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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
333/359

323、いきなり訪問ードゥフ・ウミュールシフ編ー

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回から精霊族が住まうドゥフ・ウミュールシフ編になります。

よろしくお願いします。

マードゥック達の来訪から数日経ったある日のこと。


この日ケイは、朝からとある人物からの着信に対応をしていた。

通話越しから相手の困惑した様子が窺えるが、その発端となったのはケイである。


『・・・といわれてもねぇ』

「いや、ガイナールだって桜紅蘭に行ったんだから、全く知らねぇってわけじゃねぇだろ?それにディナトだってホビット族との協定を結んだって言ってんだから、いずれにせよ遅かれ早かれそういう話も出てくるワケじゃん?」

『だとしても、こちらは君達の展開についていくのとその対応に精一杯だよ』


通話の相手は国王のガイナールで、数日前のマードゥック達の件で庭で談笑していた姿を近くの住人が目撃し、騎士団経由で報告を聞いたためケイに連絡を取りにきたわけである。

しかも時を同じくして、エストアの王であるディナト・ロルドスが、大陸外で暮らしているホビット族との協定を結んだことを宣言をしたため、王都おろか各国で、この大陸以外で暮らしている種族が存在していることを民間が知ってしまったことから一時的に混乱が起き、その対応に追われていることも伝えられる。


その話を聞いたケイは、自分たちが女神像の仕掛けを解き、結界を解除した段階で起こった、一時的な異常気象に薄々何かあると気づいていた人は居たんじゃないかと考える。

もちろんその時の対応もガイナールを始めとした国王側が配慮し、時期が来たら国民に発表する流れになっていたようだが、既にアーベンを拠点として活動をしている、魔道船のヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアの存在もあることから、隠しても意味はないだろうなとは思ってはいた。


ちなみにヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアは、ダットとマカドを後見人として早い段階でアーベンの市民として権利を得ている。


まぁ~見た目はかなり特徴があることから、はじめは取っつきにくい印象はあるものの、本人達が身振り手振りで意思を伝えようとするところを見るとなんとかやっている様子。

最近では簡単な単語だけではあるが、言葉を発することができたことをダットから聞き、彼らの父親でもあるグドラに伝えたところ、感動のあまり大の大人(?)が大泣きしたのは内緒の話である。


『いずれにしろ、こちらはもう少し状況を整理するからまた連絡するよ』

「わかった。なんか悪いな~」

『そう思っているなら、少しは自重してもらいたいものだ』


苦笑いを浮かべたであろうガイナールとは、またなにか進捗があったら連絡を取るということで話をまとめ通話を切った。



「ケイ!ちょっといいかしら?」



通話を終えたタイミングで、ノックと同時にシンシアが声を掛けた。


何か用か?と返事を返し扉を開けると、ローゼンからケイに客が来ていると伝言を預かっていると伝えられる。


「客?だれ?」

「それがセディルさんとダビアさんなの」

「えっ!?セディルとダビアが来てんのか?」

「えぇ。応接室に通してるって」


珍しい訪問客に目を丸くしたケイは、そのままシンシアを連れて二人がいる応接室へと向かった。



二人が応接室までやって来ると、扉を開けてすぐにやはり見覚えのある二人が対面式のソファーに並んで座り、部屋に入ってくるケイ達を見るや、久しぶりと声を上げ、急な訪問で申し訳ないと断わりをいれた。


「二人とも久しぶりだな!」

「王さまもお変わりなくてよかったです」

「こっちも急に押しかけて悪かった。風の噂でケイ達がアルバラントを拠点としていると聞いてやって来たんだ」


二人とたわいもない挨拶を交わしてから対面に座ったケイとシンシアは、その流れで近況を聞くことになった。


エルフ族のセディルと彼と共に行動して居る上位精霊のダビアは、ケイ達が森をあとにしてからほどなくして里を離れた。

色々と事情はあったようだが、一番の問題は、ダビアがエルフ族の祖先であるアグダル人を嫌悪している延長線で、どうしても他のエルフと仲良くなれなかったことが要因だった。

