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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
86/359

84、女神像と洞窟

四つ目の女神像を探しにエケンデリコス同行の元、最北端の岬へ。

翌日の早朝、ケイ達はアルバラント兵の目撃情報を懸念したため、なるべく人目につかぬよう屋敷を出て、そのまま山の集落へと向かった。


アルバラントがエケンデリコスを探していることは承知している。

エケンデリコス自身、王が替わっても王都に対する不信感を拭えない。

しかし非情にも、山の集落にも彼らが来ることは時間の問題になるだろう。



ケイ達が山の集落に到着したのは、昼を少しまわった頃だった。

たまたま外で作業していたトキサと出会い、簡単にだが会話を交わす。


「リコス、戻って来たのか?」

「あぁ。でもすぐに出かけなきゃ行けないんだ」

「今度は何処に行くんだ?」

「最北端の岬だよ」

「最北端の岬?また、随分急だな~」


エケンデリコスはケイ達の目的のために同行することを話し、トキサはいつものことなのか十分気をつけるようにと返す。


「そういえば、隣の家の人からフリージアでアルバラントの兵を見かけたって言ってたけど大丈夫か?」

「僕は大丈夫さ。このまま最北端の岬に向かうからね」

「でも、集落まできたら鉢合わせだぞ?」

「それはその時に考えるよ!」


考えているんだかいないんだかわからないエケンデリコスの態度に、不安の色を浮かべるトキサ。事情を知っているだけに気が気でないようだ。


「ケイ、戻ってきた時アルバラントの兵と鉢合わせになる可能性はあるわ。どうする気なの?」

「こればかりはなんとも言えないな、行ってすぐ戻って来れる距離ならいいけど・・・リコス、ここから岬までどのぐらいかかるんだ?」

「岬までは半日もかからないよ。それにアルバラントの兵に会わなくてすむかもしれない」

「どういうことだ?」

「それは現地に行ってみてのお楽しみさ!」

「はぁ~お前ってやつは・・・みなさんリコスのことをよろしくお願いします」


困惑の表情でシンシアとケイが訪ねたが、なぜか当のエケンデリコスは、自信満々な態度に皆が首を傾げる。ともかく、実際に行ってみなければわからないだろう。あきれ顔のトキサも、集落のみんなと口裏合わせをしておくと行っていたので、しばらくの間だけだが時間稼ぎにはなるだろう。


ケイ達はトキサに礼を言い、予定通りそのまま最北端の岬へ向かうことにした。



「ケイ、日が暮れ始めてきてるぞ?大丈夫なのか?」


空が夕日の色に変わる頃、日没を心配してかアダムが声をかける。


「リコス、目的の岬はあとどのくらいだ!?」

「そこの丘を越えたらすぐです!」


ケイが確認をすると、150m先にある小高い丘を示した。

このあたり山岳地帯は、夜間になるとブリザードほどではないが吹雪が吹くことがあるため、日没を過ぎてからの行動は推奨しない。


「ここが最北端の岬です」


小高い丘を越えた先には、夕日に染まった海が一望できた。


目線を少し下げると丘の終わりから石階段へと続き、その先は柵のない岬がぽつんと存在している。よく見ると、ケイ達が探している女神像が存在していた。


「やっと見つかったぜ」


石階段を降り女神像の前までやって来ると、四回目と言うこともあり、鞄から蒼いペンダントを取り出し女神像に近づける。

淡い色が雫を形づくりペンダントの中に吸い込まれる。これで四つ目だ。


「これはなんですか?」


興味津々のエケンデリコスが、ケイの手にある蒼いペンダントに注目する。

ケイはおおっざっぱに説明をする横で、羊皮紙とペンを手に必死にメモを取る。

途中、へぇ~とかおぉ!と声が上がる。


「リコスさん、もう暗くなったので今日はここまでにしないか?」

「はっ!これは申し訳ない。僕のいつもの癖が出てしまいました・・・」


気づけばすっかり日も落ち、辺りは月明かりに照らされている。


エケンデリコスはケイの話に夢中になっていたのか、アダムに声をかけられるまで気づいていない様子だった。他の四人も話に飽きたのか、各々近くの岩に腰をかけて疲れた表情をしている。ケイに至っては話しをしている間、ずっと立っていた。

