339、決断の悩み
皆さんこんばんは。
ご無沙汰しております。
12/2から更新が途切れ申し訳ございません。
多忙からか病気になりお休みしてました。
今年最後の投稿になりますが、これに懲りずまた来て頂けると幸いです。
「「「「……あっ」」」」
リオンとラオに寄り添っているガイナール達とバルトルを残し、ケイ達ははじめに通された部屋へ戻ってきたわけなのだが、ここである小さな問題に直面していた。
『……パパ、きら~~~い!』
リオンとラオの対応をした結果、ブルノワを置いて来てしまったのである。
幸い、ルイの部下である女性が機転を利かせ、ケイ達が戻ってくるまで一緒に居てくれていたようだが、当の本人であるブルノワは完全にヘソを曲げてしまい、ケイ達が戻るや忘れられていたことにかなり立腹している様子があった。
最初に部屋を飛び出した少佐も、謝罪の意味を込めた鳴き声を上げたが『少佐もキライ!』とクリティカルヒットの言葉を浴び、戦意喪失してしまったかのように耳が垂れ、人の様に肩を落としているようにも見える。
「ブルノワ、悪かった」
『きら~い……パパきらい!』
よほど寂しかったのか、ブルノワが女性の元からケイに駆け寄りすかさず抱きつくと、ケイも忘れていたことを素直に謝罪し、悪かったと抱きついた彼女の頭を撫でる。
ブルノワの表情は、肩口で顔を埋めているせいかよく見えなかったが、声の様子から相当我慢していたようで、次第にむせび泣きへと変わり、ケイは本当に悪かったと何度もブルノワの頭を撫でて落ち着かせた。
しばらく経ちブルノワも落ち着いた頃、同じタイミングでガイナール達が戻った。
ガイナールが部屋に入るやケイに抱きついたままのブルノワの様子を見て察し、もう少し落ち着いてから本来の用件へ移ろうと提案された。
またこの時、一緒にリオンも戻って来たのだが、あんなことが遭った後だというのにラオのことが気になるようで、是非とも同席したいと懇願したので、その願いを聞き入れたそうだ。
「そういえば、ラオを調べるってなにを使うんだ?」
「それならアレだよ」
ガイナールが指し示した先に、丁度準備のため一度退室をしたルイが装置のような道具を手に戻って来た。
その道具は、握りこぶしほどの半球の水晶を中心に小さな半球の水晶が囲むように板にはめ込まれたシンプルな構造をしているが、具体的にどんなものなのかが分からないケイは、ガイナールにその詳細を尋ねてみることにした。
「ガイナール、あの装置って具体的になにが分かるんだ?」
「あれは一般的に普及している魔力測定器と同じ系統なんだが、属性や魔力量、他には本人も気づいていないであろう特性をより詳しく調べることができるんだ」
たまに冒険者ギルドで見かけるギルドカードを作成する羅針盤型の装置に似ているが、ガイナール曰く構造はそれとは異なるそうで、どちらかというと魔力測定器の一つに分類されている代物とのこと。
そうこうしている内にルイが装置をテーブルに置くと、緊張のせいかラオが一瞬強張った表情を見せた。
隣に座るバルトルが落ち着かせるように肩を軽く叩き、大丈夫だと宥めると、バルトルを見やったラオが緊張を含んだまま頷き、二~三度深呼吸を繰り返してからその装置に手を置いた。
ラオが装置に手を置いた部分から白い光が一瞬輪の形に広がり、霧散した後から装置の水晶部分が赤から青、比較的強い緑へと変化し、最後には一瞬だけ黄色に点滅をすると、ほどなくしてその現象が沈静された。
「ルイ…結果を」
「はい。彼の適性は、火・水・風の三属性は確定。あと比較的弱いですが土属性の適性もありました。その中でも緑色が強く光ったので、系統的には風属性がもっとも得意な分野と判断出来ます。魔力量に関してですが、現状では年頃の子の平均値の二~三倍多いと見受けられます」
ガイナールが尋ねると、装置から発せられた現象を元にルイが結果を口にする。
どうやら魔力が開花したラオは、少なくとも三属性を所有しており、他の系統よりも弱いが土属性の適性もあるようで、魔力量も平均よりも多いことが告げられる。
これはエルゼリス学園に通う生徒よりも多く、訓練次第では系統の弱い土属性を含めた四属性を操ることができるのでは?と言われているものの、複数の属性を操るということは並大抵ではないだろう。
「ラオ君、もし君が今よりも魔法を上手く扱うことが出来るようになると言ったらどうしたい?」
ふと、ガイナールがラオにこんな質問を投げかけた。
一瞬その意味が分からず疑問を浮かべたラオだが、ガイナールの表情になにか決意のようなものを感じ取ると、まさかとケイはその続く言葉の行く末を見守った。
「では、言い方を変えよう。私は、ラオ君…君を息子の“従者”にと考えているんだがどう思う?」
その場にいる全員がガイナールの言葉に驚愕した。