それにセディルも元々魔法を扱うことができなかったこともあり、ダビアのおかげで魔法が使えるようになったとしても、兄であるハイン以外のエルフとの交流が少なかったことも関係していた。


もちろんハインは、はじめこそ二人と里の人達との仲を取り持とうと、色々手を尽くしたが上手くいかず、最終的には二人の気持ちを尊重して送り出してくれたそうだ。


「よくハインが了承してくれたな?」

「ダビアのあの態度を見たら、さすがにこのままだともっと関係が悪化すると思ったんだろうな、渋々だけど送り出してくれたよ。まぁ~自分も人のことは言えないが・・・」


セディルがそう言いながら肩をすかせ、苦笑いを浮かべる。


その後の二人は各地を転々としながら多種多様考えを持つ人々と出会い、生活や状況を知りながら、その道中でヴィンチェ達やアルバラントの王立図書館のバートと出会い、彼らから世界の歴史とその謎を聞いたのだという。

結果的に自分たちの発言により彼らのヒントとなる出来事を与えたそうだが、本人達いわく、いつの間にか解決の糸口になったようだと語る。


ケイは、世界は広いが世間は狭いなと感じてしまった。



『パパ~!』


セディル達との会話をしている最中、応接室の扉が勢いよく開かれた。


ブルノワと少佐が意気揚々と駆け込むやいなや、その様子にセディルとダビアが目を丸くする。


「えっ・・・王さま、結婚したの?」

「いやいやいや!こいつは俺の使い魔だって!」

「いや、どう見ても普通の子に見えるけど・・・二人(ケイとシンシア)の子供か?」

「な、なに言ってるのよ!ち、違うわよ!!」


ぽつりと言い放ったセディルとダビアの言葉に、即座に違うと反論したケイとシンシアだったが、逆にその様子に勘違いをしたのか「またまた~」という返しに頑固として否定をする問答が続く。


『パパ~!みてみて~!』

『バウ!』『ワウ!』『ガウ!』


ケイ達のやりとりに割って入るように、ブルノワが両手に握られている“それ”を掲げるようにしきりに見せてくる。


あまりの見てほしいアタックに、その行動を不思議に思ったケイが手にしているモノに焦点を合わせると、白く光る発光体のようなものが両手に握られている。

驚いたケイが「げっ!」と声を上げ、すぐさま少佐の方を見るや、ヴァールの口に同じ発光体のような何かが咥えられている。


「ブルノワ、ヴァール、なに拾ってきたんだ!?危ないモノだったら大変だから拾わずに呼べっつただろ?」


ぴしゃんと言い放ったケイに驚いたブルノワが手を離し、ヴァールが口に咥えたモノを勢いよく吐き出した。

ブルノワの手から離れた二つの発光体はヘナヘナとした様子で床に落ち、ヴァールの口から吐き出されたモノは、いつぞやの魔道船での出来事を髣髴とさせるような涎まみれと悲惨な状態になっている。


「王さま、これ・・・妖精よ?」

「妖精?ってか、人前に出てこないんじゃねぇのか?」

「この大きさだったら、まだ生まれて間もないのかも・・・」

「とりあえず、この涎まみれの方をどうにかしたほうがいいと思うわ」


シンシアがタオルを取りに席を立ち、発光体を保護したケイがブルノワと少佐に何処で拾ったのかと聞くと、庭で拾ったようで手を伸ばしたら捕まえたと言い、慌ててケイに見せに来たようだった。


