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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
62/359

60、エルフの森

遺跡を抜けた先には?

細い通路を抜けると、螺旋階段がある少し広い場所に出た。


風はこの真上から吹き込んでいるようで、ケイ達が上を見上げる。火の灯りも届かず、地上の明かりも届かないようで、漆黒の闇しか見えない。


「風はこの上からみたいだな」

「だいぶ上から来るようだけど?」

「階段自体は古いけど、しっかりしている感じはするから上ってみるか」


念のためケイがサーチとマップのスキルを使い、周りの様子を確かめる。

自分たち以外の生命反応は確認されないことを確かめてから、螺旋階段を上がることにする。


「本当に大丈夫なの?」

「風が来ているから、最悪地上に近い場所に出るのは間違いだろうな」

「ケイ、だとしても気を抜くなよ!」

「わかってるって!」

不安そうなシンシアとその後ろからアダムが口を出す。


暫くグルグルと回るように階段を上っていくと、小さい部屋の様な場所に出た。壁は脆くなり所々表面が剥がれており、周りには過去に使用されていたとおぼしき剣や盾などの武器や防具などがいくつか落ちている。


「ここは武装基地か何かだったのか?」

ケイがそのうちの一つを拾い上げ、状態を見る。

剣は錆て赤く変色しており、とてもではないが使用することが出来ない。

また柄の部分も元は金色のようだったが、年月を重ね黒く変色しており持っていた手が黒くなった。


「痛っ!」


ケイが剣を放り投げると、右側から鈍い音と同時にレイブンの声が上がる。

そちらに目を移すと、レイブンは頭を抑え蹲っていた。


「大丈夫か?」

「だ、大丈夫だ。所々天井が低いみたいで頭をぶつけた」

目線を上げると彼が言うように、やけに天井が低い箇所がいくつかある。

天井自体は2mほどしかなく、長身組のアダムとレイブンには厳しい。


「ケイ様、こっち!」


奥にいるアレグロが声を上げる。

そちらに向かうとアレグロが手を上に伸ばし、風の通りを確認している。


「ここから風が来ているみたい」

「確かに風来てるな・・・というわけで、まかせた!」

ここで、ケイがアダムの肩をポンと叩く。

「なんで俺に言うんだ?」

「俺じゃ天井まで届かないから」

ケイが天井に手を伸ばそうとするが、男性としては小柄な部類のため届かず、仲間に丸投げをする。


アダムは天井に手を伸ばしてから具合を確かめる。


「押せないぞ?」

「もしかしたらスライド式じゃないのか?」

ケイの助言にアダムが天井をスライドさせてみると、左から右にわずかに動く。数センチ動いたところで、何かに引っかかっているのか動きが鈍くなったためレイブンに声をかける。


