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ひっそり神仙  作者: 渚 康蓬
序章
5/6

5話 GW前日 より

最初に比べれば書くのに慣れました。

今回は会話がほぼありません。







 本日最後の授業が終わり、教室が一気に賑やかになる。


「やっと終わった〜」


 隣の席の翔太がそう言いながら、座席を傾け盛大に伸びをする。


「高校の授業ってめんど過ぎでしょ。1限から6限まで体育にしようぜ」


「どんな案だよ、断固反対だわ」


呆れながら優平が言う。


「ぜってー楽しいって、1回だけでもやらしてくんねーかなー」


 優平も身体を動かすことは好きだが、流石に1日中動いていたくはないし、高校の授業は案外つまらなくない。


「どうせ明日から好きなだけ部活でしょ?」


「まぁ、そうだけどさぁー」


 担任の原川先生が「席つけー」と言いながら教室に入ってくる。皆が席に着いたことを確認してから、先生は明日から始まるゴールデンウィークの過ごし方の注意点を話し始めた。


「えーと、明日からは皆が楽しみゴールデンウィークだけど、本校での生徒としての自覚を〜〜」


 優平は適当に聞きながら5連休の間、何処に出かけようかと考え始める。

 去年までは家族と旅行するGWだったが、今年は旅行予定だった東北で1週間程前に中規模の地震が起こり、中止となってしまった。家族では日帰りの距離で出かけることになり、残りの4日分の予定が空いているのだ。


「〜〜とまぁ、要するに髪染めダメ、ピアスダメ、やるとしてもバレないようにやれよ、犯罪だけはやるな、巻き込まれる、だな!んじゃ解散!」


 (先生がそれでいいのかよ…)と心の中で苦笑いを浮かべながら帰り支度を始める。

 翔太は話が終わるとすぐに「またな!」と言って部活へと向かって行った。「原川サイコー」とはしゃぐ男女のグループを避けながら、それぞれの部室や下駄箱に向かう生徒の流れにのって、そそくさと駐輪場に抜ける。

 再び何処に出かけようかと考えながら、夕日によって鮮やかに照らされた紅の街に自転車を漕ぎ始めた。










 愛華が学校に向かってしばらくしてから、緋奈は二度寝から目を覚ました。未だ夢見心地の気分のなか、だらしないあくびと共に脱衣所に向かう。

 伸びきったTシャツと下着を脱ぎ捨て、風呂場に入る。蛇口を捻り、頭から一気に冷水をかぶると、そのまま俯くようにして動かなくなった。

 しばらくしてから顔を上げ、「やっぱ午睡って大事よねぇ〜」と呟いてからシャワーを止めた。良い匂いのするタオルで体を拭き、脱ぎ捨てた服を着てから髪も乾かさずに再び布団へと向かう。

 ふと、座卓の上に焼きそばが置いてあることに気づく。丁寧にラップをかけられており、側には几帳面そうな字で書かれた書置があった。

 緋奈はそれを手に取り一文字ずつ丁寧に読むと、自然と柔らかな笑みがこぼれた。

 あまりお腹は減ってはいないが、愛華が作ってくれたものでもあり、既にお昼過ぎなので食べることに決めた。電子レンジで温めることはせずに、「冷めててもおいしいわねぇ」と呟きながら焼きそばを口に運んでいく。

 緋奈は愛華に昼は要らないとたびたび伝えているのだが、愛華は中学2年の辺りから毎日必ず、作り置きをしていくようになった。

 緋奈は仕事で留守にするときにあまりろくなもの食べてないと愛華に思われており、それを心配する愛華は家にいる間だけでもきちんとしたものを食べさせようしているのだ。

 実際、緋奈は仕事中は食事すらしていないが、仕事に関わる事の一切を愛華に教えておらず、教えるつもりもない。しつこく聞かれるときもあるが適当に答えていればそのうち諦めてくれる。

 緋奈は食事を済ませ片付けた後、布団に横たわりスマホで連絡とニュースを確認する。最後にGWの予定に目を通してから、南の網戸から入ってくる風を肌で感じながら、本日三度目の眠りについた。











 愛華は学校で友達と分かれてから、真っ直ぐに帰路についた。いつもなら友人達と一緒に一駅離れた隣町で映画や食事、買い物などを楽しむが、今日は緋奈が家にいる日だからだ。 

