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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
331/359

321、食文化のヤバい話

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、パーシアが試したいことがあるとのことで、一体それはなんのことでしょう。

そういえば、かなり前に獣人族の長であるオブスから、自分たちの祖先は獣族だと聞いたことを思い出す。


ルフ島に残っていた当時の文献には、塔の建設に携わっていた一部の獣族達がこの地に留まった旨の内容が記されている。そこから考えるに1500年以上も経ったとなれば、その諸々の過程で獣族は獣人族に種族が変化をしたのは想像できるだろう。


パーシアの発言にそんなことを思い浮かべたケイは、なぜ彼女が四人に対して確かめたいことがあると言ったのかということは薄々感づいてはいたが、本人から話を聞こうとその続きを即した。


「パーシア、なにを確認したいんだ?」

「は、はい。皆さんが持ち込まれた食材に関して気になることがいくつかあるのですが、その前に一つ試したいことがあるので、少し待ってください」


そう言うとパーシアが席を立ち、キッチンの方へと向かって行く。


疑問を浮かべたままの四人は、テーブルに分けられた食材と彼女が向かったキッチンの方を交互に見つめながらどういうことなのかと首を傾げる。



それから、数分経った後にパーシアが銀のトレーを手に戻って来た。


テーブルに置かれたトレーには、白い小皿が四つ並んだように置かれ、それぞれに色の異なる液体が注がれている。

小皿は、右から無色透明の何かの液体・柑橘系の匂いがあるオレンジ色の液体・茶色い液体・いかにも辛そうな真っ赤な液体と、どれも調味料の一種だと察することができる。


「まず皆さんには、こちらの味を確かめて頂きたいんです」


四人を伺うようにドギマギさせながらパーシアが尋ねると、マードゥック達はそれらを取り囲むように覗き見た。


『パーシアさん、これはなんでしょうか?』

「私たちの国で使われている調味料の一種です。皆さんにこの味を確認して頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」


尋ねたバメットに答えたパーシアは、それぞれに味見用にとスプーンを手渡した。


彼らが興味深げに小皿の液体を見つめている横で、パーシアがケイの耳元で「ケイさんには正解をお願いします」と呟かれる。当然ケイは、なんのこっちゃと肩をすかせるが、きっと彼女に思うことがあるのだろう。


マードゥック達は受け取ったスプーンを手に、右端から調味料の味を確かめて見ることにした。


「・・・?この調味料は、少し塩気がありますね」

『私たちの国で普段使っている調味料によく似ている気がしますが?』


最初の調味料は、ジュランジとルバーリアでも使われているものに近いのかギエルとバメットがこれでなにが分かるのかと首を傾げ、グドラが二人の言葉に頷く。

しかしマードゥックは、口に含んだ途端、右手で口を覆い小刻みに首を横に振る。


「マードゥック、大丈夫か?」


ケイが問いかけるも「無理無理!水!みず~~~~!!!」と言いたげなマードゥックの様子に慌ててパーシアがキッチンから人数分のコップと水差しを運び込み、水差に注がれたコップを手渡されたマードゥックは、一気飲みの勢いで飲み干すも二度も水のおかわりを所望した。


「し、死ぬかと思った~~~」

「・・・大丈夫か?」


かなり苦かったというマードゥックに対して、パーシアがやっぱりと何かを思案する様子がある。

気落ちするマードゥックに比例するように、四人の後に自分もあれを試食しないといけないのかとケイ自身も気が進まないのだが、とにかく先に他の三つも確認して貰おうと四人に即した。


二つ目のオレンジ色の液体は、柑橘系の匂いが鼻腔をくすぐり、小皿に浮かんだ液体の中に果肉のような物が浮かんでいることから、恐らくオレンを絞った物だと推測される。

現に四人は同じ反応を示し、酸味はあるが不快感ないと感想を述べる。


三つ目の小皿は茶色い液体が入ったもので、色合いと匂いから醤油のだろうと推測される。

意外だったのは、それをグドラとバメットが口に含んだところ、彼らにとってはかなり不快だったようで、一つ目のマードゥック同様に見たこともない苦い表情を浮かべている。

耳打ちでパーシアにあれは醤油か?と尋ねると、砂糖を入れた醤油を使っているようで、そこでもやっぱりそうだったんですね・・・と一人完結した様子を見せる。


四つ目は、言わずもがな香辛料をベースに作成された調味料で、全員が口の中が辛い!と一斉に水差しの水を飲み干し、尚且つおかわりを要求する事態にまで至る。

パーシア曰く、店で提供している料理の調味料として使われているそうで、辛い物好きマニアにはクセになるほどの好評を得ている。

なにせルフ島産の13種類の香辛料をブレンドし、尚且つ赤いマンドラゴラを詰めに詰め込んでいることから、相当な強者でないと口に出来ないという。


その説明を聞いたケイは、本当に食べていいモノだろうかと不安を抱く。


自分も辛い物は好きだが、度を超えた辛さは勘弁したいがこの状況では無理なのだろうと、パーシアの「ケイさんもどうぞ!」という表情に腹を括る覚悟を決めた。



「・・・ケイさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だと思う?まだ胃がメチャクチャ踊ってる気がする・・・」


