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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
66/359

64、魔法が使えないエルフ

協力拒否のセディルにちょっかいを出すケイの話。

ケイ達は、ハインの好意で屋敷に泊めて貰えることになった。


野菜中心の夕食をご馳走になった後、召使いに客室を案内される。

三人部屋が二つに並んだ客室を、右側が男性陣、左側が女性陣と分かれて利用することにした。


「あ~腹一杯」


遠慮も無しに食べに食べたケイは、窓側のベッドに横になり腹を軽く叩いた。

軽い音が室内に響き、隣のベッドに腰を下ろしていたアダムが食べ過ぎだと注意する。


「しかし、精霊をみることが出来ないエルフもいるもんだな」


ハインからセディルの話を聞いたケイ達が、そんなケースもあるんだなと不思議に思っていた。エルフといえば精霊と心を通わせるという種族だと認識していたが、当てはまらない者もいることに驚きを覚える。


「元々、見えないと言うことがあるんだろうか?」

「先天的な能力だとばかり思っていたけど、後天的な能力ということなのか?」

「個人差によるんじゃないか?まぁ知り合いがいないから確証はないけど、人間の能力の違いみたいな感じとか?」

「見える時期が来ていないから、精霊と契約が出来ずに魔法も使えないということか~」


エルフに知り合いがいないアダムとレイブンが首を傾げる。

他種族の認識が必ずしも当てはまらないということなのだろうか?正直他にも要因があるかもしれないが、セディルの態度からみてわかるとおり、友好的より圧倒的な否定的であることは明白である。


それに、今日はいろいろな情報を得たが不明な点も残っているため、後日改めてトレントに聞いてみるべきだと思いながら何気なく窓の外を見た。


窓の外は、月明かりに照らされた里が一望できた。

空には月と満点の星空に、里の所々に家の灯りが漏れている。

ハイン曰く大体は早めに床につく者が多く、日の出から動き始めるらしい。

まるで歌にあった、南の島のなんとかの様な生活である。


(あれ?あいつどこに行くんだ?)


月明かりの里を、何者かが通る姿を見かける。

大柄な体格から見て、セディルらしい。


「ケイ、どこ行くんだ?」

「便所」


部屋から出ようとするケイにアダムが声をかけると、一言断ってから部屋を出た。


廊下を通り屋敷の玄関から出ようとした時、タレナと会った。


「ケイ様どちらに?」

「窓から外に出るセディルの姿を見かけたから、ちょっと様子を見てこようと思ってさ」

「セディルさんなら先ほど出て行くところを見かけましたけど、やはり先ほどの話のことでしょうか?」

「うん、まぁね~」


セディルの話に何か引っかかるものを感じたケイは、彼と直接話をしてみようと後をつけることにした。



月夜の森は、光が通りランタンが必要ないほど明るかった。


「セディルさんは、どちらにいくのでしょうか?」

「この方角だと岬っぽいな」


タレナもセディルのことが気になっていたようで、ケイに同行していた。

何が出来るわけでもないが、話ぐらいは聞いてあげることは出来るかもしれないという彼女なりの気遣いである。



セディルの後をつけてたどり着いた場所は、昼間ケイ達が出てきた場所である岬だった。月の光をを受けて岬に佇むセディルに、チャンスとばかりに話しかける。


「よぉ!こんな夜に何してるんだ?」


海を見つめていたセディルに二人が近寄ると、振り返った瞬間に嫌そうな顔をする。月明かりでもはっきりとわかる顔に若干吹き出しそうになったが、ケイはグッと堪える。


「・・・何か用か?」

「ハインから魔法が使えないことを聞いた」


直球過ぎる発言に、セディルは明らかに動揺と苛立ちをあらわにする。


「・・・だからなんだ?」

「本当に精霊が見えないのかと思って聞きに来た」


「テメェには関係ないだろう!!?」


セディルがケイの胸ぐらを掴み、怒声を浴びせる。

タレナがハラハラした表情で止めようと二人の間に入ろうとしたが、ケイがそれを制止する。


「この里に鑑定が出来るヤツはいるのか?」

「どういう意味だ・・・?」


セディルは、ケイの言葉に疑問の表情を浮かべる。

ケイは鑑定持ちだと伝え、セディルの問題を解決するきっかけを掴めるかもしれないと伝える。それを聞いたセディルは、疑問の表情のまま胸ぐらを掴んでいた手を離す。


「里に鑑定スキルを持ったヤツはいない。もしお前の言う通りならやってみせろ」


セディルは、目線をケイに向けたままそう述べた。



鑑定の了承を得たケイは、彼の前に立ち鑑定を始めた。

とりあえず、細かい数値を見ることを省き、状態やスキル系統を確認することにする。


セディル 312才 男性 エルフ族 

状態:正常

スキル:剣術Lv6 弓術Lv4 精霊召喚術Lv8

ユニークスキル:エルフ語 アスル語 ベルテ語


鑑定の結果を見て、どこから聞いていいのかわからないため首を捻る。


「ケイさん、何かわかったのですか?」

「まぁ、わかったといえばわかったんだけど~」

「何がわかったんだ?」

心配そうな表情のタレナと、疑いの眼差しのセディルが声をかける。


情報が多いので、当たり障りのないところからセディルに質問することにした。


「まず、エルフ族は剣術と弓術は当たり前なのか?」

「俺は独学で剣術を学んでいるが、エルフ族は、魔法以外にも弓術を中心とした狩りを主としている。むしろ魔法は必要以上に使うことはない」


精霊魔法は、精霊に負担がかかってしまうため、必要以上に使用することはあまりないそうだ。確かに、森で火属性などの魔法を使えば燃え広がってしまう可能性もある。そのような事から、普段は弓術を中心として行っているようだ。

