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ひっそり神仙  作者: 渚 康蓬
序章
2/6

2話 始まり より

2020/7/3に割り込みして投稿しました。






 

 カーテンの隙間から光が差し込んでいることから、起きなければならないことは分かっている。1階から朝の支度をする音と母の呼んでいる声が聞こえてくることから、起きなければいけないことは分かってはいる。そろそろ起きないと口うるさい母親が部屋に乗り込んでくるので、それより早く起きようとは思っているものの、なかなか布団から抜け出すことができない。

 榊優平はいつものように瞼を閉じて、再び眠りにつこうとした。だが、スリッパのパタパタという音が階段を上がってくると同時に優平は布団から飛び起き、壁に掛けてある制服を掴む。


「優ちゃんてばぁ!」

 ドアを開け母が入ってくる。

「うるさいなぁ、もう着替えてるってば」

 制服の袖に手を通しながら、優平は答える。

「もう着替え終わってなさいよ!早くしないと遅れるよ!」

「あー、分かってるよ」


 ノックもなしに部屋に入ってくることに少し気分を悪くしながら返事をするが、母は返事を最後まで聞かずに部屋を出て行った。

 高校に入学してから既に1ヶ月が経つが、毎日このやりとりが続いている。中学とは違い高校は家から少し離れるため、起きる時間が早くなったからだ。

 中学では勉強せずとも良いの成績が取れており、特に将来やりたいこともなかったため、家から一番近くそこそこ偏差値の高い公立高校を選ぶことができた。だが学校生活はどちらかというと嫌いなので、平日の朝はやはり気だるいのだ。

 支度は前日の夜にもやる習慣が中学の頃からあるので支度を数分で終える。1階に向かうと既に朝食を食べ終わった父が家を出ようとし、それに続き小学5年生になったばかりの妹が「いってきます」と共に集団登校に間に合うように家を出て行った。見送っていた母親が玄関から戻り、声をかけてくる。


「早くご飯食べて学校行きなさい」

「言われなくても分かってるよ」

「分かってるなら、言われる前にやりなさい」

その通りである。

「………。」

 これ以上余計なことを言わない方が、身のためであることを優平は知っている。








 自転車を漕いで学校に向かう。学校は小高い丘の上にあり、家から15分程に場所にある。その中間地点に駅があり、その周辺では同じ高校だけでなく、他校の生徒も多く見かける。

 私立校の可愛い制服を着て友達と歩いていたり、イヤホンをしながら1人でもくもくと歩いていたり、野球部っぽい男子がとばし気味に自転車を漕いでたりと、皆それぞれである。

 もちろん一緒に歩く男女もおり、横を通り越す時は少し早めに自転車を漕ぐようにしている。

 住宅街を通り、学校まで続く坂を上がって行くと生活指導の先生の声が聞こえてくる。

 校門の前で自転車を降り、朝早くから校門に立つガタイの良い体育教師に挨拶をし、駐輪場に急ぐ。校門は8:20を過ぎると閉められるので、彼は少し時間に余裕を持って学校に入るようにしている。



 クラスに入り自分の席に向かうと、左隣りの大島翔太が挨拶と共に声をかけてくる。

「よー、優平!今日もいつも通りだな!」

「おはよー」

 帰宅部の優平とは違い大島翔太はサッカー部に所属しており、朝練のある日は優平よりもクラスにいるのが早い。

 サッカー部はほぼ全員が活発な男子であることは言うまでもなく、彼もその1人だ。優平が高校に入り、入学式のあとで一番最初に言葉を交わしたのが彼、大島翔太である。

「中学の頃からこんな感じだよ。家での生活がそれなりにしっかりしてるんだよ」

 一応、嘘ではないつもりで優平は言う。

「まあしっかりしてそうだもんな。勉強とかもしてんの?」

「時々ね」

 ここ最近、会話しながら翔太の視線が自分の後ろの方に移ることがあるのを優平は知っている。そしてその先にあるのが、萩愛華という人物であり、彼が彼女に恋慕を募らせていることにも気付いてはいるが、優平はそれらを知った上で彼の会話に付き合っているのだ。

 翔太が続々と振ってくる話に適当な返事をしながら、優平は1ヶ月ほど前の出来事に頭を巡らせていた。

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