「・・・あ!こっちから開くみたいだ。レイブンちょっと手伝ってくれ!」

「わかった」

レイブンが隣に立ち、隙間から両手を入れて右側にスライドさせる。



天井がゆっくりと動くと同時に、太陽と青空が見える。


「外だわ!」

「とりあえず出てみようぜ!」

アダムとレイブンが先に上がり、四人を引き上げる。

目の前には、海と空が広がっている。どうやらどこかの岬のようだった。


「ここどこだ?」

反対を向くと、見覚えのある石像と奥に森が見える。周りの様子から、森に囲まれた場所のようである。


「ケイ、これって」

「こんなところにあったのか」

シンシアが指した見覚えのある石像は、探していた女神像であり三体目になる。またこの女神像も海の方を向いている。


ケイが蒼いペンダントをかざすと、淡い光が雫を形成しゆっくりとペンダントの中に吸い込まれるように消えていく。

確認をすると3/5と表示されたので、ここでの用事はほぼ終わった。


「しかし、他の女神像はどこにあるんだ?」

今回は運良く女神像を見つけたが、残りの二体の場所がわからない。

「闇雲に探しても見つかるとは限りませんし・・・」

「知っている人間がいればいいんだけど?」

「そう言ってもな~」

タレナとアレグロのいうことはもっともである。

情報収集するにもアテがなく、この後の予定を立てるために街に戻ろうと考えてみた。



「ここで何をしている!!」


森の方から声が聞こえ、そちらを向くと金髪で青い目をした男性が数人現れた。

よく見ると全員耳が長く、人の形をしていない。

どうやら彼らはエルフ族と思われる。


「お前達は人間か?こんなところで何をしているんだ!?」

「何って、地下の遺跡から地上に出たらここに出ただけだ」

「遺跡?そんな作り話を信用すると思ったのか?」

「本当なんだけど」

「ここを、エルフ族の領域だとわかって言ってるのか!?」


リーダー格の体格のいいエルフ族の男性が、ケイ達に疑いの目を向ける。

ケイ達は、たまたまここに出たからエルフの領域だと知らなかったと弁解し、すぐに出て行くからと伝えたが、エルフの男たちは納得していない様子でそれを否定する。


「この森に入る者は何人たりとも逃すつもりはない!こいつらを拘束しろ!」

「はっ!」


男の指示で、他のエルフ達が一斉に魔法を詠唱する。


「ケイ!これはまずいぞ!」

「速く逃げなきゃ!」


「逃がすものか!罪の茨を解き放て!【ウィップ】!」


アダムとシンシアが声を上げて逃げようしたが、一歩速くエルフ達の魔法が発動される。緑の魔方陣を形成し、そこからいくつもの魔法の茨が現れ、拘束しようとした。


しかし、茨はケイ達を拘束する一歩手前で、電撃を浴びたかのように一瞬で打ち消された。


「なっ!もう一度詠唱しろ!」

「は、はい!」


魔法が打ち消されるとは思わなかったためエルフ達は驚愕の表情をしたが、すぐさま立て直し詠唱を開始する。

二発目も発動するやいなや打ち消される。


エルフ達が何度も行っている内に、なんだか冷めたようでケイ達が口々と話し始める。


「これってどういうこと?」

「たぶん、拘束系の精霊魔法ではないかと」

「そんな精霊魔法もあるのか?」

「私たちも精霊魔法は初めてみるけど、風の精霊を宿しているようね」


アレグロの話によると、エルフ族は他の種族に比べ魔法に長けており、各属性の精霊の力を身につけることによって、各属性の精霊魔法を会得することができるそうだ。今使用している魔法は、相手を拘束させる風属性の【ウィップ】で、ケイが使用しているバインドの精霊魔法版である。


そういえば先ほど、マジックポットから縛り無効の効果スキルを入手したばかりである。まさか早々に役に立つとは思ってもみなかった。

ケイ達は縛り無効状態のため意味をなさないのだが、それを知らないエルフ達が次々に拘束魔法を発動させている。


「【バインド】!」


ケイが詠唱すると一瞬でエルフ達が拘束され、そのうちの数人が詠唱中だったため勢い余って倒れる。


「貴様!まさか魔法使いか!?」

「そうだけど?まずは話を聞いてくれない?」


拘束されたリーダー格のエルフの男は、恨めしそうな目でケイを見つめる。

ケイはその男の前に立ち、目線を合わせるようにその場にしゃがみ込みこう続ける。


「エルフの森だとは思わなかったんだよ。出て行くから勘弁してくれないか?」

「そんな嘘は通用しない!第一結界を施しているのにどうやって入ってきた!」

「だから!ダナンから繋がっている地下遺跡を出たらここに着いたんだよ!」


男は話しを聞くそぶりを見せず、むしろ拘束を解こうと藻掻いている。

エルフには用心深いという面もあるのだが、どちらかと言えば頑固で話を聞かないと言うべきだろう。


ケイ達がどうしようかと頭を悩ませているところに、森から別のエルフが姿を現す。



「セディル!お前達、ここで何をしている!」


森から現れたのは、長身に細身のエルフの男性であった。

金色の長い髪と青い目で、髪から出ている長い耳がエルフを強く印象づける。

また中性的ではあるが、凜とした佇まいをしている。


「ハイン!人間が入ってきた!!」


森から現れたエルフが、その言葉にケイ達の方を見る。

状況からしたら、ケイ達がエルフを捕らえている絵面にしか見えない。


「あー、とりあえず話を聞いてくれないか?」


さすがにこの状況はまずいと判断したが、先ほどの状況で話を聞いてくれるかわからないため、ダメ元で敵意がないように意思表示をしてから相手に提案をする。

エルフの男は、ケイ達と拘束された仲間を見比べてからため息をついてからこう返す。


「セディル、話を聞かないところは昔と変わらないようだな。どうやらこちらにも問題があったようだ。すまないが、話を聞きたいので仲間の拘束を解いてくれないか?」


ようやく話を聞いてもらえる人物が現れたため、ケイが魔法を解除する。



「私は、エルフ族の長をしているハインだ。そっちは私の弟でセディル」

「え゛っ!?あいつお前の弟なのか?」


ケイ達が驚くのも無理はない。

ハインが体格のいいエルフの男を指さしたからだ。

正直、エルフの特徴である耳がなければ格闘家にしか見えず、それぐらい体格がいい。それに兄弟と言っても、同じエルフなのに似ている要素がひとつもない。

世の中不思議である。


「一個もあんたに似てないな」

「ははっ、よく言われるよ。セディルは魔法が得意ではないからな」

「俺のことはいい。ハイン、あまり森の中を歩き回るなと言っているだろう?お前は族長なんだぞ!どうしてここに来た?それに、こいつらは人間だぞ!?」

「そうは言っても、風の精霊が岬の方が騒がしいと言っていたからな。族長としては確かめねばなるまい」


セディルは、一見横柄な態度に見えなくもないが、どうやらただの兄思いの弟のようだ。ハイン曰く、兄や里を大切にするあまりに話を聞かないところもあるらしい。


「それで、君達はどうやってここへ?」

「俺たちは、ダナンの街から地下に通じている遺跡に足を運んだんだ。奥まで来てから地上に上がったら、この場所までたどり着いたってわけ」


ハイン達が首を傾げ、ケイが指で地面を指さす。


「こ、これは!?」

「ケイ達は、ここから上がってきたのか?」

「こんなところに遺跡の入り口があるなんで知らねぇぞ!?」

「私も長いこと生きているが、初めて見るよ」


床が開いた状態を見て、ハイン達もここの存在は初めて知ったようだ。

セディルは、定期的に巡回をしていたようだが、気づきもしなかったと述べる。

エルフと言ったら他の種族より長命と言われているが、その彼らでも知らないとなると遺跡自体重要な場所である可能性がある。


「詳しい話を聞きたいから、里に来て貰ってもいいかな?」

ハインが、ケイ達が出てきた穴から目を離しこちらに振り向く。


ケイ達は互いに顔を見合わせた後、こちらからも聞きたいことがあったため首を縦に振った。


エルフ兄弟の登場です。

遺跡や残りの女神像の手がかりを掴むことは出来るのでしょうか?


次回の更新は8月19日(月)になります。

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