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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
34/359

32、アルバラント王立図書館

今回は王立図書館の話。


ダットと会ってから二日後、ケイ達は今、王都アルバラントにやって来ている。

前々からお願いしていた、領主のマイヤーとエストアのディナトの推薦が通り、王立図書館の閲覧が許可されたのだ。

しかも、許可が下りることが珍しいと言われている聖都ウェストリアの教立図書館の方も下りたそうだ。

教立図書館の方は、近く聖炎祭(せいえんさい)が行われるため、その行事の後だったら大丈夫という回答だった。

やっぱり権力者は偉大である。


アルバラントの北側にある、上流地区の一角に王立図書館が建っていた。

パルテノン神殿を彷彿とさせる、巨大な柱がいくつも立っている。

行き交う人の中に、学生服を着た少年少女達の姿が見えた。

「あの学生服は?」

「あれは“エルゼリス学園”の生徒ね」

「エルゼリス学園?」

学園は、図書館の近郊に存在する。

他にもダジュールには4つの学園が存在しており、その中でも魔法に長けている生徒を集めているのが、エルゼリス学園である。

学園は、今から約300年ほど前に大賢者エルゼリスがこの土地に移住し、人々のために自ら学校を起ち上げ、弁舌をふるったと言われている。

自分の名前を学園の名前にするとは、なんとも不思議な感じである。



「う~わぁ、でっか!」

正面にある入り口から入り、あまりの広さに驚きの声を上げる。


三階建ての建物の中央が吹き抜けになっており、両側には本棚が所狭しと配置され、たくさんの本が棚に収まっている。

中央のカウンターで、学園の生徒と話をしている男性の姿があった。

「ルイーズ君、これが頼まれていた本だよ。貸出期間は7日間でいいかな?」

「はい。問題ありません」

男性が貸し出しの手続きをしてから、本を青年に手渡す。

「それでは、僕はこれで失礼します」

「あぁ。気をつけて帰るんだよ」

青年は本を大事そうに抱え、ケイ達を見かけると一礼してからその場を去った。


「こんにちは。ちょっといいすか?」

「こんにちは。はい、ご用件を伺います」

職員の男性に経緯を説明すると「あぁ、あなた方ですか。お待ちしておりました」と返された。


「私は王立図書館の館長を務めております。バートと申します」

三十代ぐらいであろう緑色の制服に、くせ毛で黒縁眼鏡を掛けていた男性が一礼をした。

それに続きケイ達も紹介をする。


「ダジュールの歴史についてお知りになりたいとのことですが・・・」

「特に俺が・・・というのは、実は他の国からきて、歴史に興味があっていろんな人に相談したんだ」

「そうでしたか。実は、特別室はまだ前の方が出てきておりませんので、済み次第のご案内になりますがよろしいでしょうか?」

どうやら『特別室』というのは、国の重要資料等を保管しているため、一般に公開されることはほぼない。

しかも、国の規定により一組ずつしか入れないため、結構面倒くさい。

「それまで時間つぶすんで問題なしで」

「承知しました。それでは当館の利用は初めてだと伺いましたので、僭越ながらご案内致します」



アルバラント王立図書館は、一階が娯楽小説で二階が専門書籍、三階が歴史関係の書籍と分かれている。

『特別室』は三階の一番奥にあり、普段は厳重に施錠しているそうだ。

内装自体は地球の図書館と変わらないため割愛しておく。


まずケイ達は、一階から見て回ることにした。


「『メリーの夢』に『ボアボンタス』に『サフランの丘』・・・?何これ面白いのか?」

棚から本を取り出しては表題を確信し中身を見る。


「ケイって『サフランの丘』知らないの?」

聞けば、巷の女性達に高い人気を誇っている恋愛小説で、10年以上も続いており現在48巻も出ているが、これでもまだ未完らしい。

「あの本はいい話よね」