「街中に妖精が現れることってあるんだな~」


タオルを手に戻って来たシンシアに拭いて貰った発光体を見ながら、ケイはそんなことを口にする。


「普通人前に出ることはないんだけど、なにかあったのだろうか?」

「・・・ん?セディル、あんた妖精が見えるのか?」

「あぁ。ダビアと各地を巡っている間に、いつの間にか見えるようになったんだ」

「へぇ~、いろいろあったんだなぁ~」


セディルによると、妖精は基本エルフの森以外では人里離れた場所で暮らしているようで、他種族がいる地域には滅多に出ないという。

それとダビアからブルノワ達が連れてきた発光体は、生まれたばかりの精霊のようで、その様子から少なくともこの辺りにいる妖精ではないと口にする。

正直、ケイから見れば妖精は全部一緒にしか見えないのだが、彼女からしたら全然違うとのこと。


地域的な特性でもあるのかと疑問が残るが、シンシアが拭き終えたタイミングで一旦その考えを脇に置く。


「で、この妖精どうすればいいんだ?」

「生まれたばかりの妖精は周りの妖精の保護がなければすぐに死んでしまうこともあります。本音を言えば、どこかに保護をしてもらえればいいんですけど・・・」


本来は周りに他の妖精がおり、その彼らが生まれたばかりの妖精を世話するはずなのだが、ブルノワと少佐の反応を見るにこの三体しかいなかったようだ。


「なら、精霊族に頼めばいいんじゃねぇのか?」

「えっ?王さま?」


ケイの耳を疑うような言葉にダビアが思わず声を上げた。


ドゥフ・ウミュールシフで暮らす精霊族は、世界大戦があった1500年前からケイ達が出会った頃まで他の種族との交流がなかった故に、その経緯を知っているダビアが驚いたのは言うまでもない。


そんな彼女とセディルにケイが今までの経緯を説明し、エントランスにあるゲートの事を教えた。


当然二人はその話に困惑した様子を見せたのだが、同時にケイは精霊族を訪ねてよいものだろうかと思案する。と言うのも、精霊族は過去の経緯から極端にアグダル人を嫌悪しており、ダビアの様子をみるに、相当根が深い問題だろうと考える。

ましてや、彼らの子孫であるセディルがダビアと行動して居るとなると、余計な混乱や原因を招きかねないと思い、実は調整はしていたものの途中で考えを変え、作業の手を止めていたのである。


「セディル、妖精を送り届けるから少しダビアを借りていいか?」

「ダビアを?」

「というのは、俺達は以前ダビアの故郷であるドゥフ・ウミュールシフに行ったことがある。そこに住む精霊族は、エルフ族の先祖であるアグダル人をかなり恨んでいるんだ」


ケイはセディルに以前交流をした精霊族の事を説明した。


話を聞いたセディルは、ダビアの方を見るや思うことがあったのか、確かに自分が同行すればいい顔をしないなと考え、生まれたばかりの妖精のことを気に懸けながらもよろしく頼むと頭を下げた。



それからケイは生まれたばかりの妖精を保護して貰おうと、ゲートをドゥフ・ウミュールシフに繋げるべく最終調整を行い、シンシアが用意したであろうタオルを敷き詰めたカゴに三体の妖精を入れ、ダビアとシンシアを連れて向かうことにした。


「ではご主人様、少し出掛けてきますね」

「セディル、すぐ戻るからブルノワ達と待っててくれねぇか?」

「あぁ、俺の方は大丈夫だ。こっちこそ申し訳ないがダビアをよろしく頼む」


セディルにブルノワと少佐を一旦任せ、次なる島ドゥフ・ウミュールシフへと続くゲートに手をかけたワケなのだが、扉を開けたと同時にケイの視界が急に白く明るく光り、顔面を殴られたかのような衝撃を受け、あまりの痛さにそのまま蹲ったのだった。

エルフ族のセディルと上位精霊ダビアとの久々の再会を喜んだケイとシンシアは、ブルノワと少佐が持ち運んだ生まれたての妖精を保護し、精霊族の長であるリュエラの元を訪れることにしました。

そしてその直後にケイに起こった衝撃とは?


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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