完全にグロッキーになっているケイの背をギエルがさすり、水を差し出すパーシアの表情が想定以上だったのか、申し訳なさそうに眉を下げオロオロする。


「で、なにかわかったのか?」

「えっ?あ!はい、最後にケイさんが確認されてから分かったことがいくつかあります。まず一番に私が気にしていることは、ギエルさんです」


確証を得たパーシアの目線がギエルに向けられ、突然指名されたギエルは目を丸くして彼女を見下ろしている。


「パーシア殿、自分が気になるとはどういう意味でしょう?」

「ギエルさんが最初の調味料を口にした際に塩気があるとおっしゃってましたが、実は本来はあり得ないことなんです」


最初に手を付けた右端の小皿に目線を移しながら、ケイは彼女の言いたいことを考え、まさかと気づく。


「これ【にがり】じゃないのか?」

「そうなんです。ケイさんの国ではそう呼ばれているものですが、この国では正式な名称がありません」


にがりは豆腐を作る際に材料となる豆乳とかけ合わせる時などに用いられるが、地球の常識とは異なり、ダジュールでは主に料理の隠し味に用いられることがある。

また海水から取れる塩化マグネシウム主成分とされる食品添加物であるが、塩っぱさ以前に独特のにがりの苦みが先にくるのだが、先ほどのギエルの様子から見るにマードゥックとは対照的な反応に疑問を抱く。


「ギエルがにがりをしょっぱいって言ったのは種族的な味覚の違いか?」

「いいえ。本来でしたらマードゥックさんと同じ反応になるはずなのですが・・・」

「ん?本来は、ってどういうこと?」

「実はこれが原因ではないかと・・・」


パーシアが、右側に仕分けした山の一つを手に取りこちらに手渡す。


それは、枝にしその葉のような形のものと連なるようにして白い花がいくつか咲いているものだった。

右側の食材の山は、パーシアの説明から一部で薬草やハーブが混じっていた事からその類いではないかと思い、鑑定にかけると以下の内容が表示される。



【シルバーバイン】

ハーブの一種で興奮状態を引き起こす珍しい有用植物。

一般的に葉は香辛料の香り付けに、花は乾燥させて匂い袋の材料として利用されるが、一部の種族には人体を害する可能性がある。



興奮状態を引き起こすというワードに、普通に自生しているものだよな?と口元を引きつらせ、パーシアからトドメと言わんばかりのあることを告げられる。


「これは【シルバーバイン】と言いまして、私たちの国ではルフ島やダナン郊外に自生しているハーブの一種になります。ですが、そのなかで獣人族は口にしてはいけないきまりもあります」

「シルバーバインがダメだって事か?」

「はい。シルバーバインは一部の獣人族に対して、質量関係なく興奮状態を引き起こし、かなりの負担を掛けることがあります。過去には摂取して亡くなった方も居るそうで、ルフ島ではかなり前から使用することを規制しています」


パーシアが言うに、シルバーバインは大陸でも一般的に流通しているハーブなのだが、近年、各国から獣人族に害が出ているという報告が上がり、飲食店では獣人族に対してシルバーバインを使った料理を提供しないようにとお達しが出ている。


しかし他の種族や獣人族の特定外には影響はなく、香りを上品に引き立たせることから一部のマニアには大ウケで、未だにシルバーバインの未知なる部分が解明されていないことも含め、飲食店側もその辺りの対応が揺れ動いている状況だという。


「シルバーバインは、そのまま口に入れるとにがりと同じでかなり苦みを感じるはずなのですが、ギエルさんはその様子がなかったので、もしかしたら苦みを感じにくいのではと思われます。それとギエルさんに一つ伺いたいのですが、こちらを普段から口にしていたりしますか?」

「え?えぇ。私の家では、よくこれが食卓に出ていました。他の野菜と同様に口にしているのですが、どんな時でも気持ちが前向きになると家族では人気なんです」


そこから話を聞いた人からすれば、何かのヤバいモノを口にしている風にもとれるが、話の内容が一般に流通しているハーブなのでセーフ、といってはなんだが複雑な気持ちにさせる。


「気持ちを前向きに・・・となると、一時的に興奮状態になっていた可能性があります。どのぐらい前から口にしているのかはわかりませんが、少なくとも今後のことも考えますと、まずは口にする頻度を下げた方がいいかと」


パーシアは獣人族の祖先が獣族だとは知らないはずなのだが、共通するものを察してかギエルにこう助言をする。

もちろんギエルは好き嫌いを言っている場合ではと態度だったが、マードゥックから時折気分が高揚して、ありえないほどの行動力と若干の荒さを垣間見たことがあったようで、正直心配していたという。


興奮・・・シルバーバイン・・・と、ケイがあることに気がつく。


「ギエル、お前それ食うの止めろ」

「え!ケイさんまで!?」

「いや、だってお前ソレ・・・【またたび】だぞ?」


ケイの発言に、その場に居る全員がまたたび?と疑問を浮かべたのは言うまでもなかった。

味覚を確認した際にパーシアから味覚の異常さを指摘されたギエルは、食材の摂取を止めるように言われるが納得していない様子。また、ケイが指摘した【またたび】の話に一同が疑問を抱くことに。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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