「ヒロインに一途な愛情を向ける主人公が健気で、心を掴まれます」

アレグロとタレナもこの小説を読んだようで、互いの感想を語り合う。

その証拠に、サフランの丘はほとんどが貸し出し中のため、棚には数冊しか置いていなかった。

その中の一冊を手に取ると、著者:モーラン・Rと記載されていた。


中央カウンター横の階段を上り二階へ。


二階は専門書籍とあって、棚ごとに分類されている。

天体学に人類学など様々なジャンルが取りそろえられている。


特にケイが気になったのが、『ダンジョン大解剖辞典』(著者:アントニオ・B)だった。


内容を読んでみると、各国にあるダンジョンの詳細が事細かに記載されていた。

なかには【幻のダンジョン】も載っていたが、だいぶ古い情報のため「毎年変化する」と記述がされてあった。

「そちらが気になりますか?」

バートが隣に立ち、そう尋ねた。

「こういうのって冒険者ギルドに置いてある方がいいんじゃねぇのか?」

「実はこの本、私の友人が書いてまして、ギルドに持ち込んだはいいのですが、あまりいい表情をされなかったため寄贈したそうです」

内容はダンジョンの構成、特徴、注意事項などが図解式で記載されている。

「これって実際行ったやつ?」

「えぇ。ダンジョン巡りが趣味のようで、暇が出来れば何日も籠もるそうです」

これがギルドに置かれないなんて、実に勿体ない気もする。

バート曰く、冒険者になりたての人がダンジョンに潜ると同時に、地図の記入の練習もかねるそうだ。

むしろ初歩の初歩らしく、ケイのように地図や索敵スキル所有者はあまり居ないのが実情だ。


「館長、オリバー様がお帰りになるそうです」


職員の女性らしき人がバートに声を掛けた。

「あぁ。今行くよ・・・申し訳ありませんが、少しここでお待ちください」

バートはケイ達に了承を得てから、三階の『特別室』へと向かった。



「オリバー様、もうよろしいのでしょうか?」

「あぁ、急で済まない」

「いいえ、お気になさらず」


二階の階段から三階を覗くと、バートと護衛を連れた銀の鎧を着た体格のよい男性が下りてくるのがみえた。

声は低く、茶色の短髪にあごひげを生やしている。格好からするに、アルバラントの騎士だろう。


「お探しのものはみつかりましたか?」

「いいや、どちらにしろまだ情報が少なすぎる。今後も収集に励むことにしよう」

「お力になれず申し訳ありません」

バートが頭を下げると、気にするなと男性が肩をたたく。

男性と護衛は、階段で一階までおりると図書館を去った。


「あの人って誰?」

「あの方は、アルバラント城の王国騎士団総括兼第一部隊隊長のオリバー様です」

以前、幻のダンジョンで出会ったランスロットの上司ということかと納得する。

「図書館とは無縁そうにみえるけど?」

「歴史研究者のために資料を探していたようです」

どうやら、幻のダンジョンを研究している研究者から依頼があって探しにきたとのこと。また、現在進行形で幻のダンジョン消失の原因を追及しているそうだ。


「今年は城の地下に発生しましたからね。気が立っているのでしょう・・・それでは『特別室』にご案内します」

ケイ達は鉢合わせしなくてよかったと心底思い、バートの案内で三階に上った。



「こちらが『特別室』です」


案内された部屋は、全体的に薄暗い部屋だった。

明かりはランプの魔道具で照らされているものの、窓がないため全体的に重い印象を持つ。

古い文献の劣化を防ぐために、あえて窓を小さく設置しているそうだ。現に、光が室内に届かぬよう窓は天井近くに小さく設置してある。


「ダジュールの歴史関係は、奥の棚にございます」


奥にある棚に向かうと、分厚い本が番号順に整列されている。

正直、時間に限りがあるため、数冊選んで入り口近くの椅子に腰を掛ける。

他の五人も興味がありそうな文献を手に取り、各自読み始めている。


ケイが手に取ったのは、『ダジュールの世界創造記』と『世界言語学』の二冊。

他にも歴史関係の書籍はあったが、とりあえずこの二冊を選んだ。


