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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
346/359

336、ラオを連れて

皆様ご無沙汰しております。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

今回はラオを連れて王都へ向かうお話です。

「族長、お呼びでしょうか?」


使用人に案内をされたラオが応接室に入室をした。


いつもバルトルを名前で呼ぶのだが、来客の時には“族長”と呼ぶ決まりがあるようで、入室をした際に一礼をし、再度顔を上げたところで来客の相手がケイ達だと知り、目をパチクリとさせる。

それから、先日であったリオンと彼の横に座る見慣れない成人男性二人に会釈をしてから、バルトルに入り口に近い一人用のソファーに掛けるよう示される。


「君がラオ君だね。私は王都アルバラントの国王を務める、ガイナール=レイ・ヴェルハーレンだ。それから、彼は私の執事でウォーレン・キルニール」


ガイナールから紹介を受けたウォーレンが会釈をすると、同じようにラオも軽く頭を下げ、続けてガイナールはリオンの父親でもあると伝えると、ラオは驚いた様子で二人をを交互に見やった。


「実は息子とケイ達から君のことを聞いて、無理を言って会いに来たんだ」

「僕にですか?」

「あぁ。君の持つ魔法の能力について少し気になっていてね…」


ガイナールはリオンとケイ達からラオの事を聞いた経緯を伝えてから、本来の目的へと話を進める。


「私も息子と同じ意見で、君の持つ能力は後天的な魔力反応だと確信している。そこで、一度詳しく調べてみたらどうかと提案をしたいのだがどうかな?」

「えっ……?」


戸惑った様子のラオは向かいに座るバルトルに目線を向けたが、その真剣な眼差しから決定権をラオに任せると言われたような気がした。


たしかにケイ達と出会った後から、自分に他の人とは異なる能力が備わったことは理解しているつもりだが、実際に何の能力がという明確なことはラオ自身も気づけないでいる。

もし目の前に居るガイナールの言葉が本当ならば、自分の能力のことを教えてくれるのではと思う反面、当然未知のモノに対する不安もある。同時にこの機会を逃せば…と思った時、今後自分はどうなっていくのだろうという将来的な不安も付きまとう。


これは端から話し合いを見学をしているケイ達にも感じているようで、ラオはどんな選択をするのかと、こちらまで緊張してくる。


「そのお話…お受けします」


少し間が空いた後にラオは肯定的な返事を返した。


自分に魔力的な能力が開花した以上しっかりと把握したいという思いがあり、少し前に魔法を制御し切れずに危うくケイ達を危険にさらした事を思い出す。


「正直、自分にどんな部類の魔法が扱えるのかはわかりません。自然に身についたと言うべきなのかも分かりませんが、もしこの先そのやり方がわからず対処できなかった場合、僕のせいでこの国の人達を危険にさらしてしまうとなると、姉さんや族長たちに顔向けできません。それなら一度、調べて貰えるなら把握しておくべきだと感じています」


予めケイからラオのことを聞いたガイナールは、年のわりには大人な考えをしているなと感じていた。


息子であるリオンは周りと関わることがあまりないため人見知りで、どちらかというと内向的な部分が強い。ガイナールは、同じ年頃であるラオも自分の提案に対して尻込みをして断るのではと予想していただけに、あどけない少年の雰囲気や考えも持ち合わせながら主張もしっかりする彼に興味を引かれた。

もちろん、羽翼族は人と同じように十五才で成人になるため、まだ未成年であるラオは、保護者の承諾がなければ勝手に連れ出すことができない。


改めてガイナールがバルトルの意見を伺うように彼の方を向くと、本人が言うならと渋々大陸行きを承諾したのだった。



会話が一段落付いた頃、ガイナールが日程は後日調整しようとケイと段取りを決めていた時にバルトルから「すぐに向かわなくてもいいのか?」と尋ねられた。

さすがのガイナールも羽翼族からすれば未知の大陸にあたるので、心の準備もあるだろうし、バルトルが同行するという条件付きで承諾したため、彼らにも都合があるとみていたが、二人はすぐに出発をしても構わないと述べる。



「ユアン、急で悪いが少しの間みんなを頼む」

「分かりました」



急遽屋敷を空けることを伝えられたユアンは、玄関先で使用人達と共に心配そうな様子でバルトルとラオを見つめている。


簡単に引き継ぎ等の話し合いを行ったバルトルは、国を空ける間だけ息子のユアンに決定権を委ねるとし、実は以前から自分の仕事の一部を任せていただけに親の目から見ても任せても大丈夫だと確信をしていた。


「でもいいのか?お前の姉ちゃんに言わなくて?」


二人のやりとりを眺めていたケイが、隣に立つラオにこう尋ねる。


ラオは首を横に振り、姉であるミゼリに伝えずこのまま出発をしようとしていた。姉弟間についてはケイ達か口出すことは違うと考え黙っていたが、単に身重の姉を思ってにしては、なんか距離があるなと感じている。

実際ミゼリは、唯一の肉親であるラオに対して神経質な部分があるとユアンも話しており、年頃も相まってラオも姉に対して心配と困惑が入り混じっているのだろうと察する。


ラオとバルトルを連れたケイ達が泉のところまで戻ると、そこに不自然に設置されているゲートに二人は唖然とした様子で扉を見つめている。


「てっきり冗談だとは思っていたが、まさか本当に扉があるとは…」

「この扉でケイさん達の大陸に?」

「あぁ、私たちも最初は驚いたさ。それにこの技術は、我々の国でもできる人間はほぼいない」

「えっ!?そうなんですか?」


驚きのあまりガイナールの方を向いたラオに向かって、いつものことだが…と、しれっと付け加えるガイナールに対して、俺は珍獣かなにかか?とケイが自虐っぽく問い返す。


ケイがゲートを開けると、そこは見慣れた屋敷のエントランスが見える。


二人には、泉にあるゲートは自分の屋敷のエントランスに繋がっていることを説明し、このあとすぐに向かうのかと尋ねるとガイナールからは色々と準備をしなければいけないので、明日迎えを寄こすと告げられる。

