」


 そのまま追撃の為に放たれた無数の鳳凰紅蓮刃を、何とか体勢を立て直して自身の周囲にファンネルを展開し、障壁を生み出して防ぐラインハルト。

 だがベルドの圧倒的な力の前に、ラインハルトは完全に押されてしまっていた。


 「『雷神の魔術師』だか何だか知らんが、貴様如き所詮は俺の敵では無いわあっ!!」

 「さて、それはどうかな…!?」

 

 その一方で、フォルトニカ王国城下町のすぐ近くの大平原。

 サーシャの陣頭指揮に導かれ、フォルトニカ王国騎士団と魔王軍がギャレット王国騎士団を追い詰めている最中。

 シリウスとレイナもまた、ルミアによって美海から引き離された『呪い』を相手に、壮絶な死闘を繰り広げていた。


 「光の矢よ!!敵を討て!!」

 【ファファファファファファ…。】


 シリウスが放った無数の光の矢を、『呪い』は全て容易く漆黒の鞭で弾き返してしまう。

 そのシリウスに向けて『呪い』がカウンターで放った漆黒の鞭を、双剣で何とか防ぎ切るレイナ。

 この『呪い』はかつてシリウスが太一郎たちに施した物とは違い、物理攻撃も魔法攻撃も通用する代わりに、『呪い』自身が美海以外の者も傷付ける事が出来るタイプの代物だ。

 だがその戦闘能力はシリウスが施した『呪い』を大きく上回っており、シリウスもレイナも苦戦を強いられていた。

 それはつまりギャレット王国騎士団の宮廷魔術師の実力が、シリウス以上だという事を明確に表していた。


 【その程度の実力でわらわを討とうなどとは、何と笑止な。】

 「何という強大な力なのだ…!!だがそれでも私は全力でシリウス様をお守りする!!」


 決意に満ちた表情で、『呪い』に斬りかかるレイナ。

 例えどれだけ強大な敵が相手だろうと、レイナは決して一歩も引かない。

 愛するシリウスを守る為に。そしてこの戦いが終わった後にシリウスと添い遂げる為に。

 かつて、先代の魔王カーミラに公衆の面前で犯されそうになった時に、身体を張ってまで命懸けで助けてくれたシリウス。

 その恩を返す為にも、レイナはこんな所で死ぬ訳にはいかないのだ。

 レイナの双剣が、少しずつ『呪い』にダメージを蓄積させていく。


 「私とてラインハルト陛下にこの場を任された者として、そう簡単に君にやられる訳には行かないな!!」


 そんなレイナを援護せんと、シリウスが無数の炎の球を『呪い』に浴びせる。

 まるでレイナがどう動くのか最初から分かっているかの如く、『呪い』に近接戦闘を挑むレイナに全く被弾させずに、正確無比に『呪い』だけを狙い撃つ。

 まさに一糸乱れぬ絶妙なコンビネーションを見せるシリウスとレイナだが、それでも『呪い』は余裕の態度を崩さなかった。


 【ファファファファファ…ならばそなたらに絶望を味合わせてやろう。我が秘奥義、とくと味わうがいいわ。】


 レイナが『呪い』から間合いを離した途端、それを事前に打ち合わせしていたかの如く、シリウスの無数の炎が『呪い』に直撃する。

 だが次の瞬間、レイナによって受けた『呪い』のダメージが、何故か回復してしまったのだった。

 驚きを隠せないレイナだったが、シリウスには『呪い』が発動した能力に見覚えがあった。

 間違いない。シリウスも実際にその目で見るのは初めてなのだが。


 「まさかこれは…!!バリアチェンジか!?」

 【ほう、博識だな。流石はフォルトニカの宮廷魔術師よ。いかにもこれは我が秘奥義・バリアチェンジ。敢えて弱点となる属性を自ら作り出す事によって、対極の属性に対しての吸収能力を得られるという代物よ。】

 

 あれだけレイナが一生懸命蓄積してくれた『呪い』へのダメージが、あっという間に無かった事にされてしまった。

 すっかり元気になってしまった『呪い』が、シリウスとレイナに漆黒の鞭で猛攻を仕掛けてくる。


 「シリウス様!!」

 「くそっ!!」


 光属性を弱点にすれば、闇属性の攻撃を吸収出来る。

 風属性を弱点にすれば、地属性の攻撃を吸収出来る。

 そして水属性を弱点にすれば、先程のようにシリウスの炎を吸収してしまえるのだ。

 敢えて自ら弱点を作り出す事になるというリスクはあるので、複数の魔術師がいる戦闘では使い物にならないという問題点はあるが、それでも今この場に魔術師はシリウス1人だけなので問題無い。

 こうやって臨機応変に弱点を切り替える事によって、相手の魔法攻撃を事実上の回復魔法にしてしまえる…これがバリアチェンジの恐ろしい所なのだ。


 「ええい、ギャレット王国騎士団の宮廷魔術師も、とんでもない能力を『呪い』に与えてくれた物だ…!!」

 【ファファファファファ…どうだ絶望したか?】

 「笑わせるな!!この程度で絶望だと!?こんな事で絶望していては、私は太一郎に申し訳が立たんよ!!」


 それでもシリウスもレイナも、一歩も引かない。

 何の迷いも無い力強い瞳で、ただ真っすぐに『呪い』を見据えている。

 バリアチェンジは任意の属性の攻撃を吸収出来るという恐ろしい能力だが、その為には敢えて対極の属性を弱点としなければならないという問題点がある。決して無敵の能力という訳ではないのだ。

 そこにバリアチェンジ攻略の糸口は、必ずあるはず…シリウスは必死に頭をフル回転させて打開策を巡らせていた。


 【ならばそなたらのその強気の表情を、わらわが絶望に染め上げてくれるわぁっ!!死ねぇっ!!】


 そうはさせまいと狂喜乱舞の笑顔で、『呪い』がシリウスとレイナに無数の漆黒の鞭を放ったのだった。

ラインハルトに守られながら、何とかサザーランド王国騎士団の後方支援部隊に辿り着いた美海たち。

出迎えたエストファーネは、間接的な父の仇である美海に対して、果たしてどんな想いで接するのか…。

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