『ダジュールの世界創造記』は、創造神アレサが自分の力で世界を創造したという記述から話が始まる。

この本によると、五つの大陸は今から約1500年前に形成され、人々もそれぞれ海の向こうから移住し、暮らし始めるという内容だった。

その後は500年前の世界戦争や300年前の魔王討伐などを経て今に至る。


『世界言語学』は、元は十の言語に分かれていたが、時代の流れと共にアスル語が共通となり変化したそうだ。


しかしここでケイは疑問を感じた。

1500年前にこの大陸ができて暮らし始めたとなると、先住民はどこから来たのだろう?

十の言語は元々はどこの国の言葉で、なぜアスル語に統一されたのか?

もしかしたら、以前ダットが言っていた海の出来事と何か関係があるのか?

ダジュール管理者にもその記述が記されていない。それに本の内容も、分厚いわりには内容に違和感を感じざるおえない。

考えれば考えるほど、どつぼにはまっている気がした。


「ケイさん」


バートの声にハッとし顔を上げる。

「あれから随分と時間が経ってしまったのですが・・・」

小さい窓から夕日が差し込んで居るのがみえる。ここに来た時はお昼を過ぎてからだったので、3~4時間近く経っていることになる。

「ケイ、やっと気づいたわね」

「さきほどからお声を掛けたのですが、集中されていたようでしたので」

シンシアが本を本棚に戻し、タレナから自分を呼んだが聞こえていないようだったと言われる。

「本館の閉館時間が迫っていますので・・・」

申し訳なさそうにバートが説明をした。


特別室から出ると、館内にはほとんど人が残っていなかった。

「俺たちだけか?」

「職員を含めてまだ数名おります」

一階まで階段を下りると、ケイが思い出したかのようにバートに尋ねる。


「そういえば、女神像関連の書籍ってあったっけ?」

「女神像ですか?アレサ像でしたら教立図書館の方が種類は豊富です」

「あーそういうことじゃなくて、女神像ってアレサ像のこと?」

「えぇ、一般的にアレサ像の事を示していますがそれがなにか?」

バートは不思議そうな表情で見つめている。おそらくそれが常識なのだろう。

「他に女神像と聞いて思い当たるのは?」

「えーっと、私ではわかりかねます・・・」

すまなそうな表情のバートに、なんでもないと言葉を掛けて図書館を後にする。


特別室の書籍をパッと読んだ感じ、正直どれも似たような内容だった。

幻のダンジョンでみた女神像に関連するものもこれといってなし。

それと、1500年前以前の歴史についても不明な点が多く、謎だけが残った。


正直今回はアテがはずれたといったところだろう。



「そういえば、アダムとレイブンってアレサ像ってみたことあるのか?」

「どうした急に?」

アダムの声にケイが立ち止まり振り返る。

「幻のダンジョンで俺たちが見た女神像は“アレサ像”か?」

「それなら違うよ」

答えたのはレイブンだった。

以前護衛依頼で、ウェストリアまで行った時に大聖堂で像をみたから違いがわかると言った。

アダムの方は、行ったことはあるが像は見たことがないと答える。

アレグロとタレナにも聞いたが、首を横に振る。

シンシアは、西大陸自体がマライダで初めてなため割愛する。


実際、アレサ本人を見たことがあるケイもアレサとは似ても似つかないと思ってはいた。あとは、自分を崇めるためにメルティーナを模した像かと言われたらそれも違う。

あの像は、どちらにも似ていないが、なぜかどちらとも似ている感じがした。


とりあえずケイ達は、空腹感を感じたため、宿屋に向かうことにした。



ケイ達が去った後、物陰から何者かがこちらを見ていた。

その影はそれを見届けると踵を返し、町中へと戻っていった。

ネタは・・・上がらなかった。

ほぼほぼメルディーナのせいだけどね。


次回は6月12日(水)の更新です。

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