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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
75/359

73、地下神殿

穴に落ちた人物を探しに、突入してみた。

地面に開いた大穴を覗き込むと、だいぶ深さがあるのかよく見えなかった。


先ほどからスライムのペティが落ち着かない動作をしているため、その人物達が落ちたのは間違いないようだ。ケイがペティを落ち着かせるため抱きかかえると、そわそわしていた動作から次第に落ち着いた動作へと変わる。


「ミクロス村と同じ事が起こってるんだけど、この国大丈夫か?」

「た、たまたまじゃないの?」


歩けば大穴から落ちると言うのはお約束なのだろうか?と不思議に思い、二度あることは三度あると言うと、シンシアから引きつった表情を向けられた。


そんな冗談はさて置き、まずは落ちた人物の把握である。


雪道の足跡から二人組だということは間違いない。そしてその一人は、おそらくギルバートという人物だろう。近くに落ちている小石を手に、大穴に向けて落としてみる。

耳を澄まして音の反応を確かめると、微かに地面と接触する音が聞こえる。

サーチとマップを併用し、大体の高さを7~8mと推測する。


「ケイ、やっぱり下りるのか?」

「あぁ。小石を落とした反応から考えると、高さは大体7~8m。昨夜の雪のせいで、足元が見えなくなっていたことで落ちた可能性も捨てきれない」


ケイが大穴に向かって声をかけるが、反応がない。


創造魔法で少し長めの縄ばしごを創造すると、近くにあった太い木の幹に縄ばしごの端を括り付ける。ケイは降りて様子を見てくるといい、アダムも一緒に行くと同行することになった。


「ちょっと待って!二人が行くなら、私達も行くわ!」

「ケイ様、もし違う場所から出てきたとなったら、合流する時が大変よ?」


シンシア達から提案が上がる。

たしかに今までの傾向から考えると、入ってきた場所と出てきた場所が違うことが多く、今回もどこに繋がっているかわからない以上、四人を置いて行くことは難しい。

結果、全員で大穴の中に入ることにした。

その際に他の人が落ちないため、レイブンがその辺に落ちていた木材を使って、自作の木の看板を立てる。もちろん『この先大穴につき注意!』と器用に木の板を削る。



縄ばしごを慎重に下りると、大穴は六人が入っても十分な広さの空間に当たる。

大穴は自然にできたもののようで、シンシアが下りてきた場所に向かって、何かに気づいた様子で指で示した。


「ケイ、これって」

「何かが刺さった跡があるな」

「この跡って、結構上から続いているようなの」


どうやら今の場所から5m上の方から下に向かって一直線に線が入っているらしい。


「これは、ナイフか何かの跡だな」

「ナイフ?」

「落ちた瞬間に、とっさの判断でナイフを壁に突き刺し落下を軽減させていたのだろう」


その証拠にと、アダムが下りた直後の部分に指で示す。

よく見ると、壁の中に刀身のようなモノが埋まっている。引き抜く時に折れたのか、またはナイフ自体が耐えきれずに折れたのかはわからないが、判断力が尋常じゃないことはたしかなようだ。

ちなみにナイフの柄は、その近くに投げ捨てられた様に落ちていた。折れた部分からして、修復は不可能と判断し破棄したのだろう。この状態なら修復より新たに購入した方が早いことは一目瞭然である。


直下型の大穴から横に続く穴が見える。

灯りが全くないため、ランタンとたいまつを灯し様子を伺いつつ先に進むことにする。

道なりに進んで行くにつれ、土の壁にいくつもの青色のようなものがみえた。

最初は鉱石かと思ったが、土の部分を少し払いのけると広範囲わたって青い壁であることがわかった。その壁をよく見てみると、ケイ達が今まで見てきた遺跡の青銅部分によく似ている。恐らくこの先は、遺跡に続く道であることを直感で理解した。


