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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
356/359

346、ありし日の思い出

皆様ご無沙汰しております。約二ヶ月ぶりの投稿でございます。

前回忘れた方に簡単に説明しますと、ゴルゴーンの屋敷の倉庫からカメラを見つけたケイ達は、フィルムを現像できないか、専門の知り合いが多いミスト=ランブルに相談するという話になってます。

「随分と急な話だね」


再会したミスト=ランブルは、困惑しながらも開口一番にこう述べた。


というのも、ケイ達が彼の屋敷へ向かおうと倉庫を出た矢先に、別の用でゴルゴーンの屋敷に訪れていた彼と鉢合わせになったからだ。


タイミングがいいなと思いつつ、ミスト=ランブルに用があってそちらに行こうと思ってたと言い、今までの経緯を説明をする。

当然ミスト=ランブルの困惑の様子は軟化することなく、それ以前にアグナダム帝国の浮上やアスル・カディーム人が存命していたこと、アレグロが本来の身体を取り戻した事も、町で物語を紡ぐ吟遊詩人を聞いている気分になっている。


「まぁ、ロザリンドの表情を見れば、君達が嘘を言っているわけではないと理解はできるけど、それと僕に何が関係があるんだい?」

「実はあんたに相談があるんだ」

「相談?」

「ゴルゴーンの屋敷の倉庫で、コレを見つけたんだ」


ケイが倉庫で見つけたカメラをミスト=ランブルに手渡すと、彼はそれを興味深げ眺め、全体的な汚れと構造・部品からかなり古いものだと口にする。


「随分、古いものを見つけたね」

「このカメラって構造的にフィルムが入っているみたいで、ジャヴォールに現像できる奴っているか?」

「えっ?君はカメラを知っているのかい!?大分と博識だね。まぁ、さっきも言ったように構造的にかなり古い物だし、今と手法がかなり違うから一概には言えないけど、知り合いにカメラを専門とする人がいるから掛け合ってはみるよ。だけど・・・」


ミスト=ランブルは、カメラの存在を知っているケイに驚きながらも、知人にカメラを専門に取り扱う人が思い出し、歯切れが悪そうな物言いをしてみせる。


「言い切らないな~」

「専門である知人は大分若いから、彼がどのくらい前の物を専門に扱っているか知らないんだ。見たところ部品も今の性能とかなり違うし、製造していない部分もあるようだし」


ケイが疑問を浮かべ聞き返すと、見つけたカメラの一部は今のジャヴォールでは製造されていないこと、それを専門としている知人も代替わりをしているため、どこまでの年代物を取り扱い、認識しているか分かりかねると返す。


「とりあえず、これからその知人のところに行くから少し時間をくれないかい?」

「それなら俺たちも付いていっていいか?」

「君たちもかい?」

「待ってる間、ソワソワするんだよ~」


ここで言い渋っても事態は進展しないため、ミスト=ランブルが託されたカメラを知人に見せてみると踵を返そうとした時、ケイが同行してもいいかと尋ねる。


当然待った方がいいと思ってはいるが、ケイはどうしてもフィルムの中身が気になり、何が写っているか知りたい気持ちがあった。それに、ゴルゴーンがわざと倉庫に隠していたとなると、もしかしたらアグナダム帝国に関連する何かが写っているのではないかと考えている。


ミスト=ランブルは、しばし考えてからケイの様子も相まってか、まぁいいかと半ば考えを放棄し承諾することにした。



ミスト=ランブルに同行したのは、ケイ・シンシア・アダム・ロザリンド、それから付いていくと頑固として譲らなかったブルノワと少佐。


レイブンとタレナは、アレグロの体調を考慮してゴルゴーンの屋敷で待っていると述べ、ポネアも客人を放置するわけには行かないと残った。

アレグロもカメラの中身が気になっているようで、一緒に行くとは言ったものの、屋敷前の坂が緩やかでも、何度も往復するのは帰りのことを考えて体力的にギリギリになるかもしれないと諭すと「それなら仕方ないわね~」と残念そうに頷く。


四人には何か分かったら戻ってくるからと言い、ケイ達はミスト=ランブルの案内のもと知人がいる店へと赴いた。


知人が居る店は、大小様々な店が建ち並ぶ通りの一角にあった。


運河手前の通りということもあり、食品を扱う店や家具や雑貨を取り扱っている店に並ぶように、赤いレンガが使われた三角屋根の建物に辿り着く。


「ここか?」

「そうさ・・・まだ休憩のようだけど」


建物の壁にはコケが生え出し、メンテナンスしていないように見えるせいか全体的に少し古ぼけた印象がある。

ドアノブに下げられた小さな看板には【休憩中】と書かれているが、それを見たミスト=ランブルは、またいつものか・・・とため息を付いてから看板の字を無視するように手に掛ける。


扉を開くと室内は全体的に暗がりが広がっていた。


窓を閉めきっているせいか、外の様子とは対照的に静まり返り、室内を照らす豆電球の照明がケイ達が入ってきた振動で僅かに左右に揺れる。


「なぁ、出直したほうがいいんじゃねぇの?」

「大丈夫さ~いつものことだから」


時間をあらためた方がいいのではと言うケイに、いつものことだからと返したミスト=ランブルは、勝手知ったる室内を迷わず進むと、カウンターのような場所に手を着いてから「やぁ!」と、目の前にいるであろう人物に声を掛けた。


その直後、音に驚いた野良猫が飛び上がるような凄まじ行動力が垣間見られる。


声を掛けられた人物は、ミスト=ランブルの声に驚き飛び起き、その拍子に派手に転けたようで、なにかが倒れる音と「いてっ!」と短い言葉を発するやいなや、バタバタと近くの窓という窓を開け、棚に立てかけていたモップを引っ掴むと、柄を両手に持ち、ミスト=ランブルに突きつけた。


