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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
335/359

325、丸投げ(?)されたダット

みなさんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、アナベルのことで妖精と仲の良いダットの元に相談に行く回です。

妖精に群がられているアダムとレイブンをなんとか引き離し、どうして自分たちが別行動をしている時に限って、戻って来た時こんなことになるんだ?と、まるでなにかの呪いでもかかっているのでは、と冗談交じりにアダムから言われたケイは事の経緯を二人に説明をした。


もちろん今回もたまたまなのだが、常日頃のケイの行動+結果=ヤバいという方程式が組み上がっているのではというほど、展開が早くなるときがある。


自由奔放が故の時もあるが、偶然が偶然を呼び、結果的に事態が急展開するのは、ケイも本望ではないが、“この世界に来てからこの状況・展開がデフォルト”なこともあり、人間というのは意外と対応出来るものだなと別な意味で感心をする。


「大体話は分かった。じゃあ、これからダットさんのところに行くのか?」

「あぁ。さすがにこのままじゃ、いくら経ってもアナベルと精霊達の距離は縮まないだろう?寝てる間になんとか話をつけたい」


リュエラさんも大変だなと口にしたアダムに、親は子供のことで苦労することはあれど、さすがにアレではなんだか不憫すぎるとケイも同意する。

二人にひとしきり状況を説明し、話がまとまったところでリュエラに寝ているアナベルを任せ、ケイ達はセディルとダビアを連れて魔道船が拠点とするアーベンへと向かったのである。



「ダットさ~ん、ケイさん達が見えられました!」



甲板で積載作業を指示していたダットの耳に、港で荷物の確認をしていた船員の声が聞こえた。


運搬作業中の船員にその場を任せ甲板の手すりから下を覗くと、ケイ達がこちらを見上げて手を振っている姿が見える。

急な訪問に何かあったのかと疑問を浮かべたダットは、後の事を頼むと近くにいた船員に指示し、そのままケイ達の元へと向かった。


「なんだ~珍しいな?何かあったのか?」

「あぁ。急で悪いけど、ちょっと相談があるんだ」


船から降りたダットが声を掛けると、珍しくケイから相談事を持ちかけられた。


俺に相談なんて意味あるのか?と疑問を浮かべたダットに対して、周りを気にするかのように一瞬辺りを見回してから「アナベルのことで・・・」とケイが耳打ちすると、はぁ!?と驚きと困惑が入り混じったようなよく分からない表情でケイ達を見やった。



場所を移した一行は、ダットの案内で会議室に通され、そこで彼に今回での出来事を説明した。


以前ドゥフ・ウミュールシフへ行った際、ダットもリュエラと顔を合わせていたことから面識があり、尚且つ秘密を守り、相談に乗ってくれる人物と考えた時にダット率いる魔道船の面々を思い出した。


魔道船の船員たちは、様々な種族が居ながらも精霊や妖精と契約し協力しては喧嘩もするが順調に良い方向に共存している。

その事を思い出したケイは、なにかきっかけとなるアドバイスを貰えるのではと考えやって来たものの、もちろんソレが正解なのかとなるとちょっと違うかもしれないが、可能性はあるとみている。


「なるほどな。まぁ人間でも一度恐怖を植え付けられると、そこから払拭するのは難しいって言うし、気持ちは分からなくもねぇな」

「リュエラも色々と手を尽くしてはいるみたいだけど、あの島の精霊達は以前のアナベルのことを知ってるだけになかなかうまくいかないみたいだ」

「・・・となると、俺達でもアナベルに伝えることができるかというと難しいな~」


話を聞いたダットは、精霊達がアナベルの存在自体に恐怖心を抱いていることを理解はすれど、そこからどうやって距離を詰めるかまでは考えが思い浮かばず、腕を組んで考え込む。

ケイも子供の喧嘩ぐらいならなんとか仲裁はできるが、種族違いの畑違いとなれば完全に専門外で、例えるなら野生のライオンの群を手懐けるぐらいの難易度と言えば理解してもらえるだろうか。


「そういや~ケイ達が連れてきたそっちの兄ちゃんはエルフだよな?」

「えっ?あ、はい。そうですが・・・」

「妖精の扱いなら、俺らよりあんちゃんの方が詳しく知ってんじゃねぇのか?」

「あー実は、セディルはちょっとワケありでさ~」


ケイが一緒について来たセディルとダビアの事を紹介ついでに説明すると、聞いちゃ不味かったか?と、申し訳なさそうな表情を見せた。


どうやらダットは意図しないところで他人の事情に踏み込むことがあるようで、面倒見が良い反面、その辺りにも気をつけて欲しいと日頃から船員達に指摘されていたそうだ。しかもヨリを戻した奥さんにも同じ事を言われていたようで、最近ではそれもいいとこでもあり悪いところでもあると周りから半ば諦めのように納得をされているのだという。

ケイ達と出会った頃はかなりやさぐれて苦労していた様子だったが、今では魔道船の船長となり、ワケあり船員達も引き入れては東から西へ、北から南へと忙しい日々を送っている。


「正直こんなことを頼めるのはダット達しかいないんだわ。セディルとダビアは、ここに来る前にアナベルとモメてさ~どうも相性が悪いみたいなんだわ」


迷惑を掛けるかもしれないが、今回の件を引き受けて貰えないだろうかと打診するケイに、腕を組んだままのダットが考えるように唸る。

セディルとダビアでは、さっきのようにアナベルと衝突するのは目に見えているため、男世帯ではあるものの、顔見知りで彼女が“話ぐらい”は聞くであろう相手となると彼らしか頼めない。