やはり城の方も色々と準備が必要なのか、とりあえずその間だけ二人を自分たちの屋敷に泊めておくよとガイナールに返事をした。



翌日の早朝、ウォーレンが迎えに屋敷までやって来た。


一人でやって来たのでガイナールの方はいいのか?と尋ねると、フォーレが自分の役割も兼任しているので問題ないと返される。

それと、ガイナールからケイ達も同行してほしいと要請があったそうだ。

もともとケイ達と関連があることから、見知らぬ土地で放りだされるよりかは知り合いがいれば幾分気も紛れるだろうとのこと。


『パパ~~わたしも~』『バウ!』『ワウ!』『ガウ!』


ドン!と足に衝撃を受けた拍子に足元を見やると、ブルノワと少佐がふくれっ面でケイを見返している。

と言うのも、先日彼らを置いて出掛けてしまったので、戻って来た際にズルいズルいと駄々をこねはじめたため、宥めるのにかなり時間が掛かってしまったのだ。


わかったわかったとブルノワを抱っこし、身支度を整えてから城へと出発をする。



城に着いたケイがいつもより多い兵の配置に驚き、催し物でもあるのかとウォーレンに尋ねた。


「今日、なんかあるのか?」

「特別なお客様を迎える時は、いつもより警備の配置を多めにしてるんです」


ウォーレン曰く、重要な会議などで要人を迎える時は、今日のように対応をしているそうで、兵士も厳選した手練ればかり。

それに加えて城内のルートも一部封鎖しているという徹底ぶりで、おそらくだがガイナールの前世での知識も生かされているのだろうとみた。


(そういえば、ラオさんとバルトルさんの服って…?)


ここでウォーレンがはたと気づき小声でケイに尋ねてきた。


目線を後ろに向けると、ついて歩く二人の服装を気にしている素振りを見せる。

というのも、羽根を隠すように深緑色の外套を着用しているのだが、外套というと防寒のために着用されることが多い。

しかし、二人が着用しているもの見た目は厚手に見えても実際に軽い材質で、ケイ曰く、体格の大きいアダムとレイブンの服が合わず、使用人達の服も二人には合わなかっため、急遽魔法で羽根を隠すための服を創造したが、いかんせんケイにはデザインのセンスというものが欠如している。


その証拠にすれ違う兵や使用人達が、季節天候ガン無視のラオとバルトルの服装を横目でチラチラと見やり、その視線にいたたまれない二人の様子が窺える。


(ケイのセンスがないのよ)

(悪かったな!急ごしらえだから仕方ねぇんだよ)


横でシンシアが鼻で笑い、デザインのバリエーションがなくて悪かったな!とケイが拗ねる。


一行が案内された部屋は、いわゆる王室のサロンの様な場所で、普段使用している応接室とは異なり客人をもてなす為の一室のようで、アレンジメントされた花や絵画などが飾られ、極めつけには天井に天使や神を模したような絵が広がっている。


「やぁ、待ってたよ」


既に待機をしていたガイナールが声を掛け、彼の両隣にはゼレーナとリオンがソファーに座っている。


本日の主役はラオなのに、同席していいのかと投げかけるとウォーレンから聞いた話と同じことをガイナールは話し、ラオを調べるための人物であるルイがまだ到着をしていないので、少し待っていたことを話す。


「そういえば二人とは初めてだったね。彼女は私の妻だ」

「初めまして。ゼレーナ・ヴェルハーレンと申します」

「これはご丁寧に、私は羽翼族の長を務めるバルトルと申します。それからこの子がラオです」

「初めまして…」


ゼレーナと初対面である二人はかなり緊張している様子で、ラオに至っては彼女の前でガチガチに固まっている様子があり、そんなに緊張しなくてもと声を掛けられる。


「素質を調べるのって、いつもルイがやるのか?」

「いや。普段こういうことをするのは教会がやるんだが、色々と事情があってね」


ガイナールにしては歯切れの悪い物言いに、リオン関連かと納得する。


リオンの従者選別の件で、多方面から裏で色々と動いているという話を聞いたことがある。

最近ではそれがより強く感じているようで、リオンやゼレーナを一人にさせる機会を減らしていると言っていたが、この警備の配置もそれが関係しているのではと感じ取る。



「ウォーレン様、失礼します」



談話中に一人の兵が入室するや、来客に配慮するようにウォーレンの耳元で何かを二、三言伝えると速やかに部屋から退出をした。


「ウォーレン、どうした?」

「ガイナール様、ルイ様が来客の対応に時間がかかっているようで、もう少しお時間を、とのことです」


どうやら王宮魔術師のルイは、来客の対応中のためもう少しかかりそうだ。


「父上、少しの間ラオと書庫室へ行きたいのですがいいですか?」


待っている間にリオンとラオは会話が弾んだようで、話の中で本の話題になり、自分がコレクションをしている品を見せたいと言ってきた。


ガイナールは、すぐにルイが来るかもしれないと言ったが、やはり年頃なのか興味が強く出ているようで、少しだけ!と懇願するリオンに珍しさを感じているのか、外で待機している兵を呼び、護衛を頼むとすぐに戻りますからと笑顔で返すと、護衛の二人と共にリオンとラオは退出をした。

年頃であるリオンは、話し相手ができたのか自分の自慢のコレクションをラオに見せたいと席を立ちます。しかしそれがとんでもない事態になるとはこの時彼らも、またケイ達も想定していませんでした。


誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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