「・・・あ。なんだ~君か」


吸血種の青年が、そこでようやく自分に声をかけて来た人物がミスト=ランブルだと気づき、安堵と慌て過ぎた自分の落ち着きのない行動にため息を洩らした。



ミスト=ランブルに紹介された人物は、若い吸血種の青年だった。


若い・・・と言っても、ケイ達から見ると二十代ぐらいの青年に見えるのだが、聞けば代が変わって数十年ほど経つようで、ケイが経緯を説明してからゴルゴーンの屋敷の倉庫で見つけたカメラを青年に手渡すと、なるほど・・・と専門家のような表情へと一変する。


「このカメラはかなり古めのものですね」

「年代とかって、見て分かるものなのか?」

「おおよそ1500年以上前の物でしょうね。ちょうどアグナダム帝国が栄えたあの辺りくらいです」


青年はカメラに使用された部品を指さし、アグナダム帝国からジャヴォールに入ってきたモノだと指摘した。

当然、ケイ達には専門的な知識がなくその違いが分からないが、青年は使用されているフィルムもかなりの年代物ではないかと言い、フィルムの現像に関しても、完全にできるかどうかはわからないと答える。


「現像するのは構わないんですが、ゴルゴーン様に許可取ってます?」

「それなら、私が責任を取るから大いにやってほしい」


ここで青年はふと我に返ったのか、領主の所有物を手に緊張と不安からかこちらに目線を向け、ロザリンドが自分が責任を持つと言い切り思いっきりやってくれとゴーサインを出した。



「ところで、フィルムの現像?っていうのはどうやってやるの?」


青年が現像のため、一旦席を外したタイミングでシンシアがこう尋ねた。


ケイもネガフィルム自体をあまりよく知らないが、日本でも昔はプロアマ問わず幅広く使用されている事は祖父から聞いたことがある。


「たしか、現像液に浸して映像が浮かび上がったら紙に焼き付けて乾す、というとこまでしか知らねぇんだ」

「それで現像ができるってこと?それに現像液ってなに?」

「現像する際にいろんな薬品が使われていると言うことしか分からん。そもそも現像自体、専門家かかなりのマニアしか詳細を知らねぇんだよ」


フィルムの現像に関しては、ネガフィルムを現像液に浸し、しばらく経つとフィルムに映像が浮かび上がるので、そこから拡大機(今でいうところのプリンターに近い機材)にセットし紙に焼き付け、その後乾燥機に掛け、乾いたら完成というケイの説明で大体合っている。



「皆さんお待たせしました」


一時間ほど経ってから青年が戻ってきた。


手には、カメラと現像したいくつかの写真が握られており、待たせて申し訳ないと謝罪してからカウンターに写真を並べてみせた。


「フィルムを現像したモノがこちらです。かなり古いせいか、色が上手く入りませんでしたが、全体的な映像はハッキリ確認できるかと」

「これは・・・アグナダム帝国時代のものかい?」


ミスト=ランブルが写真を一枚手に取り、写し出された場景を見て驚く。


写真には、アグナダム帝国が存在していた頃の場面がいくつか写し出されていた。

若い男女数人が笑い合っている様子に、当時の建造物らしき石造りの家々の前で子供達が犬や猫と戯れる姿がありありと写し出されている。

青年曰く、フィルム自体が劣化している事もあり、写真全体が色あせたような色彩が相まってか、当時の面影をまざまざとケイ達に見せている気がする。


「ケイ、この犬って少佐に似てない?」


シンシアが一枚の写真を指さした。


足元で自分たちも見たいとせがむブルノワと少佐を抱き上げながらその写真に目を移すと、たしかに子供達に混じって、黒色の頭が三つある犬のような動物がもみくちゃにされる様子が写っている。


「サーベラスの祖先ってやつか?」

「少佐の種族?って、この時代から存在していたってこと?」

「アスル・カディーム人のように長命なのかはわからねぇけど、少なくともこの時代から存在してた生き物だということはわかるな」


また写真には写っていないが、もしかしたらブルノワの種族も当時アグナダム帝国で存在していた生物なのでは・・・と思い浮かぶ。


「ケイ、これってアグナダム帝国の王族か貴族の人達じゃないか?」


声を上げたアダムが、その中のある一枚を手にケイ達に提示してみせた。


差し出された写真には、長い階段が続く丘の上に神殿が建っている風景で、神殿と階段の位置から当時の北部地区ではないかと思われる。


それから、その風景を背景に三人の人物が並んでいる。


三人の内二人はアスル・カディーム人のカップルのようで、二人の隣に別の男性が立ち、全員がこちらに笑みを浮かべている。

また三人目の男性は他の二人とは異なった容姿をしており、二人より頭一つ以上ある身長と体格もあってか写真で見ても大きな印象を抱く。

写真の色合いから、その男性が誰なのかはわからないが恐らく別の種族の人物なのだろうと考える。


「この男性は誰かしら?随分大きな体格だけど?」

「当時のアスル・カディーム人は交流が広いとなると、余所から来た奴だとは思うけど・・・」


この写真をイシュメル達に見せたら誰か分かるのではないかと考えたケイの隣で、ふとロザリンドが口を開く。



「この人、もしかしたらお父様じゃ・・・」



ロザリンドの言葉にケイ達は驚き、再度写し出された写真を凝視した。

ミスト=ランブルの紹介で、カメラの専門家である青年に写真を現像して貰ったところ、いくつか情報が上がりました。また、その内の一枚に驚きの声を上げたロザリンドに輪を掛けて驚くケイ達。

果たしてどうなることやら・・・


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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