正直、いい加減に座りたい。


興奮状態のエケンデリコスを余所に、ケイがコテージを出現させる。

それを目撃したエケンデリコスが、さらに興奮のボルテージを上げると、ケイはみんなが休んでいる間、夜通し彼に付き合わされることになった。



翌朝、目の下にクマをつくったケイと徹夜で若干気分の高揚がおかしいエケンデリコスをアダム達が見て絶句した。


「ケイ様大丈夫?」

「全く寝てない。メシはいいから一~二時間寝かせてくれ・・・」


アレグロがケイに声をかけるも、全く寝ていないため疲労困憊で奥にあるソファーに横になる。エケンデリコスはケイから聞いた証言をまとめ、ブツブツと言いながら別の羊皮紙にまとめている。


「もしかして、お二人とも一晩中起きていたのでしょうか?」

「たぶんな」

「本当に変わり者なのね」


その様子に、タレナとレイブンとシンシアが肩を竦める。


昼も高くなった頃、仮眠を取ったケイと資料をまとめたエケンデリコスを交えて昼食をとることにした。


「そういや、昨日のリコスが言ってた意味ってなんだ?」

「意味って・・・あぁ、あのことですね。実はこの近くに洞窟があるんです」

「洞窟?」

「以前この辺りを調査してまして、偶然見つけたんです」


岬から西に進んだ地点に、入り組んだ岩山の間にあったそうだ。

前回来た時は中を見ることができなかったようで、ほとぼりが冷めるまで洞窟の調査をしようではないかと提案してきた。


「ケイ、どうするんだ?」

「ちょっと中を覗いてみるか。どちらにしろアルバラントとは会いたくない」

「リコスさんは?」

「もちろん行きます!やっぱり見つけたからには調査をしたいじゃないですか!」


リコスは自然の洞窟が存在することに高揚し、すぐさま調査に出たいとまるでわんぱく坊主のようである。アダムはため息をついてから、きっと止めても無駄だろうと諦めた。


「そういえば、この女神像も海の方を向いているわね?」

「他の女神像も海を向いていたな」


丘と岬の間の開けた場所に設置したコテージから出ると、シンシアが疑問に思っていたことを口にする。過去に見つけた女神像は、幻のダンジョン以外は全て海の方を向いている。西・東・北の方面にある女神像は、何を意味しているのだろうか?


女神像の件はわからないことがあるため、ひとまずそこから西にある洞窟へと足を運んでみることにした。



「僕が見つけた洞窟はここです!さっそく入ってみましょう!」


岬から西に50m歩いたところに岩陰に隠れた穴がぽっかりと空いている。


「リコスさん、少し落ち着きましょう!?」

「ケ、ケイ!悪いが先に入ってくれないか!」


中もよく見えない状態でエケンデリコスがさっそく入ろうとするため、アダムとレイブンが宥める。それを見てケイは、先日の五人の言葉の意味が少しわかった気がした。当然エケンデリコスを先頭にするわけには行かないため、ケイを先頭に洞窟を進むことになった。



ランタンとたいまつの灯りを頼りに慎重に奥へと進んで行くと、内部は外より幾分暖かく感じた。


「この洞窟は暖かいのね」

「洞窟というのは、年間を通して一定の温度を保っていると言われている。まぁ条件は異なるけど、一番は日照時間と風の流れが影響しているらしい」

「日照時間と風の流れ?」

「砂漠なんかだと暑さで地面が熱くなるだろう?地表の影響は、太陽の光と大気が発生して変動してるんだ。対して洞窟内は、太陽の光も大気も届かない場所にあるから常に一定に保たれている。まぁ場所によっては影響されるところもあるだろうから一概には言えねぇけどな」