 ここ最近、緋奈は仕事で出かけていた。緋奈の仕事は不定期で、昔は1ヶ月以上留守にする時もあった。最近はそれ程長い留守にすることはなかったが、久しぶりに3週間程帰って来なかった。

 緋奈が留守にする時は、高校に入るまでは児童養護施設『めいめい広場』という施設で生活させてもらっていた。緋奈の家から近くにあり、学校から真北にある萩家から北東に1km程離れた場所にある。

 立地は田んぼと森に囲まれており、多くの蛍を見ることができるほど綺麗な所で、愛華はとても気に入っている。

 職員は施設長を含めて3人しかいないが、自分を含めた子供達をとても大切に育ててくれている。

 緋奈は施設長と古い付き合いらしく、昔から子供の面倒を見に来てくれており、その際に愛華と出会った。

 当時の愛華は両親を急に亡くしたことから、とても心が不安定だった。夜泣きが頻繁にあり、施設の職員だけで泣き止ませる事ができなかった時は、いつも緋奈が駆けつけてくれたのをうっすらとだが緋奈の匂いと共に覚えている。緋奈は施設の子供達から男女問わずモテモテなのだが、愛華は人一倍緋奈に懐いていたからだ。

 その後、緋奈に引き取られる時は養子縁組などの説明を受けてもよくわからなかったが、緋奈が自分の親になってくれるということを聞いた時は飛び跳ねて喜んだ。

 一緒に暮らし始めてからは緋奈に褒めて貰いたくて、色んな事を頑張った。当時はあまり上手に出来なかった家事や料理のお手伝い、施設のみんなも通う小中学校でのテストから、運動会のかけっこの全てを緋奈はしっかりと見てくれて、そして褒めてくれた。今なおそれは変わらず、高校での勉強も怠るつもりはない。

 中学時代の成績は全て1位で、所属していたテニス部でも県大会に出る実力を持っていた。都会である隣町の高いレベルの高校に行くこともできたが、施設に近く、何より緋奈との時間を多く確保できる場所を選んだ。今の高校にすると言った時、緋奈はただ微笑んで、「愛華ちゃんの好きなようにすればいいわぁ」と言ってくれたのを覚えている。

 愛華は経済的な面で緋奈にどれ程負担になっているのかが知りたく、たびたび仕事について聞くことがあったが、いつもはぐらかされてしまう。学費は全額奨学金で賄っており、生活費も市からの補助が出ているが、緋奈はその全てを愛華に渡している。要らないと伝えても「お小遣いしたり、将来の貯金にすればいいわぁ〜」と言いながら口座に捻じ込まれるのだ。小中学の時はそのことを知らなかったので、中学卒業の時に渡された通帳にかなりの額が振り込まれていることに驚いた。その時も、こんなの貰えない、と言って突き返そうとしても緋奈は決して受け取らなかった。

 高校から隣の部屋に独立しようとも考えていたが、今日の様子だともう行動に移す事は出来なさそうだ。本人から聞き出すことはできなかったが、施設長達の話しを聞く限り緋奈は30代後半になるはずだ。どう見ても20代前半にしか見えないが、普通なら結婚してて当たり前の歳だ。そんな緋奈にあまり負担をかけたく無いのだが、やっぱり少しでも緋奈の側に居たいとも思うのだ。

 そんな緋奈とGWの後半3日間を一緒に過ごせる事が昨夜分かり、愛華は顔が緩むのを堪えていた。今日の夜からまた仕事のようだが、明後日の朝から緋奈を独占できると考えるとたまらなく嬉しいのだ。

(施設のみんなには悪いけど、たまには良いよね)と考えながら玄関を開けて中に入ると、未だにすぴすぴ寝ている緋奈が目に入る。そんな緋奈に対して愛華はちょっと呆れたような、ちょっと嬉しいような表情をするのだった。










 もうしばらく序章ですが、お付き合いください。

あと改訂ですが些細な部分を含めて、結構やっています。

 大きな内容変更はないので、あまり気にしなくて大丈夫です。

※嘘です。

 2020/7/3/10:59より1話大幅に改訂しました。既に見て下さっている皆様には大変申し訳なく思います。すいません。1話に新たに話を加え、元の1話の大部分を2話に移した形になります。なので1話の閲覧をして頂ければ物語の理解に今のところは問題ありません。ですが、これから先も大きな改訂が何度もあるかと思います。

 どうかご理解の程よろしくお願い致します

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