5、事後報告
今回は、ケイが宿屋に向かった同じ時間帯のアダムの話になります。
アダムが冒険者を連れて町に戻ってきた時には、すでに日が暮れていた。
門をくぐり、その足で他の冒険者と一緒に冒険者ギルドへ向かう。
「アダムさん!」
ギルドの扉を開けると、紫の髪が印象的な受付嬢のミーアが驚きと心配そうに声を掛けた。
「今戻ったよ」
「ずいぶん遅かったですね。心配したんですよ」
「すまない。それより怪我人の手当を頼む」
「えっ!わ、わかりました!」
ミーアと他の職員が協力して手当てを始める。
「ずいぶん遅かったじゃねぇか」
二階から階段を下りてくる男が声をかけた。
「ギルドマスター」
「アダム、お前にしては珍しいな。何かあったのか?」
ギルドマスターと呼ばれた、青い髪と髭を生やしたオルガという男がアダムの肩をたたく。
「実は・・・」
アダムは今回の依頼を達成できなかったことと不測の事態に対応できず、通りがかりの青年が助けてくれたことを話した。
「・・・というか、そんな奴いるのか?」
「俺も後から他の奴に聞いたから、よくわからないんだ」
オルガが信じられないというような目を向けたが、アダムはなんとも言えない表情をした。
今回アダムが受けた依頼は、中級冒険者の研修の教官を担当するというもので、エバ山のコカトリスの卵納品というものだった。
本来は数人の教官が付く予定だったが、今回は運が悪く担当できるものが他に捕まらなかっため、アダム一人で教官を務めることになった。
「まぁ、すまなかったな。依頼通り報酬は払う」
オルガは頭を掻きながら話を切り出した。
「いや、報酬は受け取れない。運搬の研修でコカトリスの対応もできず、他の冒険者を危険にさらしてしまったから」
「今回は受講者も多いのに、教官を複数配置することができなかったウチの責任もある」
「ランクを降格されても仕方ないと思っている」
「お前を不真面目だと思ったことはねぇよ。気にすんな」
必要以上に責任を感じたアダムをオルガが慰めたが、アダムの首が縦に振ることはなかった。
「だったらその報酬の分ををそいつに渡してほしいんだ」
「渡すだぁ?どうやってだ?」
アダムの提案にオルガが聞き返す。
「他の奴らから聞いたんだが、『アーベンに向かう』と言っていたから、もしかしたら会えるかもしれない」
「そいつは冒険者か?」
「革の装備を着ていたそうだがら、もしかすると・・・」
そこで言葉を切った。
オルガは息を吐くとアダムの提案を受け入れた。
「他の奴らは俺たちに任せて、今日はもう帰れ」
オルガの言葉に素直に従ったアダムは、そのままギルドを後にした。
「コカトリス相手にそんな芸当ができる奴なんて本当にいるのか?」
アダムが帰った後、オルガがそう呟いた。
前回入れ損ねたので、短いですが話を投稿いたします。