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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
85/359

83、真夜中の訪問者

大変長らくお待たせいたしました。

今回は、真夜中の訪問者の回です。

話し合いが終わり客室に戻ったケイは、ヴィンチェから連絡が来ていることを思い出した。鞄からスマホを取り出し、届いたメールを開く。


ヴィンチェからのメールには以下の様な内容が記されていた。



ケイへ


僕は今、ルフ島中心部にある冒険者ギルドからヴノ山がある南側の島に来ている。

今回、同行をお願いしている獣人族のテジオラさんによると、ヴノ山は霊鳥・フォティアと呼ばれる守護者が存在している。


残念ながら僕らは会うことが出来なかったけど。


そういえば以前話してくれたペカド・トレのことだけど、やっぱりヴノ山の中にあるそうで直接見ることが出来なかった。

どうやら、大分前に起こった火山の噴火が原因で溶岩の中だそうだ。


その代わり、面白い話をテジオラさんから聞いたよ。


これは内緒の話だけど『一つを守るために三つを建て、生け贄を捧げた』という記述が載った文献が存在するらしい。

しかもその文献を所有していたのは、エルフ族だと言われている。


ちなみに現在その文献は、テジオラさんの家で厳重に保管されているとのこと。


彼の家はルフ島を統括している家系で、エルフ族と密かに契約を結んでいると言っていた。内容は、機密文書の保護・保管が主だそうだ。


この話に関しては、近いうちにハインのところに寄って確かめようと思っている。

と、まぁ、僕がわかったのはこれだけ。


そうそう、テジオラさんにケイ達の話をしたら面識があると言っていたから、もし近くに寄ったら顔を出してくれと言っていたよ。その時に詳しく話が出来るかもしれないって。


僕の方でも、何かわかったら連絡するよ。

今回はここまで。

それじゃ。


ヴィンチェ



メールを読み終えたケイは、スマホをサイドテーブルに置き、ベッドに大の字になるように横になる。


ヴィンチェのメールから塔に関する資料は、エルフ族から獣人族に渡っている。

機密文書扱いになっていることを考えると、このままでは破棄されることを予め予見していたのではないかと考える。


そもそも、なぜ貴重な文献が獣人族に渡ったのか?


もし自分が獣人族なら、リスクを犯してまで保護をする義理はない。

しかし獣人族は、それすらを理解して受託している。そのことから、彼らにも何かしらのメリットがあったのではないかと推測する。


『一つを守るために三つを建て、生け贄を捧げた』


この言葉から四つを示すモノは、ペカド・トレということになる。

一つは本物で三つは偽物?と言う考え方ができるが、生け贄を捧げたという部分とは繋げづらい。


うまく考えがまとまらないケイが、夜も遅いしさっさと寝てしまおうと眠る準備をしようとした矢先、部屋の扉からノックが聞こえた。



誰だと思いつつ扉を開けると、そこに立っていたのはベルセとオスカーだった。


「どうした?こんな夜中に?」

「夜分遅くにごめんなさい」

「ベルセがあなたに話があると・・・」


不審に思いながらもとりあえず二人を中に招き入れ、客室に配置されている二脚の椅子に座るよう即した。オスカーは護衛という立場から座ることを遠慮したため、ベルセと対面するようにケイが座る。


「話ってなんだ?」

「ケイさんに聞きたいことがあります」


そう口にはしたものの、ベルセは緊張の面持ちでなかなか言い出せずにいる。

まるで校舎裏で、先輩に告白をする女学生のようである。

こちらは特に急がせるつもりはないので、彼女が言い出すまで待つことにした。



「もしかして、ケイさんは『日本』の方ですか?」



ド直球の彼女の言葉にケイは目を細めた。

ベルセは相手が怒っていると身構えているようだが、ケイ自身やっぱりなという心境である。


「あぁ。ということは、あんたも『日本人』だろう?」

「え?なんで・・・」


ベルセは驚きの表情でケイを見つめていたが、こちらは食関係でいろいろな場所で名前だけは聞いている。何気に地球の食べ物が異世界で広まっていることを考えると、同郷なのは間違いない。それと、メルディーナが送った人物の一人ということは以前から薄々わかってはいた。