「ケイさんは、なんでも知っているんですね!」


ちなみにこの洞窟は、外気温より十度ほど高く防寒服を着ているため若干暑く感じる。


「そういえば、この洞窟変だよな」

「ケイも気づいたか?」


道中、ケイが妙な違和感に気づき、アダムもそれに首を振る。

最初は自然な洞窟だったが、奥に向かうにつれ、徐々に人の手で穴を掘り広げた様な形跡が見られる。よく見ると、土や岩壁には何かが当たり擦れた跡が見られる。


「これは、何かを運んでいる際にできた跡ですね。跡が残っている様子をみると、大きなモノを洞窟内に運んでいたと言ったところでしょうか?」


エケンデリコスが注意深くその状態を観察する。

洞窟内は途中から高さ2.5m・幅は2m前後と広げられており、そう考えるとだいぶ大きな物を運んでいたようだ。


洞窟内を進んで行くと、螺旋状に下に続く感覚を覚える。

しかも下に向かうにつれ、先ほどとは違い冷気を感じ始める。


「この下って地底湖か何かがあるのか?」

「どうでしょう?僕もこの洞窟の調査は初めてなもので、考えられることと言えば、この辺りの洞窟は魔素が充満しやすい特徴がありますので、天然の蒼光石があればそれと共鳴して地中にある水分を冷気として放出しているかもしれません」


フリージアは他の国とは異なり、山や森に囲まれているため魔素が溜まりやすい土地柄で、特に山岳地帯にある洞窟などはいろいろな要素が合わさった魔素が充満しやすいらしい。現に洞窟に近づくだけで魔素中毒になる人物も存在するようで、何かしらの対策は必須とのこと。


幸いケイ達は、アマンダ達に譲って貰った防寒服を着ている。


実はこの防寒服、魔素が充満する場所に行っても大丈夫なように作られているそうで、魔素の影響を受けることがないミスリル糸を用いて作製されている。

実際に販売するとなれば大変高価な代物だが、アマンダとクルースも気づかずに渡していたため、ケイ達もそのことを知らないでいた。


「魔素が充満しているって事は、魔素中毒になる可能性があるってことか?」

「あれ?でも私たちどこも悪くないわよ?」


エケンデリコスの説明を聞いて、アダムとシンシアが首を傾げる。


「皆さんが来ている防寒服のおかげだと思います」

「防寒服?」

「見たところその防寒服は、ミスリル糸を使用しているようです。ミスリル糸は希少価値の高い品物で、ミスリルを加工し、糸を紡ぐことが出来る職人があまりいないため、市場では高額で取引をしているのではないでしょうか」

「え゛っ?これってそんなに高いのか!?」

「た、たしかミスリル糸は最低でも十万はくだらないわよ」


シンシアのトドメの一言で全員が沈黙する。

正直、知らない方が良かったのではないかという気持ちになった。



洞窟内を螺旋状に下りた先が、どうやら最終地のようだった。

そこには、人力で広げられた空間が存在している。辺りを見回すと壁や土の中に蒼光石が埋まっており、冷気の元はここから来ている様子だった。


「通りで寒いと思った。これだけあったら、氷の中にいるようなもんだぜ」

「ここまで一箇所に固まった蒼光石は珍しいですね。ほぼ手を入れていないのでしょう」

「人為的に掘って蒼光石を取らなかったって事か?」

「それにしては不自然ですね~」


これだけの蒼光石を見つければ一攫千金もあるかもしれない。

エケンデリコスの言っていた通り、洞窟を掘って、見つけたら取らずに戻るということは考えづらい。どういうことなのかと首を捻っていると、シンシアが大声を上げてこちらを呼んだ。


「みんな!あれを見て!!」


ケイ達がシンシアの声に反応しそちらを向くと、眼前に巨大な氷塊が姿を現す。

天井の高さから推測すると、高さ2m・幅1.5mぐらいはあるだろう。


巨大な氷塊に唖然としていると、ケイが妙なモノを見つける。


「この氷、中に何かあるぞ!」

「何があるの?」


氷塊に近づき目を凝らして見ると、どうやら何かの形をしている。

目線を下から上に向けるにつれてケイ達の顔色が変わる。


「ケイ、これって・・・」

「嘘だろう・・・!?」


呆然とするケイ達が見た先には、氷塊の中に少女の姿があった。

行けばいろいろなモノにぶち当たる件について、本人の意向とは関係ありません。

フラグは立てた時点で成立するってわけです。


次回の更新は10月16日(水)です。

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