表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
38/359

36、聖都ウェストリア

ようやく聖都ウェストリアに到着。

今回はどんな話が待っているのでしょう?

キャトル村から、馬車に揺られること三日。

ケイ達を乗せた馬車は、西大陸北部にある聖都ウェストリアに到着した。


「あ゛~ケツいてぇ~」

馬車から降りたケイは、長時間座っていたためお尻をさすっていた。

「長時間お疲れ様でした」

「ケイさん、私たちはこのままマンドラゴラの集荷場まで乗っていきますので、ここで失礼します」

御者の男性に運賃を払うと、リリィとケヴィンはこのままマンドラゴラの集荷場まで乗っていくということでここで別れた。


「しかし人が多いな」

「年に一度の聖炎祭だからね。やはり観たいんだろう」

「ところで聖炎祭って、マンドラゴラを食う祭なのか?」

ケイがレイブンに尋ねると、苦笑いをしてから訂正する。

「聖炎祭はもともと、聖なる炎を呼び出し、全ての土地に浄化と祝福を願って行われる祭なんだよ」

「マンドラゴラ要素一ミリもないじゃん」

「どうやら、いつの間にかマンドラゴラを食べるなんていう話が出回ったようだ」

そもそも聖炎祭は、創造神アレサに敬意を払って行われる祭りでもある。

なにをどう間違えたのか、別名マンドラゴラ祭などとふざけた名前が出てくる始末。

もはや、なんでもメルディーナのせいになりかねない。


そんな思考は置いておくとして、ケイ達は宿をとってから観光することにした。



ウェストリア中心には、バザーのような催し物が行われている。

地元の人の話では、月に数回行っているようだ。

左右に伸びた露天には、日用品から土産物まで、ざまざまなものが売られていた。


屋台で鳥の串焼きを人数分買い、食べ歩きながら店を見て回る。


「なぁ、これなんだ?」

ケイが指した先の屋台に、白い花が売られている。

「それは白閃花(はくせんか)だよ」

「白閃花?」

「フリージア地方で咲いている花で、花びらの真ん中に白い線が入っていることからその名がつけられたんだ」

レイブンの説明に関心を示す。


「おや?お兄さん白閃花は初めて見るのかい?」

店の男性が声を掛ける。

「そうだけど?」

「じゃあ、この店で売られているもの全てが、白閃花だとは思わないだろう?」

「へ?これ全部!?」

ケイが驚くのも無理はない。

花の他には、かごに木製のコップや食器類が置かれている。


「白閃花は、最初は普通の花なんだけど、その後大きくなって木の花になるんだ」


店の男性の話では、フリージアは他国より魔素が多く存在する国であり、魔素を吸収しやすい白閃花が取り込むと、その関係で次第に大きくなり、花の形を残したまま木に変化するそうだ。