「まぁ、二~三日程度なら面倒見られるが、具体的に俺らは何をすればいいんだ?こう言っちゃなんだが、先生まがいのことなんて俺も野郎共もできねぇぞ?」

「肩肘を張るようなことはしなくていい。いつもの通りで構わない」

「見て感じてもらおう・・・ってことか?」


ダットの顔に「あの嬢ちゃん(アナベル)にできるのか?」というストレートな表情が浮かんでいる。


ここまで清々しく分かりやすい表情ができるにも関わらず、裏表もなく酸いも甘いも知り尽くしている彼ならばと考え、本当にいいのか?と尋ねると、荷物が遅れている関係であと数日はアーベンにいることが伝えられる。

もちろん精霊族の長の娘を預かる以上不安はあるが、全員が彼女の事を全く知らないわけではないため、特にイベールとレマルク兄弟に彼女のアシストを頼もうとダットは考えたのである。



翌日ダットはアナベルを迎えるにあたり、事前にアダムの借家の場所を教えてもらい家の前で待機していた。


それからほどなくして、借家からシンシアとレイブンに連れられアナベルが出てきたわけなのだが、再会した少女の表情が思っているよりもふて腐れている様子に疑問を抱く。


「・・・何かあったのか?」

「実は、でかける前にまたセディルさんとダビアさんと揉めちゃって・・・」

「俺達でなんとか引き離して連れてきたんだ」


初めて見る町の様子にさっきの様子とはうって変わり、アナベルが物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回している後ろで、シンシアとレイブンから朝の様子を聞いた。


それとアナベルのその後の経緯は、昨日ケイから大方聞いていた。


エルフ族の先祖であるアグダル人が精霊や妖精を乱獲したため数が減少し、戦争が起きた時に彼女の父親も命を落とし、同時に自分が生まれたことで忌み子として言われ続け、その後も色々な要因が重なり、矛先のひとつがエルフ族であるセディルに向かうことは容易に想像出来る。


だが、しかしここでひとつ問題がある。


大所帯の魔道船にも当然エルフ族がいるということである。

彼らと対峙すれば癇癪を起こして大騒ぎになる未来が見えるのだが、ここに来てからダットがその問題に気づき、やっぱり受けない方がよかったかも・・・と、後悔していた。

また、その様子に気づいたレイブンから船員の方の中にもいるみたいですけど、本当に大丈夫ですか?と心配をされる。


ケイに了承した時点で気づけばよかったのだが、この時は誰からも指摘がなく自分も気づかなかったため、今更後には引けないと腹を括り、こっちは大丈夫だから心配するなとレイブンの肩を軽く叩いた。



二人と別れたダットは、アナベルを連れてその足で魔道船へと向かった。


「町を見るのは初めてか?」

「え?えぇ、今まで島から出たことがなくて・・・」


道中、気を利かせたダットがアナベルに声を掛けた。


出店や行き交う人々をまじまじと見ていた彼女だったが、時折エルフ族を見かけては立ち止まったり、狼狽えている様子があった。話に聞いていた、完全に憎悪でキレて暴れていたというわけだけじゃないのかもしれないとダットは思い考える。



「ダットさん、お帰りなさい」



船へ戻ると、甲板で作業をしていた船員達が声を掛けた。


彼らは連れられてやって来たアナベルを見て驚いた様子を見せたが、事情があって二~三日預かることになったと説明をし、もしイベールとレマルクを見かけたら自分の所にくるようにと伝える。


「・・・?ん?アナベル、どうかしたか?」

「・・・・・・こんなに妖精が???」

「あ?あぁ~こいつら全員ウチの船員だ」


船に戻ってからのアナベルの様子に気づいたダットが声を掛けると、彼女は一言こう呟く。


普通の人には精霊の類いは見えないが、精霊族であるアナベルの目には船を取り囲むように数多くの精霊や妖精たちの姿があった。

なかには生まれたばかりで光りだけの存在の妖精もおり、その妖精を取り囲むように他の妖精や精霊達が世話をしており、ダットから「落ちんなよ!」と声をかけるや幼い光りは嬉しそうにダットの周りを飛び回っている。


「ここにはどのくらいの精霊達がいるの?」

「さぁ~な。あいつらは気まぐれだから、出て行く奴もいれば入ってくる奴もいるし、その時その時で数は違うが・・・大体500前後ぐらいだろうな」


そんなに!?と驚くアナベルの横から、数体の幼い妖精達左から右へと横切った。


彼らの進行方向にダットが右手を伸ばし遮ると、急ブレーキをかけるかのように妖精達はピタッと止まり、直後に荷物を運んでいた船員がダットの右後方からやってくる。

両手いっぱいに荷物を抱えた船員がダットと並んだ際、塞き止めていた妖精達の存在に気づき「あっ!」と声を上げ、その様子にダットが「荷物を持ちすぎだ」と指摘し、近くに居た別の船員に誰か分担して荷物を運べと指示を出す。


船員の行動と自由奔放な妖精達の動きを把握していたダットの様子に、アナベルはなぜ彼が予測できるのかと唖然とした様子でそのやりとりを見つめていた。

ケイから丸投げ・・・もとい託されたダットは、数日の間だけアナベルを魔道船に迎えることになりました。はたしてうまくいくのでしょうか?


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。


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