4、港町・アーベン
説明にはありませんが、異世界ダジュールのお金の単位は『ダリ』
硬貨は5種類。
白金貨 (日本円で¥1.000.000)
大金貨 (日本円で¥100.000)
金貨 (日本円で¥10.000)
銀貨 (日本円で¥1.000)
銅貨 (日本円で¥100)
ケイは称号・ダジュールの管理者のおかげで、基本知識は入っています。
ケイがエバ山を下りた頃には、空は茜色に染まっていた。
日没が近づいてきていることを悟ると、足早に山道に続く道から道なりに進み東の町を目指した。
この辺りは海岸が近く、海から来る風を肌で感じられた。
しばらく歩くと、明かりの点いた町らしきものが見える。
さきほど男達が言っていた港町のようだ。
少し歩くと町の門が見えてきた。
「こんばんは。こんな遅くまで大変だね」
門番らしき男が声を掛けてきた。
「ここは港町のアーベンか?」
「そうだよ。見たところエバ山の方から来たようだけど」
「ハイキングをしてた」
「ハイ・・・なんだって?」
「散歩だよ」
異世界にハイキングと言う言葉がないのかとすこしガッカリとした。
「身分証はあるかい?」
「いや、持ってない」
ケイが素直に答えると、門番の男は水晶玉を手に説明をした。
「じゃあこれに触って」
「これなに?」
「犯罪歴がないか調べる魔道具だよ」
ケイが水晶玉に触れると青色に光り、犯罪歴がある場合は赤く光る。
門番の男が用紙に何かを書きながら、ケイにいくつか質問をした。
「名前は?」
「ケイ」
「この町にきた理由は?」
「エバ山に行った時、そこであった奴らにこの町のことを聞いたから」
用紙に記入していた手を止めて、男が聞き返した。
「アダム達に会ったのか?」
「あーなんかそんな名前の奴だった」
「そっか、しかし日没になるのにあいつら遅いな」
門番の男が記入をし終えると、その紙をケイに差し出した。
「この紙は仮身分証で期限は三日間。その間にギルドに登録して身分証を作って貰うといいよ」
「ギルド?」
「職業別の仕事の斡旋状みたいなものだよ。この町には冒険者ギルドと漁業ギルドしかないけど、大きな街だと商人ギルドや錬金術ギルド、鍛冶ギルドなんてものもあるよ」
「そこに登録すれば身分証を貰えるんだな?」
「そうだよ。漁業や商人、錬金術に鍛冶ギルドなんかは、最低でも関連スキルがないと登録できないから、俺なら冒険者ギルドをすすめるよ」
「へぇ~それはどこにあるんだ?」
「門をくぐって突き当たりにある二階建ての建物だよ。二つの剣が描かれている看板があるからすぐわかると思うよ」
門番の男は日没になると、依頼報告の関係で混んでいるから時間を空けるか日を改めた方がいいと教えてくれた。
「わかった。じゃあこれから宿に向かうから場所を教えてくれ」
「それなら、この通りの左側の建物に枕の絵が描いてある看板が宿屋になるよ」
冒険者ギルドと同じ通りにある、宿屋『ポーサ』の場所を教えてくれた。
去り際に門番の男から通行料が必要と言われ、1.000ダリを支払うとお礼を言って別れた。
港街アーベンは東側から南側にかけて海が広がっており、漁業や貿易の玄関口として栄えている町である。
多くの人が行き交う大通りを歩くと、左側に枕の絵が描かれた看板が見えた。
教えてくれた宿屋『ポーサ』のようだ。
中に入ると、夕食をとっている活気のある客や冒険者の姿が見られた。
「いらっしゃい!」
声に張りのある恰幅のいい女性が姿を現した。
「宿泊したいんだけど空いてるか?」
「素泊まりで個室だと一泊1.000ダリ、大部屋だと500ダリ。朝晩食事付きだと個室・大部屋共一泊1.200ダリだよ」
「とりあえず個室でメシ付きを7日間」
「それなら8.400ダリだよ」
ケイがお金を支払うと女性が鍵を渡してきた。
「二階の一番奥の右側の部屋を使ってちょうだい。あとご飯はどうするんだい」
「それなら今食べる」
「じゃあ空いているところに座って待ってちょうだい」
ケイが階段側の空いている席に座って待っていると、女性が食事を運んできた。
「あんたこの辺じゃ見ない顔だね。ここは初めてかい?」
「さっき町に着いたばかりだ」
「そっかい。あたしはここの女将をしているマリーっていうんだい。あんたは?」
「ケイ。旅をしている」
マリーが持ってきた料理は、野菜炒めとステーキと黒パンに木のコップに入っている水という内容だった。
「この肉は何の肉だ?」
「ボーンラビットの肉だよ」
マリーが答えた。
ボーンラビットはウサギに角が生えた魔物である。
本来は草食型だが、冒険者になりたての人が油断をして怪我を負うパターンが多い魔物でもある。
ケイが一口大に切って口に入れると、ほのかに甘みと弾力性があった。
野菜炒めは、野菜本来の味だけだが地球で食べているものさほど変わらなかった。
黒パンは少し固かったが食べられなくもない。コメントはそんなにない。
「ふぅ、食った食った。ごっそうさん!」
「ケイ、あんたよく食べたね~」
皿を下げにきたマリーが関心したように言った。
「結構ボリュームあって満足したわ~」
ケイは、木のコップに入っている水を飲み干し、席を立った。
マリーと別れて二階に上がり、一番奥の右側の部屋に向かった。
個室の部屋は、ベッドとタンスに机と椅子と質素な配置だった。
「やばい・・・寝る」
特にやることがないケイは、ベッドに横になるとほどなくして寝息をたてた。
こうしてケイの異世界一日目が終わった。
港街アーベン到着。
一日の締めくくりました。