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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
339/359

329、アナベルの真実

皆さんご無沙汰しております。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、リュエラに話を聞きに来たケイ達の回になります。

話がまとまったケイ達は、庭でブルノワと少佐の遊びに付き合っているダビアをローゼンに任せ、その足でドゥフ・ウミュールシフへと向かった。


「リュエラ、話がある」


突然のケイ達の来訪にリュエラは驚いたが、その様子を感じ取っていたのであろうか、彼女の周りに飛び交っている精霊達に向かって話をするから席を外すようにという旨を伝えると、精霊達はその言葉に促される様にパッとその場を離れる。


「娘の事でしょうか?」

「いや。ダットから連絡は来てないから今のところはうまくやってるんだろう」


精霊族の長という立場ではなく、母親という立場からか自身の子の心配が尽きないようで、話し合いのワードがアナベルのことではないかというリュエラの様子に、何かあったらダットから連絡が来るから、何もないということは上手く馴染めているんだろうと諭す。


「まぁ~ある意味ではアナベルにも関係する話なんだが、精霊族がドゥフ・ウミュールシフに渡った本当の理由は、アスル・カディーム人の王に頼まれた研究の影響があったから・・・ということじゃないのか?」


ケイの指摘にリュエラは一瞬、息を詰まらせた。


その表情は、なぜ知っているのか!?という動揺が全面に現れ、一つの洩れもなく把握されているような緊張と金縛りで身動きが取れないというような様子だった。


またケイは、生き残っていたイシュメルをはじめとしたアスル・カディーム人達と共に当時の資料やデータを回収・解析した結果、精霊族がアスル・カディーム人に協力をし、代替エネルギーに関する研究も行ったものの、その反動からか位の高い精霊から数が減少してしまったことを知ったとリュエラに伝えた。

しかし当時のデータには誰が記録として残したのかまでは分からず、イシュメルから届いたメッセージの文面には、回収したデータの中に代替エネルギーの研究途中の詳細もあったことから、当時の研究に携わっていた者が残したものではないかと推測される。


「・・・・・・たしかにアスル・カディーム人の研究者たちは、シャーハーン王の魔力頼りになってしまっている現状を変えようとしていました」

「そもそも、なんで精霊族が手を貸したんだ?」

「娘の・・・・・・アナベルのためだったのです」


どういうことだ?と疑問を投げかけると、リュエラは覚悟を決めたかのような神妙な面持ちで話を続ける。



「アナベルは・・・・・・私の本当の娘ではありません」



ケイ達は、彼女のその発言に驚きを通り越して絶句した。


今までのやりとりから精霊族の長の娘だとばかり思っていたし、ケイもわざわざ鑑定することはしなかったため、リュエラの発言に対して困惑と疑問を浮かべる。


「アナベルは、あんたの娘じゃないのか?」

「彼女は、アスル・カディーム人とアグダル人によって救済された精霊です」

「救済された精霊?」

「もともと彼女は私の夫の補佐をしていた人物で、アフトクラトリア人が暴動を起こした際に重傷を負いました。夫はそんな彼女を助けようと自ら犠牲となり、私たちは彼女を救済し、シャーハーン王に助けを求めました」


リュエラの話によると、当時精霊族は今のフリージアを中心に大陸中に存在していたのだが、本来見えるはずのない精霊族をアフトクラトリア人が見えてしまったことから事態が急変する。

アスル・カディーム人は交流のために各種族・人種と良好な関係を築こうとする反面、アフトクラトリア人は魔力による魔法とは異なる精霊族の実態に興味を持ち、研究という名の乱獲を行い始めた。

もちろんビェールィ人やアグダル人はそれを阻止しようと、幾度となく話し合いの場を設けたが進展なく平行を辿り、ほどなくして暴動にまで発展、その際に精霊族の長の補佐である彼女が怪我を負ってしまったのだという。


事態を重く見たシャーハーン王は暴動を始めたアフトクラトリア人に対抗し、同時に当時交流関係を持っていた魔人族が重傷を負った精霊の救済したのだが、その容態はかなり酷かったらしい。


「娘は・・・・・・彼女はすでに一般的な治療では手の施しようのない状態にまで至り、魔人族の方々から彼女を救済する唯一の方法として、魔機学での人体精製の提案をされました」

「人体精製?精霊相手にそこまでする必要があったのか?」

「実はアフトクラトリア人の暴動の際にビェールィ人の子供が巻き込まれ、娘の前身である彼女と子供、二人を助けるためには魔人族の提案を了承するしかありませんでした」


暴動の際に孤児になってしまったビェールィ人の子供も巻き込まれたことから、魔人族は魔機学を使い、重傷を負った精霊と子供の融合という形で二人を救済するしかなく、故にアナベルの容姿は巻き込まれた子供と補佐の精霊の姿が混じった形で継承されている。


