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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
72/359

70、衝撃の事実

秘密の話と情報交換。

ケイ達が塔から出た頃には、復元された塔は跡形もなくただの更地と化した。


ヴィンチェの話では魔素が溜まりにくい状態のため、すぐに復元とはいかないようだ。ディナト達が帰還の準備を進めている頃、ケイはヴィンチェ達を交えつつ今後の予定を話し合うことにした。


「今回も謎だけが残ったわね」

「黒い部分も、亡霊のような黒い騎士の事もわからずじまいってことか」


簡易テントの椅子に座り、アマンダが入れた人数分の紅茶に口をつける。

シンシアの指摘通りに、謎が謎を呼ぶ状態に難色を示す。

思った以上に、物事が複雑と化しているのは気のせいだろうかと自問自答する。


「この調子じゃあ、残りの二つの塔も謎しか残らないんだろうな」

「残りの二つ?」

「塔は、他にもあるってことか!?」

「エルフ族のハインから、残りの塔の場所も聞いている」


ケイは、疑問を持っているヴィンチェ達に、バナハとエストアの他にフリージアにあるスアン渓谷とルフ島にあるヴノ山にも似たような建物の跡があることを話した。位置的にフリージアの方が近いため、彼らにはこの後スアン渓谷を目指すと伝える。


「ハインの話に嘘はないから、私たちの方はルフ島に行ってみることにするよ」


ヴィンチェ達は、ちょうどダナンに戻る途中だったと言った。

所用の関係で、そこから定期便でルフ島に向かう予定だったため、ケイが言ったヴノ山にあろう塔の跡地を見てみようと思ったらしい。


「そういや、ヴィンチェが偶然見つけた地下遺跡のことなんだけどさ」


ケイが、ダナンの地下遺跡はエルフの森にある東の岬に通じていることを話した。

ヴィンチェ達は、入り口を発見してすぐに領主に報告すべく屋敷に向かったため、遺跡の内部に入ることはしなかったが、気にはしていたそうだ。


「それと俺達は今までの事を踏まえて、地下遺跡と塔は同じ時期に建てられたんじゃないかと思っている」


地下遺跡に関しては、西大陸にあるミクロス村の地下にも同じような建造物が見つかったと説明し、幻のダンジョンも実は関連性があるのではないかと疑っている旨を伝える。


「いやいや!その話は唐突過ぎるだろう!?」

「ダニーの言いたいことはわかる。だけど、俺にはどうしても共通しているんじゃないかとしか思えない」


そこでダニーが、疑いの言葉を口にする。

確かに言われても、ピンと来るどころか疑うことは当然である。

しかしケイにしてみれば、アレグロとタレナの行動を考えた時、遺跡と塔そして幻のダンジョンを切り離して考えることがどうしても理解出来なかった。



「まるで、確信があるかのような言い方をするんだね」



紅茶に口をつけてからヴィンチェが呟く。そして、目線を紅茶からこちらを伺うような眼差しで向けた。その表情から彼もまた、何かを感じているのではないかと直感的に見て取れる。


「それが、たとえ敵をつくることになってもかい?」

「俺は、昔から気になったら調べたい性分なもんでね。邪魔すればぶっ飛ばせばいい」

「なかなか過激的な発言だね。私も君達の話を聞いて、もしかしたら国家が関係してるんじゃないかと思ってるんだ」

「国がかぁ!?」


ダニーが思わずヴィンチェの方を向き、驚きの声を上げる。

実はケイも、1500年前の文献がまるまる消失することに疑問を抱いていた。バナハにあった塔の資料も消失していることから、それ以外にも消されたものがあったのかもしれないと考えている。


ほどなくして、ケイ達が話し込んでいる間に調査隊の帰還準備が整ったようで、ディナトがそのことを伝えにテントにやって来た。ケイ達もそれに合わせて、エストアに戻ることにした。



