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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
355/359

345、地下の倉庫

ご無沙汰しております。

前回ゴルゴーンに断られたケイ達は、ロザリンドの話を元にとある場所へと向かいます。

「せっかく皆に来てもらったのにすまない・・・」


退室してしまった二人を引き止められなかったロザリンドは肩を落とした。


ケイ達はゴルゴーンの協力拒否の裏には事情があることを感じてはいたが、娘であるロザリンドからすれば、理由なくケイ達の頼みを断ることに残念というよりもガッカリした様子が窺える。


「少し時間を貰えないか?」

「えっ?なんで?」

「もう一度、お父様に話をしてみようと思う。あのままでは納得がいかないし、君達も困っているだろうから・・・」

「ちょっと待てって」


ロザリンドが唐突に席を立ち、再度ゴルゴーンとアンドワールを説得してみると言い出したので、ケイは慌てて彼女を止めた。


「しかしこれでは話が進まないだろう?」

「言いたくない話があるかもしれない。一旦別の方法を探そうぜ」


別の方法?とロザリンドが首を傾げたため、ケイは先ほど彼女が言っていた幼少期の話を持ち出した。


「さっきロザリンドが言ってた幼少期の話があっただろ?」

「倉庫で見つけた古い文献の話か?」

「その場所って今でもあるのか?もし、まだその場所があるなら見せてほしいんだけど?」

「倉庫の場所のことか?それならあまり使われていない西側の地下のことだが、ガラクタばかりでケイ達の助けにはならないかもしれない」


それでも構わないとケイが返すと、躊躇っているロザリンドは「それでもいいなら・・・」と、その提案に承諾した。



ロザリンドとポネアの案内で、ケイ達は屋敷西側の地下倉庫へとやって来た。


地下へと続く階段を下り、ロザリンドから「ここは普段使わない物を入れているから、本当にガラクタばかりだぞ?」と念を押され、彼女が捻れた蔦がモチーフの金色の取ってに手を掛け押し開けると、植物のレリーフがあしらわれた木製の重厚な扉が開かれる。


「・・・本当に倉庫だな」


ロザリンドが念を押しただけあって、足を踏み入れた地下倉庫には使用されなくなった日用品から美術品と言えるのかわからない形状の作品が無造作に並べられていた。

地下ということもあり窓はなく、ケイが予め鞄に入れていたランタンを取り出そうとすると、ポネアが片手を壁に付け手探りで何かを探し始めた。

ほどなくして、ポネアが対象となる部分を見つけたのか、パチッと何かを起動させる音と同時に室内が明るくなった。


「眩しっ!」


内部が見通せる状態になり、ケイが天井に目を向けると、少し高い位置に小型のシャンデリアの様なものが等間隔にいくつか設置されており、よく見ると何かの石を媒体に明かりが灯されている状態が見えた。


「ねぇ、この照明って何が使われているの?」

「この照明は、光る石を職人が加工して作成されたものです」


ケイと同じように見上げたシンシアが、不思議そうに天井の明かりを指さした。


ポネアの話では、ジャヴォールで取れる光る石を職人が手作業で加工した照明だといい、天井用の明かりとして市場で売られているとのこと。

またこの光る石は安価で市民にも手を出しやすい反面、一つの石から発せられる光が非常に弱く、照明として作成する際に、数を多く配置しないとその役割が補えないということから、どうしてもシャンデリアのような複雑で豪華な形状の照明になってしまうところがあるのだそうだ。


「広さと天井が高いわりには圧迫感がすごいわね。見たところ手入れどころか掃除もほとんどしてないみたいだけど・・・」

「お恥ずかしい話ですが、普段から他の者が立ち入ることがないため、その時仮置きしたまま積み重なったのがこの現状です」


本来この倉庫の天井は、大柄なアダムとレイブンでも見上げるほど高い位置にあるが、仕舞われている数が多く、無造作に物が置かれ、質量の関係で広いわりには圧迫感を覚える。

しかも長らく掃除をしていないためか、全長のある銅像の頭部に数センチほどの埃が積み重なり、窓も換気用の空調もないせいか、だれもここに手を付けたくない意思を感じ取ることができる。


「・・・で、なにか分かりそう?」

「これだけじゃ、まだなんもわかんねぇって~」


倉庫内にロザリンドが見つけたモノは、当然ゴルゴーンに回収されたわけだが、他に何か出てきそうな気配どころか、塵も積もれば埃の輪と言わんばかりの光景に、さすがに長居はしたくないなとシンシアが嫌そうな表情を浮かべる。


「ケイ、私が見つけたモノの他になにかあると考えているのか?」

「まだ断定は出来ねぇけど、もしかしたらゴルゴーンは自分が見たくないモノをここに隠していたんじゃないかと思うんだ」

「父上が見たくないモノ?」

「例えば、アグナダム帝国についての資料かそれに関連するなにか、とか?」


今思うと、ゴルゴーンと再会した際に彼の表情が一瞬動揺した動きをしていた。

それは些細な動きだったが、ケイにはゴルゴーンの顔の造形から考えると、普段のそれとは違った違和感を感じていた。となると、ゴルゴーンまたはアンドワールは何かを隠しているのかもしれないと憶測を立てる。

現状では、本人に面と向かって指摘するには証拠がなく、話し合いの場では静観するしかなかったが、ロザリンドの話から【何かがある】ことは間違いないだろが、それを示すヒントが少ないため、かなりの賭けに出たのがこの今の状況である。