「だよな~」

「ここにも地下遺跡があるなんで、どうなってるのかしら?」


ケイ達がたどり着いた場所は、例に漏れず地下遺跡だった。

ここは他の遺跡とは異なり、完全な状態で建物が残っている。

建物の高さは約4mほどで、バロック様式に近く曲線や楕円が用いられ、所々に豪華な装飾が施されている。どちらかと言えば神殿のような雰囲気に近い。


ここにも落下した人物が居ないようなので、中に入ってみることにした。

ペティは終始ケイの頭の上に居座っている。

俺、お前の飼い主じゃないんだけどなと思ってはいたが、可哀想なので言わないでおくことにした。



建物内は、今まで見たどの遺跡よりも完全な状態で残っていた。


入り口から等間隔に頭上高く支柱が建てられ、壁には飾り彫りが施されている。

神殿に行ったことがないのでなんとも言えないが、材質の関係で装飾が過度にならず、落ち着いた雰囲気を漂わせている。全部青銅で出来ているが、材料費はどのぐらいかかるのだろうといらぬ考えを巡らせたのは内緒だ。


建物の入り口から広がる場所には支柱以外に何もなく、奥に続く入り口が見えたためそちらに足を運ぶ。サーチとマップの併用で建物内を確認した結果、奥に続く入り口から二手に分かれ、右側の通路から生存者とおぼしき人の反応を見つける。数は二名で穴に落ちた人物なのだろうと考える。


「ケイ様、この先はどうなってるの?」

「二手に分かれていて、右側の方から人の反応がある」

「穴に落ちた方々なのでしょうか?」

「だといいけど」


二手に分かれた先を右に歩き、200mほど歩いた通路を突き当たり左に曲がる。

そこから100m歩いた地点に次の部屋の入り口が見えた。その間に他の部屋に続く入り口が見当たらないため、サーチとマップで確認したところ、隠し部屋のようなものが存在することがわかったが、今は落ちた二人の捜索に専念する。


次の部屋に着いたケイ達は、思いがけない光景を目にした。


「これ・・・人骨か?」


この部屋には、少なくとも10体の人骨が人の形そのままの状態で床に倒れていた。

大きさや体格などはさまざまで、大人から子供、男性から女性と、それら全てが何かに苦しめられたかのような状態だった。ケイは、そのなかの一体に近づき、覗き込むようにその場にしゃがんだ。

その人骨はうつぶせで、何かに耐えるように左手を首元に、そしてその場から逃れようと右手は伸ばした状態だった。骨の状態を見るとだいぶ古い物のようで、肩幅や骨盤の感じから女性のモノと思われる。


「ケイ、この部屋から一旦出よう」


アダムの声に何事かと振り返ると、女性陣三人が息苦しいと訴えた。

部屋に入る数十メートル手前から重い空気を感じていた。恐らくそのせいで、体調に異変を感じたのだろう。ケイ達は一度通路側に出て、今後どうするかを考えようと踵をかえした。


「んっ?」


奥に続く部屋から物音が聞こえ、ケイが足を止めた。

そちらに耳を向け、集中して音の出所を辿るが二度目からは聞こえてこない。

サーチとマップでは人の反応を示すが、正直それがケイ達が探している人物とは限らない。


「ケイ、どうした?」

「奥に誰か居る」


ケイの異変に気づいたアダムが、足音を立てずにケイに近づく。

怪訝な表情のアダムにケイは、奥を確かめると断ってから、なるべく足音を立てずに奥の部屋に歩み寄った。


「おーい、誰か居るのか?」


部屋の手前で立ち止まり、目視で中の状況を確認するが暗闇でよく見えない。

ケイが声をかけてから中に入ろうとした瞬間、右側から何かの気配を感じ振り向いた。


ケイが右側を振り向くと同時に、一瞬だけ暗闇からランタンの光に反射した刀身の様なモノが見えた。それを、瞬時に把握し半歩後ろに下がる。間を置かずその刀身は横に振られ、それをしゃがんで躱すと同時に、右足で刃物を持っているその人物の腕めがけて蹴り上げる。


男のくぐもった声と刃物の落ちる音が反響する。


「ケイ!大丈夫か!?」


騒動を聞きつけて隣の部屋に待機していたアダムが駆けつけ、持っていたたいまつを暗闇に居る人物に向けた。


暗闇から襲われたケイ。一体何者か!?


次回の更新は9月20日(金)です。


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