エストアに着いた時には、既に日没を過ぎていた。

ケイ達は街の宿に泊ろうとしたが、ディナトの好意でヴィンチェ達と共に、客人として城に招かれることになった。

それぞれに客室が与えられ、少し遅めの夕食を取った後に各々部屋へと戻って行く。

そんな中で、ケイはとある人物のことが気になり訪ねてみようと、その人物がいる部屋にやって来た。


「やぁ。来ると思っていたよ」


客室の扉を叩き、返事の後に扉が開く。ケイが訪れた先はヴィンチェだった。

彼は予めケイが来ると予見していたようで、快く中へと招き入れた。

中に通されると、客室用のテーブルいっぱいに羊皮紙とペンが置かれている。どうやら、先ほどまで作業をしていたようだ。


「なんか邪魔したか?」

「いや、日課なものでね。気にしないでくれ」


ヴィンチェが、羊皮紙とペンをまとめベッドの上にある鞄に入れてから、ケイには二脚あるうちの片方に座るように指し示す。


「エレフセリアからあんたの事を聞いてね、一度さしで話したいって思ったんだ」

「ロベルたちの事か。彼らには以前、世話になってね」

「そういや、ロベル達が村の子供に『竹とんぼ』を渡してたけど、あれはあんたが作ったのか?」

「え?そ、そうだけど・・・」


ケイは、以前ロベル達の故郷であるミクロス村に行ったことを話した。土産品として子供達に竹とんぼの飛ばし方を教えている姿を見て、もしやと思い聞いてみる。

ケイから出た言葉に驚きの表情をしたヴィンチェに、さらに確信的な言葉を投げかけてみた。


「・・・というか、あんた『日本人』だろう?」

「えっ?」

「当たり?」


目を更に大きく開き、驚愕の色を浮かべる。

それを見て、ケイの推測は正しかったと証明された。


「もしかして、君もかい?」

「まぁな。俺は水科 圭一。あんたは?」

「私は、小田 雅臣(まさおみ)。日本では普通の会社員をしてたよ」


驚くことに当初、ヴィンチェには記憶がなかったそうだ。

ダナン北部の草原で立っていたところをダニーとエイミーに助けられ、自分の記憶を探しに今まで各所を回っていたらしい。先ほど羊皮紙に記入していたことは、記憶が戻るかもしれないというエイミーの提案で、日記のようなものを書いていたそうだ。

記憶が戻った現在も、習慣が抜けないのか気付いたことや疑問をその都度書いていると言った。


「記憶が戻ったのは何時だ?」

「つい二週間ほど前だよ。聖都ウェストリアの教会にあるアレサ像に祈っていたら、創造神アレサに会ったんだ」

「はぁ!?アレサにか?」

「あぁ。そうだよ」


ヴィンチェから耳を疑うような発言を聞き、その本人は「信用してくれないかもしれないかもしれないけど」と前置きをしてから話しの続きを始める。


「創造神アレサは、世界の管理者をしていた部下のメルディーナに罪を背負わせたって言ってた」

「罪?」

「詳しいことは教えて貰えなかったけど、過去にメルディーナのミスで、地球にいる人間を死なせて、隠蔽のためにダジュールに送ってしまったって。しかも私の場合は、記憶を改ざんした挙げ句に、以前とはまったく違う容姿にしてこの世界に放りだしたそうだ」


アレサのおかげで記憶を取り戻したが、地球では既に故人となってしまい、ダジュール人として人生を過ごすしかなかったと述べる。彼自身は既婚者で、妻と三歳の娘がおり、本来であればもうすぐ息子が誕生する予定だったと語った。

家族の幸せをこんな形で駄目にしてしまったメルディーナには、心底嫌悪感しか残らない。

しかし、アレサの言った罪を背負わせたとはどういうことなのだろうと考えるが、言葉の真理は今の時点ではさっぱりわからなかった。


ケイは、ヴィンチェに自分の今までの事を説明した。

アレサからメルディーナの全能力を引き継ぎ、その力でダジュール人として生きることやエストアで出会ったメルディーナが召喚した黒狼の話。その黒狼から世界を一つにしてほしいと蒼いペンダントを渡されたこと。そして、女神像を探すために各地を巡っていること。

途中で、ヴィンチェの質問を挟みながら会話を進めた。


「メルディーナは俺たちを除いて、あと二人に同じ事をしたらしい。まぁそのうちの一人に心当たりはあるから、もしかしたら会えるかもしれないけどな」

「そうか、それじゃあ私の方も何かわかったら君に伝えることにしよう」

「助かる。それならあんたにこれを渡しとくぜ」


そう言ってケイは、得意の創造魔法であるモノを作製しヴィンチェに渡した。

ヴィンチェの手には、手の平より少し大きめの地球ではおなじみのあるモノだった。


【スマートフォン】

略してスマホ。地球ではお馴染みの高機能携帯電話。

通話・メール・検索・その他諸々可能だが、別の世界に居る者とは連絡は取れない。

所有者:ヴィンチェ(なくしても自動的に戻ってくる)


「これは、スマホかい?」

「あぁ。あんた使えるよな?」

「仕事柄、スマホやPCを持っていたから問題はないよ」

「ならいいや。それと、なくしても自動的に戻ってくるから安心しろ」

「至れり尽くせりだね」

「情報共有なら、これが手っ取り早い」


今現在は、ケイとヴィンチェしか所有していないが、情報共有という観点から将来的にはまだ見ぬ他の二人にも渡してみようと考えており、転生者同士であれば問題はないのではないかと思ったからだ。しかし、相手が話がわかるかどうかが前提となる。


「そういえば以前フリージアに行った時に、スアン渓谷に変わり者のエルフが住んでいるって噂を聞いたよ」

「変わり者のエルフ?」

「詳しくはわからないけど、フリージアでは有名で領主がそのエルフに何か調査を依頼しているって話題になってた」


ヴィンチェ達は以前フリージアに滞在していたが、その人物に会いに行こうと思った矢先に、季節変動によりブリザードの足止めを食らったため、会いに行くことが出来なかったそうだ。現在はそれが収まったため、スアン渓谷までの道は通行可能になっていると教えてくれた。


その話を聞いたケイは、現地人なら何か知っているのではと考え、今後の参考にと頭の片隅に留めておいた。


ヴィンチェ=日本人。プロローグの伏線をちょっと回収。

もう忘れちゃったよって人いるかもしれません。

それはごめんなさい。


次回の更新は、体調不良のため9月12(木)に更新します。

申し訳ありません。

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