「ところでケイ様?ブルノワと少佐の姿が見えないけど?」

「えっ!?あ!アイツら、またどっかに潜り込んだな!」


アレグロがケイに、先ほどから姿が見えないブルノワと少佐の所在を尋ねた。


彼女の指摘にハッと気づき、またかよ~と頭を抱えたケイは、彼らの悪い癖がでたとため息を洩らした。


「・・・えっ?もしかしてブルノワと少佐はここに紛れちゃったってこと?」

「狭いとこや物が多いとこがあると突っ込んで行っちまうんだよ。たぶんテンション上がってるのかもな~」


ケイが再度ため息を洩らし、埃まみれの倉庫中にブルノワと少佐が突っ込んだ様子をイメージしたシンシアが身を震わせる。

子供特有の好奇心が発揮されたのか、物の隙間に入り込んでいるのだろうと思うと探さなければならないのだが、その意力が失せている。

四の五の言っている場合じゃないなと思い直したケイは、倉庫内に紛れている彼らを呼びつけた。


「ブルノワ!少佐!どこだ!?」


ケイの問いかけにワンテンポ遅れてから、とこからか『パパ~ここだよぉ!』とブルノワの声が返ってきた。


左前方からの声に目を向けると、女の子と男の子を模した像が両手を繋いだ状態で手を上げ、膝を立てて向かい合うその間から、ブルノワと続けるように少佐がひょこっと顔を出した。

子供の遊びのトンネルを髣髴とさせるが、想定通り埃と汚れにまみれのまま顔を出した彼らの姿に、三度目のため息がケイから洩れた。


「お前ら、何してんだよ~」


呆れた物言いでブルノワと少佐の顔をタオルで拭ってやると、反省していなそうな声色で『ごめんなさ~い』と謝罪の言葉と同時に『聞いて!聞いて!』と言わんばかりのテンションで、ケイに押しつけるようにある物を手渡した。


「ん?ブルノワ、これどうしたんだ?」

『向こうで見つけた!』『バウ!』『ワウ!』『ガウ!』


突きつけられるように手渡された物は、直径15cm程の木製調の箱だった。


ケイ達が知らない間にブルノワと少佐が探索に出て見つけたモノだろう。

一見ただの箱にしか見えないのだが、よく見ると側面に溝があり、開閉出来る仕組みになっているようだ。

ケイが6cm程の厚みのある箱を軽く振ると、僅かに音がしたような感じがした。しかし身が詰まっているような音というよりも、組み立てられた装置類を振ったような音に似ている。


「ケイ、それって何か入っているの?」

「組み立てた時の部品類の隙間の音はするけど・・・」

「箱の側面に溝があるから、開閉できるんじゃないのかしら?」


ブルノワと少佐を抱きかかえるため、ケイが手に持っていた木製の箱をシンシアに渡すと、後ろに居るロザリンドとポネアに見つけたモノを聞いてみた。


「ロザリンドとポネアは、これが何か知ってるか?」

「いや、それは見たことがないな。私も全部を把握しているわけではないが、状況からみるに大分古いものだとは思う」


ポネアも自分も見たことがないと横に振り、もしかしたらゴルゴーンの持ち物の一つではないかと考える。


「きゃっ!」


話の途中でシンシアが小さく声を上げた。


ケイが振り向くと、何かに驚いたのか目線が下を向き、対象となる場所を見つめている。


「シンシア、大丈夫!?」

「え、えぇ。箱を触っていた勢いよく開いたから驚いちゃって・・・」


シンシアが落とした箱を拾い上げ、開いた箱の中身を確認すると、その様子を見ていたケイが何かに気づき声を上げた。


「・・・あ」

「えっ!何!?私、なんかしちゃった?」

「ちがうちがう!それさ・・・カメラじゃねぇの?」


ケイが呆けた顔で「えっ?」と返すシンシアの手から木製の箱を取ると、鑑定をかけてすぐに、それが自分の思っていたものと合致したことにやっぱりと頷く。


「それってカメラなの?ケイやアダムが持っているスマホについているものと大分違うけど?」

「いや。スマホに付いているカメラは、だいぶ時代が進んだ結果のものだから、意外と最近のものだ。逆にカメラ自体の歴史は、俺の国だと200年程前からあった代物だって聞いたことがある」


俺の国という言葉に言い換えたケイだが、一説にはカメラの原型となる木製の箱は1826~1827年頃には既にあったとされている。

後にネガフィルムや今のスマホに搭載されたカメラと進化していくのだが、ダジュールで見つけたカメラもどき(仮)の箱の形状から、フィルムの様なものが搭載されているのではと考える。


「ロザリンド。これってカメラだと思うんだけど、こういうのに詳しい奴って知らねぇか?」

「カメラ?・・・あぁ。たしか一時期流行ったって誰かが言ってたな~」

「それでしたら、ミスト=ランブル様に伺ってみてはどうでしょう?」

「そうだな!彼なら顔も広いし、専門家の知り合いもいると聞いたことがある」


ロザリンドとポネアから、以前顔を合わせたミスト=ランブルの名が上がる。


芸術家でもあるミスト=ランブルに聞けば、何か分かるかもと提案されたケイ達は、早速彼に会いに行くべく一旦倉庫を出たのである。

ブルノワと少佐が見つけた木製の箱が古びたカメラと気づいたケイ達は、ロザリンドとポネアから芸術家でもあるミスト=ランブルの元へと向かうことにしました。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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