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ひっそり神仙  作者: 渚 康蓬
序章
1/6

1話 最深淵 より

初めての作品になります。

「それでもいいよ!」という方はどうぞ閲覧下さい


 


「始まるよ」

 世界の最深淵で彼女はそう呟いた

「器が揃った。とうとう時期が来たんだ」

 いま、全てが動き出す。














 太古の昔、この世界が誕生したばかりの頃、創る神と呼ばれる神がただ一柱だけ存在していた。創る神は様々なものを作っていき、やがて神と人とが共存する1つの世界が出来上がっていくことになる。

 創る神はこの世界の抑制の為に、まず破壊の力を持つ無の女神を三柱創ったと言われている。これを一柱にしなかった理由としては、破壊の力が余りに強すぎた為その器を用意できなかったからだと伝えられている。無の三柱はそれぞれ陰と陽、そして時間を司る。

 この時代、時間の全てをその時の神が支配していた為、現在の様に時間に沿って事象が進む世界では無かったと言われている。

 破壊の神という言い方が誤解を招きやすいが、愛と優しさに溢れる美しい心を持っており、四柱の皆で仲良く暮らしていた。


 ある日、時の神が散歩をしていると森の中で1人の青年に出会った。人里離れた森の奥で暮らしている事を不思議に思った時の神は人間に尋ねた。

「何故この様な場所で暮らしているの?」

すると人間は

「この盲目の為に他者に迷惑はかけたくはないから、私は1人で暮らしている」

と答えた。実際、盲目の人は疎まれ、金を盗まれたり、転ばされたりとたびたび酷い仕打ちをされる事もあった。心優しい盲目の人は、そのような者達を憎むことなく動物達の助けを借りながら、森の中でひっそりと暮らしていたのだ。

 時の神は自分に対して畏怖や好奇といった視線を向けないこの青年に興味を持った。以降毎日のようにその青年の元へと通い、その青年を知るにつれて心を惹かれていくようになる。青年の方は相手が美しい時の女神である事など知らなかったが、毎日家に訪ねてくる相手に同じように心惹かれていった。毎日たわいもない会話をしたり、動物達と一緒に出かけたりと、とても楽しい毎日を過ごしていた。

 ある朝、時の女神は創る神に頼み事をした。青年に神格を与え、眼が見えるように作り変えて欲しいと。創る神はこれに快く頷き、その日うちにその青年のもとを訪れた。創る神は青年に対しその説明をしたが、青年は「私は盲目に困っておらず、神にも相応しくない」と言い、頑として拒んだ。創る神が幾ら説明しても青年は頭を縦に振ろうとはしなかった。

 太陽が沈み外が薄暗くなり始め、創る神が諦めて帰ろうか考え始めた時、突然時の女神が「このバカ!私のことなんかどうでもいいのね!!」と言って家を飛び出して行ってしまった。女神は青年がどのような回答をするのかを、バレないように創る神の後ろでこっそり聞いていたのだ。後を追いかけようとした青年だが、すぐに躓いて転んでしまった。青年は創る神に対して、先の非礼を詫びると同時に「神格も賜ります。どうか眼を見えるようにして欲しい」と懇願した。創る神は苦笑いを浮かべ、青年に神格と神眼を与えた。

 青年はお礼も忘れて家を飛び出し、時の女神の姿を探したが何処にも見当たらない。月が随分と昇った夜の中、泥まみれになりながら森を駆け巡ると、大樹の洞の中にしくしくとなく影を見つけた。青年は「どうして泣いているのか」と問うと、人影はいじけたように「好きな人が私に興味を持ってくれないから泣いてるの」と答えた。その声を聞いた青年は、その影が今まで家を訪れていた者である事を確信した。

 青年が「そこだと風邪をひくから」と手を差し出すと、人影は素直にその手を取り洞の外へ出た。その時、月明かりに照らされたその人影はあまりにも美しい姿をしており、青年は言葉を失った。青年は夢でも見ているような気持ちになりながら、ただ真っ直ぐに美しいその人を見つめていた。