それに加え、セディルは独学で剣術を学んでおり、なかなかの努力家とみた。


「あとスキルに精霊召喚術ってあるけど、思い当たることはあるか?」

「精霊魔法ではないのか?」

「俺の鑑定ではそう出ている」


精霊召喚術に注目すると、以下の説明が表示される。


上位精霊に認められし者だけが上位精霊を召喚できる。

エルフ族はスキルを会得することは不可だが、例外として隔世遺伝を持った者は使用できる。なお、返還不可。


不明な点があったため、ダジュールの管理者で検索をかけるとその項目が表示される。


【精霊召喚魔法】

上位精霊を召喚し、生涯にわたり主を守り続ける。

召喚者は魔法を使用することは出来ないが、上位精霊を介してのみ発動することが出来る。通常一人につき一体だが、魔力量によっては複数体召喚される。


「そういうことだったのか・・・」


セディルに何故魔法が使えないのかを説明した。


「精霊を召喚するって言っても心当たりはないぞ?」

「なんかないのか?例えば誰かから聞いたとか、何かに書いてあったとかさぁ」


こればかりはケイもわからないため、セディルがそれらしいことを覚えているか知っているかにかかっている。

ケイに言われ暫く考え込んだセディルが、何かを思い出したのかこんな言葉を口にした。


「そういえば一つだけ、たしか・・・」



【ラウフ・スムマールム=スムマ・テレティ・プロスクリスィ】



聞き慣れない言葉と同時に、ケイ達の前に七色の魔法陣が現れる。

目映い光が辺りを照らし、思わず手で光を遮る動作をする。


「ケイさん!?」

「うそだろう!??」


適当に励ました結果、精霊召喚魔法が発動することにケイとタレナが目を丸くする。セディル本人も、まさか発動するとは思わずその場に立ちつくしていた。


光が治まると、三人の前に一人の少女が立っていた。

赤・黄・青・緑のグラデーションをした髪に、透き通った青い瞳をした小柄な少女である。

少女はセディルに駆け寄ると、彼の両手を掴み挨拶の言葉をかけた。


「ご主人様、お初にお目にかかります。私は自然属性の上位精霊・ダビアと申します。ご主人様の御身はどんなことであろうと、このダビアがお守りいたします!」

そう言ってダビアが頭を下げた。


完全に状況が飲み込めていない三人は、どうすればいいのかわからず互いに顔を見合わせた。



「ダビアだっけ?話をきいてもいいか?」


ケイがセディルとダビアの前に立つ。

ダビアはケイとタレナを害ある者という表情でこちらを向いたが、何かに気がついたようでハッとした表情の後、頭を下げて礼をする。


「これは新たな王ではありませんか!?どうぞなんなりとご質問ください」


数秒前の表情が嘘みたいな顔である。

気になる発言があったが、なんでも質問していいと言ったので彼女に少し尋ねてみることにした。


「あ~えっと、ダビアは上位精霊なんだよな?まず自然属性ってなんだ?」

「はい。私は四大属性である火・水・風・土を司っています。それをまとめて自然属性と言われています」

「精霊召喚魔法は、エルフ族は出来ないことになっているけどどうしてだ?」

「それは、エルフと交流している精霊は下位精霊と呼ばれており、精霊の中では能力が低いとされています。故に上位精霊はエルフ族をあまり快く思わないとおもわれます。あ!でも、ご主人様は別ですよ!!」

「精霊にもランクみたいなのがあるのか?」

「位ということでしょうか?それでしたら、下位・中位・上位・最上位・最高位・精霊神と位わけがあります。私の場合は、ある条件を満たせば上の位に上がることが出来ます!」


なんとも驚きの発言である。

まさか精霊にも位があるとは思わなかった。

エルフ族が会得することが出来ないスキルを所持しているセディルは、鑑定通り隔世遺伝で会得した可能性がある。そう考えると、エルフ族の祖先も他の場所から移住した人々と考えられる。それを裏付けるモノがひとつある。

セディルのスキルに【ベルテ語】があったからだ。

以前バートから、古代語の一つに【ベルテ語】があると言ったことを思い出す。

そう考えると、移住者は少なくとも複数民族・種族と考えられる。



「おーい!ケイ!どこだー!!」

「タレナー!どこなの!!」

「セディル!返事をしてくれ!!!」


遠くで三人を呼ぶ声が聞こえてきた。

声の感じからしてハインとアダム達だろう。

森の方からたいまつの明かりがぽつぽつと光っているのが見えた。


「おーい!こっちだ!!」

ケイは、森の方に向かって大きな声で叫んだ。


結果、ある意味大成功?

予想外の出来事にアダムの拳骨が飛んでくる!?


次回の更新は、8月28日(水)です。

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