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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
345/359

335、交流と提案

皆様こんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、ラオと遭遇したケイ達はリオンからある可能性を説明されることになります。

「あの……もしかしたら、後天的な魔力反応が起きたんじゃないかと……」



その時、会話の合間に入るように遠慮がちにリオンが口を開いた。


後天的な魔力反応という言葉に聞き覚えのないケイ達だったが、あくまでも可能性と前置きをしてから彼は説明を続ける。


「リオン、その後天的な魔力反応ってなんだ?」

「後天的な魔力反応は、もともと魔力を持たない者たちの中に突然として魔法を使えるようになったという現象のことです。実は近年、研究者の間でいくつか報告されているんですが、稀に外部による魔力の付加を媒体にして魔力やその技術を身に着けることもあると仮説が上がっています。ですが、詳しいことはまだ研究中だとも聞きました。ちなみに(ラオ)を含む羽翼族は、身体が大きいのですか?」


リオンの言葉にラオが聞き返し、ワンテンポ遅れてから元は違うと首を振る。


「僕たち羽翼族は急に身体が大きくなるって事はないんだ。人族にも体格差があるように、僕たちの種族も大きかったり小さかったり、そんなに変わりはないよ」


そこでラオは、数年前に自分が怪我をした経緯をリオンに話した。


そこから随分時間が経った後にケイ達と出会い、古傷と共に羽根を治して貰い、ケイ達が島から去って一月も経たない内に突如関節が痛み出したのだが、身長が伸びることに比例して体格もその頃よりはかなり大きくなったと言う。

まぁ、今でこそリオンと同じくらいの背丈だが、かつては10cmも低いと言われても信用しないだろう。

また、ダジュールでは地球で聞く成長期・成長痛という言葉がないようで、最初は戸惑ったりしたものの、日が経つにつれて適応している自分に自信が付いた物言いもラオから垣間見られる。


「じゃあ、魔法はやっぱり独学なの?」

「うん。羽翼族は魔法を扱う人が少ないから全部本を読んで少し魔法ができる人から見て学んだんだ」


ラオの努力の一辺を感じたリオンは、驚いた様子でどんな風に魔法を会得しコントロールしているのかと次々に質問を投げかけている。


「シンシア、後天的に魔法を身につけることってあるのか?」

「私も詳しくは分からないけど、たしかにその話は聞くわ。統計学的には5万人に2~3人ってところね」

「それが多いのかなんていまいちピンと来ねぇけど、遺伝的なものだったりも関連するのか?」

「かも知れないわね。過去には全く魔力を持たなかった家族がある日を境に魔術に恵まれるようになったとか、ラオのように怪我をした後から身についたって話もあるみたいね」


ラオに鑑定を使ってみると後天的な魔力反応があった。

詳細をダジュールの権限で検索してみると、確かにシンシアやリオンの会話にあったような内容が閲覧できる。

しかし突如ということから法則性がなく、またシンシアが言っていた統計学的な数字はあくまでも目安。それに以前、エルゼリス学園で特別講師をした際にドワーフ族の青年が魔力ではなく、スキルを使用して発火させたことを思い出し、この世界ではイレギュラーに関してのデータや資料・情報収集が乏しいのだろうと考える。


「バルトル、この国には専門的な知識を学ぶことができる場はないのか?」

「この国には、専門的な学びの場はないんだ。以前までは教師の経験があった魔人族のご夫婦が定期的に来ていたが、かなりの高齢だったから通うのが難しくなってね、今は我々が代わる代わる基本的な事を子供達に教えているんだ」


ガラーの教育事情は、以前までは教員経験のある魔人族の夫婦が務めていた。


しかし高齢なこともあり、定期的にガラーに来て貰うことが難しくなったようで、現在はバルトルやユアンを中心に大人達が基本的な教育を教えているという。


一般的な教育ならガラーの大人達でもある程度は教えることはできるが、専門的なこととなれば、施設等が整っているジャヴォールの方が遥かにいいのだが、いかんせん供給の関係でいっぱいいっぱいなようで、そのせいかラオに不自由にさせているのではと、バルトルの言動から察することができる。

ケイ達も力になってあげたい気持ちはあるものの、特別講師の経験だけではなんともできず、ましてや素質はあるのに大陸の学校に通うとなると国際的な問題が入るため、どうしたものかと思い悩むしかなかった。


それからケイ達は、切りの良いところで話しを切り上げ、そろそろリオンを城に送り届けねばならないと思い屋敷へ戻ろうと席を立った。


帰る間際に、今回会うことができなかったミゼリの事について尋ねると、彼女は現在療養中だとユアンから告げられる。

驚いたケイが何処か悪いのかと問い返すと、彼女は身重の身体でもちろんユアンの子を宿しており、その関係から安静にしているという。

めでたいわねとシンシアが笑みを浮かべるが、一方のラオは自分のせいで姉に余計な負荷をかけたくないと、実は彼女に現状を秘密にしていると言う。


バルトルは、折を見てミゼリにこのことを伝えようとしていたが、元々ラオに対して心配性のところもあることから、もちろん周りにも内密にして欲しいと根回しをしている。

ケイとシンシアは、何かのきっかけでバレて揉めるということがないか心配しか感じなかったが、バルトルは「なるべく早くこのことは伝えるつもりだ」と苦笑いを浮かべ、ケイ達に告げたのだった。



「本当にすまなかった!迷惑をかけた!」



ガラーから戻って翌日のことだった。


早朝から屋敷にガイナールとウォーレンが訪れ、一国の主が拠点の応接室で頭を下げている姿と完全に借りてきた猫状態のリオンの様子に寝起きで頭が働かないケイは(やっぱりか…)とため息を洩らしかけた。