 女神の方は恥ずかしそうに俯き、黙ってしまった。


 実は女神は青年が自分のことを好きなのを知っていた。悪いことだと知りながら、こっそりと青年の心を覗き見たことがあったのだ。

 自分への好意を持っていること知ると同時に、青年が決して自分に求婚しないことを知った。青年は盲目の自分が彼女の負担になるべきではないと心に固く決め、自分なんかよりも相応しい者がいるはずだとも考えていた。女神は相手からの告白は待っても無駄であり、自分からのしたとしても告白も一切受け取って貰えないことを知った。そもそも高位の神である自分が人間に告白するなど、プライドが絶対に許さない。

 すると女神に1つの考えが思い浮かんだ。まず青年が、眼が見えるようになるという選択肢を創る神に持ちかけられれば、女神の姿を知らないことから自分に対する興味を持ち、創る神の提案を受け入れる。そしてその見える眼で美しい自分のことを見たならば、青年は決意を変えて自分に告白するに違いないと考えた。

 だが、青年の答えは自分の予想から全く違った方向に進み、それを聞きながら勝手にへこんでしまっていったのだ。

 しかし、この時青年は自分が神になり見える眼を持ったなら、きっと彼女に求婚してしまうと考えていた。青年は欲のない真面目な性格が、彼女を愛しているが故に恋の盲目と重なり、その表現が空回りしてしまっていたのだ。だが、どれだけ相手のことを大切に思っていようとも、結局それは恋心から逃げていただけなのだ。

 

 やがて青年は我を取り戻すと、月明かりにてらされ美しい輝きを放つ女神の前に膝をつく。青年は覚悟を決め、手を差し出し、心をそのまま言葉にする。


「僕と結婚してくれませんか」


 女神は顔を赤面させて、しばらく沈黙してしまう。青年は言葉を続ける。


「貴女を愛しています。どうか側に居させて欲しい」


 青年は、俯き沈黙する女神を見上げながらただ彼女の言葉を待つ。


「……私のこと何にも知らないでしょ」


 ついに口を開いた女神がいじけた様に言った。青年は苦笑いを浮かべる。そして再び真っ直ぐに彼女の眼を見て言葉を紡ぐ。


「貴女は優しく、暖かい人だ。私の眼にはその様に見えていた。そしてそれは今も変わらず、さらに美しい人であることを知ることができた。僕は貴女のことを、これからもっと知っていきたい」


 女神は今までも求婚されたことがあった。だが、ここまで熱烈な求められ方は初めての経験で、とても動揺していた。今までは自分の容姿しか見ずに結婚を申し込んでくる者や、時の力を狙い近づいて来る者ばかりで、恋などカケラも知らなかった。だが、この青年を見ていると心が温かくなる。声を聴けると嬉しくなる。肌が触れ合うだけで動悸が激しくなる。

 女神はどのように返答すれば良いのか、わからなくなってしまった。







読んでもらえて嬉しいです。ありがとうございます。

投稿はまだ慣れていないので、不定期ですが、様子を見ながら定期的に投稿をすることができるようにしようと思います。


あとレビューや感想を頂けると励みになります。


 これは完成した作品を投じているのではなく、個人的に作品を作っている過程にあります。文の継ぎ足しや表現の変更、話数の合併が多々ありますのでどうかご理解下さい。この1話も何度も改訂しており、今なお継ぎ足しにするか、別部位に分けて後ほどの話で続けるかでまだ迷っております。

 また、前半の初期メンバーが揃うまでは会話量は少なめになります。

 初期から見て下さる皆様には迷惑をかけてしまい申し訳なく思っております。ですが、1つの世界が成り立っていく様と、その行く末を共に見守って頂けたら幸いです。

 物語りを描くのはこれが初めてで至らぬ点も多いと思いますが、どうかよろしくお願い致します。

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