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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
348/359

338、追跡者撃退

皆さんご無沙汰しております。

少し遅れましたが、前回の続きからです。

「ガイナール様!」


ガイナールの指示で怪我を負った男性護衛が収容されてほどなく、別行動をしていたウォーレンとルイが合流した。


ウォーレンがガイナールの耳元で二言三言告げるや、そういうことかとガイナールが頭を振りため息をつき、その傍らには顔面蒼白のゼレーナが、ルイに抱えられながら落ち着こうとする様子が見られる。


「ガイナール、俺達は捜しに行くが何かわかったのか?」

「あぁ。やはり、先ほどの護衛があの扉を施錠していたようだ」

「じゃあ、鍵はそいつが?」

「思い当たる節はある。まさかここまで行動を起こすとは…」


含みを持たせたガイナールの言葉に、もしかしたら前から問題になっていた従者関連のことなのでは、とケイは勘ぐった。



「【サーチ】」



マップと併用して城内全体を対象に二人の居場所を探すと、ケイ達がいる地点から上の階へと二つの点と赤い点が移動しているのが確認できた。


今居る地点は城の西館と呼ばれている場所で、普段は主に客人や要人をもてなす場として利用され、そのなかに見張りのために兵が在住する塔が二つ存在する。

塔は西館の西側と東側に並ぶように建てられ、その間を回廊が繋いでいる設計になっており、常時兵の移動として使用されている。

また逃げる際に通路の扉が開かなかったことで、リオン達は回廊を経由してケイ達がいる場所まで戻ってこようとしているのだろうと考えた。


「ガイナール。上にある回路には扉はあるのか?」

「塔を繋ぐ回路のことかい?それなら施錠はできるが……あ!」

「どうしたんだ?」

「そういうことか…ウォーレン!今すぐ西塔経由で東塔へ向かえ!」


何気ないケイの問いに何かに気づいたガイナールは、ウォーレンにすぐに西側の塔経由で東側の塔へ向かえと指示を出した。


「ケイ、悪いがすぐに二人の後を追ってくれないか?」

「どういうこと?」

「護衛が持っている鍵は、西館にある扉全てを施錠することができるんだ。もし前もって回路に続く扉を閉めていたのだとしたら…」

「ケイ、この状況マズいんじゃない?」


ガイナールに続くようにシンシアが早急に二人を探すべきではと問いかける。


12才の少年たちが護衛に扮した何者かに狙われているのだとしたら、相手の狙いは間違いなくリオンだろう。

多少魔法が扱えるラオが居たとしても、実戦経験のない二人にしてみれば恐怖しかないことは容易に想像出来るし、その先を考えたくはないが万が一の状況もあり得る。


「バルトル、俺達が様子を見てくるからあんたはガイナール達といてくれ」

「いや、俺も行こう。一族を任されている身としては見過ごすことはできない」

「わかった。ガイナール!俺達は先に行ってるからな」

「あぁ。悪いが頼んだよ。私たちもすぐに行くよ」


ガイナール達はゼレーナがショックを受けていることもあり、すぐに後を追うという形で話がまとまったケイ達は、バルトルと一緒に何者かに襲われているリオン達を救出するために西館の東棟へ急いで向かった。



(ど、どうしよう……)


時を遡ること少し前のこと。

ラオとリオンは、男の追跡から逃れるために逃げ道を必死に探していた。

なにせ、先ほどまで護衛をしていた男性から逃げることになるとは思っておらず、あの時のラオの咄嗟の判断がなければ今頃は…とリオンは背筋が凍る思いをする。


また来た道を戻ろうとしたところ、通路を隔てるように扉が閉ざされていたことにリオンはパニックを起こしかけたが、その恐怖を抱えつつ自分を気遣うラオの姿に自分が弱気になっている場合ではない!と心の中で戒め、なんとか逃げ道を探そうと、頭の中で西館の間取りを思い浮かべる。


「ラオ!この先の階段を上って!」


施錠されている扉のせいで戻ることが出来ないと判断したリオンは、西館内通路を北に突っ切り、途中で見えた階段を指して東塔を上り、西塔を繋ぐ回廊を経由すれば戻れると指示をした。