「ですが・・・・・・「問題はこれだけじゃなかった?」」


リュエラの言葉に被せるようにケイが続けると、彼女はゆっくりと縦に首を振る。


そもそも精霊族は、姿が見えないことから他種族との交流を必要としなかったワケだが、アフトクラトリア人の存在で半ば救済という形で交流が始まる。

保護された精霊族は、次第にシャーハーン王を慕い、彼が長年悩み続けた魔力頼みの解消を試みるために手を貸し始めるのだが、成果は先に述べた通りである。


一方で救済された精霊とビェールィ人の子供は、融合体として生まれ変わりアナベルとしてすくすくと育っていくのだが、残されたアフトクラトリア人により狙われていることを知った精霊族は、その一部を遠ざけるためのカモフラージュとして大陸に残し、リュエラ達は五大御子神の一人であるナザレと護衛シルトの計らいで今のドゥフ・ウミュールシフへと至る。

その際、大陸に残された精霊達は自分たちの力だけでは対抗しきれないと悟り、適正のあるアグダル人と契約を交わしたことから、今のエルフ族のルーツはここから始まる。


「でも、なんでアフトクラトリア人は精霊族の姿が見えたの?」

「おそらく元々彼らが“無機質な存在”だったから…なのかもしれないな」

「そういえば、アフトクラトリア人は人の形に薬品型細胞を組み込んだ存在だったよね。でも、それと姿が見えるとはどういうことなんだい?」

「無機質な存在というものは、時にあり得ないものを映し出すんだ。原理はどうなのかはわからねぇけど、アフトクラトリア人は精霊という存在を認識した上での行動を起こしたってことだろうな」


なぜアフトクラトリア人が見えたのかとレイブンから指摘されたケイだったが、正直な話自分でもよく知らない。


例えば、霊感がある人物になんで視えるの?と聞くと元々視えたからとか、ある日突然視えるようになったとか、そんな言葉が返ってくる。

一説にはラジオのような周波数があり、そのチャンネルを合わせると視えるようになるという話は聞くが、定義的なものを示せとなるとそれはちょっと難しい。


それにエルフ族の祖先であるアグダル人は、はじめから精霊と共に暮らしているわけではないことにも驚く。


今でこそエルフ族と共に暮らしているモノもいれば、自由奔放に生活するモノもいるが、それ自体がカモフラージュだったとは想定していなかった。

精霊族からすれば、本当に切羽詰まった状況故の行動・結果なのだろうが、アグダル人が元々適性があったことを精霊族が知っていたのか?と考えると、本当に偶然だったのかもしれないがそのことを知る術はないだろう。


「なぁ、リュエラ。ちなみにアナベルは自分の出生を知ってるのか?」

「……いいえ。私たちは今までずっとその事を隠し通してきました。いずれはそのことについてはなさねばならないのですが、彼女がその事実を受け止めきれるか、そう考えると、どうしても話すことはできませんでした」


第三者の自分たちから言わせてもらうと、かなり時間が経ちすぎているため今更真実を言ったところでアナベルがどう出るかは未知数だった。

しかも内容が内容なだけにリュエラの表情からは、親として最後まで明かないつもりでいるのだろう。

いずれなにかのきっかけでアナベルが自分の出生を知ってしまった時、彼女自身がその事実を受け入れることができるのか?と考えると、本当に伝えなくていいのかと心配になる。


「ねぇ~今思ったんだけど、アナベルが精霊と契約が出来なかったのは、彼女の中に精霊とビェールィ人の血が混じっていたことと関係があるのかしら?」


これまでの話を聞いたシンシアが一つの疑問を口にした。


ビェールィ人は、今のフリージア公爵家の祖先と言われているが、彼らは元々魔法に長けていたことから、精霊が扱う魔法と系統が違うことでアナベルに対しての部分が曖昧になっていたのだろう。


「魔法の共存って実例あるしできるんじゃねぇの?たまに複数の属性持ちの奴とかも聞くし、それとも精霊魔法との共存は難しいってことなのか?」

「そもそも精霊魔法は精霊や妖精と契約している事か前提で、彼らの協力が必要だが魔力が高ければ良いというものじゃないんだ。なんというか、共鳴に近いような感覚が重要なんだ」


セディルの説明を要約すると、精霊魔法というものは魔力量の多少に関係はあまりなく、どちらかというと呼吸を合わせることが重要で、地球でいう気功のようなものに近いと考えられる。


そうなると、二つの種族要素を持ったアナベルは精霊達からすれば未知の領域の人物に見えたのだろう。

魔法を扱える要素と最初の段階で精霊と契約できた(二人の仲についてはここでは明記しない)ことから、精霊魔法を扱う要素を持つアナベルは果たしてその辺りのところはどうなのか?という疑問がある反面、アナベルの身になにかあってはならないという葛藤が想像できる。



「ケイ、なんか鳴ってるぞ?」



そんなことを考えていたケイにアダムがポケットを指さし指摘する。


気づいたケイがポケットに入れていたスマホを取り出し画面をみるや、ある人物からのメッセージに驚き、思わず眉をひそめた。

今まで明かされることがなかった精霊族の出来事とアナベルの正体にケイ達は驚きます。

また、タイミングを図ったかのようにケイのスマホにとある人物から連絡が来たようです。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

*誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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