まさか国王自ら、次期国王とも言える息子の従者にラオを指名するとは思わなかったのだ。
現にバルトルも目を丸くしたままラオとガイナールを交互に見つめ、ケイ達も驚きを通り越して言葉に出ず、当事者であるラオとリオンすらもまさかこんなことを考えているとは思いもしなかった。
「お言葉ですが、ラオを従者にとはどういうことでしょう?」
「バルトルさんの疑問はもっともです。私も昨日今日で考えていたわけではありません。息子はいずれこの国を担う王となります。そのためには、信頼できる者がいなくてはなりません。ですが、その将来を考えたとき息子と協力して貰える人物がおらず、そのことで長い期間悩んでいました。そんな時にケイ達からラオ君のことを聞き、今回のことで彼に息子を助けて貰ったことから、もしできることなら、今後も息子のよき理解者になって貰えないだろうかと考えていたのです」
「それは、従者というかたちで…ということでしょうか?」
「従者というと強制を感じるので、我々はあまりその言葉が好きではありません。それを抜きにしても、今後も息子と仲良くして貰うことはできないでしょうか?」
どうやら今回ラオがリオンを助けたことにより、ガイナールとゼレーナはラオにリオンの良き友、良き理解者でいてくれないかと投げかけた。
もちろん従者の話は強制ではないことを付け加え、それとは別に長年仲の良い友が居なかったこともあってか、今後も変わらずに息子と仲良くして欲しいという心配が一番にあった。
一方で、驚いて互いに目を合わせたまま半ば固まったリオンとラオの様子にバルトルは心配を通り越して不安を感じていた。
それは、ラオと姉であるミゼリとの姉弟間の問題が含まれている。
実の両親が居ない二人は、他人でありながら親の役割もあるバルトルから見ても不安定な間柄で、ミゼリの極度の心配性が故にラオと衝突することも度々あったことから、その辺りもどうなるのかと悩みの種が生まれる。
「ガイナール様、もし僕が望めば、魔法に関する知識も知ることができるのでしょうか?もちろん!リオンと居ると楽しいし、自分の知らなかったことも彼から教えて貰って嬉しいんです!」
「あぁ。我々も君が望むのであれば全力でサポートをしよう。でも、今は一度戻って考えた方がいいかもしれないね」
我に返ったラオは、リオンと仲良くなることで自分の知らなかった分野ももっと知りたくなり、ガイナールから魔法のことも色々と知ることができると聞き喜々揚々としていた。
その反面、ガイナールはバルトルの様子が気になり、性急すぎたと反省した。
バルトルの方もガイナールの様子に気づき、気まずそうな様子を見せたが、ケイから急ぎすぎでは?という声に一度考える期間を設けた方がいいと結論づける。
「ガイナール、ちょっといいか?」
「ん?どうしたんだい?」
「ラオの家族にはなんて言ったらいいんだ?ラオの姉ちゃんが極度の心配性なんだよ。さっきバルトルの様子がちょっと変だったからさ、もしかしたらソレが関係してるのかもしれねぇんだよ」
「あ、そういうことか。先ほどバルトルさんの様子の意味がわかったよ。さすがに家族のこととなると我々が割って入るのは逆に拗れる可能性がある。けど、必要があれば私が出向いて話をしても構わないと思ってる」
帰り際にケイがガイナールに耳打ちをした。
話はラオの姉であるミゼリのことで、ラオとバルトルの様子から彼女には何も伝えていないどころか、もしかしたら今までの経緯も話さず今後を決める可能性があると伝えた。
話を聞いたガイナールもどこまで自分たちが踏み込んでいいのかわからず、ある程度成り行きに任せるしかないと思っていたが、場合に寄ってはラオの家族でもあるミゼリ直接出向き、話しをする必要性があるかもしれないと覚悟していた。
先ほどのバルトルの様子のこともあってか、ケイから事情を聞いたガイナールもそのところどうすればいいのかと悩んだ。
まぁ、外部者である自分たちにできることは限られているが、目標を見つけ目を輝かせながらリオンと別れの挨拶をする一方で、思い悩んでいる表情のバルトル。
二人の真反対の様子に早急に決めることではないから、もし駄目ならまた考えるよとガイナールがそう告げた。
ケイも何かあれば連絡をするという形で、泣き疲れたブルノワを抱っこさせたまま一旦屋敷へと戻ることにした。
しかし、後に新たに一悶着あるとはこの時誰も想定していなかったのである。
魔力測定の結果、複数の属性持ちと平均以上の魔力量を持っているラオだったが、ガイナールから従者にならないか?という提案に戸惑い、一旦保留にすることになりました。
しかしこれが後に一悶着あるとはケイ達も想定していませんでした。
果たしてどうなることやら…
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