「というか、オスカーがいるけどいいのか?」

「大丈夫。オスカーには話はしているの」


本題に入る前、オスカーの存在が気になったため一応声をかけると、彼は事前に話を聞いていたようで、ベルセが異界の日本人ということは知っていた。


「俺が日本人って気づいたのはいつだ?」

「地下神殿で、消臭薬を使った時に出た言葉に反応しました」

「それって、消臭剤のことか?」

「はい。ダジュールには匂いを覆うということはあっても、消すという技術が発展していませんでしたから」


ダジュールでは、臭いを匂いで覆うことはあっても『消臭』という技術は存在していないらしい。ベルセは生前でも嗅覚が敏感だったこともあり、これまで幾度もなく臭い(匂い)に翻弄されてきたと力説した。ケイはあまりそういうことは気にしないのだが、ベルセと同じような嗅覚持ちの友人がいたこともあり、なんとなくではあるが理解はできる。


「で、あんた名前は?」

「私は小清水 莉央(りお)。日本では一般の会社に勤めていたわ」

「俺は瑞科 圭一だ。日本では高校卒業をしてすぐに、メルディーナにやられた」

「あの女、あなたにも同じ事をしてたのね!」


彼女は生前、都内にある企業の事務員だった。


前から希望していた職種にようやく転職できた矢先、メルディーナのせいで水の泡となった。しかも、出社初日だったらしい。

彼女はメルディーナのことを相当恨んでいるそうで、ケイが名前を口にするだけでも、女性にあるまじき罵声と恨み節が聞こえてくる。

これはさすがのオスカーも、目を合わせないようにそっと視線を外している。


「ほんと、あの女が女神の関係者と考えただけでも腹が立つわ!!」


うっぷんがたまっていたのか罵詈雑言をぶちまけ、一段落した後に莉央もといベルセ自身のことを語り出す。



本来のベルセ・ワイトは、生まれつき病弱で医師からは長くは生きられないと言われていたそうだ。生まれてからずっと病気だったこともあり、自室から出ることが出来ず、一年の大半をベッドで過ごしているそんな日々を過ごしていた。

そんなベルセを両親や兄姉・祖父や周りの人達が支えてきたが、くしくも彼女が十五才の成人になる一ヶ月前に、ベルセ・ワイトという魂はこの世から姿を消した。


その代わりに彼女の身体に入ったのは、小清水莉央の魂である。


莉央は最初こそ戸惑ってはいたが、ベルセの残した記憶を元に周りの人達との関係を構築し、彼女(ベルセ)が成し遂げられなかった『みんなの役に立ちたい!』という意思を引き継ぎ、学生であり錬金術師として活動している。


周りからは、病気が完治したことでベルセが元気になったと喜んでいたそうだ。


ベルセの残した身体は、長年病気だった影響からか魔力を持つことが出来ず、本来であれば、ワイト家の遺伝的な素質の水・風属性を一切操ることが出来ない。

しかも水を飲めない体質になってしまったため、ベルセ専用の精製水を精製・常備できる従魔のペスが頼みの綱となっている。


莉央自体、ベルセがベルセでない事に罪悪感を感じていた。

幼少の頃からベルセを知っているオスカーには、私はベルセではないと本当のことを話した。オスカーはそれでも君を含めて守っていくと語り、彼女の心は幾分楽になったそうだ。


それを聞いたケイは、いろいろと苦労と努力をしているんだなと妙に感心をした。



「そうだ。あんたにこれを渡しとく」

「これって、スマホ?」

「当然使えるだろう?」

「えぇ、でもどうやって?」

「創った」


ケイの発言にベルセとオスカーが目を丸くする。

二人に元はメルディーナの力だったものを自分が継承していると答え、その辺の経緯も説明した。そして、ケイがなぜ歴史を巡る行動に出たのかも話した。


現段階では、メルディーナが歴史的部分に関わっているのではないかと推測している。しかし思った以上に複雑だと悟ったため、協力者を募ることにしている。

いろいろと思うところはあるが、点と点をつなぎ合わせるためには情報がほしい。


「今、これで連絡を取っているのは、修復士のヴィンチェだ」

「修復士と言えば、ダナンで活躍している人物か?」

「じゃあ、彼も日本人なの!?」

「あぁ。メルディーナは、俺たちを含めて四人に同じミスでダジュールに送ったらしい」

「ということは、あと一人同じような人物がいるということね」

「残りの一人は情報がないからなんとも言えないが、話が通じれば協力をして貰おうと考えている」


ベルセはスマホを手に取り、操作を確認した後にこちらもわかったら連絡するわと返答した。元・社会人だったのかなんなくこなせることがわかる。



これで三人の元・日本人よる情報交換が可能となったが、謎が深まり解決の糸口が見いだせないなか、ケイはどこから崩すべきかを悩み考えていた。

ベルセ・ワイト=小清水 莉央(28才)

彼女も頑張って生きてます。

私も頑張ろう。


次回の更新は10月14日(月)です。

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