結論から言うと、リオンが内緒で外出をしていることを知ったガイナールが問い詰めたところ、先日の出来事を全て説明し、ケイ達に謝罪するため訪れたのだ。

王族と言ったら当然“影の護衛”という者が付くだろうと、すでに昨日の段階である程度把握はしていた。

また度々連絡を取り合っているケイは、ガイナールがリオンの従者問題で頭を悩ませている反面、城の内部で色々と問題が起ころうとしていることにも頭を抱えていることは文面と通話の雰囲気から感じ取っている。


「やっぱり“後ろ”が付いていたか~」

「いや、それもあるが…」


言い淀むガイナールに「もしかしてゼレーナに言われたか?」と返すや、対面に座っていた彼は含んだ紅茶を盛大に吹き出した。


「う゛~~っわ!きったねぇ!!」

「ゲホゲホ……君は、何を言ってるんだ?」

「当たりだろ?特に母親なんて、状況も見てないのに言い当てたりするんだぜ?」

「……それは君の実体験か?」


口元を拭きながらガイナールが問いかけると、親父と兄貴が正論でボコボコにされているのを見たことがあると切り返す。


「ゴホン…昨日(さくじつ)のことはリオンから大体の話は聞いている。それと一つ気になることがある。ケイ達が以前から面識のある羽翼族の青年についてだ」

「ラオのことか?」

「あぁ。後天的に魔法を扱うことができるとなると、しっかりとした教育を受けさせた方が良いと思ってね。リオンの話を妻にも話しをしたら、何が適応しているのか調べた方が良いと話をされてね」

「それも兼ねて羽翼族と対面したい…と?」


ケイの質問に察しがいいねと笑みを浮かべたガイナールだが、リオンの証言だけで他種族に会いたいと所望しているわけではないな、となぜかそう受け取れる。

そういえばヴェルハーレン家は代々武術や魔法を得意とする王家であり、ガイナールの妻であるゼレーナも、一時期ではあるが教員の経験があると言っていたことを思い出した。



「……で、ガイナール様の本当の目的ってなんなんだ?」



ゲートからガラーへ入り、町に向かう道中でアダムがケイに耳打ちをした。


出掛ける前にダイニングルームでくつろいでいたアダムとシンシア・レイブンに声を掛け同行しているわけなのだが、ケイからことのいきさつを聞いたアダムは、すぐ後方について歩く三人を一瞬見やってからガイナールの意図する行動が見えない様子で首を傾げた。

たしかに魔法が使えるようになった羽翼族に会いに行くという理由だけで行動を起こすとは、いくらフットワークが軽くとも動機としては薄い。


「もしかしたら、従者問題に関係しているのかもな」

「従者問題?」

「たしか、ガイナール様のご子息の従者選考の話だよね?難航してるって噂になっているよ」


レイブンはその話を知っていたようで、一部ではその話題に持ち切りになっているらしい。


王族としては噂の類は神経をとがらせる行為なはずなのだが、ガイナールから箝口令(かんこうれい)などのお達しが出ていないとなると、あまりその辺は重要視していないか、もしくは噂が出ている以上隠しても無駄だと悟りスルーしているのだろう。


「じゃあガイナール様は、ラオをリオンの従者にしようと考えているってこと?」

「本人から聞いたわけじゃないから本当にそうなのかはわからねぇが、二人は年も近いし可能性は0じゃないわな」


後ろの三人を気にしながら耳打ちをするシンシアにそう返すと、身近で同じ年頃の子供がいないからこんなことになるのかしら?と嫌そうな顔をする。

どうやらその意味を理解しているシンシアは、本当に大丈夫なの?とケイに問い返すが、さすがにそこまでは断定できないと肩をすかせることしかできなかった。



「ラオをケイ達のいる大陸に連れて行く?」



屋敷に訪れると、突然の訪問に驚いたバルトル自ら一行を応接室へと案内をした。


ガイナールとウォーレンは族長であるバルトルとは初対面のため、簡略的だが互いに挨拶を交わしたのちに、ケイ達から話を聞き、一度ラオの特異能力を調べた方がいいと助言をする。しかし当然のことながら、それだけの理由でバルトルが納得するわけもなく、一層怪訝な表情を浮かべたのは言うまでもなかった。


突然の訪問者で、いきなり面と向かってこんなことをストレートに言い切るガイナールもガイナールだが、ケイ達の話を総合すると、後天的ではあるが複数の属性を操ることができる可能性があるとガイナールは語る。


「たしかにガラーには専門の勉学を学ぶ場はないが、だからと言って他の大陸に連れて行くことは、こちらも容認できない」

「もちろん本人(ラオ)が承諾をすればの話です。こちらも無理強いはしたくないので…」


ガイナールとバルトルは、表向きは互いに笑みを浮かべて冷静な話し合いを持とうとしているのだが、正直その笑顔が黒く見えるのは気のせいだろうか?

互いの背後に睨み合うように虎とライオンの幻想が見えそうな気がするが、二人の間を取り繕うとウォーレンが入り、その隣ではリオンがオロオロとしたまま、大人二人の様子を交互に見やる。

アダムの目線が大丈夫なのか?とケイに問いかけ、恐らくだがラオはこの話を了承するだろうと思ってはいる。


しかしこの時ケイ達は、後にリオンとラオに危機が訪れようとは思ってもみなかったのである。

内緒で城を抜け出したリオンの事を知ったガイナールは、息子と執事のウォーレンを連れてケイ達の元へとやってきます。

またガイナールは話の中に出てきたラオに興味を持ち、バルトルと面会の際にラオについてしっかりと調べた方がいいと提案をしますが、それが後に大変なことになるとはこの時誰も気づく事はありませんでした。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。


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