ラオはその判断に頷くと、リオンの手を引きながら階段を駆け上がった。


階段は踊り場付きの折り返し構造で、一階分が二十四段ほどになる。

三階分続いた後に塔の構造上、螺旋階段へと徐々に変わり、視線を下に向けると、剣を手にしたままの男が形容しがたい形相で二人の後を追う姿が見える。



「駄目だ!ここも開かない!」



螺旋階段を上りきった先に西塔に続く回廊の扉が見えた。


リオンが扉に手を掛けたところ、施錠された鍵の音が恐怖と緊張を引き寄せる。

ガチャガチャと開錠しようとしたが、階段の方から自分を呼ぶ男の声が響き渡り、恐怖が勝ったのか身体が硬直する感覚が広がる。


「リオン、落ち着いて」

「で、でも…!」

「僕に任せて」


小さく返したラオが、近くに置かれていた見張り用の木製の椅子を見つけ、脚を手に持つと素早く階段側の壁に寄り、男が上がってくるのを待った。



「リオン様~?どうしてお逃げになるので「せやぁぁぁ!!」」



男が上がったと同時に、死角になっていたラオが顔面目がけて椅子を横に振った。


いくらリオンたちより体格が大きく武術の心得がある人間だとしても、まさか死角から自分の顔面目がけて椅子が飛んで来ようとは思わなかったのだろう。


椅子は顔面を直撃した拍子に部分的に破損し、破片が辺りに飛び散る。


男は衝撃の直後に激痛に襲われ、身悶えながらも拍子で落とした剣を手探りで手繰り寄せようとしていたが、それを察したラオが近くに落ちていた剣を掴み取る。

ラオが掴んだ剣は一般的に流通している長剣で、重さがあるせいか持ち上げきれずに剣先を引きずるように手繰り寄せたものの、男がその行動に気づき、剣を奪い取ろうとラオに手を伸ばそうとした。



「【エリアルブレイド】!」



「がぁぁぁっ!」


男が二人に手を伸ばそうとした瞬間、彼目掛けて突風が吹き荒れ、その勢いに巻き込まれる形で反対側の壁に叩きつけられた。


「リオン!ラオ!大丈夫か!!」

「「ケイさん!」」


寸前のところでケイが追い付き、とっさに男を対象に魔法で吹き飛ばす。


弾き飛ばされた男は、叩きつけられた衝撃で苦悶の表情を浮かべるも、なおも飛びかかろうと体勢を立て直そうとしたが、ケイを追い抜くようにバルトルが前に飛び出したかと思うと、その勢いのまま右手の拳を男の左頬めがけて殴りつけた。


そして男は、鈍い音と同時に再度壁に叩きつけられ、体勢を立て直すことができないまま、その場にグッタリと横になったまま動かなくなった。



「リオン様!」



西塔経由で回廊側を通りやって来たウォーレンとルイが合流した。


西塔に向かう途中でウォーレンはルイと出会い、搔い摘んだ説明を聞いた彼女は大層驚いた。


もちろん二人の身を案じて同行する形となったわけだが、ウォーレンにとっては運がよかったのか、本来マスターキーを取りに行く時間がなく、西塔から回廊に続く扉が施錠されていたようで、ルイが魔法で開錠したおかげで扉を破壊せずに済んだと安堵する表情が見える。

また、今回の犯人である護衛の男性を見た際「やっぱり君だったのか…」と、複雑な様子もあり、ケイが何かあったのかと尋ねると、少し考える素振りを見せ、実は…と話を切り出した。


「彼はもともと、リオン様の護衛に就く予定だったのです」

「予定だった、ってなしになったのか?」

「彼の家は、代々ヴェルハーレン家を支える騎士の家系だったのですが、幼少の頃からリオン様に陶酔していたようで、ここ数年でその傾向が加速したため、その予定を取り消したのです」


ウォーレンの話では、護衛の話を見送られた男は何度もガイナールやウォーレンに直談判をしていたようで、近く彼に暇を出そうとしていたらしいが、まさかここでリオンを襲うとは思わなかったと、話し終えた瞬間に溜息を洩らした


他の兵に取り押さえられ、連行されていく男の様子を見ていたリオンの表情は安堵と動揺がいっぱいになっているようで、傍にいたルイが大丈夫だと背中を摩っているものの、不安が消えないのか顔を青くさせて俯いた。

一方でリオンを守ろうと気を張っていたラオは、バルトルの姿を見るやその場で腰を抜かし、よほどの恐怖だったのか泣きそうな表情を浮かべている。

そんなラオにバルトルが膝をつき、無事でよかったとホッとした様子で頭を撫でると、堰き止めていた思いがあふれ出したのか大粒の涙を流し、怖かった…とぽつりと呟いた。



「リオン!!!」


それからほどなくして、ガイナールが別の兵を連れて階段を上がって来た。


ことのいきさつをウォーレンから聞いたガイナールは、リオンの姿を見るやホッとした様子で両ひざをつき、無事を確かめるかのように両手で身体を抱きしめた。

一国の主以前に人の親であるガイナールと、血は繋がっていないが自分の子供のように面倒を見てきたバルトルの姿は、どんな形であれ、やはり親子なのだなと感じる。


(私の考えも甘かったな……)


ガイナールは今回の件で、まさか自分の子供たちがこんなにすぐに危ない目に遭うとは想定しておらず、自分の見通しの甘さを痛感した。


同時に、本来なら素質を調べるためだけに訪問してくれたラオとバルトルに申し訳なさで考えが纏まらず、視線を感じ顔を上げた際にバルトルと目が合い、リオンを気遣うかのような目線が送られる。

もちろん今回はこちらの責任だと、ガイナールが一瞬目を伏せたが、それすらもお互いに無事ならいい、と言われている感じがした。


親特有の阿吽の呼吸なのだろう。


傍から見ていたケイ達は、一旦彼らだけにした方がいいかなと思い、近くで待機していたウォーレンに先に戻ってると伝え、その場を後にした。

リオンとラオを救出したケイ達は、落ち着くまで一旦その場を離れることにしました。

次回、ラオの素質検査回になります。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースで活動していきますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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