「じゃあ、このかごや食器なんかも木製になった白閃花なのか?」

「そうだよ。特にかごは、中をくり抜いて外側に飾り彫りを施しているんだ」

かごをよく見ると、丁寧に花の形にくり抜かれておりとても芸が細かいことがわかる。


「まぁ綺麗!おじさん、これも白閃花なの?」

アレグロが手にしたのは、小ぶりの白閃花があしらわれたイヤリングだった。

「そうだよ、お嬢さん!」

「これは枯れないの?」

「この白閃花は、魔素を含む前に木から落ちた花で、特殊な方法で加工したから枯れることはないんだよ」

その特殊な方法とは何か?と尋ねると、内緒だよと店の男性が返す。

「こちらも素敵ですね」

タレナはペンダントを手に取る。

白閃花の形をいかし、茎の部分に金具を取り付けられており、そこにひもを通して首に通せるようになっている。


二人とも気に入ったのか、実際に手にとって買おうか迷っているようだ。


「おっちゃん、その二つ頂戴!」

「ほぉ。二つで1000ダリだよ」

店の男性にお金を支払うと、アレグロとタレナが喜びの表情をした。

「ケイ様、ありがとう!大事にするわね!」

「ケイさん、ありがとうございます」


よほど嬉しかったのか、二人はすぐに装着した。褐色の肌と白閃花の白がよく似合っている。


「シンシアはいいのか?」

「わ、わたしはいいわ!欲しいものなんてないし・・・それより早く次に行きましょう!」

「お、おい!シンシア!?」

先を行くシンシアにレイブンが後からついていく。


しかし、ケイは先ほど、シンシアがある商品を見ていたことを見逃さなかった。

「おっちゃん、それも頂戴」

「どうぞ!・・・それにしてもお兄さんも隅にはおけないねぇ」

店の男性が笑みを浮かべたまま商品を手渡す。

「えっ?いやぁ何かほしそうな顔してたからさ~」

「羨ましいことだ」

「?・・・じゃあ俺たちは行くよ!」

「あいよ!またのお待ちを!」


店を離れたケイ達は、先に歩くシンシア達と合流した。



「えっ?なに・・・?」


シンシアが戸惑いの声をあげる。

彼女の手には、白閃花をあしらったブローチが置かれている。

「何ってブローチ。お前さっき見てただろう?ほしいのかと思って買ったんだけど?」

「といゆうか、これの意味を知ってて言ってるの!?」

なぜか焦りと照れが見え隠れしているシンシアに、四人が首を傾げる。

何故だろうとレイブンを見ると、苦笑いをしながら「さぁ~」と肩をすくめた。


実は、白閃花の花言葉は【あなたは私の物】という意味がある。

白閃花を用いたアクセサリーを異性に送ることは、一種の告白の意味ともなっている。

そのため、意味を知っているシンシアが真に受けてこのような態度をとり、レイブンは、たまたまだろうと悟ってなんとも言えない表情をした。

しかし、ケイもアダムもその意味を知らず、ましてや送られたアレグロとタレナもこのことを知らない。


四人がこの意味を理解するのは、もう少し後になってのことだった。



散策のため大通りを大聖堂の方に歩いて行くと、遠くで女性の声援が聞こえてきた。

大通りの北側でたくさんの女性の姿が見える。


ケイ達はそれがなんなのか、近寄ってみてみることにした。


そこには、金色の髪に緑の瞳をした子どもの姿があった。

お付きの女性や護衛の男性を伴っているようで、位の高そうな印象を持つ。


「なに?・・・子ども?」


「あなた!マルセール様に失礼よ!!」

「マルセール様に敬意を払いなさいよ!」

「あなたなんかお呼びじゃないのよ!!」

後ろから覗き口にしたところ、女性達が振り向きケチョンケチョンに言われてしまう。

女性達は、前を向きケイとは違った声色で声援を送っていた。


「マルセールって誰?有名人?」

ケイはアダムに尋ねると「あぁ。だからか」と言った表情で教えてくれた。

「彼はマルセール・サン・ルーヴァンリッヒで、大聖堂の次期大神官と言われている人だよ」


ルーヴァンリッヒ家は、代々神官の家系で男子は必ず神官になる決まりがあるらしい。

また、光属性の上位と言われる、聖属性魔法を扱える数少ない家系でも有名である。


そのため、医者に見放された病気や怪我を負った人達が、最後の砦として訪れるという。


「しかも、生まれつき身体が弱いらしい。よく体調を崩すと噂になっている」

マルセールの方を見ると、心なしか少し顔が青い気がする。

「幼い頃からそのような運命を背負っているなんて、なんか大変そうね」

「聖属性魔法は使える人間が少ないですから、仕方ないとはいえ少し気の毒ですね」

聖職者のことはわからないが、得意分野であるからには役目を果たすということなのだろう。


人だかりの謎が解決したところで、ケイ達は来た道を戻ろうとした。


ウェストリアはアルバラント同様に敷地が広いため、一日で回ることが出来ない。

まだ、西側と東側を回っていないため、明日以降に行ってみることにしようなどと考えていた。



その時、人だかりから悲鳴が上がる。

何事かとそちらを見やり人垣をかき分けると、先ほどの少年が地面に倒れている姿が見えた。


白閃花と検索すると、黄色い花がついた白いサボテンの画像が出てきたのですが、初めて見ました。

次回は6月21日(金)の更新です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